物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

文字の大きさ
307 / 622
9章 価値ある戦い

306話 本当と嘘

しおりを挟む

 ミーアが用意してくれた、親しい人とのお茶会。その準備を終えたとのことで、今はその会場に転移するところだ。

 久しぶりに会うので、少し緊張する。みんなは、前と変わっていたりするのだろうか。悪い方向でなければ、変化も楽しみたいところではあるが。ちょっとやそっと変わったくらいでは、友達でなくなったりはしないだろうからな。

 ということで会場にたどり着くと、そこには3人が待っていた。黒髪のミュスカは、穏やかな笑顔を向けてくる。緑髪をまとめたハンナは、真面目な顔で手を振ってくる。白い髪のルースは、どこか不敵な顔だ。

 それぞれの態度を見て、懐かしさが湧き上がってきた。ミュスカは表向き穏やかだが、腹黒い一面もある。ハンナは印象通りの真面目な人だ。ルースは強気なお嬢様といった風情だったな。今でも、昔の会話を思い出せそうだ。

「久しぶりだな、みんな。顔を見られて、嬉しいよ」
「呑気なことですわね。まあ、レックスさんらしくてよ。あたくしも、まあ悪くない状況よ」

 ルースは相変わらず挑発的だ。まあ、そういうところもらしいと思う。誰よりも真剣に努力していて、それが表にも出ているというのが正確なところだな。これからも、お互いに高め合っていけたら良いよな。

「わたくしめは、近衛騎士に任じられました。それは、良い報告と言えるでしょうね」

 ハンナはまっすぐにこちらを見ている。ただ、ほんの少し影があるような気がする。もしかしたら、気をつけた方が良いのかもしれないな。こちらはこちらで余裕がないから、様子を見ながらになるだろうが。

「私は元気だよ。レックス君、贈ったチョーカーをつけてくれているんだね。嬉しいな」

 ミュスカは、いつも通りの優しげな表情をしている。本当に再会を喜んでくれているんだと信じよう。いくら裏に感情を隠していたって、それで悪人になるわけじゃないんだから。言葉を素直に受け取るのが、大事なことだよな。

「ハンナ、目標を達成したんだな。ふたりも元気みたいで、良かったよ」
「ありがとうございます、レックス殿。貴殿に褒めていただくことだけは、嬉しいですね」

 だけはというと、他のことは嬉しくないかのような。何かあるのだろうか。今ここで、聞き出した方が良いだろうか。いや、せっかくのお茶会だ。あまり楽しくない話は、通話で聞くという手もある。

 いずれにせよ、ハンナが言いたいかどうかも大事なところだからな。なにか悩みがあるのなら、聞きたいところではあるが。解決する手段もあるかもしれないし。

 まあ、今すぐは難しいよな。きっと、弱みを見せるにしても、そういう雰囲気が必要な人だ。

「……? 喜んでもらえたのなら、何よりだ。俺は、まあ知っての通りだな」
「有象無象に好かれることを捨てるからですわよ。あなたは、親しい人を優先しすぎるのよ」
「そこが、レックス君の素敵なところでもあるんだけどね。私は、だからレックス君が好きなんだし」

 実際、親しい人以外からの評判は悪いからな。アストラ学園でも、割と避けられていたし。とはいえ、向こうから嫌ってくるのだから、どうしようもない。

 悪いことを一切していないなんて言うつもりはないが、それ以前の問題に思えるからな。努力どうこうで済む話なのだろうか。

 とはいえ、人に好かれることを意識するのは必要なことだろう。悪しざまに言えば、人気取りに走るような。

「まあ、貴族としては、評判は大事なんだろうな。ただの個人だった時の感覚は、なかなか抜けないな」
「レックスさんは、どうにも小市民らしさがありますもの。優雅ではなくってよ」
「優雅なレックス殿は、似合わなそうでありますね……」

 まあ、貴族貴族した俺はあまりイメージできない。小市民らしさというのは、まあ正解だよな。前世では、いわば平民だったわけで。貴族も何も無い国の生まれだとはいえ。

「俺だって想像できないな。それに、ルースは今の俺の友達で居てくれるだろ?」
「仕方ないから、そうしてあげましてよ。レックスさんは、あたくしが大好きですわよね」
「私のことも、大好きだと思うよ。ずっと好きで居てくれる人は、素敵だと思うな」

 そう言葉にされると、気恥ずかしいものがある。ルースはからかうような物言いだからまだしも、ミュスカは真剣に言っているように見えるからな。まあ、大好きなのは否定するつもりはないが。大切な友達だというのは、間違いないことだ。

 わざわざ好きという感情を否定しても、お互いに良いことは何も無いよな。とはいえ、素直に肯定するのもむずがゆくはあるが。

 まあ、普通に返答すればそれで十分だよな。その方向性でいこう。

「だからこそ、もっと気軽に会いたいものだが。ブラック家と周囲の関係の改善は、そういう意味でも大事だろうな」
「堂々とレックス殿の味方ができれば、わたくしめも嬉しいですね」
「あたくしも、コソコソとした友人関係は望むところではないわ」
「そうだね。大好きな人と会う幸せを、邪魔されたくないよね」

 本当に、3人の言う通りだよな。誰にはばかることなく仲良くできるのなら、それが一番に決まっている。まあ、アストラ学園ではそうできていたのだが。

 今となっては、お互いの家の存在が足を引っ張る部分はある。みんなにも、みんなの事情があるだろう。それを妨害しないように気を付けないといけない。どうにも、面倒なものだ。

 黒幕が誰なのか次第で、俺達の関係には大きな影響が出るだろうからな。できれば、何もない事を祈るばかりだ。

「まずは、誰が黒幕なのかを探り当てたいところだな。そうすれば、不安を抱えずに会えるはずだからな」
「あたくしも、できる範囲で力を貸しますわよ。あたくしが超える前に死なれては、張り合いがなくってよ」
「わたくしめも、ミーア様やリーナ様の手伝いをする所存でございます」
「私は、そのチョーカーがレックス君を守ってくれるように祈るよ。きっと、そこに込めた力が役に立つ瞬間もあるからね」

 みんな、俺を心配してくれている。大切に想ってくれている。それを返すためにも、まずは勝たないとな。その後で、もしみんなが困っているのなら、それを解決する手伝いをするだけだ。

 お互いに迷惑をかけながらも、大事なところでは助けあう。それが友達というものだろうからな。そんな決意を込めて、言葉にしていく。

「ありがとう。みんなの気持ちがあるだけでも、頑張る力が湧いてくるよ。今日会えて良かった」
「わたくしめも、貴殿に想われているという事実が力をくれますから。お互い様です」
「そうだね。大好きで居てくれる人の存在は、とっても大切だよ」
「ええ。あたくしも、否定しませんわ。だからこそ、負けるんじゃなくってよ」

 みんなは笑顔のはずなのに、どこか何かを隠しているように見えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...