物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

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10章 一歩のその先

332話 部下の使い方

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 カールというルースの弟は、とても態度が悪かった。ルースも嫌っている様子だったし、俺も好きになれそうにない。

 とりあえず、身内どうしで争う未来が避けられなさそうで、少し心配だ。なんだかんだで、嫌っていても血の繋がりや過ごした時間は消えないからな。どうしても、殺した時に罪悪感が浮かんできたりするだろう。

 きっと、ルースは痛みがあったとしても乗り越えるのだろう。だが、俺が代わってやれるのなら代わりたいくらいだ。必要な状況になったら、俺が殺した方が良いのかもしれない。

 単純に傷つくという以外にも、身内でも平気で殺すという評判がルースの邪魔をしないか心配なんだよな。もうすでに、ルースは父を殺しているのだし。そういう意味でも、あまりカールを殺させたくない。

 とはいえ、結局はルースの決めることなのだろう。俺が勝手な行動をすれば、ルースの足を引っ張りかねない。それだけは、ちゃんと心に刻んでおかないとな。

 そんなわけで、ルースと話をする機会は大事になってくる。今も、今後について話すところだ。俺とルースとスミアで集まって、会議みたいなことをする。

「さて、レックスさんにも、当面の目的を説明しておきましょうか。スミア、できるわね?」

 ルースはちらりとスミアを見る。察するに、スミアがどれだけ状況を理解しているのかの確認と、俺に情報を伝えることを同時におこなっているのだろう。

 やはり、ルースの優秀さを感じるところだ。ひとつひとつの行動に、しっかりと意図を感じる。俺は行き当たりばったりが多いからな。勉強したいところだ。

 スミアはすぐに頷いて、こちらの方を向いた。

「もちろんです! といっても、単純なんですけどね。内部の引き締めと、外部の警戒。そのふたつです!」
「ある意味では、基本中の基本だな。それで、具体的な話はあるのか?」
「はい、説明しますね! まずは内部の話ですが、カールさんを中心とした反発勢力に対処する予定です!」

 まあ、カールの態度ならな。ルースを排除しようと企んでいても、何も違和感はない。まず間違いなく、ろくでもないことを考えているだろう。

 そうなると、カールの計画に同調するやつもいるかもしれない。しっかりと対処すべきことだよな。どうにも、ルースは意図的に泳がせている様子だが。さて、どんな狙いがあるのだろうか。

「ふむ。なら、カールには注目しておく必要があるのか」
「といっても、あの愚か者が兆候を隠せるとは思えなくてよ。とはいえ、一応ね」

 まあ、思いつきを即座に行動に起こしそうな印象はある。それでも、油断は禁物だよな。妙な入れ知恵があれば、大変だ。ぶら下げられたニンジンに引っ張られそうだから、メチャクチャなことをしでかしかねない。

 以前人材採用を失敗した時に感じたことなのだが、本物のバカはリスク計算ができないから、訳の分からないタイミングで理解できない行動をする。それが結果的にこちらに被害を出さないとは言い切れないからな。

「そうですね! カールさんの監視は、私の任務でもあります!」

 ちゃんと対策しているのなら、何よりだ。スミアなら、うまくやれるんじゃないだろうか。カールの周囲の人間を利用する考えもあるだろうし、直接的な監視だけを手段としないだろう。

 俺は単純な考えをしがちだから、スミアみたいな人間の運用は本人にお任せか、あるいはジャンやミルラに頼ることになる。まあ、それはそれで悪くないのだが。結果的にうまく回るのが、正解なのだから。そして、ブラック家は順調に勢力を拡大できている。

 ルースも同じように、成果を出していってほしいものだ。友達が成功するのは、嬉しいことだからな。それに、協力できる相手が勢力を拡大するのは、俺にもメリットが有ることでもあるのだし。

「分かった。それで、外部の話はどうなんだ?」
「アイボリー家という貴族が、以前からホワイト家にちょっかいを出していたんです! 今は狙いどきだと判断するでしょうね!」
「急に当主が切り替わったのだから、隙が発生するのは必然。なら、敵が狙わないはずないわ」

 確かにな。俺だって、敵が弱っていそうなら、そこを狙う。なら、アイボリー家とやらに警戒するのは当然のことだ。どんな形の調略を仕掛けてくるか次第ではあるが、対策が必要なのは間違いない。

 下手したら、軍勢を差し向けてきたりするんじゃないだろうか。その時は、俺の出番だよな。

「そちらも妥当なところだな。武力が必要なら、任せてくれ」
「ええ。存分に使い倒してあげてよ。友人といえども利用するのが、貴族というものでしょう?」

 そう言いながら、ルースは不敵に笑う。やはり、堂々としている姿が似合う人だ。まっすぐに進む姿勢が強い人だからな。

 俺を利用するのは、まあ当然だよな。どう考えても、あまりにも強い駒なのだから。俺だって、ルースに頼ることはあるだろう。それが友達というものだ。できる限り、支え合っていきたいものだな。

「まあ、そうだな。だからといって、道具として使い潰したくないが」
「レックスさんを使い潰すなんて、愚か者のすることよ。友人でなかったとしても、大事に大事に使うべきなのよ」

 こちらの目を見ながら語っている。確かにな。俺の闇魔法ほどの便利なものを使い捨てにするのなら、もったいないにもほどがある。今みたいなところが、ルースの才能を感じるところだよな。

「今のルース様は、もっと大事にしちゃうんですよね! 素敵です!」
「くだらないことを言うようなら、もっと仕事を増やしてあげても良くってよ」
「それは困っちゃいますね! でも、くだらなくはないですよ! おふたりの関係は、とっても大事なんですから!」

 スミアはニコニコとしながらこちらを見ている。本当に、明るくて優しい子だと信じてしまいそうなくらいだ。実際には、平気で拷問を手段とする子なのだが。

 とはいえ、ルースにとっては必要な人材だろう。汚れ仕事ができる人の価値は、貴族になってよく分かったところだからな。真っ当な倫理観だけでは、どうにもならない状況もある。

「まあ、お互いに、立場も力も持っているからな。友人でなくとも大事なのは事実だ。もちろん、それだけではないが」
「レックス様がルース様と仲良くしたら、私も得しちゃいますからね! 応援しちゃいますよー!」
「まったく、うるさいこと。まあ良いわ。我慢して使うだけの価値を、示しているのだもの」

 ルースの性格的に、うるさい人が無能だったら普通に切り捨てそうだよな。つまり、逆説的にスミアの価値が分かることになる。実際に使ってみて、ちゃんと使えると判断したのだろう。

「随分と評価しているんだな。なら、俺も信用するか。ルースを頼んだぞ、スミア」
「もちろんです! おふたりの未来のために、頑張っちゃいますよー!」
「スミアには、色々と仕事をこなしてもらわないとね。期待を裏切ったら、分かっているわね?」

 そう言いながら、どこか柔らかさを感じる目でスミアを見ていた。きっと、信頼しているからこその軽口なんだろうな。それがスミアにも伝わっていることを祈るばかりだ。

「大丈夫です! 私、優秀ですから! ちゃんと、ルース様の敵に破滅を運びます!」
「それにしても、内にも外にも敵がいるのか。大変なことだよな。手伝えることなら、何でも言ってくれよ」
「ええ。そのために呼んだのだもの。終わったら、ゆっくりと食事でもしましょう?」

 微笑みながら言うルースに、ほんの少しだけ目を引きつけられた。

 そうだな。友人としての時間を過ごせるように、頑張っていきたいところだ。
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