転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
30 / 185
第二章 ギルド要請冒険者

#28 溶ける獲物

しおりを挟む
 斧をしまった師匠は、スライムに向けて『ウィンドカッター』を放つ。初歩的な魔法だが、その威力はすさまじい。実際に防御魔法で防いだ事のあるフェーリエは、それをよく知っている。
「ちっ……風も駄目か」
 風は弾かれ、スライムはまだこちらに向かってきている。
「では!水を!」
 フェーリエはスライムを水球に閉じ込めた。効かなくとも、足止めぐらいにはなるだろう。
 続けて、水球に雷を落とす。
(感電ぐらいは……しない、か)
 スライムに変化はない。
「どうやら、魔法は効かないようだねぇ」
「でも、物理も全部効くわけじゃないみたいですけど……」
 師匠に困ったと視線を送ったフェーリエは、師匠が持っているモノを見て目を見開いた。
「師匠……斧だけじゃなくて、槍も持ってたんですか?」
 無駄な装飾がなく、無骨なだけの槍を握るアンジェリカは、とても魔法使いには見えない。
「ん、これにはユースと同じ防腐剤が塗ってある。条件的には、一緒だろうな」
 そう言ってスライムに向けて踏み込んだ師匠は、素早くスライムを細切れにする。
 いとも簡単にすぱすぱと切られるスライムを見て、フェーリエは思う。
(魔法の出番が……ない)
 斬られたスライムは、地面に落ち、溶けて消えた。
「ある程度の大きさになったら、制御を失うみたいだな」
 槍を一回払い、その後に袋にしまった師匠が言った。
「やはり、防腐剤が鍵だったんですね」
 ユースが二人に近づいてきて話に加わる。
「普通、スライムは弾力があるから物理攻撃が効きにくい。今回のキングスライムは魔法耐性が上がった代わりに、物理耐性自体は下がってるようだねぇ」
「見たところ、スライムの体液が腐食液で、強力すぎて斬ったそばから溶かされてるみたいですね」
 スライムの表皮を斬った下は腐食液。そこに斬撃が通ると、獲物が溶け、再生したスライムの弾力に弾かれる。結果だけを見ると、攻撃が通らない様に見えるのだ。
「溶かされない分、斬撃が通った……そう言うことか」
「さっきの奴は核がなかった。キングの核を仕留めるのは大変だろうねぇ」
 スライムには核が存在する。それを破壊すると、液体だけになって溶けて消える。
「防腐剤はもう無いし、ここは少年の出番だねぇ」
「では、今回の主役は剣士さんと言うことで。私たちはサポートに回ります!」
 二人には分からないであろう敬礼をする。その動作はスルーされ、話は続いた。
「魔法は効かないが、足止めは出来る。後ろは任せときなよ、剣士さん?」
 師匠がにやにやしている。不味い。剣士さんが師匠の餌食になってしまう。
「け、剣士さん。剣士さん」
 剣士に近づき、その袖を引っ張る。
「?どうしたんだ」
「師匠につけ込まれると大変ですよ。隙を見せたら……」
 自分の過去を思い出し、背筋が震える。よく耐えたな、自分。
「と、とにかく。苦しい目に会いたくなければ、修行つけて欲しいとか絶対に言っちゃ駄目ですよ」
「わ、わかった」
 戸惑いながら頷いた剣士に満足したフェーリエは、背後の師匠が拳を振るう準備している事を知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...