転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第五章 武闘会?いいえ舞踏会です

#132 社交界と言う名の戦場

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 フェーリエが住むウァリエタース王国は、貴族制が設けられている。
 序列の上から公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵と言う名称が付いている。それぞれ、前世でよく読んだ小説と同じような役割が降られている。勿論、その役割の重要度によって同じ爵位の中でも序列が決まってくる。
 かく言うクラヴィス伯爵家は領地を治めてはいるが、本来の仕事は別にあり、伯爵の中でも序列が高い。その理由は詳しくは教えて貰っていないが、王家がらみであるらしい。
 それ故、秘密裏な役目を与えられているクラヴィス家を、グラディス伯爵家は敵視している。名前も似ているし。
 グラディス家は武官の家だ。クラヴィス家とは領地が隣り合わせで、子だくさんのグラディス家の子供達は、よくクラヴィス家を訪れては何かと貶していった事を覚えている。
 そんな中でも、ウィクトールは兄弟で来ることはなく、いつも一人だった。いつも一人で、胸に空いた穴を必死に埋めるかのように、クロリネを貶した。家ではなく、その家の跡取りを貶したのは、彼の歪んだプライドだったのだろうか。何を言われても兄はけろりとしていた。それがまた、ウィクトールの胸の穴を広げていたが、興味が無かったフェーリエは相手にしなかった。
 そんな彼と、王城に入城しているフェーリエは、人生は何があるか分からないモノだと息を付いた。そもそも転生して記憶を持っている時点で、何があるか分からない。
 馬車が止まる。付いたようだ。
 外から賑やかな声が聞こえてくる。華やかな音楽の調べと、汚い噂を談笑する馬鹿な貴族達。
 兄が扉を開けて一番に馬車を降りる。続いてウィクトールが降りると、外がざわつき出す。ウィクトールに差し出された手に、己の手を重ね、優雅な所作で馬車を降りる。
 さあ、ここからは戦場だ。決して皮を脱がないように、隙を見せないようにしなければ。
「あれは、クラヴィス令嬢とグラディス家の……」
「まさか、婚約を?」
 くだらない勘繰りをし始める婦人方に、飛び切りの笑顔を向け、膝を折る。
「ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう」
 婦人方はたじろぎ、声を詰まらせて上ずらせて挨拶を返した。咎められると思ったのだろうか。
 社交界では、序列が下の者から上の者に声を掛けてはいけないという暗黙のルールがある。彼女たちは子爵以下の婦人。当然、伯爵家の方が序列が上だ。面倒だが、話しかけられないだけましだ。
「行きましょう、ウィクトール様」
「ああ」
 ウィクトールに仮初めの笑顔を向け、長い階段を上る。
 パーティー会場に足を踏み入れると、最も面倒臭い人物が声を掛けてきた。
「ご機嫌よう、フェーリエ様。随分とお久しぶりですわね」
 フェーリエは笑顔が崩れないように意識しながら、声を掛けてきた人物に挨拶を返す。
「ご機嫌よう、イザベラ様。学院を卒業して以来屋敷から出ていないものですから……」
 学院という言葉に、イザベラは眉を寄せて此方を睨む。
 イザベラ=コンスルディア。コンスルディア侯爵家の次女であり、貴族学院の頃からフェーリエが最も苦手な人物である。
(さーて、戦いの始まりね)
 フェーリエは心の中で悪い笑みを浮かべた。


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