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7章 戦いの道
241話 矜持のありかた
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シアン家との戦いも、目の前に迫っている。フェリシアは、訓練に熱を入れている様子だ。本番前には、休んでもらいたいものだが。
魔力についてはともかく、肉体と脳に休憩は必要なものだからな。結果的には、休まないと魔法は十全に活用できないだろう。
フェリシアが勝たないことには、これから先に困るだろう。それに、フェリシア自身だって、強くなることを目標にしている様子だからな。その成果が出てほしいところだ。
この戦いを乗り越えれば、しばらくは平穏が訪れるだろう。その瞬間を楽しみに待っていよう。
そんな日々を過ごす中で、突然、フェリシアが俺の部屋にやってきた。ドアを開けると、にこやかな笑みを浮かべていた。おそらくは、俺に何かを求めている。驚きとか疲れとか。そんな気がした。
「レックスさん、どうやら面白い来客があったそうですわよ。一緒に来ませんこと?」
手をこちらに差し出して、そんな事を言う。来客ね。誰だろうか。面白いというあたり、俺も知っている相手なのだろうが。あまり、想像がつかないな。
ブラック家に待機している人達が来るのなら、面白いことはないだろう。何か、トラブルが起きているはずだ。
他の知り合いには、ヴァイオレット家にやってくる理由がないだろう。少なくとも、学生としての生活があるはずだ。フィリスやエリナだって、教師の役割を放棄するのは難しいのだろうし。そんな事ができるのなら、ブラック家に来てもらっていた。
かなりの候補が消えて、他には特に思いつかない。だが、フェリシアの反応からして、俺にも関係があるはずなんだ。
まあ、いま考える必要はないか。どうせ、すぐに答えは分かる。
「別に構わないが。誰かは教えてくれないのか?」
「せっかくですから、見てのお楽しみということで」
人差し指を、唇に当てている。これは、完全に言う気がないな。なら、素直に楽しみにしておこう。
「分かった。なら、期待しておくよ」
ということで、屋敷の玄関まで向かう。外に出ると、凛とした雰囲気の、長身の女が居た。青い髪を後ろにくくっており、鋭い目をしている。
その人は、こちらを向いて唇の端を上げると、軽く一礼してきた。
「お初にお目にかかる。私は、エトランゼ・アスク・シアン。フェリシア殿と戦うものだ」
エトランゼ。まさか、敵地に単身でやってきたのか? 護衛の存在らしきものは、見当たらないが。仮に事実だとすると、とんでもないクソ度胸だぞ。
俺ですら、敵と分かっている相手のところに、ひとりで行くのには抵抗がある。戦えば勝てるだろうが、他の手段だっていくらでもあるんだから。
それを考えると、恐ろしいどころの話ではないな。この環境なら、エトランゼを囲んで殺すことも容易だろうに。
「これはご丁寧に。わたくしは、フェリシア・ルヴィン・ヴァイオレットですわ」
「俺はレックス・ダリア・ブラックだ。それにしても、よく来たな。俺達に攻撃されるとは、考えなかったのか?」
「そこまで矜持を捨てた人間とは思わないよ。仮に殺されるのなら、私の見る目がなかっただけだ」
まっすぐな目で、フェリシアの方を見ている。今回の敵は、フェリシアを高く評価している様子だ。今までの相手は、軽んじるばかりだったのにな。それだけでも、格の違いを感じる。
なにせ、他の敵達よりも強いことは明らかなのに。それでも、油断しない姿勢が見えている。フェリシアは、厄介な相手と戦うことになったものだ。
「ある意味では、レックスさん好みの方かもしれませんわね。正々堂々を旨とする方ですもの」
「当然だ。私は強い。それを証明するためには、卑怯ではダメなのだからな」
胸を張って語っている。つまり、それこそが誇りなのだろうな。戦いの中で、自分の価値を証明してきたのだろう。共感はできないにしろ、確かな信念を感じる。そういう意味では、好きかもな。
だが、フェリシアの敵だからな。本気で好意を持つことはできない。両者のどちらを選ぶかで迷うことなど、あってはならないだろう。
これまでずっと支えてくれた相手と、ただ会ったばかりの相手。それを比べることなんて、できやしない。
それでも、お互いが納得できる結末なら、とは思う。これまでの敵とは、明らかに違うからな。こちらを見下そうとしてこないだけでも。
「なるほどな。武人としての矜持ということか」
「そのようなものだよ。私は、この天下に覇を唱えたい。私がどこまで通じるのか、試したいんだ」
どこかワクワクしているように見える。まあ、武に生きるものなら、夢見てもおかしくない内容ではあるな。正直、迷惑ではあるが。
ただ、手段を選んでいるあたり、相当好感度が高い。目的のために外道に落ちる人間なんて、どれだけでもいるからな。そうじゃないだけで、尊敬できる。まあ、敵なのだが。どうせなら、恨み合うより高め合う方が良いのは確かだ。エトランゼが望んでいるかどうかはともかく。
