転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#51 修行時代

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「ノヴァさん、強かったですねぇ」
 ユースとルナは、揺れる馬車の中、向かい合って座っている。ルナが小窓から離れるドルミートの眺めながら言った言葉に反応したのはウルティムだった。
『そりゃ、僕の義理の娘の子孫だからね』
「義理の娘!?そっか、リッチだもんね」
『リッチだった、だよ。ご主人様~』
「その呼び方やめてよ」
『ええー良いじゃない。君は契約主で、僕は下僕なんだから』
 狭い車内で、半透明のリッチだったモノが浮かんでいる。何でも、契約によって、邪気ではなくルナの魔力で器を満たしている状況らしい。それによって、リッチの概念からは外れたのだとか。
「ところで、あの魔法はなんなんだ?」
「へ?ああ……重力魔法の応用ですよ。修行時代に編み出しました」
 修行?と思ったユースの心が分かったのだろうか。ルナは修業時代を語ってくれた。
「修行、と言っても、弟子になるための試験みたいなやつだったんですけどね。六歳児を、結界張った森の中に閉じ込めて、一ヶ月サバイバル生活させるって内容で」
 何でも無いように言ったルナに、慌ててユースは尋ねる。
「そ、れは大丈夫なのか?」
「大丈夫だから今目の前に居るんですよ。……ご丁寧に魔力封じの魔道具使われて、まぁ、私の魔力あの時から桁違いだったんで、多少魔法は使えたんですけど」
 魔力封じの魔道具は、大抵の魔法使いを無力化出来る優れものだ。にもかかわらず、差し引きしてもまだ魔法が使える魔力とは……。
「限られた魔力で悩んだ末にナイフを作ろうと思いまして、とりあえず岩を圧縮して、硬くして、水で削って形を整えて、って言うのを時間をかけてしました」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。何故岩を圧縮しようと思ったんだ?そして何で水で削ったんだ?」
「岩……石が弱すぎてぼろぼろに崩れたので、壊れないようなって考えたら岩を圧縮してました。あと、水は岩を削れるんですよ」
 あっけらかんというルナの言葉に、自分の常識が崩された気分だった。
「いやぁーあの頃は大変だったなぁ。アウラが居たからまだなんとかなったけど」
 ルナは手のひらにのる精霊を撫で、優しく微笑む。自分の見間違いだろうか。最初の頃よりも表情が見えるようになっている気がする。全体的に顔立ちは見えないが、表情を理解出来るのだ。魔道具であるマントの欠陥だろうか?
 悩んでいたユースに、ルナはぽつりと言葉を呟く。
「いつまでこういう依頼が続くんでしょうね」
 視線を向ければ、ルナはこちらを気遣うような表情をしている。
「いい加減、ランクを上げてくれてもいいと思いますよ。後、一年もないんですから」
 最初は半ば強引だった自覚はある。そんな中でも、こちらの目標を理解してくれている。それはとてもありがたい事だった。
「上も色々とあるんだろう。キングが出現したことは公に発表されていない。待つしか無いさ」
「なんでそんなに物わかりが良いんですか?私はもっと自由に旅がしたいですよ」
 はぁ、と溜息をつくルナ。彼女の思い描く冒険とは程遠い今の状況を、ユースは歯がゆく思った。最近の依頼はほとんどルナの手柄だ。彼女がいなければ、自分などSランクを目指せなかっただろう。
 もっと強くなりたい。ユースは密かに思った。
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