転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
118 / 185
第四章 魔導王国

#116 扇動

しおりを挟む
「マグヌム・ガイアの加護を!祝福を!愛を!全て我々から奪っているの誰だ!!!」
 男は叫ぶ。力強い言葉に、集まっていた聴衆は声を揃えて叫んだ。
「「「巫女だ!!!」」」
 男は聴衆の言葉に強く頷き、言葉を続けた。
「その通りだ!巫女はマグヌム・ガイアの祝福を独占し、我々には代理と称して偽りの名を与えた!!直接神からあ授けられるべき名を!巫女が授けたのだ!!その意味が分かるか!!!」
 問いかけている言葉だが、それは自分の主張を強調するために一度言葉を切るためだ。男は聴衆を見渡し、再び口を開いた。
「我々に力を与えないためだ!!名の授け方で扱える奇跡の強さは変わる。直接授けられた巫女と我々では、天と地ほど力に差が出る!反抗させないために、我々の力を削いだのだ!!」
 聴衆は男の言葉を黙って聞いている。人を惹き付ける力を持っている。
「見ろ!我々はこれだけの奇跡しか使えない!しかし巫女はどうか!前の川の氾濫を、巫女はその奇跡で持て鎮めた!これが力の差だ!!」
 男は左の手のひらに炎を灯した。赤く揺れる、燃焼があまり足りていない不安定な炎。
(奇跡って魔法の事だったんだ。成る程ね、ガイアから受け取る魔力の量が変わるんだ、名付けられ方で)
 神から直接名前をもらった少女とあの二人がいる限り、彼らはこれ以上をガイアに望めない。
 反抗したところで鎮圧されるからだ。では何故、無駄と分かりつつ今人々を焚付けているのだろうか。
 明確に力の差を言葉にされ、聴衆は不安な顔をし始める。彼らも、無理であると思ったのだろう。少女を殺すことを。『巫女は殺すべきだ』と言う男の言葉に、熱く肯定を示していた声を、フェーリエは聞いた。
「だが恐れることはない!!巫女の特性は生を望むときのみ発動する!!永遠の命は絶つことが出来るのだ!!」
 力強い断言の言葉に、聴衆の顔色は輝く。
「言葉は強い力を生む。我々が心から巫女の死を望めば、巫女は生を諦める!!そこで完全に巫女の命を絶つのだ!!さあ、武器を取れ!マグヌム・ガイアの愛を手に入れるために!!!」
 拳を握り、男は聴衆に言葉を投げる。
(生を望む?そんな特性が……というか、言霊があるのはよく分かるけど、あの子が生を諦めるってなんで断言できるのよ。希望的観測過ぎない?さすがにこんな穴だらけの演説でついてくる人なんて……)
 呆れ顔で男を眺めていたフェーリエは、次に聴衆達が取った行動でぎょっとした。
「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」
 聴衆は雄叫びを上げながら、壁に掛けてあった剣や槍、果ては斧や鉈を手に取り始めた。
(うっそぉ。あれでついて行くの!?馬鹿でしょ!!あの子殺したからってガイアに愛される分けないじゃない!むしろ逆効果よ!?)
 フェーリエが驚いている間にも、聴衆はどんどん集会所から飛びだして行く。
 その光景を見ながら、フェーリエは体感時間を数える。
(今で多分一時間ぐらい?後一時間もあるけど、どうやってあの子を殺すの!?分からない、分からないわ)
 パニックでうまく動かない頭をぐるぐるさせ、フェーリエは一先ず聴衆を扇動した男を追いかけることにした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...