「とまあ、戦闘狂と言っても良い方でしてよ」
「ひどいじゃないか。まあ、事実ではあるが。私は、戦いの中に生き、戦いに死ぬんだよ」
済んだ目をしていて、とても怖い。セリフと表情が合っていないからな。これは、戦うしかないんだろうな。言葉で和解できる未来は見えない。悲しいことだが、仕方ない。
「それで、フェリシアとも戦うと?」
「ああ。一属性でありながら、三属性を打ち破る存在。興味深いじゃないか」
「そういうことか。なら、いずれはミーアやリーナも狙うつもりか?」
「もちろん。ただ、レックス殿だって、気になるじゃないか。どんなものか、見せてみろ」
「仕方のないやつだ。フェリシア、良いか?」
「ええ。存分に見せてくださって結構ですわ」
「なら、行くか。闇の刃!」
そのまま、闇の魔力を放ち、大爆発を引き起こす。一応、屋敷は傷つけないように、上に向けて収束させる形で。天高くまで舞い上がっていき、雲に穴が空いた。
エトランゼは、興奮した様子でこちらの両手を握って飛び跳ねている。
「素晴らしい、素晴らしいじゃないか、レックス殿! フェリシア殿が、強くなるわけだ!」
「ええ。彼の隣に立つのなら、四属性程度に負けていられませんもの」
「ふふっ、良い覇気だ。これは、楽しめそうだな。だが、メインディッシュはまだ先だよ。ねえ?」
こちらに流し目をしてくる。つまり、俺が狙われているということだろう。まあいい。その結果、フェリシアに対する集中が削がれてくれるのなら、こちらの利益になるのだから。
まあ、そんな油断をしてくれる相手なら、フェリシアが警戒したりはしないか。
「大した戦闘狂だことだ。人迷惑なやつだ」
「これでも、私を慕うものは多いのだがな。確かに、レックス殿には物足りないかな?」
問いかけてくるが、肩をすくめるだけだ。正直に言って、戦いたくないからな。エトランゼがどうこうというより、そもそも戦いが嫌いだから。
とはいえ、エトランゼには理解しがたい感情だろう。だから、何を言っても無駄だろう。
「俺はフィリスにも勝った。その事実を、どう捉えるかは好きにしろ」
「ああ、たぎるじゃないか! 貴殿と戦う瞬間が、楽しみだよ!」
「足をすくわれないように、気をつけておくことですわ」
「ああ、楽しみにしているよ。では、また会おう。堂々たる決戦で、雌雄を決しようじゃないか」
片手を上げて、エトランゼは去っていく。どうせなら、何も知らずに戦えたら楽だったのにな。死んでも、何も思わずに済んだだろうから。つい、ため息をついてしまった。
魔力についてはともかく、肉体と脳に休憩は必要なものだからな。結果的には、休まないと魔法は十全に活用できないだろう。
フェリシアが勝たないことには、これから先に困るだろう。それに、フェリシア自身だって、強くなることを目標にしている様子だからな。その成果が出てほしいところだ。
この戦いを乗り越えれば、しばらくは平穏が訪れるだろう。その瞬間を楽しみに待っていよう。
そんな日々を過ごす中で、突然、フェリシアが俺の部屋にやってきた。ドアを開けると、にこやかな笑みを浮かべていた。おそらくは、俺に何かを求めている。驚きとか疲れとか。そんな気がした。
「レックスさん、どうやら面白い来客があったそうですわよ。一緒に来ませんこと?」
手をこちらに差し出して、そんな事を言う。来客ね。誰だろうか。面白いというあたり、俺も知っている相手なのだろうが。あまり、想像がつかないな。
ブラック家に待機している人達が来るのなら、面白いことはないだろう。何か、トラブルが起きているはずだ。
他の知り合いには、ヴァイオレット家にやってくる理由がないだろう。少なくとも、学生としての生活があるはずだ。フィリスやエリナだって、教師の役割を放棄するのは難しいのだろうし。そんな事ができるのなら、ブラック家に来てもらっていた。
かなりの候補が消えて、他には特に思いつかない。だが、フェリシアの反応からして、俺にも関係があるはずなんだ。
まあ、いま考える必要はないか。どうせ、すぐに答えは分かる。
「別に構わないが。誰かは教えてくれないのか?」
「せっかくですから、見てのお楽しみということで」
人差し指を、唇に当てている。これは、完全に言う気がないな。なら、素直に楽しみにしておこう。
「分かった。なら、期待しておくよ」
ということで、屋敷の玄関まで向かう。外に出ると、凛とした雰囲気の、長身の女が居た。青い髪を後ろにくくっており、鋭い目をしている。
その人は、こちらを向いて唇の端を上げると、軽く一礼してきた。
「お初にお目にかかる。私は、エトランゼ・アスク・シアン。フェリシア殿と戦うものだ」
エトランゼ。まさか、敵地に単身でやってきたのか? 護衛の存在らしきものは、見当たらないが。仮に事実だとすると、とんでもないクソ度胸だぞ。
