物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

文字の大きさ
158 / 622
5章 選ぶべき道

157話 固まった意志

しおりを挟む
 いつも通りに授業を受けていても、どうにも気が乗らない。理由は明らかだから、対策を取るべきではあるのだろうが。ただ、結局は俺が心の整理をつけるしかない。

 自分を納得させるために、何が必要なのだろうか。間違いなく、カミラ達が無事で済むように動くことは重要ではあるが。

 父を殺すことですら、手が止まるんだ。カミラ達が死ぬようなことになれば、俺は終わりだろう。だから、どうあっても助ける必要はある。

 とはいえ、ミーアに頼み込む以外の手段が思いつかない。俺の発想の狭さには、あきれる限りだ。何か、自分でも手を打つべきだろうに。

 ただ、行動することを目的にして、余計なことをする訳にはいかない。人の命がかかっているときだからこそ、軽率な行動は避けるべきだ。

 考えることが多いな。どうにも、難しい。そんな風に悩みながら授業を終え、放課後。セルフィが近くにやってきていた。会いに来たのか、偶然なのか。いずれにせよ、心配をかけそうで怖いな。

「レックス君、こんにちは。……ねえ、私の部屋に、来てくれるかな?」

 最初は笑顔だったが、すぐに顔色が変わった。明らかに不安そうだ。つまり、俺の状態は気づかれているのだろう。

 気持ちは嬉しいが、あまり巻き込みたくはないんだよな。いや、相談くらいはするべきか?

 いくらなんでも、セルフィに話したからといって、彼女が参加するという事態にはならないだろう。

「何のつもりだ? 急に部屋に誘うとは、色気づきでもしたか?」
「レックス君。今の君は、自分で思っているより、ひどい顔をしているよ」

 まあ、そうだろうな。自分でも、状態は悪いとは思っている。父を殺すための踏ん切りがつかないからな。どうしても、ためらってしまう。

 分かっているんだ。未来のためを思えば、父を殺すのが正しいとは。それでも、一緒に過ごしてきた時間があるんだ。情けないのも、理解しているつもりだ。

 だが、感情を隠しきれていないのなら、良くないよな。これから先、俺は貴族として生きていかなければならないのだから。

 それに、セルフィに心配をかけてしまっている。やはり、良い人なんだよな。だからこそ、安心させてやりたい。そうなると、話すしかないか。

「知ったような口を利くものだな。まあ良い。そこまで言うのなら、好きにすればいいさ」
「もちろんだよ。とてもじゃないけど、放っておけないからね」

 ということで、セルフィに着いていって、部屋に入る。どことなく殺風景で、趣味らしきものも感じ取れない。この人は、何を楽しみに生きているのだろうか。そんな疑問すら浮かぶくらいだ。

 セルフィの方を見ると、少し恥ずかしそうにしているように見える。まあ、自室を見られるのは恥ずかしいよな。分かる気がする。

 もしかしたら、飾りっ気のない部屋の様子を意識しているのかもしれないが。ただ、部屋がどうなっているかで、セルフィの評価は変わらないよな。ゴミ屋敷ならともかく。だから、気にする必要はないと思うが。

「あまり良い部屋でもないけど、ゆっくりしていってね」
「まったく。誘われたのだから来たというのに」
「ごめんね。でも、ちょっと見ていられなかったから」

 そこまで言われるほどか。やはり、隠しきれていないどころか、顔色が悪くなっているレベルなのだろう。仕方ないとは思うのだが、もう少しくらい演じられないものだろうか。

「お前が心配するようなことではない。これは、俺の問題だ」
「ううん。きっと、吐き出すだけでも違うから。絶対に黙っているし、君が望むのなら何をしても良い。だから、話してくれないかな?」

