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4章 フェイトオブデッドエンド

104話 変えられた未来4

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 また映像が切り替わった。今までの流れからすると、今度はルミリエだろう。
 そして、対峙するのはキュアン。正直嫌だな。あいつの顔はもう見たくない。
 とはいえ、シャーナさんが未来のために必要だと判断したから今の状況がある。
 だったら、ちゃんと見ておかないとな。俺の今後にとって大事なのだろうから。
 未来視の魔女の考えなんだから、根拠としては十分だ。

 さて、今回の映像でも大勢の人が死んでいる。
 そこらじゅう死体だらけで、足の踏み場もないほどだ。今見ているのはどこだ? 人が多いことは分かるが、行ったことがない場所だな。
 おそらくは、王国なのだろうが。そして、割と都会に見える。
 よく分からないが、ここでなにかルミリエから見た問題があったのだろう。

 確か、心奏具の能力を戦いに活かせと言われ続けて、それでだんだん歪んでいったはず。
 本当は戦いなんて嫌いだったのに、いつしか大量に殺すようになっていったんだ。
 それを考えれば、今ルミリエに協力してもらっていることにも、注意が必要かもしれないな。

「お主はルミリエを始めとした周囲の人にもっと頼れ。リオンに欠けているものは、他者と協力する意識じゃ」

 今でも相当みんなに頼っていると思うが。もっとと言われるのか。
 きっと、俺1人では乗り越えられない局面が訪れるのだろう。嫌だな。みんなが傷つく可能性がある戦いは。
 まあ、どうしようもないことか。ディヴァリアがいないとしても、この世界に騒乱の種はある。
 原作でルミリエ達が暴走したように。他の悪役だって存在するのだから。

 例えば、もう壊滅したが有翼連合。あいつらはテロリストとして行動する話だった。
 他にも、各ルートのラスボスだって居たはずだ。ディヴァリアは最強ではあるが、ラスボスではない。
 結局のところ、原作の火種を注視しないと本当に平和になるのかは分からない。
 まあ、今はシャーナさんが居るから頼りにできるのだが。

「シャーナさんにも頼っていいんですか?」

「ああ、もちろん。そのために、うちはリオンの師匠になった。いくらでも力を貸す」

「それは嬉しいです。シャーナさんが手伝ってくれるのなら、心強いです」

「所詮、大した戦闘技能は持っておらぬがな。うちの最大の力は、未来視じゃ」

「それだけでも十分ですよ。他にも、魔法の使い方まで教えてもらっているんですから」

「次の戦いでは、うちも力を貸す。できることは限られるが、それでも全力を尽くす」

 つまり、よほど厳しい戦いが待っているのだろう。備えておかないとな。
 おっと、映像の方も動き出したな。こちらにも集中しないと。

 キュアンとサクラが現場の惨状を見て眉をひそめている。
 まあ、当然か。数え切れないほどの死体が転がっているからな。そして、犯人はおそらく1人。
 それを考えれば、心境は容易に想像できるよな。酷い光景だと思わざるを得ないだろう。

「ここまでの人が犠牲になるなんて。ルミリエという人はよほど残酷なんですね」

「そうね。あたしも許すつもりはないわ。何の罪もない人を、こんなに殺すなんて」

 何の罪もないかどうかは知らないが、確かにとんでもない数を殺している。
 それなりの都会を死体で埋め尽くすほどだからな。それはそれはむごたらしいことだ。
 今回の件も誰かに命令されたのか、それともルミリエ自身の意志なのか。
 理由が何であれ、流石に事が大きすぎる。誰も許しはしないだろうな。

 ルミリエも今回の映像できっと死ぬんだよな。本当に見たくない。
 ましてや、関わるのがキュアンだからな。どうしてもエリスを思い出してしまう。
 だが、耐えないと。俺の負担も観測した上で、シャーナさんは見せる判断をしたのだから。

