転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#53 風習

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 リガート村での依頼内容は、海を荒らす魔物を退治して欲しいと言うものだった。ルナが腰に細身の剣を下げていたため、魔法使いとしての差別はなかった。
「なんだかあっさり村に通して貰えましたね」
「君が剣士に見えたのだろう。騒ぎが起きなくて良かったじゃないか」
「剣を持ってたら剣士だなんて、ちゃんと鍛錬してるヒトに失礼ですよねぇ」
 海に向かって歩きながら、小声で話をする二人。
「君も鍛錬はしたんだろう?」
「まぁ……そうなんですけど。現在進行形でしてるかって言われると……」
 ルナは歯切れ悪く自分の状況を説明する。騒ぎを起こさないために腰に下げた剣。それは師匠が作ってくれた物で、滅多に使わないのだという。理由を尋ねても、ルナははぐらかすだけだった。
 砂浜が見えるまで海に近づいた二人は、複数の子供の声を聞いた。
「お前がいるから、村が魔物に荒らされるんだ!」
「お前が魔物を連れてきてるんだろ!」
「魔法使いなんて、消えてしまえ!」
 口々にそう罵られ、木の棒で叩かれているのは、小さな少女だった。身体を丸め、両手で自らの頭を覆っている。
 これが、この村の魔法嫌いの風習か。眉を寄せ、それでも簡単に割って入ってはいけない、とユースが思っていた矢先、隣の影が動いた。
「こら!その子から離れないさい!」
 正義感たっぷりのその言葉に、三人の子供は顔を上げた。
「なんだ?フードなんか被って、怪しい人だな」
「何?おばさん。この村のことに口挟まないでよ」
「お、おばさん!?失礼ね!私はまだ十六よ!」
 ルナは声を荒げた。後ろ姿からも、その憤慨は伝わってくる。
「剣士なの?剣下げてるけど」
「そ、そうよ。良いから早くその子から離れなさい」
 剣士という単語に、やや詰まりながら、再度同じ事を子供達に言う。
「そいつに関わらない方が良いぜ」
「そいつ、魔法使いなんだ。魔神の使いで、魔物と中が良いんだ」
「そいつのせいで、魚が捕れなくなって、皆困ってるんだ」
 少女を指さしながら、子供達は騒ぐ。言い返そうにも、信じないと分かっているからこそ、言葉を飲んでしまう。ルナは何も言えずに立ち尽くしていた。
「……もう日も暮れてきた。家に帰るといい」
 黙っていることは出来ず、ついユースは子供達に言葉を投げかける。
「今度は仮面か。あんた達なんなんだ」
 子供はぶつくさ言いながら、大人しく少女から離れていった。
「大丈夫?」
 子供が離れていった事を確認したルナは、少女に優しく声を掛ける。
「……だいじょうぶ。なれてるから」
 子供独特の舌足らずな話し方。服はつぎはぎだらけで、手足はほとんど骨と皮だ。
「お家どこ?送ってくよ」
 ルナはしゃがんで少女と目線を合わせ、その頭を撫でる。少女は少しためらいながら、あっち、と村からはかなり外れた海辺を指さす。
 行こっか、と少女の手を掴み、ルナは少女が指さした方へと歩き出す。ユースは、その後ろを何も言わずについて行った。子供の相手をしたことなどない。ここはルナに任せておこう。ユースはそう思った。
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