77 / 185
第三章 未開発の森
#75 感情の名前
しおりを挟む
「いやー、熱々だなぁ」
「若さですね」
突然聞こえた声に、フェーリエは咄嗟にユースを突き飛ばす。よろけたユースは頭をベッドに打ち付け、頭を押さえた。
「あああ、ごめんなさい!」
慌ててユースの頭を撫でる。コブは出来ていないようだ。
「おいおい、怪我人は大事にしてやれよ?」
「驚かせた私たちにも非があると思いますね」
グレッグは明るく笑い、レイモンドは苦笑している。
「……お久しぶりです。グレッグさん、レイモンドさん」
「おう。目が覚めて良かった」
「実は二人に話があるのですが……大丈夫ですか?」
暗に先程の事を言われているのだ。わたわたしながら、フェーリエは何でも無い風を装い答える。
「だ、大丈夫です!」
一度ユースをベッドに座らせ、椅子をベッドの周りに運ぶ。
グレッグとレイモンドと向き合うようにして座り、話を促す。
「ユースは目覚めたばかりだが、Bランク以上の冒険者に魔獣討伐のクエストが下った。この意味が分かるか?」
「……私は、強制参加、ですね」
「そう。今回は未開の森Cランクエリアに固定されている魔獣が討伐対象です。君が結界で閉じ込めた、ね」
あの魔獣がいる限り安心して探索が出来ない。フェーリエの結界は決して壊れないようにしているが、全面的に信頼されたわけでは無い。そういうことだ。
「今回は信頼されているBランク以上が参加する。自分より高ランクの戦いが見られるというのは、なかなかに無い体験だな」
「私は別に構いませんが……」
チラリとユースを見る。彼は今日起きたばかりだ。体も鈍っているというのに、そんな危険な場所へは行ってほしくない。
「俺も行きます。……何日後ですか?」
軽く息を飲んだフェーリエを、ユースは見る。その目は本気だ。一人では行かせない。そう言いたいようだ。
「あんたなら、そう言うと思ったよ。五日後だ。それまでしっかりと準備しておけ」
グレッグは信頼の眼差しをユースに向ける。ほんの少ししか接点が無かった彼らに、どこから信頼が湧いているのだろう。
「この街の門の前に集合することになっていますので、忘れずに」
そう言って、彼らは病室を出て行った。
「……剣士さん」
「なんだ?」
「無茶だけはしないでくださいね?」
フェーリエなりの譲歩だった。戦うならば、止めはしない。彼は守らせてはくれないだろう。
「君が名前で呼んでくれるなら、約束してもいい」
「はぁ?どういう交換条件ですか!」
フェーリエは思わず叫ぶ。フェーリエが名前を呼ぶからと言って、彼に何か得でもあるのだろうか。
「なら、約束は無しだな」
「えっ!?わ、分りました!!名前で呼べば良いんですね!」
フェーリエの言葉に、ユースはどことなく嬉しそうな顔をする。一体何だと言うのだ。
ユースの目が、名前を呼べと促してくる。
「ゆ……」
(……あれ?なんか……恥ずかしい)
先程はすっと言えた言葉が、妙に恥ずかしい。ああ、前世でも、今世でも、こんなことは初めてだ。
「……ユース、さん」
呟いた声は酷く小さい。しかし、俯いた頭には、優しく手が置かれた。
「うぅ……むず痒い」
この感情に名前をつけるべきだろうか?つけても良いのだろうか?フェーリエの頭の中は疑問符でいっぱいになった。
「若さですね」
突然聞こえた声に、フェーリエは咄嗟にユースを突き飛ばす。よろけたユースは頭をベッドに打ち付け、頭を押さえた。
「あああ、ごめんなさい!」
慌ててユースの頭を撫でる。コブは出来ていないようだ。
「おいおい、怪我人は大事にしてやれよ?」
「驚かせた私たちにも非があると思いますね」
グレッグは明るく笑い、レイモンドは苦笑している。
「……お久しぶりです。グレッグさん、レイモンドさん」
「おう。目が覚めて良かった」
「実は二人に話があるのですが……大丈夫ですか?」
暗に先程の事を言われているのだ。わたわたしながら、フェーリエは何でも無い風を装い答える。
「だ、大丈夫です!」
一度ユースをベッドに座らせ、椅子をベッドの周りに運ぶ。
グレッグとレイモンドと向き合うようにして座り、話を促す。
「ユースは目覚めたばかりだが、Bランク以上の冒険者に魔獣討伐のクエストが下った。この意味が分かるか?」
「……私は、強制参加、ですね」
「そう。今回は未開の森Cランクエリアに固定されている魔獣が討伐対象です。君が結界で閉じ込めた、ね」
あの魔獣がいる限り安心して探索が出来ない。フェーリエの結界は決して壊れないようにしているが、全面的に信頼されたわけでは無い。そういうことだ。
「今回は信頼されているBランク以上が参加する。自分より高ランクの戦いが見られるというのは、なかなかに無い体験だな」
「私は別に構いませんが……」
チラリとユースを見る。彼は今日起きたばかりだ。体も鈍っているというのに、そんな危険な場所へは行ってほしくない。
「俺も行きます。……何日後ですか?」
軽く息を飲んだフェーリエを、ユースは見る。その目は本気だ。一人では行かせない。そう言いたいようだ。
「あんたなら、そう言うと思ったよ。五日後だ。それまでしっかりと準備しておけ」
グレッグは信頼の眼差しをユースに向ける。ほんの少ししか接点が無かった彼らに、どこから信頼が湧いているのだろう。
「この街の門の前に集合することになっていますので、忘れずに」
そう言って、彼らは病室を出て行った。
「……剣士さん」
「なんだ?」
「無茶だけはしないでくださいね?」
フェーリエなりの譲歩だった。戦うならば、止めはしない。彼は守らせてはくれないだろう。
「君が名前で呼んでくれるなら、約束してもいい」
「はぁ?どういう交換条件ですか!」
フェーリエは思わず叫ぶ。フェーリエが名前を呼ぶからと言って、彼に何か得でもあるのだろうか。
「なら、約束は無しだな」
「えっ!?わ、分りました!!名前で呼べば良いんですね!」
フェーリエの言葉に、ユースはどことなく嬉しそうな顔をする。一体何だと言うのだ。
ユースの目が、名前を呼べと促してくる。
「ゆ……」
(……あれ?なんか……恥ずかしい)
先程はすっと言えた言葉が、妙に恥ずかしい。ああ、前世でも、今世でも、こんなことは初めてだ。
「……ユース、さん」
呟いた声は酷く小さい。しかし、俯いた頭には、優しく手が置かれた。
「うぅ……むず痒い」
この感情に名前をつけるべきだろうか?つけても良いのだろうか?フェーリエの頭の中は疑問符でいっぱいになった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる