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4章 フェイトオブデッドエンド

122話 打ち破るべき敵

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 帝都にまで進むことを決めた俺達だが、意外なほどにあっさりと侵入できた。
 それでも、ここからは簡単ではないだろう。少なくとも王城で、絶対に敵に出会う。

 もちろん、王城の周りにだって警備はいるはずだ。流石に戦闘をこなさず侵入できるとは思えない。
 ここからが正念場だな。少なくとも、シャーナさんの言っていた3組には出会うはずだ。
 双翼の双子、近衛騎士団長、暗闇の短剣。どんなやつかは知らないが、警戒に値する敵のはず。
 他にも敵はいるのだろうから、慎重に進みたくもある。
 だが、他から援軍を呼ばれる危険性だってあるからな。持久戦は厳しい。

 なるべくまっすぐ皇帝の元へ向かって、そのまま倒してしまいたい。

「さて、どうやって侵入する?」

「うちが敵を引き付けてやる。そのスキに、お主たちは王城に入っていけば良い」

「大丈夫なんだよな?」

「ああ、もちろん。お主が心配するようなことはない。うちとて、そこらの雑兵とは比べ物にならん」

「これからの戦いで、なにか気をつけるべきことはあるか?」

「あまり大勢で敵に挑むな。リオンと誰か。その2人で戦うことを基本にしろ」

 俺は皇帝との戦いまで消耗できないはずなのに、シャーナさんはどういう意図で今の提案をしたのだろうか。
 まあ、理由なんてどうでもいい。未来視で重要だったのだろうからな。そこは信頼できる。
 だから、素直に言うことを聞いておこう。みんなで生きるために、きっと必要なのだろうから。

「ミナちゃんの調べてくれた感じだと、名のある敵は私達の数と同じくらいだね。だから、悪くないと思うよ」

「そうか。なら、シャーナさんの指示に従うか。相性の良さそうな相手は居るか?」

「ああ、なるほどね。その考え方なら、納得だよ。みんながそれぞれに活躍できると思う」

 つまり、それぞれに個性がある敵がいると。なら、納得だな。
 心奏具の相性を考えれば、近接戦闘が得意な相手にはソニアさんをぶつけるような考えがある。
 室内だから、遠距離から近接を封じるという戦いは難しいだろうからな。
 そうなると、ノエルの活躍の場はどこになるだろうな。まあ、俺とも組むわけだから、やりようはあるか。

「それなら、あたしとリオンの敵は誰になりそうかしら?」

「双翼の双子じゃないかな。心奏共鳴がやっかいなんだよね」

 それなら、ノエルやユリアの可能性もあるけどな。
 まあ、ミナが知らない訳はないから、別の理由で他の敵と戦うのだろう。

「わたしはどうですかっ?」

「ユリアちゃんは、灰の狼かな」

「どんな敵なんだ?」

「武術の達人って感じかな。武器は使わないんだけど、結構強いよ」

 なるほどな。ソニアさんには近衛騎士団長の相手をしてもらうはずだ。
 最強の手駒は強い敵にぶつけるのが鉄則だからな。俺達の中で一番強いのは、ソニアさんだから。
 そして、ユリアが双翼の双子を相手にしない理由は分かった。武術の達人なら、サクラは相性が悪いよな。

「ミナやシャーナさんがいてくれて助かるな。俺1人だったら、そこまで考えられなかった」

「リオンちゃんがそろえた力だよ。私達みんな、あなたに助けられた人だから」

「ああ。お主がいたから、今このメンバーになっているのじゃ。まぎれもなくお主の力。紡いできた絆のな」

 ありがたいことだ。俺に力を貸すことを当然だと考えてくれる人がいる。
 だからこそ、どんな手段を使ってもみんなで生き延びたい。
 人質を取れば解決するのなら、俺はそうする。民衆を巻き込めば良いのなら、同じ事だ。
 もはやどこまで堕ちようが関係ない。俺のやるべきことも、やりたいことも決まり切っているのだから。

「それで、ノエルの相手は?」

「七色の杖。魔法使いだね。でも、ノエルちゃんなら相性が良いと思うよ」

 名前の感じからして、多種多様な魔法を使えるのだろうな。
 だが、遠距離の攻撃ならノエルに分があるだろうというのは俺も感じる。
 建物の中だから遠ざかれないのだとしても、ミラクルオブエンカウンターの力は汎用性が高い。
 いくらでも自在に操作できるエネルギーの矢が、どれほど便利なことか。
 俺が近距離を受け持つのなら、十分に勝てるだけの材料はあるはずだ。

「小生は近衛騎士団長を受け持ちます。帝国と王国、どちらの近衛が強いのか、教えて差し上げましょう」

 俺も同じ事を考えていた。何ならソニアさん1人で勝てそうな気もするが、シャーナさんの言葉がある。
 しっかりとソニアさんの力になれるように、心の準備をしておこう。

「よろしく頼む。俺は皇帝とも戦うんだよな。何が何でも勝たないとな」

 それで結局、暗闇の短剣とは誰が戦うのだろうか。暗殺術を使える人間なんて、この場にはいないぞ。
 どうしたものかな。今ここで聞いて良いものなのだろうか。
 まあ、俺が聞いてはまずいなら、シャーナさんが警告してくれたはずだ。やるか。

「暗闇の短剣の対策は良いのか?」

「ああ、帝国で有名な暗殺者だね。確かに皇帝が雇っているらしいよ」

 なら、備えが必要だよな。どんな手が効果的なのかは分からないが。

「どうやって勝てば良いものかな」

「こっちで準備しておくね。秘策があるんだ」

 なら、安心だな。ミナが考えた策ならば、十分だろう。
 そして、方針は定まった。後は突き進むだけだ。

「シャーナさん、頼む」

「ああ、任せておけ」

 シャーナさんは空へと舞い上がっていく。
 そういえば、前は気にしていなかったが、どうやって空に飛んでいるんだ。
 俺はエンドオブティアーズを伸ばしてなんとか飛び上がるだけだったぞ。

「さあ、食らうが良い!」

 そのままシャーナさんは炎の雨を降らせていく。
 何も詠唱していない。魔法の名前すら口に出していない。
 にもかかわらず、シャーナさんの攻撃はまるで止まらない。
 おそらくは、無詠唱の魔法が使えるとか、そんなところではあるのだろう。
 だが、常識的な魔法使いからは考えられないほどの技だ。敵でなくて良かった。

 王城を警備している者たちは、シャーナさんの攻撃にまるで対処できていない。
 それでも、なんとかシャーナさんを倒そうと集まっている。
 心配ではあるが、未来視の上での判断だ。俺達は進むべき。

「みんな、行くぞ!」

「リオンちゃん、私が案内するね」

「では、参りましょう」

「さあ、みんな殺してあげますっ!」

「あたしも負けてられないわね」

「どんな敵が来ても、倒すだけだよ」

 みんな、頼りになることだ。
 そう思いながら、ルミリエの指示に合わせて王城を進んでいく。
 あるていど駆け抜けていくと、敵の気配があった。

「七色の杖だね。リオンちゃん、ノエルちゃん、準備して」

「分かった。いくぞ、ノエル」

「うん、リオンお兄ちゃん。頼りにしていてね」

 俺達の目の前に現れたのは、身の丈ほどの杖を持った老人。
 だが、油断はできない。ルミリエが名を挙げたほどの存在で、王城を守っている相手なんだ。
 ノエルの命もかかっている以上、どんな小さな違和感でも気づいてみせる。
 さあ、戦いの始まりだ。ここから続く連戦に、改めて気合を入れた。
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