 サクラ達はルミリエを探している。それにしても、大丈夫なのか?
 ルミリエの心奏具、ハピネスオブフレンドシップは超遠距離からでも攻撃できるんだぞ。
 いや、ミナが居ないか。サッドネスオブロンリネスで敵を補足していたからこそ、メチャクチャな距離から攻撃できた。
 なら、サクラ達にも勝ち筋はあるか。俺でも、ミナの居ないルミリエには勝てる気がするからな。

「ルミリエはどこに居るのかしら? なんとしてもここで倒さないと。今以上の犠牲は許容できないわ」

「そうですね。僕も同じ気持ちです。そうだ! 僕の心奏具が使えます! 混交ざれ――デマンドオブフレンドシップ!」

 キュアンの右手に筆が現れ、そのまま虚空にモンスターが描かれる。
 そして、実体化したモンスターが複数、あたりに散らばっていく。
 なるほどな。孤児院を襲うことに使われた能力ではあるが、周囲の捜索にも使えるのか。
 そうなると、ルミリエは案外早く見つかるかもな。その分、ルミリエの死も近づくのだが。
 まあ、今見ているものは現実じゃない。ただの消え去った可能性だ。

 次にキュアンはルミリエを発見したのか、目を見開いた。そして、サクラの方を見る。

「見つかりました! ですが、ルミリエは音で敵を攻撃できるみたいです。見つからないように気をつけないと!」

「分かったわ。それで、どうやって移動するつもり?」

「僕が心奏具で敵の目を引き付けます。そこに、サクラさんが心奏具で攻撃してください」

 なるほど。悪くないアイデアかもな。ルミリエだって所詮は1人だ。複数の箇所に同時に集中することは難しいだろう。
 それなら、サクラも長距離から攻撃できる都合上、初手で倒してしまえば十分。

 サクラ達は慎重にルミリエのいる方へと近づいていく。
 そして、サクラの心奏具から上級魔法が放たれていった。
 だが、ルミリエは察知してかわしてしまう。さて、ここから2人はどうする?

「見つかってしまいました! 僕はモンスターを増やします! サクラさんは攻撃を試してみてください!」

「そうね。役割分担しましょうか。あんたはルミリエがこっちに集中できなくする。あたしは頑張って攻撃する。それでいいでしょ」

「もう! 私の邪魔をしないで! ギタギタにしちゃうからね!」

 ルミリエは音波を出しながらサクラ達に攻撃していく。
 それでも、見えない攻撃をなんとかサクラ達は回避して、だんだん近づく。
 流石に優秀だな。音の攻撃なんて避けるのは難しいだろうに。俺だったらできたかどうか。
 まあいい。今度ルミリエに練習に付き合ってもらってもいいし、対策はこれからでもできる。

「声は人を傷つけるための道具じゃない! 僕の絵がみんなに希望を伝えるためのものであるように!」

「そんなの知らない! 私は声で人を殺すだけ! あなたの考えを押し付けないで!」

「だったら、僕達が止めます! 人を傷つける人を、許しておけません!」

「そうね! キュアンのおかげで準備は整った! 当たりなさい!」

 十分に近づいていったサクラが、ルミリエに向けて巨大な炎を放っていく。
 そして、ルミリエは炎に飲み込まれていった。

「やったわ、キュアン! これで、犠牲になったストラクト家も報われるわね」

 ストラクト家って、ルミリエの家族じゃないか。なら、動機は復讐だったのか。
 やるせないな。さんざん殺しを押し付けられて、それで感情が爆発したらサクラ達に殺される運命にあったのか。
 サクラ達が事情を知らないのは良いのか悪いのか。救いは、今の光景は現実のものではないことだけ。
 結局のところ、俺の友達たちは原作で不幸な人間がとても多い。だから、俺がルミリエ達と出会ったことは間違いじゃないはず。

「リオン、今の映像を見てわかったじゃろ? お前が幸福にした人間は確かに居るのだと」

 シャーナさんは穏やかに語る。今ならば、彼女の言葉を素直に受け入れてもいい気分だった。
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