124 / 185
第四章 魔導王国
#122 少女との対談
しおりを挟む
「ここは……」
「ようやく、お話が出来ますね」
真っ白な空間に放り投げられたフェーリエの目の前に、先程地面に倒れ伏した少女が立っていた。
「あ……」
「詳しく説明したいのですが、なにぶん時間がないので……今からして欲しいことを話させて貰いますね」
少女は申し訳なさそうに笑い、状況が掴めないフェーリエの手を優しく握った。
「こうしている間にもあの世界の時間は進んでいます。戻ったらガイアがあの子を生み出している頃のはず……まずは貴女に、私の身体をお貸しします。そうすれば、貴女はあの世界に干渉できます」
「え、え……でも、貴女がそのまま行動すれば……」
フェーリエに身体を貸し出すより、その方が早いはずだ。そう思ったフェーリエに、少女は首を振った。
「いいえ、それでは言霊の影響が残っているので自由に動けません。言霊が縛るのはヒトの精神部分です。貴女と私では魂が同じでも精神は異なりますから」
少女の言葉にフェーリエはようやく納得する。
「でも、身体を借りたからって何をすれば……」
「あの子を……今は『Abyss』と呼ばれている私の弟を、助けてください」
「……『Abyss』が、弟?」
「はい。私と『Abyss』は唯一ガイアに直接生み出された存在ですから。ただ、あの子は名前を貰えていないから……」
少女は悲しげに目を伏せた。悲しげにしている理由を尋ねると、名を貰うことが、自我を得る第一段階だと少女は言った。つまり『Abyss』は自我無く、本能のまま行動している事になる。
「あの子は、ガイアの破壊衝動から生まれました。このままでは、あの子は世界を滅ぼしてしまう。全ては私のせいです。だから……お願いします、あの子を助けてください!!」
少女はフェーリエの手を強く握り、懇願した。少女の様子は、まるで必死に懇願しないとフェーリエが行動しないかのように見える。世界が滅びると聞いて、無関係でいられる訳がないというのに。
「戻ったら、何をしたら良いの?」
「受けて、くれるのですか?」
「逆にこの状態で受けない馬鹿はいないわ」
少女は余程、ヒトを信じられないようだ。もしくは、自身の過失で起こった事の尻ぬぐいを誰かに、それこそ自分の生まれ変わりに頼むのは気が引けていたのかも知れない。
「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」
少女は涙を流して礼を述べた。しかし時間が無いのも事実。少女はキュッと目を閉じ、涙を乱暴に拭って真っ直ぐ前を向いた。
「貴女にして欲しいことは……」
彼女の声に、もう震えは無かった。
「うわぁぁぁぁあ!!」
「た、助けてくれぇ」
様々な叫び声が耳に入る。重い瞼をこじ開け、熱い胸部から剣を抜き取る。不思議なことに、血は吹き出なかった。
のっそりと身体を起こし、手が、足が、自由に動くことを確認する。そして、地面に触れることも。
「くそっ!なんでこんなことに!!」
一人の男が目の前に現れる。全身ぼろぼろで、転けたのか顔には泥が付いている。
男は、起き上がったこちらを見て分かりやすく目を見張った。
「お前っ!な……っ!?」
何かされる前に、その男の口を塞ぐ。男の力は音が出なければ効果は無い。また縛られないように、早い内に空気の振動を止めたのだ。
声が出ないことに驚いている男に一瞥を送り、口を開く。
「今、あんたに構ってる暇はないの。そこで大人しくしていて頂戴」
先程とは全く異なるその口調に、男……ウェルブムは呆然とした顔をした。
「さーて、『Abyss』とガイアはどこかなぁ?」
フェーリエは少女の身体で、フッと笑った。
「ようやく、お話が出来ますね」
真っ白な空間に放り投げられたフェーリエの目の前に、先程地面に倒れ伏した少女が立っていた。
「あ……」
「詳しく説明したいのですが、なにぶん時間がないので……今からして欲しいことを話させて貰いますね」
少女は申し訳なさそうに笑い、状況が掴めないフェーリエの手を優しく握った。
「こうしている間にもあの世界の時間は進んでいます。戻ったらガイアがあの子を生み出している頃のはず……まずは貴女に、私の身体をお貸しします。そうすれば、貴女はあの世界に干渉できます」
「え、え……でも、貴女がそのまま行動すれば……」
フェーリエに身体を貸し出すより、その方が早いはずだ。そう思ったフェーリエに、少女は首を振った。
「いいえ、それでは言霊の影響が残っているので自由に動けません。言霊が縛るのはヒトの精神部分です。貴女と私では魂が同じでも精神は異なりますから」
少女の言葉にフェーリエはようやく納得する。
「でも、身体を借りたからって何をすれば……」
「あの子を……今は『Abyss』と呼ばれている私の弟を、助けてください」
「……『Abyss』が、弟?」
「はい。私と『Abyss』は唯一ガイアに直接生み出された存在ですから。ただ、あの子は名前を貰えていないから……」
少女は悲しげに目を伏せた。悲しげにしている理由を尋ねると、名を貰うことが、自我を得る第一段階だと少女は言った。つまり『Abyss』は自我無く、本能のまま行動している事になる。
「あの子は、ガイアの破壊衝動から生まれました。このままでは、あの子は世界を滅ぼしてしまう。全ては私のせいです。だから……お願いします、あの子を助けてください!!」
少女はフェーリエの手を強く握り、懇願した。少女の様子は、まるで必死に懇願しないとフェーリエが行動しないかのように見える。世界が滅びると聞いて、無関係でいられる訳がないというのに。
「戻ったら、何をしたら良いの?」
「受けて、くれるのですか?」
「逆にこの状態で受けない馬鹿はいないわ」
少女は余程、ヒトを信じられないようだ。もしくは、自身の過失で起こった事の尻ぬぐいを誰かに、それこそ自分の生まれ変わりに頼むのは気が引けていたのかも知れない。
「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」
少女は涙を流して礼を述べた。しかし時間が無いのも事実。少女はキュッと目を閉じ、涙を乱暴に拭って真っ直ぐ前を向いた。
「貴女にして欲しいことは……」
彼女の声に、もう震えは無かった。
「うわぁぁぁぁあ!!」
「た、助けてくれぇ」
様々な叫び声が耳に入る。重い瞼をこじ開け、熱い胸部から剣を抜き取る。不思議なことに、血は吹き出なかった。
のっそりと身体を起こし、手が、足が、自由に動くことを確認する。そして、地面に触れることも。
「くそっ!なんでこんなことに!!」
一人の男が目の前に現れる。全身ぼろぼろで、転けたのか顔には泥が付いている。
男は、起き上がったこちらを見て分かりやすく目を見張った。
「お前っ!な……っ!?」
何かされる前に、その男の口を塞ぐ。男の力は音が出なければ効果は無い。また縛られないように、早い内に空気の振動を止めたのだ。
声が出ないことに驚いている男に一瞥を送り、口を開く。
「今、あんたに構ってる暇はないの。そこで大人しくしていて頂戴」
先程とは全く異なるその口調に、男……ウェルブムは呆然とした顔をした。
「さーて、『Abyss』とガイアはどこかなぁ?」
フェーリエは少女の身体で、フッと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる