転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第三章 未開発の森

#73 フェーリエの扱い

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「ユースお兄ちゃん起きなかったね」
 屋敷に戻ったフェーリエは、フェーリと部屋で寛いでいた。
 フェーリには事前に貴族であること、フェーリエが本名であることを伝えてある。名前がかぶっている事にフェーリは運命を感じたようだった。
「そうね。本当にお寝坊助さんだわ」
「寂しくない?」
 フェーリはじっとこちらを見上げてくる。フェーリエの小さい頃の寝間着がよく似合っている。
「少し、寂しいかな。でも、信じてるから、大丈夫」
 彼ならきっと目を覚ますだろう。もう三ヶ月の付き合いだ。さすがに信用している。
「そう言えば、お姉ちゃんフード被ってるけどあれって魔法道具なの?」
「そうよ。顔が見えにくくなるモノらしいけど」
「?でも、初めの時より見えるようになってるよ?」
「え!?そうなの?」
 うん。とフェーリは頷く。効果が薄れているのだろうか。掛け直した方が良いのか。
『ああ、それは僕も思っていたよ』
 壁からするりとウルティムが這い出てくる。
「どこから出てきてるのよ」
 呆れた顔でフェーリエが呟けば、ウルティムは楽しそうに笑いながら答える。
『楽しいんだよねぇ、これ』
 肉体のあるリッチにも関わらず、彼は好きなときに霊体に慣れるらしい。謎原理であり、二人で現在解明中である。
「ところで、私のフードはどうなってるのよ」
『多分だけど、心を許した相手には見えやすくなってるんじゃなかな。魔法の欠損は見られないし』
 ウルティムは魔法の解析が得意だ。その彼が言うのだから壊れてはいないのだろう。
「心を許した相手、ねぇ……」
『リガート村で海を見たときに、ユース君が君の目の色だって言ってたから、彼には君の顔が見えてると思うよ』
 ウルティムの言葉に持っていたカップを落としそうになり慌てる。なにやら照れくさい台詞が聞こえた気がしたのだが。
『あれ?やっぱり聞き逃してた?青春だなぁって親の気持ちだったんだけど』
「……知らないわよ」
「恋人なの?」
「違う!私と剣士さんの何処をどう見たらそうなるのよ!?」
 フェーリが純粋に尋ねてくる。やや慌てて言葉を返すが、ウルティムとフェーリはニヤニヤと笑うだけだ。
「なんなのよぉ……二人して」
『全く、フェーリエ様をからかってはいけませんよ』
 アウラが現れ、母親のように二人にメッ、と叱っている。救いの女神だ……そう思ったのも束の間、続いたアウラの言葉に、フェーリエは机に突っ伏した。
『まだ自覚してないんですから、からかうならその後ですよ』
 ゴツン、とかなりの音がしておでこがひりひりする。
 アウラの言葉に聞き分けよくはーい、と返事するウルティムとフェーリが憎らしい。
「そもそもからかわないでよ……」
「それは出来ないな。リエの反応はどれも面白いから」
 机に突っ伏したまま呻けば、隣から新たな声が話に加わる。
「クロリネ様。お邪魔してます」
「そう堅苦しくしなくても大丈夫だよ」
「お兄様ぁ」
 恨めしそうにフェーリエが兄を睨むと、フェーリエとよく似た顔面の満面の笑みが返ってくる。
 何故、こんな話になってしまったのか。彼とはただ単なる相棒なのに……。フェーリエはもう一度机に頭をぶつけた。
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