転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#54 少女と魔物

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 しばらく歩くと、ぼろぼろの小屋が見えてきた。壁や屋根に穴が開いており、到底家とは呼べない。
「ここが、お家?」
 フェーリエの問いかけに、少女は小さく頷く。家からは、ヒトの気配はしない。探知魔法にも引っ掛からない。
「お母さんとお父さんは?」
「いない。わたしは、こじ、だから」
 少女はたどたどしく話す。悪いことを聞いてしまったと、フェーリエは少女の頭を撫でる。どうやら、頭を撫でられるのが好きなようだ。
「俺は海の様子を見てくる」
「分かりました。この子のことは任せてください」
 夕焼けに染まるオレンジの海に向かって歩いて行くユースを見送り、フェーリエは少女に話しかける。
「お名前、聞いても良い?」
「……フェーリ。こうふくっていみなんだって」
 フェーリエは少しどきり、としてしまった。自分の名前と一文字しか違わない。
「そっか、良い名前だね」
 優しく微笑み、フェーリの頭を撫でる。
「ほんとうはね、なまえなかったの。でも、あのひとがかんがえてくれたの」
 フェーリは小さく笑う。あのヒトとは誰のことだろう。少なくとも村のヒトではないはずだ。あれほどの差別が、村人に根付いているのだから。両親も居ない、となればこの子を育てているのは……。
『フェーリに近づくなぁ!!!』
 低く唸るような声がした後、フェーリエは鈍い衝撃を受けた。

 何かが打ち付けられる音が、小屋の方から響く。二人に何かあったのか、とユースは走り出した。
 ぼろぼろの小屋には、少女を背に庇い、魔法障壁を展開したルナがいた。ルナが見つめる先には、下半身が鱗に覆われた、四十代ほどの男性が岩にめり込んでいた。
「鱗?……人魚?」
 ルナが戸惑いの声を上げる。
『ぐっ……お前、魔法使いか……』
 岩にめり込んだままで、男は低い声を漏らす。
 魔物であると判断したユースは、鞘に手を添え、走り出す。
「だめ!そのひとをきらないで!」
 剣を振り抜き、魔物の首を切ろうとしたところで、制止の声が掛かる。ユースは、剣を魔物の首に当てたまま、動きを止めた。
 ユースの足下でつむじ風が起き、とっさに飛び退く。
 少女はためらいなく魔物に近づき、守るように両手を広げた。
「このひとをころさないで!おねがい!」
 自信なさげに小さく話していた少女は、必死に声を張り、魔物を庇う。
「だがソレは……」
 ユースの言葉を最後まで聞かず、少女は叫ぶ。
「このひとのおかげで、わたしはいきてるの!まほうつかいだから、いらないからって、すてられたわたしを、そだててくれたのはこのひとなの!!」
『フェーリ……』
 魔物は小さく呟く。それは、少女の名前だろうか。
 動かないでいたルナが、少女に近づく。少女は怯えたように震えたが、それでも魔物の前から動かなかった。
「そのヒトが、貴女の名前をつけてくれたヒト?」
 ルナの静かな問いかけに、少女は頷く。そう、とルナは溜息をつき、魔物の方を見た。
「あれは、正当防衛よ。先に手を出したのは貴方。だから謝らないわ」
 魔物は言葉を詰まらせる。
「別に、煮たり焼いたりしようって訳じゃないわ。ただ、話を聞きたいだけ」
 ルナの言葉をどう受け取ったのか。魔物は諦めたように頭を縦に振った。
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