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6章 聖女ディヴァリアと勇者リオン

173話 絆の牢獄

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 久しぶりにルミリエと一緒で、ディヴァリアも楽しんでいる様子。
 相変わらず俺の家で好き勝手にされているが、まあ構わない。
 部屋を荒らされたりはしないし、単に仲のいい相手が入ってくるだけだからな。
 なんだかんだで、俺の知り合いはみんな行儀が良い。
 人のものに手を付けるようなやつが、1人も居ないからな。

「ルミリエも、リオンと結婚するのはどうかな?」

 雑談の中で、ディヴァリアにいきなり爆弾を投げられた。
 俺の知らないところで話が進んでいるのは知っている。結婚の相手、順番、いろいろと決められている。
 さて、この場で話をしたのは、俺に対する意思表示か、あるいは本当にルミリエに提案しているのか。

 どちらにせよ、俺から嫌と言うことはないだろうな。
 ルミリエは嫌いじゃないし、重婚するということは決まっているからな。今更なんだよ。
 1人や2人増えたところで、状況は大して変わりはしない。
 ミナが相手になってしまえば、それは大きな影響があるだろうが。

 ディヴァリアから話をするくらいなのだから、当人は納得している。それでいい。
 俺としては、一番好きな相手は決まっているし、優先順位もハッキリしている。
 そこら辺の問題は解決している様子だから、俺から反対する理由はないんだよな。
 ルミリエが望むのなら、それで決まりだ。さて、どうなるか。

「ディヴァリアちゃんが許してくれるなら、私は嬉しいんだけどね。ミナちゃんが心配かな」

「そこだよね。3人に関しては、あまり順番を付けたくはないんだけど。難しくはあるね」

「うんうん。王様になっちゃう相手だからね。いろいろと、大変だよ」

 まあ、ミナとシルクとルミリエの3人はとても仲がいいからな。
 あまり、仲が悪くなりそうな提案はしてほしくない。
 俺との結婚が問題になって仲違いされたら、後悔どころじゃ済まないぞ。

「俺の許可は取らないんだな。別に構わないが」

「リオンちゃんなら、みんな受け入れてくれるって知ってるからね。キラキラした幸せを、一緒につかもうよ」

「私が賛成している時点で、決まったようなものだからね。リオンの心配事なんて、分かりきってるから」

 俺はよほど分かりやすいのだろうか。友達としては都合がいいだろうが、貴族の生まれとしては欠点だろう。
 やはり、向いていないんだよな。前世では単なる小市民だったのだし。
 それでも、生まれで決まっている義務がある。当然、努力を重ねていかなければならない。

 結婚だって、本来なら顔を知らないような相手とでもおかしくなかったんだよな。
 それを思えば、今の状況はとても幸福だと考えて問題ない。
 一回り歳の離れた相手と婚約だって、当然あり得たのだし。

「ディヴァリアが満足しているのであれば、それでいいからな」

「少しだけ、ディヴァリアちゃんが羨ましいよ。もっと早く出会えていたらなって」

「リオンって、過ごした時間がそのまま好意になりそうな人だからね。逆の立場なら、きっと似たようなことを考えていたと思うよ」

 ちょろいと言われているのか、簡単には好きにならないと思われているのか。
 雰囲気的には前者を感じる。まあ、否定できるわけがない。
 出会ってほんの少ししか経っていないユリア相手に命をかける。それがちょろさだと言われて、反論なんてできないからな。

「まあ、現実は変えられないからね。リオンちゃんの側室として、いずれバリバリ頑張りたいけど」

「やっぱり、結婚はしたいんだね。当たり前だよね。そうなると、ミナの方に根回しが必要だね」

「うん。ミナちゃんより先に結婚するのは、できればやめたいな」

「だったら、シルクの予定も合わせないとね。そっちは、だいぶ簡単なんだけど」

「お前たちは本当に仲が良いな。お互いを出会わせて、間違いなく正解だったと言えるよ」

「そうだね。ミナちゃんやシルクちゃんは、私の大切な親友だから」

 ミナもシルクもルミリエも、原作では関わりを持っていた様子はない。
 それを引き合わせたことで、今みんなが幸せになっている。素晴らしいことだ。
 原作と同じようにミナ達が死んでいたなんて、絶対に考えたくないからな。
 俺という異物が生まれたことにも、確かに意味があったのだと思える1つだ。