 固い決意が見えてくる。つまり、本気で俺を心配してくれているのだろう。だから、ここで話すのが正解だよな。

 いくらなんでも、セルフィが情報を漏らす人とは思えない。そんな人なら、誰かに相談されることは難しいだろう。原作でも、慕われていた描写のある人だ。

 それに何より、これまでずっと、俺を支えてくれようとしていた。だから、信じて良いはずだ。

 というか、セルフィからブラック家に情報が流れることはないだろう。あの家は、多くの人が嫌っているのだから。

「そこまで言うのなら、仕方ないな。話してやるさ」
「ありがとう。さあ、どこからでも良いよ」
「お前が礼を言うことじゃないだろうに。変わったやつだ」
「ふふっ、そうかもね。でも、君の力になれるのなら、変わっていても良いよ」

 気持ちは嬉しいが、なぜここまで心配というか、力になろうとされるのだろう。俺より困っている人も、探せば見つかると思うが。

 まあ、困っている人なら誰でも良いわけではないのだろう。実際、悪人が危険な目に合っていたとして、俺は助けたいとは思わない。だから、セルフィにも好き嫌いがあるのだろうな。

 その仮説だと、俺は好意的に見られているという話になってしまうのだが。自意識過剰か? ただ、これまでずっと手を差し伸べてくれていたのは事実。そこは、疑う理由はない。

「さて、どこから話したものか。結論からにするか。俺は、父を殺せと依頼されてな」
「そんなの、断っちゃえば……、いや、断れない相手なんだね?」
「ああ。王家からの依頼だ。正確には、国王からと言えば良いか」
「それで、悩んでいたんだね。確かに、ブラック家の当主は評判が悪いよね。でも、そんなに悪人なの?」
「少なくとも、王家の秘宝を盗んで、それに生贄を捧げているらしいな」
「本当なの? 嘘の情報で、君を騙そうとしていたりしない?」

 確かに、あり得る話ではある。セルフィが疑う理由は、分かる。ただ、国王がミーアまで巻き込んだウソを付く気はしない。いくらなんでも、そこまでミーアを利用できないはずだ。親としての情も、あるはずなのだから。

 それに、父が何かを企んでいたのは間違いのないこと。だから、正しいはずだ。いまさら、疑いたくない。

「状況を考えれば、辻褄は合う。それに、あの父のやりそうなことだ」
「それでも、自分のお父さんを殺すんだものね。嫌に決まっているよね」
「……」
「何も言わなくてもいいよ。それなら、私が代わりに戦おうか? それなら、少なくとも自分の手で殺さなくて済むよ」

 目を見れば、本気だと分かる。だが、ダメだ。セルフィを危険に巻き込む訳にはいかない。そうか。俺がためらってしまえば、他の誰かが父と戦うんだよな。そして、それは俺の親しい人である可能性もある。

 だったら、俺も嫌なことを、誰かに押し付けることになる。そんなの、自分で自分が許せない。

 なら、俺がやるしかないじゃないか。仕方ない。俺の優先すべきことは、親しい人なのだから。セルフィでなくても、ミーアやリーナ、あるいはフィリスを巻き込む可能性はあるのだから。

「やめろ。これは、俺の問題なんだ」
「でも、大丈夫?」
「気にするな。どうせ、生き延びるためには必要なことだ」
「分かったよ。その目を見る限りは、決意は硬いみたいだから」
「そうだ。だから、余計な手出しをするな」
「ごめんね。私が余計なことを言っちゃったよね」

 俺がセルフィの言葉で父を殺すと決めたこと、気づかれたのだろうか。いや、どうせ俺がやるべきことだったんだ。

 つまり、セルフィのせいじゃない。悪いのは、ろくでもない計画を実行しようとしている父なのだから。

「お前が気にすることじゃない。どうせ、俺がやるべきことだった」
「なら、私は応援するよ。君が勝って、無事に帰ってくるように」
「好きにしろ。何をしようと、お前の勝手だ」
「もちろんだよ。ねえ、レックス君。私は、いつまでも君の味方だからね。それだけは、信じてほしいんだ」

 もちろん、信じるつもりだ。俺の誓いを、偽物にするつもりはない。最後まで、親しい相手を信じ抜く。それは、貫き通してみせる。

 だから、これからもよろしくな。父を殺しても、関係は変わらない。そう思いたいものだ。

 まずは、ミーアに伝えないとな。俺の覚悟を。同時に、カミラ達を助ける手段も探していこう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...