転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第三章 未開発の森

#72 妹弟子と

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『元気がないな』
 フルクトがフェーリエを見て言った。
「そう?」
 フェーリエは、はしゃぎすぎて眠ってしまったフェーリを寝かしつけながら応える。初めは保護者に対して敬語で話していたが、やめてくれと言われたのでやめた。
『あいつなら心配いらないだろう。あいつはじゅ……』
「待って。言わないで。まだ、あのヒトから直接聞いたわけじゃ無いんだから」
 フルクトの言わんとしていることが分かって、フェーリエは止める。本当のことは彼自身から聞きたかった。……自分は彼に何も教えていないというのに。
『そうか。頑固だな』
 理解している。しかし癪だから同意は示さない。フェーリエは、寝ているフェーリの背中を撫でながらため息をつく。
「フェーリが起きたら、彼のところに行ってくるわ」
 このままここで寝かせていてもいいが、連れて行くと約束した手前、放っていくわけにはいかない。
『そうか。分かったよ。元気そうな姿が見れて俺は満足だ』
 フルクトは優しく笑う。完全に我が子を見る父親の顔だ。釣られてフェーリエの口角も上がる。
 暫くして目が覚めたフェーリを連れ、フェーリエは村を後にした。村の雰囲気も、前より良くなっているように思う。
『早く迎えに来いよ』
「うん!」
 フェーリが楽しそうで何よりだった。

 リガート村から魔法で飛んで一時間ほどの場所に、ユースが療養している診療所がある。移動に便利なこの魔法を早く覚えたいと、フェーリは意気込んでいた。
「この魔法はいろんな魔法を同時に使ってるからなぁ。そう言えば、ちゃんとした名称決めてない……」
「どんな魔法を使ってるの?」
 診療所への道のりで、フェーリは尋ねてくる。
「まず風魔法ね。自身の体を持ち上げて、飛び続けるからかなり魔力を消費するわ。次に魔法障壁。魔法障壁が無いと向かい風がダイレクトに当たって苦しいからね」
「ダイレクト?」
 フェーリはまだ言葉を覚えている最中だったか。いや、この世界にそもそも無い言葉だったのだろうか。基本語が何故か日本語だったため、もう十年もこの世界で生きてきて未だに区別がつかない。
(完全に洋風なのに文字も平仮名と漢字なんだよなぁ。カタカナは名前以外であまり見ないけど……英語って概念が無いんだろうなぁ)
 文字を習っていた時を思い出す。確かすらすらと書きすぎて家庭教師に驚かれたものだ。家族には前世と文字が同じだと言えば納得されたが、他の人に言えるはずも無い。
「ルナお姉ちゃん?」
 答えないフェーリエを不振に思ったのだろう。フェーリがフェーリエのマントを引っ張る。
「ああ、ごめんなさい。ダイレクトっいうのは直接って意味があるのよ」
「直接……そっか。真っ正面から師匠の風魔法を浴びるのと同じって事か……」
 それは確かに痛いし苦しいね、と納得したようにフェーリが頷く。
「ちょっと待って!?師匠もうそんなことしてるの!?えっ、それって魔法障壁の訓練でしょ?風を防ぐイメージを湧かせるためにって、あの威力の魔法を浴びせる訓練でしょ!?」
 かつての自分も体験した修行だ。しかし、かなりテンポが早い気がする。
「早く魔法を覚えたいから」
 そうフェーリは笑う。この子の忍耐は凄い。あの時のフェーリエは、中身が十六を超しているてもみっともなく泣いてしまったのに。
 妹弟子の成長具合に、フェーリエは尊敬の念を示した。
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