転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第一章 覆面ズが出来るまで

#10 精霊は見守っている

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「で、名乗った本人を前に叫んだんですか。お嬢様は」
 メアリが冷ややかな目でフェーリエを見ている。場所はクラヴィス伯爵家、フェーリエの部屋だ。
「だってぇ、師匠と同じ名前でびっくりしたんだものぉ」
 ソファーの上でクッションを抱きかかえて座るフェーリエは言い訳を口にする。
「確かに、あのヒトと同じ名前だとびっくりするよね」
「お兄様、なんで私の部屋にいるんですか?」
 クロリネはフェーリエの向かいのソファーで本を読んでいる。入室を許可した覚えはない。
「そりゃあ、妹の初冒険エピソードは聞かないとね」
「そう言うことではなくて、私、許可してないんですけど?」
「妹の部屋に入るのに許可が必要かな?」
「必要です!!」
 クロリネはフェーリエの言葉を軽く流し、笑っている。
「……アウラ様、その仮面剣士は信用できるのですか?」
 兄の座るソファーに移動し可愛らしい言い合いをするフェーリエ達を見ながら、メアリが尋ねる。
「……悪意は感じませんでした。ヒトを信用していない様でしたが、フェーリエ様に危害は加えないかと」
 メアリの傍を漂いながらアウラは答える。
「……そうですか」
「ふふっ。メアリさんはフェーリエ様が大切なんですね」
「何のことですか?」
 メアリは何でも無いように振る舞う。しかし、フェーリエを大事に思っていることはダダ漏れである。
「……お嬢様、次のご予定は?」
「え?ああ。明日九時にギルドに集合して、ウルフ狩り……」
「仮面剣士……ユース君だったかな?初めからウルフ狩りなんてとばすねぇ」
「剣士さんと話し合った結果、ウルフ狩りが一番効率が良いって事になったんです。ていうか、お兄様どいてください。ここは私のソファーです」
 仮面剣士ことユースと名乗った彼は、初心者が受けられるクエストで一番上のウルフ狩りを選択した。
 ちなみに冒険者全てがボアを倒すクエストを受ける訳ではない。受ければポイントが高いというだけだ。Fランクモンスターとは言え、危険が伴う。それ故、安全な町での雑用を選ぶ人も多い。
 Fランクは登録したてを指し、最初のクエストをクリアした時点でEランクになる。Eランクにも振り幅はあるのだ。
「剣士さんって、名前覚えないの?」
「良いんです。その方が呼びやすいので!」
 フェーリエはソファーに座るクロリネを落とそうと押し続けている。魔法を使っていない事からも、只の照れ隠しだ。
(良かったですね……皐月様)
 懐かしい呼び名で、契約者を呼ぶ。彼女の前世では、兄妹に良い思い出がなかったらしい。こうして軽口を言い合うことも、しなかったそうだ。
(ただ皐月様、お兄さんをソファーから落とすのはいかがなものかと……)
 ソファーから落ちた兄を見て、楽しそうに笑うフェーリエを見てアウラは思う。
(まぁ、楽しそうなので良いとしましょうか)
 契約者が幸せそうな光景を、アウラは優しい目で見つめた。
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