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第四章 魔導王国
#90 地下と光
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『確かに、太陽が無いね。明るいのに』
ウルティムがフェーリエの言葉を受け、頷く。
それが違和感の正体だった。
「そう言えば、風も吹いてない。……当たり前のものがないのは、気味が悪いわね」
普段感じるそよ風すらも、フェーリエの肌は感じていなかった。空気はある。だが、風、大気の流れが無いのだ。
『結界が張ってあるね』
「結界?」
『そう。擬似的な空や空気を生み出してるみたいだね。凄く高度な魔法だよ』
リッチであるウルティムは、この世の力の流れ、つまり魔力を見ることが出来る。魔力を持続して消費する結界は、殊更分かりやすいらしい。
「へぇ。でも、どうしてそんなことをしているのかしら。地上なら、要らないはず……」
『ここは地下だからね』
「へ?」
『だから、ここは地下だよ。魔力が濃いもの』
ウルティムが何でも無いような口調で繰り返す。
「いやいや、普通分からないわよ。ここが地下なんて。そういうことはもっと早く言ってくれる?」
ごめーん、とウルティムは笑う。全く反省していない。
「まあ良いけど。でも、どうして地下に街が?何か理由があったのかしら」
『色々と気になるけど、こうなったら……』
『「図書館を探すしかない!」』
フェーリエとウルティムは同じ言葉を口にする。
ウルティムがどう出るかまだ分からないが、少なくともまだ行動には移さないだろう。
フェーリエは気を緩めて塔を降りた。
『大丈夫ですか?ユースさん』
アウラの言葉が耳に響く。その微かな振動すらも、脳を揺さぶり気持ちが悪い。
酒を飲んだ時の酩酊感とも、ルナの魔法で跳んだときの酔いとも違う。目を開けて情報を脳に伝えることすらも厳しく、ユースさんはただただ目を閉じていた。
そんなユースの身体を、暖かい光が包む。アウラの光だ。少し気分が楽になる。
無情にもユースを置いて出て行ったルナの事を思う。時間を無駄にしない為にも仕方が無い事ではあるが、酷くないだろうか。
暫くそうしていると、目を開けても大丈夫になった。ゆっくりと目を開けると、心配そうなアウラの顔が目の前にあった。
『少し落ち着きました?』
「……ああ」
殆ど空気にとけるような小さな声だったが、頭を揺らすよりもましだった。アウラもその声は聞こえていたようで、良かった、と優しく笑った。
『魔力酔いは滅多に起こりませんからね。私はいつも一緒にいるのがアレですので、余計に』
アウラは笑いながらも光をかざす。精霊は魔力を持たない。精霊を生み出した女神の力が、魔力では無いかららしいが、詳しいことは目の前のアウラにしか分からない。
ではアウラの光は、一体どんな力なのか。治癒魔法とは違い、内側から癒やす光。それ以外の能力も、未だに未知数だ。それは、ルナがアウラを戦闘に参加させないからである。
契約とは、強い魔物を服従させ、戦わせるものだと認識していた。しかし、ルナとウルティムの関係は、そうでは無いように思う。ウルティムはルナから魔力を貰わなければ力を使えていない。それでは、ルナに損しか無いように思うが……。
『ユースさん、疑問には後でお答えしますから、今は頭を使わない方が良いですよ』
ぐるぐると考えが巡る頭を優しく撫でられ、ユースは再び目を閉じた。
ウルティムがフェーリエの言葉を受け、頷く。
それが違和感の正体だった。
「そう言えば、風も吹いてない。……当たり前のものがないのは、気味が悪いわね」
普段感じるそよ風すらも、フェーリエの肌は感じていなかった。空気はある。だが、風、大気の流れが無いのだ。
『結界が張ってあるね』
「結界?」
『そう。擬似的な空や空気を生み出してるみたいだね。凄く高度な魔法だよ』
リッチであるウルティムは、この世の力の流れ、つまり魔力を見ることが出来る。魔力を持続して消費する結界は、殊更分かりやすいらしい。
「へぇ。でも、どうしてそんなことをしているのかしら。地上なら、要らないはず……」
『ここは地下だからね』
「へ?」
『だから、ここは地下だよ。魔力が濃いもの』
ウルティムが何でも無いような口調で繰り返す。
「いやいや、普通分からないわよ。ここが地下なんて。そういうことはもっと早く言ってくれる?」
ごめーん、とウルティムは笑う。全く反省していない。
「まあ良いけど。でも、どうして地下に街が?何か理由があったのかしら」
『色々と気になるけど、こうなったら……』
『「図書館を探すしかない!」』
フェーリエとウルティムは同じ言葉を口にする。
ウルティムがどう出るかまだ分からないが、少なくともまだ行動には移さないだろう。
フェーリエは気を緩めて塔を降りた。
『大丈夫ですか?ユースさん』
アウラの言葉が耳に響く。その微かな振動すらも、脳を揺さぶり気持ちが悪い。
酒を飲んだ時の酩酊感とも、ルナの魔法で跳んだときの酔いとも違う。目を開けて情報を脳に伝えることすらも厳しく、ユースさんはただただ目を閉じていた。
そんなユースの身体を、暖かい光が包む。アウラの光だ。少し気分が楽になる。
無情にもユースを置いて出て行ったルナの事を思う。時間を無駄にしない為にも仕方が無い事ではあるが、酷くないだろうか。
暫くそうしていると、目を開けても大丈夫になった。ゆっくりと目を開けると、心配そうなアウラの顔が目の前にあった。
『少し落ち着きました?』
「……ああ」
殆ど空気にとけるような小さな声だったが、頭を揺らすよりもましだった。アウラもその声は聞こえていたようで、良かった、と優しく笑った。
『魔力酔いは滅多に起こりませんからね。私はいつも一緒にいるのがアレですので、余計に』
アウラは笑いながらも光をかざす。精霊は魔力を持たない。精霊を生み出した女神の力が、魔力では無いかららしいが、詳しいことは目の前のアウラにしか分からない。
ではアウラの光は、一体どんな力なのか。治癒魔法とは違い、内側から癒やす光。それ以外の能力も、未だに未知数だ。それは、ルナがアウラを戦闘に参加させないからである。
契約とは、強い魔物を服従させ、戦わせるものだと認識していた。しかし、ルナとウルティムの関係は、そうでは無いように思う。ウルティムはルナから魔力を貰わなければ力を使えていない。それでは、ルナに損しか無いように思うが……。
『ユースさん、疑問には後でお答えしますから、今は頭を使わない方が良いですよ』
ぐるぐると考えが巡る頭を優しく撫でられ、ユースは再び目を閉じた。
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