物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

文字の大きさ
405 / 622
12章 未来のために

404話 大きな価値

しおりを挟む
 ひとまず最低限の成果は手に入れたので、これだけでもアカデミーにやってきた価値はあるだろう。とはいえ、できることならばもう少しマリンと仲良くしたい。そう考えていた。

 ということで、余裕がある限りはマリンと話をしていこうと思う。なるべく邪魔にならない範囲でではあるが。迷惑をかけてしまえば、嫌われるからな。あまり自分の気持ちを押し付けるのも、まあ問題だろう。

 ただ、今のところはマリンの方から積極的に話をしてくれている。またマリンのいた研究室に戻って、部屋で一緒にいるところだ。

 そんなマリンは倉庫の中を漁っていき、いくつかのものを取り出した。そして、こちらに話しかけてくる。

「無属性と闇属性の研究に関しては、これ以上の成果は時間がかかるのです」

 軽く頭を下げながら言っていた。申し訳ないと思う理由など無いだろうに。いくらなんでも、データを集めたその日に成果が出るなら、誰も苦労なんてしない。

 極端な話、研究というのは10年で成果がひとつ見込めれば優秀であるとすら思う。分野にもよるのだろうが、それくらい難しい印象がある。

 まあ、本人がどう思っているのか次第でもあるか。とはいえ、責めるのは論外だ。ひとまずは、俺の立場を表明しておくか。

「まあ、当然だな。一朝一夕で結果が出る方がおかしい。当たり前のことだ」
「レックス様が言うと、説得力がないんだよね……」
「至高に座する方なのですから、当然です!」

 ジュリアの意見はまあ分かる。闇魔法をあっという間に覚えたり、エリナの必殺技をすぐに習得したり、この体はとんでもないからな。とはいえ、普通じゃないのはよく分かっているつもりだ。説得力がないのも、分からざるを得ないのだが。

 シュテルは興奮したように叫んでいる。もはや、マリンも普通に流している。何がどうなって、ここまで極端になってしまったのやら。昔の冷静なシュテルが懐かしいな。まあ、今が嫌というわけでもないのだが。

「シュテルと私なら、言っていることは分かる」

 サラも真面目な話をしている。そんなに、俺が言うことに問題があったのだろうか。まあ、初めてバットを持った瞬間にホームランを打つような相手に語られているようなものか。なら、仕方ないな。これからは、気をつけた方が良いのかもしれない。

「私が研究しているものとして、魔力粒子があるのです。それを溜め込む装置も、持っているのです」
「そうじゃなきゃ、カラクリ装置なんかは動かないはずだからな」
「はいです。それをいくつか、レックス様に差し上げたいのです」

 そう言って、倉庫から取り出したものを指差していた。つまり、これが魔力バッテリーとでも呼ぶべきものなのだろう。使い道は、いろいろと思いつく。

 魔力を外部から用意できるのなら、自分の持たない属性の魔法を使える可能性もある。あるいは、魔力が少ない人が大量の魔力を運用することも。機械のようなものを用意しなくても、幅広いことができるはずだ。

「なるほどな。ありがたいことだ。今のところは、どの属性があるんだ?」
「基本の五属性なら、すべてなのです」
「なら、買い取らせてもらえるか? 額はミルラと相談してもらいたいが、そう安くはならないように言い含めておく」
「気持ちはありがたいのです。ですが、あまり値段がつかないもので……」

 眉を困らせながら、そう言っていた。評価されていないというのが、よく分かる話だ。とはいえ、金を受け取ってもらいたくはある。買った程度で足しになるとも思わないが、研究が進んでくれたらありがたいのだから。

 正直に言って、マリンを他に渡したくないと思う程度には評価している。魔力バッテリーをうまく使えば、俺だってもっと強くなれるだろう。気軽に他属性の魔力を組み合わせられるのなら、手札が大きく広がるからな。

