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第四章 魔導王国
#97 和食
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休息をとったフェーリエは、魔法で洗浄した厨房に立っていた。
城なのだから、厨房くらいはあるはずだ。せめて料理をするならば、用具がそろった場所でしたい、と言ったフェーリエに、好きにすると良い、となかば諦めたようにキッチン探しを手伝ってくれた。
「さて、何から作れば良いかしら。食材はあるけど」
『調味料があるようですよ』
「使いたいのは山々だけど、いつのものかわからないしなぁ」
調理器具ならば洗えば済むが、調味料……。
「醤油とかないかな……マヨネーズとか」
様々な容器に入れられた、色とりどりの調味料に手を伸ばす。
『もう……お腹壊しますよ?』
「大丈夫……だと思う!」
黒のような焦げ茶のような液体の蓋を開ける。変な臭いはしない。
(やっぱり、状態保存の魔法が掛かってる。この容器自体が魔道具なのね。……ハイテクだなぁ)
指を少し液体につける。それを口に運び、舐めとる。
「ん!?」
『どうしました!?』
「……ゆだ」
『え?』
「醤油だ……醤油」
フェーリエは静かに涙を流した。まさかこれほど懐かしいと思う味だったとは。
正直味覚が変わっているから、受け付けないのではないかと思っていた。しかし、日本人としての好みが残っていたようだ。
「どこを探しても醤油……そもそも大豆がなかったのに……」
小さい頃は日本のものを再現しようとあの手この手で国を駆けずり回った。結果としては芳しくなかったが、それでもこの世界の美しさを知り、この世界で生きていこうと思ったわけだが。
『良かったですね。後は、製造方法を知れれば良いのですが』
「まぁ、それは後で探しましょうか。とりあえず、他の味も確認しとかないと」
一緒に探してくれていたアウラは、フェーリエの苦労をよく知っている。だからこその反応だった。
「お待たせしました!」
部屋で待っていてくれと無理矢理部屋に押し込まれたユースは、反応が遅いウルティムと二人で部屋で待っていた。なにやら楽しそうな声が聞こえるほど近い部屋だったが、ウルティムと二人なのが不安ではあった。
しばらくして、ユースの前に運ばれてものは湯気が立つ茶色のスープに、焼き魚、黄色い物体、そして穀物を炊いたものだった。
「……どれも見たことがないものだな」
「それはそうでしょうね」
ルナはにこにこと笑っている。これらを作れたことが余程嬉しいようだ。
「このスープは?」
「味噌汁です!味噌も豆腐も、ワカメまであったんで、作るしかない、と思って」
ルナは握り拳を作って、力説した。
「焼き魚」
「流石に捌けなかったので、そのまま塩焼きにしました」
捌けない事を恥ずかしそうに話すルナ。余程の事情がなければ捌けるようにはならないと思うが。
「この黄色い物体は?」
「あれ?わかりませんでした?これ卵ですよ」
「卵、を焼いたものなのか?」
「はい!卵焼きです!溶き卵に砂糖と醤油で味付けしました。いつもは塩と砂糖なので焼き加減が難しかったですねぇ」
味付けの話をされてもよくわからないが、卵を焼くと黄色になるのか。
「その白いのはご飯です!お米もあるなんて、和食を作れと言われてるようなものですよね」
ひたすらに嬉しそうに、ルナは笑う。しかし、何を使って食べれば良いのか。お盆には、棒が二本あるだけだ。
「あ、そのお箸で食べるんですよ。その棒です」
棒を持たされたユースは、食べ方をルナに教えてもらいながら、なんとか未知の料理を完食した。
城なのだから、厨房くらいはあるはずだ。せめて料理をするならば、用具がそろった場所でしたい、と言ったフェーリエに、好きにすると良い、となかば諦めたようにキッチン探しを手伝ってくれた。
「さて、何から作れば良いかしら。食材はあるけど」
『調味料があるようですよ』
「使いたいのは山々だけど、いつのものかわからないしなぁ」
調理器具ならば洗えば済むが、調味料……。
「醤油とかないかな……マヨネーズとか」
様々な容器に入れられた、色とりどりの調味料に手を伸ばす。
『もう……お腹壊しますよ?』
「大丈夫……だと思う!」
黒のような焦げ茶のような液体の蓋を開ける。変な臭いはしない。
(やっぱり、状態保存の魔法が掛かってる。この容器自体が魔道具なのね。……ハイテクだなぁ)
指を少し液体につける。それを口に運び、舐めとる。
「ん!?」
『どうしました!?』
「……ゆだ」
『え?』
「醤油だ……醤油」
フェーリエは静かに涙を流した。まさかこれほど懐かしいと思う味だったとは。
正直味覚が変わっているから、受け付けないのではないかと思っていた。しかし、日本人としての好みが残っていたようだ。
「どこを探しても醤油……そもそも大豆がなかったのに……」
小さい頃は日本のものを再現しようとあの手この手で国を駆けずり回った。結果としては芳しくなかったが、それでもこの世界の美しさを知り、この世界で生きていこうと思ったわけだが。
『良かったですね。後は、製造方法を知れれば良いのですが』
「まぁ、それは後で探しましょうか。とりあえず、他の味も確認しとかないと」
一緒に探してくれていたアウラは、フェーリエの苦労をよく知っている。だからこその反応だった。
「お待たせしました!」
部屋で待っていてくれと無理矢理部屋に押し込まれたユースは、反応が遅いウルティムと二人で部屋で待っていた。なにやら楽しそうな声が聞こえるほど近い部屋だったが、ウルティムと二人なのが不安ではあった。
しばらくして、ユースの前に運ばれてものは湯気が立つ茶色のスープに、焼き魚、黄色い物体、そして穀物を炊いたものだった。
「……どれも見たことがないものだな」
「それはそうでしょうね」
ルナはにこにこと笑っている。これらを作れたことが余程嬉しいようだ。
「このスープは?」
「味噌汁です!味噌も豆腐も、ワカメまであったんで、作るしかない、と思って」
ルナは握り拳を作って、力説した。
「焼き魚」
「流石に捌けなかったので、そのまま塩焼きにしました」
捌けない事を恥ずかしそうに話すルナ。余程の事情がなければ捌けるようにはならないと思うが。
「この黄色い物体は?」
「あれ?わかりませんでした?これ卵ですよ」
「卵、を焼いたものなのか?」
「はい!卵焼きです!溶き卵に砂糖と醤油で味付けしました。いつもは塩と砂糖なので焼き加減が難しかったですねぇ」
味付けの話をされてもよくわからないが、卵を焼くと黄色になるのか。
「その白いのはご飯です!お米もあるなんて、和食を作れと言われてるようなものですよね」
ひたすらに嬉しそうに、ルナは笑う。しかし、何を使って食べれば良いのか。お盆には、棒が二本あるだけだ。
「あ、そのお箸で食べるんですよ。その棒です」
棒を持たされたユースは、食べ方をルナに教えてもらいながら、なんとか未知の料理を完食した。
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