転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#52 海辺の村

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「今回の場所は……ちょっとルナには厳しいかも」
 いつものようにギルドでアンジェリカを尋ねると、彼女は厳しい顔をしてそう言った。
「どういうこと?」
 フェーリエの問いには応えず、アンジェリカはクエスト内容が記された紙を差し出す。
「リガート村?へぇ海岸にある村かぁ……」
 その村がいったい?と言うフェーリエの視線を受けたアンジェリカは、重い口を開いた。
「……魔法嫌いで有名なの、その村。まだ、魔法は魔神の手の者だって風習が根付いてて」
「あぁ……そう言うことか」
 随分と前にユースとそう言う話をした気がする。
「つまり、魔道具も何もない……と」
「そう、この依頼も、わざわざ馬で届けられたの」
 かなりの田舎に行くことになりそうだ。と言ってもそれが仕事なのだから仕方が無い。
「一応剣持ってるし、誤魔化せるかな?」
「剣が使えるのか?」
 黙って会話を聞いていたユースが、口を開く。ユースはそう尋ねてから、そう言えばあんな師匠だったな、と小さく呟いた事を、フェーリエは聞き逃さなかった。そう言うことです、と頷き、修行に耐えた自分を褒めてやりたい。
「ルナの師匠って、私と同じ名前なんでしょう?どういう人なの?」
 アンジェリカの無邪気な質問に、フェーリエは修業時代を思い出しながら答える。
「そうだなぁ。まず六歳児をサバイバル生活させるし、魔法使いは身体も鍛えないといけないって体術仕込まれるし、その延長線で剣とか斧とか槍とかハンマーとか弓とかやらされるし、魔法は全然教えてくれないし……こういうヒトよ」
 アンジェリカは、あははと乾いた声を漏らした。想像以上のヒトだったのだろう。
「時間掛かりますけど、馬車に乗りますか」
「途中までは魔法で飛ばないのか?」
 前回はフェーリエがそれどころではなかったため、初めから馬車だった。帰りはましになっていたが、それでも馬車だった。今回も馬車で楽をしようと思っていたフェーリエは、節約と、魔法の訓練としてリガート村の近くの町まではあの魔法を使うか、と思い直した。
「と言うか、大丈夫ですか?あの魔法で」
「もう慣れた。時間が掛からないのは良いことだ」
 もう慣れたことに感心する。三半規管が強いのだろうか。この世界で三半規管というかは知らないが。
 アンジェリカに見送られながら、二人はギルドを後にした。

「おおおぉぉ!!海ですよ!海!剣士さん!」
「はしゃぐな」
 馬車に揺られながら、見えてきた光景にフェーリエは年甲斐もなくはしゃいでしまう。
 ユースに短く注意されるが、お構いなしに窓に張り付く。前世では海に行ったことなどない。画像などで見たことはあるが、ここまで綺麗な青い海は見たことがない。
「あの海の色、なんて言ったら良いんでしょうねぇ」
 呟いた声に、ユースが何か言ったように聞こえたが、フェーリエにはよく聞こえなかった。
「剣士さん?どうかしましたか?」
「何でもない。はしゃぎすぎるなよ」
 はぐらかされ、ついでに釘を刺されてしまった。フェーリエは分かってます、と唇を尖らせ、また窓から海を眺める。ほのかに赤く染まったユースの頬には気付かずに……。
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