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第三章 未開発の森
#64 三人組
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「俺はトーマス。こっちの斧使いがライアン。このヒョロヒョロの魔法使いがジョージだ」
槍を背中に抱えている男性が、自らの仲間の名前を紹介していく。
「私はルナ。魔法使いです」
こっちが、と斜め後ろにいたユースを振り向くと、珍しいことに軽く頭を下げながら自ら名乗った。
「ユースだ」
一人、おおぉぉ、と声を出すと、ユースに睨まれた。気がする。
「二人の噂は聞いてるよ。たった二人でキングを倒したんだろう?」
トーマスはよく喋る。にこにこしながらよく喋る。ライアンは腕を組み、その恵まれた身長でこちらを見下ろしてきている。かたやジョージはオドオドと周りを見回している。
「いえ、スライムキングの時は私の師匠もいましたし、完全に二人でって訳じゃないんですけど……」
「いやいや、ウルフキングは完全に二人なんだろう?あーあ、俺もあの時クエストを受けてなかったら、君たちの戦いぶりを見れたのになぁ」
大げさにやれやれと肩をすくめて首を振る。噂がどんなものか、フェーリエはあえて調べないようにしていた。それがまさか、こんなに明確に広がっているとは。
フェーリエ達は、今、未開拓の森の前に来ていた。目の前の三人と、フェーリエ達、後は同じような五人組が二つ。後はギルドのヒトが三人。合計十八人。五人一組に分かれ、それぞれの判断で森を探索する。それがこのクエストの内容だ。取り分などは各自で決めるという、かなりルールは緩い。
「でも、君たち大人数でクエストをするのに慣れてないだろう?俺たちに任せといて。これでも場数は踏んでるから」
「はぁ……よろしくお願いします」
捲し立てられ、手を握られる。フェーリエは気の抜けたような声で返した。
「うっわぁ……なに、これ」
森に入って数分後。フェーリエは開いた口がふさがらなかった。
そもそも木の大きさがおかしい。高さがウルフキングよりも高い。幅はフェーリエの腕の長さの四倍はあるだろう。
「これ、果実?」
木からぶら下がっている実は、フェーリエが抱えるほどの大きさだ。
「驚くだろう?これが、国が勢力を上げて開拓したい森だよ」
トーマスが馴れ馴れしく話しかけてくる。
「でも、凶暴な魔物が出るんですよね?」
「まぁね。でもここはまだ安全だよ。もっと奥に行くと、どんな魔物が出てもおかしくない」
ここはまだDランク達のエリアだ、とトーマスは話す。トーマスにナビゲートされるまま、フェーリエ達は奥へと進んでいく。
「剣士さん」
「なんだ?」
「……やっぱり、何でもないです」
いやな予感がする。そんなこと、今から言うのはおかしい気がした。
「そうか」
ユースは何も聞き返してこない。それが、彼の優しさだと、フェーリエは知っている。本人が言いたくないことは聞かない。二人の暗黙のルールだ。
「どうしたの?二人とも」
歩みが遅いフェーリエ達を、振り返ったトーマスが見る。
「大丈夫。怖がらなくても、俺たちがいるから」
トーマスは口角を上げて笑う。その笑顔が、一番胡散臭くて、恐怖を呼ぶというのに。
槍を背中に抱えている男性が、自らの仲間の名前を紹介していく。
「私はルナ。魔法使いです」
こっちが、と斜め後ろにいたユースを振り向くと、珍しいことに軽く頭を下げながら自ら名乗った。
「ユースだ」
一人、おおぉぉ、と声を出すと、ユースに睨まれた。気がする。
「二人の噂は聞いてるよ。たった二人でキングを倒したんだろう?」
トーマスはよく喋る。にこにこしながらよく喋る。ライアンは腕を組み、その恵まれた身長でこちらを見下ろしてきている。かたやジョージはオドオドと周りを見回している。
「いえ、スライムキングの時は私の師匠もいましたし、完全に二人でって訳じゃないんですけど……」
「いやいや、ウルフキングは完全に二人なんだろう?あーあ、俺もあの時クエストを受けてなかったら、君たちの戦いぶりを見れたのになぁ」
大げさにやれやれと肩をすくめて首を振る。噂がどんなものか、フェーリエはあえて調べないようにしていた。それがまさか、こんなに明確に広がっているとは。
フェーリエ達は、今、未開拓の森の前に来ていた。目の前の三人と、フェーリエ達、後は同じような五人組が二つ。後はギルドのヒトが三人。合計十八人。五人一組に分かれ、それぞれの判断で森を探索する。それがこのクエストの内容だ。取り分などは各自で決めるという、かなりルールは緩い。
「でも、君たち大人数でクエストをするのに慣れてないだろう?俺たちに任せといて。これでも場数は踏んでるから」
「はぁ……よろしくお願いします」
捲し立てられ、手を握られる。フェーリエは気の抜けたような声で返した。
「うっわぁ……なに、これ」
森に入って数分後。フェーリエは開いた口がふさがらなかった。
そもそも木の大きさがおかしい。高さがウルフキングよりも高い。幅はフェーリエの腕の長さの四倍はあるだろう。
「これ、果実?」
木からぶら下がっている実は、フェーリエが抱えるほどの大きさだ。
「驚くだろう?これが、国が勢力を上げて開拓したい森だよ」
トーマスが馴れ馴れしく話しかけてくる。
「でも、凶暴な魔物が出るんですよね?」
「まぁね。でもここはまだ安全だよ。もっと奥に行くと、どんな魔物が出てもおかしくない」
ここはまだDランク達のエリアだ、とトーマスは話す。トーマスにナビゲートされるまま、フェーリエ達は奥へと進んでいく。
「剣士さん」
「なんだ?」
「……やっぱり、何でもないです」
いやな予感がする。そんなこと、今から言うのはおかしい気がした。
「そうか」
ユースは何も聞き返してこない。それが、彼の優しさだと、フェーリエは知っている。本人が言いたくないことは聞かない。二人の暗黙のルールだ。
「どうしたの?二人とも」
歩みが遅いフェーリエ達を、振り返ったトーマスが見る。
「大丈夫。怖がらなくても、俺たちがいるから」
トーマスは口角を上げて笑う。その笑顔が、一番胡散臭くて、恐怖を呼ぶというのに。
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