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第四章 魔導王国
#105 予期せぬ客
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『君になら勝てると言ったが、本当は君にしか勝てない、と言った方が正しい』
「?それはどういう……」
『実際にあいつと戦えばわかるさ。嫌でも見せつけられる。正解なんて、見つけられない』
「??」
『でも何故だろうな。君なら、正解を見つけられる気がするよ』
頭に疑問符を大量に浮かべるフェーリエに、女王は悲しそうに笑った。
「あれが、『Abyss』……」
結界を抜けた先は明るく、それの姿は十分に捉えることが出来た。
真っ黒な巨躯に赤く光る双眸。巨大牛のような姿だが、普通の獣のような姿でもある。ただ一つわかるのは、恐ろしく不気味であるということ。見ているだけで感情を逆撫でし、恐怖と憎悪、嫌悪を生み出す。
(この威圧感……女王にもらった魔導具がなかったら耐えられなかった)
簡単に身につけられるネックレスに、魔力耐性に特化した結界を付与されている。この穴に落ちる前に女王にもらった物だ。
マントの上からネックレスを押さえる。ユースは腕輪だが、倒れていない所を見ると正常に作動しているようだ。
この魔導具は身につけているヒトの魔力を使うわけではなく、周囲に漂う魔力を収集して発動するらしい。ガイアの魔力が減ることを気にしていたようだが、それでいいのだろうか。
『Abyss』は先程とは違い、叫び声を上げていない。ただただ静かにこちらを見ているようだ。
『ルナ様……』
「大丈夫。目を合わせればいいのよね」
気遣わしげなアウラに微笑みを返し、フェーリエは隣に立つユースを見上げる。
「心配するな。何かあれば守ってやる」
ユースはいつもより強張った声で告げる。それでも、心強いことに変わりは無い。
深淵を倒すには、あの不気味な目と目を合わせなければならないらしい。そこから先は教えてくれなかったが、信用している、と笑ってくれた。
ユースに微笑みを返し、『Abyss』に向き直る。その不気味な赤い目に焦点を合わせると、膨大な情報が頭の中に流れ込んできた。
『……ア、……ニア!!』
誰かに強く名前を呼ばれる。いつの間にか閉じていた目を開くと、そこは岩で囲まれた洞窟ではなかった。
「……ここ、どこ?」
『どうした?ボーっとして』
「え?」
掛けられた声に反応して後ろを振り向く。そのヒトはきらきらと輝き、姿形がはっきりと見えない。
だが何故だろう。酷く懐かしいと感じる。黄金の小麦畑にいたこともないのに、郷愁を覚える。
この胸を締め付ける想いはなんだろう。ずっと彼に会いたかった気が……。
「……っ!?」
突如視界がゆがむ。目の前の青年に無意識に手を伸ばし、空を掻いて視界は黒く塗りつぶされた。
(ぐ、ぅ……これは……『グラビティ』!?)
意識を取り戻したフェーリエがまず感じたのは重力だ。それは、フェーリエ自身がよく使う魔法で……。
「……ウル、ティム?……どうし、て」
『おや、意識を取り戻したようだね。良かった良かった。折角支配したんだもの、壊されるわけにはいかないよね』
フェーリエが見た光景は、ウルティムが発動させた魔法に膝を着くユースと、気絶して地面に倒れているアウラだった。アウラはいつもの小人サイズではなく、成人女性程のサイズで倒れていた。
この数分で、一体何があったのだろうか。
「?それはどういう……」
『実際にあいつと戦えばわかるさ。嫌でも見せつけられる。正解なんて、見つけられない』
「??」
『でも何故だろうな。君なら、正解を見つけられる気がするよ』
頭に疑問符を大量に浮かべるフェーリエに、女王は悲しそうに笑った。
「あれが、『Abyss』……」
結界を抜けた先は明るく、それの姿は十分に捉えることが出来た。
真っ黒な巨躯に赤く光る双眸。巨大牛のような姿だが、普通の獣のような姿でもある。ただ一つわかるのは、恐ろしく不気味であるということ。見ているだけで感情を逆撫でし、恐怖と憎悪、嫌悪を生み出す。
(この威圧感……女王にもらった魔導具がなかったら耐えられなかった)
簡単に身につけられるネックレスに、魔力耐性に特化した結界を付与されている。この穴に落ちる前に女王にもらった物だ。
マントの上からネックレスを押さえる。ユースは腕輪だが、倒れていない所を見ると正常に作動しているようだ。
この魔導具は身につけているヒトの魔力を使うわけではなく、周囲に漂う魔力を収集して発動するらしい。ガイアの魔力が減ることを気にしていたようだが、それでいいのだろうか。
『Abyss』は先程とは違い、叫び声を上げていない。ただただ静かにこちらを見ているようだ。
『ルナ様……』
「大丈夫。目を合わせればいいのよね」
気遣わしげなアウラに微笑みを返し、フェーリエは隣に立つユースを見上げる。
「心配するな。何かあれば守ってやる」
ユースはいつもより強張った声で告げる。それでも、心強いことに変わりは無い。
深淵を倒すには、あの不気味な目と目を合わせなければならないらしい。そこから先は教えてくれなかったが、信用している、と笑ってくれた。
ユースに微笑みを返し、『Abyss』に向き直る。その不気味な赤い目に焦点を合わせると、膨大な情報が頭の中に流れ込んできた。
『……ア、……ニア!!』
誰かに強く名前を呼ばれる。いつの間にか閉じていた目を開くと、そこは岩で囲まれた洞窟ではなかった。
「……ここ、どこ?」
『どうした?ボーっとして』
「え?」
掛けられた声に反応して後ろを振り向く。そのヒトはきらきらと輝き、姿形がはっきりと見えない。
だが何故だろう。酷く懐かしいと感じる。黄金の小麦畑にいたこともないのに、郷愁を覚える。
この胸を締め付ける想いはなんだろう。ずっと彼に会いたかった気が……。
「……っ!?」
突如視界がゆがむ。目の前の青年に無意識に手を伸ばし、空を掻いて視界は黒く塗りつぶされた。
(ぐ、ぅ……これは……『グラビティ』!?)
意識を取り戻したフェーリエがまず感じたのは重力だ。それは、フェーリエ自身がよく使う魔法で……。
「……ウル、ティム?……どうし、て」
『おや、意識を取り戻したようだね。良かった良かった。折角支配したんだもの、壊されるわけにはいかないよね』
フェーリエが見た光景は、ウルティムが発動させた魔法に膝を着くユースと、気絶して地面に倒れているアウラだった。アウラはいつもの小人サイズではなく、成人女性程のサイズで倒れていた。
この数分で、一体何があったのだろうか。
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