転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#31 スライムキング(メタル)

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 結論から言って、攻撃は全く効かなかった。
「ちょっ……なんで効かないんですかぁ!」
「つべこべ言わない!まだ試してない魔法があるだろうが」
 火も水も、風も地も、効かなかった。後は……
 思い浮かんだのは重力魔法。これは前世のゲームの魔法を参考にしている。魔法障壁であらゆる魔法を無効化しているが、それはスライムがそれぞれの属性に対して、防ぐイメージを抱けるからだ。
(どこでイメージを考えてるのかは知らないけどっ!重力なんて、この世界のヒトは考えてないし、効くはず!)
 どんな魔法にも、イメージが必要だ。防御を貫くには、イメージ出来ない魔法にすれば良い。
 重力魔法『グラビティ』
 スライムが目に見えない圧で押さえつけられる。見た目的に外傷はないが、核に負担は掛かっているはずだ。
 スライムは苦しそうに身をよじり、触手をこちらに伸ばしてくる。押さえつけているにも関わらず、力強く蠢くそれは『グラビティ』の範囲から外れてフェーリエに襲いかかる。
「おおぉぉぉ!掌打!」
 横からユースが現れ、触手をはじき飛ばした。拳で、だ。
「け、剣士さん?」
 戸惑いの声を出すフェーリエに、剣士が答える。
「体術の一環だ。今の状態は、剣よりも打撃の方が聞きやすいらしい」
 真面目に答えるユースには悪いのだが、フェーリエは別のことで戸惑ったのだ。
(……言えない。剣士さんが雄叫びとか上げるの珍しかったから戸惑ったなんて……言えない)
 何はともあれ、打撃が効くようになったのなら、ここからは師匠の出番だろう。
 『グラビティ』を維持しながら、フェーリエは考える。ついでに『グラビティ』に『ヒトには無害』をエンチャントし、師匠が飛び出すのを待つ。
 フェーリエの読み通り、アンジェリカが槍を持ったまま高く跳躍する。
 肉体強化魔法『脚力強化』を使っているだろう。でなければあれほど高く飛べない。
 スライムの頭?に向かって、鋭く足を振り落とす。踵落としだ。
 スライムは『グラビティ』の影響以上にへこみ、さらに追い打ちを掛けられる。
「クラッシュ!!」
 取り出したハンマーで、宙に浮かんだまま振り下ろす。スライムはかわいそうなぐらいへこんでしまった。いつの間に槍と取り替えたのだろう。
「っ……剥がれ始めた!」
 多大なダメージを負ったスライムからは、メタルが剥がれ始めた。
「ユース!攻撃の準備をしとけ。お前はそのまま魔法を維持しとけ」
「はい!」
 名指しされたユースは頷き、お前呼ばわりされたフェーリエは元気よく返事をした。
 メタルが剥がれれば、斬撃の方が効き目はある。フェーリエは大人しく魔法を維持した。


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