転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
64 / 185
第二章 ギルド要請冒険者

#62 ようやく

しおりを挟む
「すまないな。こんな面倒に付き合わせて」
 やけに長く感じた議会を終え、ギルドに戻ったフェーリエ達にガストフは頭を下げた。
「頭を上げてください。結局ランクは上げてもらえましたし、もういいですよ」
「もう少しスムーズにいくと思ったんだが、思いの外頭が固い老害どもで……」
 相当疲れているようだ。顔を上げたガストフには、疲弊の色が見えた。
「クエストの資料って、どういうことなんですか?」
「ああ、君たちがほとんど無償に近い状態で、どれだけ面倒なクエストをしてきたかをまとめたものだ。その町や村からの君たちの評価も書いてあるよ」
 見てみるか?とガストフさんは綴られた紙束を差し出す。受け取り、目を通すと、訪れた町や村の名前が記されていた。
「あっ、ドルミートだ」
 フェーリエよりの言葉に、ウルティムが反応して出てくる。
『本当だ。これはノヴァの言葉だね』
 ウルティムは懐かしそうに目を細めた。そこには、『奇想天外な発想でしたが、おかげでドルミートは活性化しました。感謝しています』と書かれていた。奇想天外は酷くないだろうか。
「ルシオラ村のもありますね……あっ」
 ユースに文を見せながら、フェーリエは見つけてしまう。忌々しかった村の名前を。
「……。え?」
 眉をひそめながら読んだその文章は、思いがけない言葉で満ちていた。
「……『前時代的な差別により、村を救っていただいた冒険者の方には、大変不快な思いをさせてしまいました。詫びて済むことではありませんが、我々は深く感謝しております』?」
「ああ、リガート村か。今では少しずつだが魔法を受け入れているらしい。どういう心境の変化かはわからないが、いい傾向だな。その言葉は村長からだが、一人の少女を心配していたな」
 わざわざギルドの人間が、馬を飛ばして評価を聞きに行ったのだという。ガストフは、一体何したんだか、とフェーリエを見る。
「ヒトの意識は、変わるものなんですね」
「そうだな」
 どことなく嬉しそうなフェーリエの言葉に、ユースも優しい声で返してきた。
「本当は、君たちのランクを上げることは決定事項だったんだが……あのじいさん達は嫌みが趣味なだけだから気にしないでくれ」
 あの時間は何だったのだろう。かなりの時間を拘束されてしまったが。
「嫌みが趣味とか、酷いヒト達ですね」
「ほんとに、そう思うよ」
 毎回のようにあの老人達を相手しているガストフに、同情する。
「でも、私たちの為に、あのおじいさん達を相手してくれていたんですよね?ありがとうございます」
 足を怪我してしまい、冒険者を引退したガストフは、少しでも冒険者の手助けがしたいと思って、事務仕事をしているらしい。あれよあれよとギルド長になったが、あの頑固爺達の相手が一番疲れるそうだ。
 それでも尽力してくれた彼には、感謝しかない。
「何はともあれ、Bランクおめでとう。君たちの目標にはまだまだ遠いが、頑張ってくれ」
「もちろんです!」
 元気よく返事をするフェーリエの隣で、ユースが軽く頷いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生! 憧れのエルフに転生したら、まさかの特級呪物。 しかも、お約束のご都合主義はどこ行っちゃったの!? 理不尽な手続き、面倒な契約、身分証がなければ部屋も借りられない。 猫獣人は「ニャー」と鳴かないし、神様も居ない。 召喚獣?喋りません。 龍?人化しません。 想像してた異世界とはだいぶ違う。 腑に落ちない気持ちMAXで、流されるままクラフトしたり、もふもふしたり、たまに事件に巻き込まれたり。 見た目は完璧エルフ美女、でも中身はツッコミ止まらない。 ご都合主義が通じない異世界で、《普通》に揉まれる日々がはじまる──! ※カクヨム、なろうにも掲載中

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

処理中です...