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第二章 ギルド要請冒険者
#55 知ること
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「貴方、名前は?」
フェーリエの問いかけに、魔物は驚いたような顔をする。魔物に名前を聞くとは思わなかったのだろう。
「フェーリに名前を付けたのは貴方でしょ?名前の意味からして、私たちと言語は一緒。なら、貴方にも名前があってもおかしくない」
敵意がないことがわかったのだろうか。魔物は小さく口を開いた。
『……フルクト、だ』
「フルクト……いい名前ね。ところで、貴方は陸に上がれるの?」
『少しの間ならな』
どう見ても水性生物である彼を、陸に上げていいものか。そう考えていたフェーリエは、先程自分が殴られかけたことを思い出す。少しなら、といった彼を風で持ち上げ、小屋の中に入れる。
「おねえちゃん。それも、魔法なの?」
「ええ。フェーリがさっき使ったつむじ風の応用よ」
足下にすがりついてきたフェーリに、笑顔を向け答える。
小屋の中でフェーリを座らせ、その傍らにフルクトを下ろす。ユースは小屋の入り口で腕を組んで立っている。
「改めて、自己紹介しましょうか。私はルナ。あの剣士はユースよ」
背後で、ユースが息を呑む気配がした。振り返り、何ですか、と聞けば、何でもない、と返された。
「えっと、私たちは冒険者で、この村から、海を荒らす魔物を退治してほしいと依頼があったからこの村に来たの」
『海を荒らす魔物?』
フルクトが怪訝そうな声を発する。
「そう。その魔物のせいで魚が捕れなくなったらしいけど、本当に魔物がいるかはわからないのよね。何か知ってる?」
この海の魔物である彼が、一番の情報者だ。
『……恐らく、魔物ではない。あれは生態系から外れた大魚だ。魚が捕れないのは、そいつが魚を大量に食べるからだろう』
「あまりの大きさに、魔物と勘違いした、ということ?」
多分な、とフルクトは言った。
「でも、どうしてそんな大魚が現れたのかしら」
「わたしのせいじゃないの?」
フェーリエの呟きに、少女が小さく尋ねる。
その純粋な問いかけに、村人から受ける迫害を思い知る。
「フェーリのせいじゃない。魔法を使えることは、何も悪いことじゃない」
フェーリに近づき、その小さな体を抱きしめる。
「魔力はね、生命エネルギーなの。だから誰でも、それこそ、魔物も魔力を持ってる。魔法はね、そんなエネルギーを使って、生活を豊かに、誰かを守るために使うものなの。誰かを傷つけるためのものじゃない。フェーリみたいに、多くの魔力を持って生まれたヒトは、初めは制御できなくて無意識に魔法を使ってしまう。でも、訓練すれば色々な魔法を使えるようになる」
「いろいろなまほう?」
興味をそそられたのか、フェーリは尋ね返す。
「うん。水を操ったり、炎を出したり、色々なことが出来る。魔法は知らなければ使えない。知らないことは罪じゃない。知ろうとしないことが罪なの。だから、フェーリは悪くないの」
フェーリの頭を優しく撫でる。徐々にフェーリの体が震えだし、嗚咽を溢し始めた。小さな体で、抱え込みすぎていたのだ。
「辛いときは、泣いてもいい。叫んでもいい。我慢することはないんだよ。でも泣き終わったら、とびきり笑うの。そうじゃなきゃ、幸せが逃げちゃうから」
フェーリエの言葉に、フェーリはコクリと頷き、涙を流し続けた。
フェーリエの問いかけに、魔物は驚いたような顔をする。魔物に名前を聞くとは思わなかったのだろう。
「フェーリに名前を付けたのは貴方でしょ?名前の意味からして、私たちと言語は一緒。なら、貴方にも名前があってもおかしくない」
敵意がないことがわかったのだろうか。魔物は小さく口を開いた。
『……フルクト、だ』
「フルクト……いい名前ね。ところで、貴方は陸に上がれるの?」
『少しの間ならな』
どう見ても水性生物である彼を、陸に上げていいものか。そう考えていたフェーリエは、先程自分が殴られかけたことを思い出す。少しなら、といった彼を風で持ち上げ、小屋の中に入れる。
「おねえちゃん。それも、魔法なの?」
「ええ。フェーリがさっき使ったつむじ風の応用よ」
足下にすがりついてきたフェーリに、笑顔を向け答える。
小屋の中でフェーリを座らせ、その傍らにフルクトを下ろす。ユースは小屋の入り口で腕を組んで立っている。
「改めて、自己紹介しましょうか。私はルナ。あの剣士はユースよ」
背後で、ユースが息を呑む気配がした。振り返り、何ですか、と聞けば、何でもない、と返された。
「えっと、私たちは冒険者で、この村から、海を荒らす魔物を退治してほしいと依頼があったからこの村に来たの」
『海を荒らす魔物?』
フルクトが怪訝そうな声を発する。
「そう。その魔物のせいで魚が捕れなくなったらしいけど、本当に魔物がいるかはわからないのよね。何か知ってる?」
この海の魔物である彼が、一番の情報者だ。
『……恐らく、魔物ではない。あれは生態系から外れた大魚だ。魚が捕れないのは、そいつが魚を大量に食べるからだろう』
「あまりの大きさに、魔物と勘違いした、ということ?」
多分な、とフルクトは言った。
「でも、どうしてそんな大魚が現れたのかしら」
「わたしのせいじゃないの?」
フェーリエの呟きに、少女が小さく尋ねる。
その純粋な問いかけに、村人から受ける迫害を思い知る。
「フェーリのせいじゃない。魔法を使えることは、何も悪いことじゃない」
フェーリに近づき、その小さな体を抱きしめる。
「魔力はね、生命エネルギーなの。だから誰でも、それこそ、魔物も魔力を持ってる。魔法はね、そんなエネルギーを使って、生活を豊かに、誰かを守るために使うものなの。誰かを傷つけるためのものじゃない。フェーリみたいに、多くの魔力を持って生まれたヒトは、初めは制御できなくて無意識に魔法を使ってしまう。でも、訓練すれば色々な魔法を使えるようになる」
「いろいろなまほう?」
興味をそそられたのか、フェーリは尋ね返す。
「うん。水を操ったり、炎を出したり、色々なことが出来る。魔法は知らなければ使えない。知らないことは罪じゃない。知ろうとしないことが罪なの。だから、フェーリは悪くないの」
フェーリの頭を優しく撫でる。徐々にフェーリの体が震えだし、嗚咽を溢し始めた。小さな体で、抱え込みすぎていたのだ。
「辛いときは、泣いてもいい。叫んでもいい。我慢することはないんだよ。でも泣き終わったら、とびきり笑うの。そうじゃなきゃ、幸せが逃げちゃうから」
フェーリエの言葉に、フェーリはコクリと頷き、涙を流し続けた。
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