 とはいえ、どこまで量産できるかも重要だ。今のところは、別の使い方をしたい。

「いや、少なくとも俺は金を払うだけの価値を感じている。もっと言えば、お前の研究を援助したいとも」
「そう、なのですね……。やはり、レックス様は……」

 軽く横を向いて、小さな声で話している。これは、うまく行っていると思って良いのだろうか。もし実は悪く思われていたりしたら、かなりの問題だ。

 マリンの価値は、本気で計り知れない。必要とする場所に持っていけば、歴史を変えるレベルの発明だとすら思う。だから、本音では手段を選ばずに手に入れたいとすら頭によぎるほどだ。俺が悪人なら、手に入らないのなら殺していただろう。それくらいの存在なんだ。

「今すぐ準備できるのは、いくつくらいだ?」
「それぞれ十個ほどなのです。後払いでいいので、いま渡すのです」

 そう言って、こちらに手渡してくる。ひとつひとつは、500ミリのペットボトルくらいの大きさ。まあ、持ち運べるラインではあるだろう。

 ひとまずは、最初に思いついた運用だな。ということで、火属性と書かれているものを選んで、いくつかをシュテルに渡した。

「ありがとう。それで、シュテル。これから魔力を引き出すことはできるか?」
「まさか、私のために……? 感謝いたします、レックス様!」

 そう言いながら、バッテリーから魔力を引き出していくシュテル。もともと魔力を持っていなかった都合上、シュテルの魔力は訓練では伸びない。だから、大きな希望になるはずだ。

 実際、シュテルはとても晴れやかな顔をしていた。俺は何度か頷いた。

「良かったね、シュテル。これで、魔力の問題は解決に近づいたんじゃない?」
「そうね。やっぱり、私はレックス様のために尽くすだけよ。そういうことです、レックス様」

 そう言って、シュテルは頭を下げる。喜んでくれたのなら、何よりだな。これで狂信者みたいな動きが増えなければ、完璧だ。

 まあ、シュテルはことさらに人を傷つけるような人じゃない。だから、少し困る程度ではあるのだが。気にしなければ済むんだよな。今は、それでいいか。

「道具をもらえなかった分は、なでなでと抱っこで払ってくれれば良い」
「ふふっ、本当に大切にされているのですね……。少し、羨ましいのです」

 へばりついてくるサラを見ながら、マリンは微笑んでいた。今後は、サラにも運用を考えてもらいたいところだ。とはいえ、かなりの訓練が必要だろうな。新しい属性を使えるようになるのは、難しいはずだ。

 周囲に天才ばかり居るから感覚が麻痺しているところはあるが、本来は成果というのは数日で出るものじゃない。あまり急かしたら、大変だろう。

 とはいえ、魔力バッテリーの運用については、もう少し考えておきたい。そうだ。せっかく買い取ったのだから、試せることがある。

「聞いておきたいのだが、これに俺の魔力を注ぎ込んでも良いか?」
「もちろんなのです。使い道なんて、買った人の自由なのです」

 俺の魔力を注ぎ込めば、転移もできる。強度もあげられる。その気になれば、容量だって向上させられるだろう。ひとまずは、前ふたつの機能だけで済ませておくが。シュテルが使う以上、実験的な使い道は避けておきたい。

「分かった。……よし、これで、強度も溜め込める魔力量も向上したはずだ。マリン、これを研究に使うことはできるか?」
「確かに、現物があれば研究がはかどるのです。こちらにも気を使ってもらったみたいですね」

 ということで、いくつかの魔力バッテリーをマリンに渡していく。これで研究が進めば、小型化や大容量化もできるかもしれない。

「気を使ったというか、それで研究が進むのなら、俺にも利益があるからな」
「ふふっ、こんなに期待されたのは、生まれて初めてかもしれないのです」

 そう言いながら、マリンは穏やかに微笑んだ。かなり好意的に見られているような気がするが、どこまで当たっているだろうか。

「なら、これからも頑張ってもらえるとありがたい。まあ、無理をされると困るのだが」
「そうですね。必ず、成果を出してみせるのです。レックス様のためにも」

 両手を握りながら、マリンは宣言する。できることならば、ブラック家で働いてもらいたい。とはいえ、研究設備なんかの問題もある。時間をかけるべきこととして、慎重に動いていこう。

 ただ、すでに俺は満足できるほどの成果を手にしている。それも確かだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...