俺ですら、敵と分かっている相手のところに、ひとりで行くのには抵抗がある。戦えば勝てるだろうが、他の手段だっていくらでもあるんだから。
それを考えると、恐ろしいどころの話ではないな。この環境なら、エトランゼを囲んで殺すことも容易だろうに。
「これはご丁寧に。わたくしは、フェリシア・ルヴィン・ヴァイオレットですわ」
「俺はレックス・ダリア・ブラックだ。それにしても、よく来たな。俺達に攻撃されるとは、考えなかったのか?」
「そこまで矜持を捨てた人間とは思わないよ。仮に殺されるのなら、私の見る目がなかっただけだ」
まっすぐな目で、フェリシアの方を見ている。今回の敵は、フェリシアを高く評価している様子だ。今までの相手は、軽んじるばかりだったのにな。それだけでも、格の違いを感じる。
なにせ、他の敵達よりも強いことは明らかなのに。それでも、油断しない姿勢が見えている。フェリシアは、厄介な相手と戦うことになったものだ。
「ある意味では、レックスさん好みの方かもしれませんわね。正々堂々を旨とする方ですもの」
「当然だ。私は強い。それを証明するためには、卑怯ではダメなのだからな」
胸を張って語っている。つまり、それこそが誇りなのだろうな。戦いの中で、自分の価値を証明してきたのだろう。共感はできないにしろ、確かな信念を感じる。そういう意味では、好きかもな。
だが、フェリシアの敵だからな。本気で好意を持つことはできない。両者のどちらを選ぶかで迷うことなど、あってはならないだろう。
これまでずっと支えてくれた相手と、ただ会ったばかりの相手。それを比べることなんて、できやしない。
それでも、お互いが納得できる結末なら、とは思う。これまでの敵とは、明らかに違うからな。こちらを見下そうとしてこないだけでも。
「なるほどな。武人としての矜持ということか」
「そのようなものだよ。私は、この天下に覇を唱えたい。私がどこまで通じるのか、試したいんだ」
どこかワクワクしているように見える。まあ、武に生きるものなら、夢見てもおかしくない内容ではあるな。正直、迷惑ではあるが。
ただ、手段を選んでいるあたり、相当好感度が高い。目的のために外道に落ちる人間なんて、どれだけでもいるからな。そうじゃないだけで、尊敬できる。まあ、敵なのだが。どうせなら、恨み合うより高め合う方が良いのは確かだ。エトランゼが望んでいるかどうかはともかく。
「とまあ、戦闘狂と言っても良い方でしてよ」
「ひどいじゃないか。まあ、事実ではあるが。私は、戦いの中に生き、戦いに死ぬんだよ」
済んだ目をしていて、とても怖い。セリフと表情が合っていないからな。これは、戦うしかないんだろうな。言葉で和解できる未来は見えない。悲しいことだが、仕方ない。
「それで、フェリシアとも戦うと?」
「ああ。一属性でありながら、三属性を打ち破る存在。興味深いじゃないか」
「そういうことか。なら、いずれはミーアやリーナも狙うつもりか?」
「もちろん。ただ、レックス殿だって、気になるじゃないか。どんなものか、見せてみろ」
「仕方のないやつだ。フェリシア、良いか?」
「ええ。存分に見せてくださって結構ですわ」
「なら、行くか。闇の刃!」
そのまま、闇の魔力を放ち、大爆発を引き起こす。一応、屋敷は傷つけないように、上に向けて収束させる形で。天高くまで舞い上がっていき、雲に穴が空いた。
エトランゼは、興奮した様子でこちらの両手を握って飛び跳ねている。
「素晴らしい、素晴らしいじゃないか、レックス殿! フェリシア殿が、強くなるわけだ!」
「ええ。彼の隣に立つのなら、四属性程度に負けていられませんもの」
「ふふっ、良い覇気だ。これは、楽しめそうだな。だが、メインディッシュはまだ先だよ。ねえ?」
こちらに流し目をしてくる。つまり、俺が狙われているということだろう。まあいい。その結果、フェリシアに対する集中が削がれてくれるのなら、こちらの利益になるのだから。
まあ、そんな油断をしてくれる相手なら、フェリシアが警戒したりはしないか。
「大した戦闘狂だことだ。人迷惑なやつだ」
「これでも、私を慕うものは多いのだがな。確かに、レックス殿には物足りないかな?」
問いかけてくるが、肩をすくめるだけだ。正直に言って、戦いたくないからな。エトランゼがどうこうというより、そもそも戦いが嫌いだから。
とはいえ、エトランゼには理解しがたい感情だろう。だから、何を言っても無駄だろう。
「俺はフィリスにも勝った。その事実を、どう捉えるかは好きにしろ」
「ああ、たぎるじゃないか! 貴殿と戦う瞬間が、楽しみだよ!」
「足をすくわれないように、気をつけておくことですわ」
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追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
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