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第二章 ギルド要請冒険者
#33 キングスライム④
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(こんなの責任重大過ぎるよぉ)
師匠の作戦は、彼女自身が囮となり、その隙にユースが彼女の槍で核に向けて二回攻撃。そしてスライムが抵抗できない三回目にフェーリエが核に向かって全力突進(魔法使用)。
スライムをここで倒せなくては、何が起きるか分からない。ユースが動く直前までは『グラビティ』を使うが、それを解除すれば、スライムは暴れるだろう。押さえつけている今ですら、触手を伸ばしてきていると言うのに。
「それじゃ、作戦を始めるぞ」
師匠の言葉に、フェーリエは身構える。剣など握ったことがない。憧れはあったが、父も兄も、母ですらそれだけは許してくれなかったのだ。
深呼吸をしたフェーリエは腹をくくり、自身に強化魔法を使用する。
『腕力強化』『脚力強化』『握力強化』
これほど複数の魔法を維持するのはアンジェリカの修行以来久しぶりだ。
アンジェリカが相手取る触手の合間に、剣士が走る姿が見える。
フェーリエは静かに『グラビティ』を解く。スライムはより一層触手を増やし伸ばしてくる。
力強く地面を蹴って触手を避け、剣士が切り込む位置と真逆の場所まで走る。ものの数秒で目的の場所にたどり着く。脚力強化のたまものだ。
(さっき核は攻撃された方と反対側に移動した……そして、2回目の攻撃の時、身体を厚くする為に反対側は薄くなってた。となれば……)
ユースの位置と反対側が、一番核へ近くなる。近ければ、その分攻撃が通りやすくなる……はずだ。
ユースが核を攻撃する。
(上!?)
核は上部に移動してしまった。一瞬戸惑ったが、フェーリエは跳躍する。今の位置では遠い。
ユースが再び攻撃をたたき込む。あのスピードは強化魔法を使っているのだろう。早く終わらせなくては……魔力が尽きてしまう前に。
空気を圧縮。壁を作る。そして、それを鋭く蹴る。
(剣を前に!身体全体で貫くイメージ!)
風魔法『ジェットストーム』
風をまとったフェーリエは、剣と一体となって核を貫く。
バチバチと核と剣の間で火花が散る。酔いそうになる膨大な魔力が発生する。
(あと……少しなのにっ)
魔力がまだ足りないのだろうか。核に危機を感じたスライムが、触手を戻して核のまわりを増やしているのも原因だ。
「っ!?また硬化!?」
核の周辺から、再びメタルが現れる。剣が押し返され始めた。
「急げ!お前の全力はこんなものじゃないだろう!」
「っ!?」
アンジェリカが鋭い声を上げる。未だに多くの触手を相手していると言うのに。
「ルナ!あと少しだ!頑張ってくれ!」
(名前……頑張ります、ユースさん!)
初めて名前を呼んだユースに、心の中で返す。後でしっかりと言葉にして言おう。
「いっっけぇぇぇぇ!!」
身体に巡る魔力を爆発させる。急速に加速したフェーリエが握る剣は、キングスライムの硬化を貫き、そして。
パキッ、という音を立て、光が爆ぜた。
師匠の作戦は、彼女自身が囮となり、その隙にユースが彼女の槍で核に向けて二回攻撃。そしてスライムが抵抗できない三回目にフェーリエが核に向かって全力突進(魔法使用)。
スライムをここで倒せなくては、何が起きるか分からない。ユースが動く直前までは『グラビティ』を使うが、それを解除すれば、スライムは暴れるだろう。押さえつけている今ですら、触手を伸ばしてきていると言うのに。
「それじゃ、作戦を始めるぞ」
師匠の言葉に、フェーリエは身構える。剣など握ったことがない。憧れはあったが、父も兄も、母ですらそれだけは許してくれなかったのだ。
深呼吸をしたフェーリエは腹をくくり、自身に強化魔法を使用する。
『腕力強化』『脚力強化』『握力強化』
これほど複数の魔法を維持するのはアンジェリカの修行以来久しぶりだ。
アンジェリカが相手取る触手の合間に、剣士が走る姿が見える。
フェーリエは静かに『グラビティ』を解く。スライムはより一層触手を増やし伸ばしてくる。
力強く地面を蹴って触手を避け、剣士が切り込む位置と真逆の場所まで走る。ものの数秒で目的の場所にたどり着く。脚力強化のたまものだ。
(さっき核は攻撃された方と反対側に移動した……そして、2回目の攻撃の時、身体を厚くする為に反対側は薄くなってた。となれば……)
ユースの位置と反対側が、一番核へ近くなる。近ければ、その分攻撃が通りやすくなる……はずだ。
ユースが核を攻撃する。
(上!?)
核は上部に移動してしまった。一瞬戸惑ったが、フェーリエは跳躍する。今の位置では遠い。
ユースが再び攻撃をたたき込む。あのスピードは強化魔法を使っているのだろう。早く終わらせなくては……魔力が尽きてしまう前に。
空気を圧縮。壁を作る。そして、それを鋭く蹴る。
(剣を前に!身体全体で貫くイメージ!)
風魔法『ジェットストーム』
風をまとったフェーリエは、剣と一体となって核を貫く。
バチバチと核と剣の間で火花が散る。酔いそうになる膨大な魔力が発生する。
(あと……少しなのにっ)
魔力がまだ足りないのだろうか。核に危機を感じたスライムが、触手を戻して核のまわりを増やしているのも原因だ。
「っ!?また硬化!?」
核の周辺から、再びメタルが現れる。剣が押し返され始めた。
「急げ!お前の全力はこんなものじゃないだろう!」
「っ!?」
アンジェリカが鋭い声を上げる。未だに多くの触手を相手していると言うのに。
「ルナ!あと少しだ!頑張ってくれ!」
(名前……頑張ります、ユースさん!)
初めて名前を呼んだユースに、心の中で返す。後でしっかりと言葉にして言おう。
「いっっけぇぇぇぇ!!」
身体に巡る魔力を爆発させる。急速に加速したフェーリエが握る剣は、キングスライムの硬化を貫き、そして。
パキッ、という音を立て、光が爆ぜた。
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