「私も、ミナ達の友達なんだからね。忘れないでね」

「リオンちゃんもディヴァリアちゃんも、大好きだよ。それは当たり前だよ」

「俺だって、ミナ達が大好きだぞ」

「そうだね。私も同じ。私達を繋いでくれたリオンには、感謝しないとね」

「うんうん。私達みんな、リオンちゃんにはたくさんの幸せをもらったから。その分は返すって約束するよ」

「お前達が幸せでいるだけで、俺は十分に幸福なんだけどな」

 実際、本音ではある。
 俺の幸福の形は、大切な相手が幸せそうにしてくれること。間違いない。
 だからこそ、今はとても素晴らしい状況だと言える。
 俺の手でみんなを幸せにできるなんて、最高という他ないよな。

「分かっているよ。まずは、ディヴァリアちゃんとの結婚式を最高のものにして。それから先もね」

「ありがとう、ルミリエ。私達だって、幸せをおすそ分けしたいから」

「こちらこそ、ありがとう。私が諦めていた幸せをくれたのは、ディヴァリアちゃんだから」

「だから、リオンと結婚することを提案したんだからね。ルミリエ達だって大好きだから」

 言葉から察するに、ルミリエはディヴァリアのために身を引こうとしていたんだな。
 気持ちは嬉しいし、俺も同じことを考えていた。
 結局は、ディヴァリアが重婚を進めてきたわけだが。
 間違いなく、人の心というか、情の発露だよな。原作のディヴァリアではあり得なかったことだ。
 実際は、あの乙女ゲームにはディヴァリアの想い人はいなかった。
 だが、恋敵なんて絶対に排除するイメージしか無かったからな。

「なら、ディヴァリアちゃんの想いに応えて、みんなで幸せになろうね」

「そうだね。私達みんなでなら、きっと誰よりも幸福になれると思う」

「俺達の絆は、きっと簡単には壊れないだろうからな」

「きっと、何があっても壊れない。ずっと、ドキドキし続けられるよ」

「そうだよね。私達だから、ここまで来られたんだから」

 俺の出会いの全てが今に繋がっている。
 ディヴァリアも、ルミリエ達も、他の誰もが。
 助けて、助けられて、お互いが未来を紡ぐための力になっているんだ。
 殺すことになったマリオ達との出会いだって、絶望の未来を防ぐためには必要だったと言える。

 ミナが、シルクが、ルミリエが、大きく変化するきっかけになったからな。
 あの事件がなければ、ルミリエ達との距離は今より遠かったはず。
 結果として、皇帝レックスを打ち破るところまで行けなかったと思う。
 シャーナさんの導きもあったとはいえ、とてつもない幸運だよな。

「だからこそ、今の絆は絶対に手放さないよ。私の全ては、つながりの中にあるからね。キラキラした私で居られるのは、みんながいるから」

「私も似たような気持ちかな。大切な人の存在は、大きな力をくれる。間違いないことだよ」

 同感だな。俺1人だったなら、何1つとしてつかめはしなかった。
 だからこそ、これから先の未来でも、ずっと大切にしていきたい関係なんだ。

「ああ。俺だって同じだよ。みんなが居たから、いま生きていられるんだから」

「リオンちゃん。あなたになら、私の歌を全部預けられる。人を殺すことになったって、後悔はしないよ。だから、どんな未来でも離れないでね」

「ルミリエを歌姫にした責任は、ちゃんと取ってもらわないとね。逃げようとしても、無駄だからね」

「うんうん。絶対に逃さないから。逃げようとしたら、みんなで捕まえちゃうんだからね。そして、絶対に離さない」

「そうだね。私達と出会ったことを後悔しても、遅すぎるんだよ。覚悟はできてる?」
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