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第五章 武闘会?いいえ舞踏会です
#133 学院と友
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貴族学院とは、その名の通り、貴族の子供が通う学校だ。初等部、中等部、高等部とあり、大抵の令嬢は中等部で卒業する。それは何故か。理由は簡単、高等部に上がる試験が難関だからだ。
初等部から中等部まではエスカレートに上がることが出来るが、より高度な事を学ぶ高等部はそもそも入ることが困難となる。しかし、中等部までで十分な教養は身につけられる。だからこそ、跡取りや官僚となる男子以外は、高等部をわざわざ目指そうとしない。
しかしこの目の前のイザベラ令嬢。自尊心が服を着たような存在で、女ながらに高等部へ上がることを初等部から目指していた。何故それを知っているのかって?初等部一年、最初の自己紹介で声高らかに宣言していたからだ。余りのキャラの濃さに笑いそうになるのを堪えたほどだ。
そんな彼女は、何でも一番になりたがった。実際、意識の低い男どもを踏みつけて、語学、算術、歴史学、地学、生命学の一番を取得していた。
虐げられている訳ではないが、それでも女が政治や学業に携わることを疎まれる世の中。女が出しゃばるなと苛められている場面を多々見かけた。手を差し伸べなかったのかって?勿論差し伸べた。しかし、その手は振り払われ『わたくしを哀れまないで!次こそは、貴方に勝ちますわ!!』と叫ばれた。その時フェーリエは気がついた。初等部の六科目のうち、魔法学は自分が一番を取っていたことを。
それからと言うもの、イザベラはフェーリエを何かと目の敵にしてきた。勿論、魔法学の一番は譲らなかった。それだけがフェーリエの特技なのだから。何より、手を抜いて彼女に一番を譲ったとしても、それを彼女は良しとしないだろう。
(だからって、ずっと目の敵にされてもねぇ)
笑顔を貼り付けたままイザベラを見る。初等部の後半から会う機会はグッと減ったが、彼女はフェーリエを覚えていたようだ。何故減ったのかって?理由は簡単。フェーリエが飛び級で中等部へ上がったからだ。魔法学だけは飛び抜けて優れていたフェーリエは、中等部の魔法学科に進級した。中等部からは一つの学科に集中するため、そういう飛び方が可能なのである。
イザベラは他で一番を取っていたが、飛び級はしなかった。飛び級するには、飛び級先の推薦が必要になる。フェーリエの場合、必修科目の終了試験を軽く受け、中等部同等であることが認められたからこそ、推薦が通った。
イザベラは推薦は来ていたが、修了試験で落ちたのだ。常の試験に全力で、中等部までの範囲は勉強できていなかったらしく、こつこつと学年を重ねたようだ。
「フェーリエ様とお話が出来なくなって残念でしたわ」
「ええ、本当に。私たちが中等部へ上がる頃には高等部へ上がってしまいましたものねぇ。私たちとは生きる次元が違うように感じましたわぁ」
イザベラの取り巻きがにこにこと人当たりの良い笑顔を浮かべて話す。心がこもっていない。
「フェーリエ様、あの日の私の宣言を覚えておられますか?」
取り巻きとは対照的に、イザベラは笑みを浮かべていなかった。代わりに、真剣な顔で尋ねる。
宣言?初日の一番取ります宣言だろうか?それとも……。
「あの宣言は今でも私の胸に残っています。私のライバルは貴女だけですわ」
イザベラの真剣な雰囲気に、フェーリエは作り笑いを忘れてイザベラの目を見つめてしまう。
「それでは、ご機嫌よう」
イザベラは丁寧に礼を取って人混みの中に消えていった。
隣にいたウィクトールは、女の戦いにやや恐怖を抱いているようだ。
「大変だな……女性という者は」
「……案外、そうでもない人も居ますよ」
同情から発せられたウィクトールの言葉に、フェーリエはぽつりと返す。
あの頃、もう少し彼女に興味を持っていたら、何かしら関係は変わっただろうか。良きライバルか、あるいは、友になれたかも……。
(……なんてね。らしくないわ)
フェーリエに友はいらない。唯一無二の友は、前世の二人で十分だ。
初等部から中等部まではエスカレートに上がることが出来るが、より高度な事を学ぶ高等部はそもそも入ることが困難となる。しかし、中等部までで十分な教養は身につけられる。だからこそ、跡取りや官僚となる男子以外は、高等部をわざわざ目指そうとしない。
しかしこの目の前のイザベラ令嬢。自尊心が服を着たような存在で、女ながらに高等部へ上がることを初等部から目指していた。何故それを知っているのかって?初等部一年、最初の自己紹介で声高らかに宣言していたからだ。余りのキャラの濃さに笑いそうになるのを堪えたほどだ。
そんな彼女は、何でも一番になりたがった。実際、意識の低い男どもを踏みつけて、語学、算術、歴史学、地学、生命学の一番を取得していた。
虐げられている訳ではないが、それでも女が政治や学業に携わることを疎まれる世の中。女が出しゃばるなと苛められている場面を多々見かけた。手を差し伸べなかったのかって?勿論差し伸べた。しかし、その手は振り払われ『わたくしを哀れまないで!次こそは、貴方に勝ちますわ!!』と叫ばれた。その時フェーリエは気がついた。初等部の六科目のうち、魔法学は自分が一番を取っていたことを。
それからと言うもの、イザベラはフェーリエを何かと目の敵にしてきた。勿論、魔法学の一番は譲らなかった。それだけがフェーリエの特技なのだから。何より、手を抜いて彼女に一番を譲ったとしても、それを彼女は良しとしないだろう。
(だからって、ずっと目の敵にされてもねぇ)
笑顔を貼り付けたままイザベラを見る。初等部の後半から会う機会はグッと減ったが、彼女はフェーリエを覚えていたようだ。何故減ったのかって?理由は簡単。フェーリエが飛び級で中等部へ上がったからだ。魔法学だけは飛び抜けて優れていたフェーリエは、中等部の魔法学科に進級した。中等部からは一つの学科に集中するため、そういう飛び方が可能なのである。
イザベラは他で一番を取っていたが、飛び級はしなかった。飛び級するには、飛び級先の推薦が必要になる。フェーリエの場合、必修科目の終了試験を軽く受け、中等部同等であることが認められたからこそ、推薦が通った。
イザベラは推薦は来ていたが、修了試験で落ちたのだ。常の試験に全力で、中等部までの範囲は勉強できていなかったらしく、こつこつと学年を重ねたようだ。
「フェーリエ様とお話が出来なくなって残念でしたわ」
「ええ、本当に。私たちが中等部へ上がる頃には高等部へ上がってしまいましたものねぇ。私たちとは生きる次元が違うように感じましたわぁ」
イザベラの取り巻きがにこにこと人当たりの良い笑顔を浮かべて話す。心がこもっていない。
「フェーリエ様、あの日の私の宣言を覚えておられますか?」
取り巻きとは対照的に、イザベラは笑みを浮かべていなかった。代わりに、真剣な顔で尋ねる。
宣言?初日の一番取ります宣言だろうか?それとも……。
「あの宣言は今でも私の胸に残っています。私のライバルは貴女だけですわ」
イザベラの真剣な雰囲気に、フェーリエは作り笑いを忘れてイザベラの目を見つめてしまう。
「それでは、ご機嫌よう」
イザベラは丁寧に礼を取って人混みの中に消えていった。
隣にいたウィクトールは、女の戦いにやや恐怖を抱いているようだ。
「大変だな……女性という者は」
「……案外、そうでもない人も居ますよ」
同情から発せられたウィクトールの言葉に、フェーリエはぽつりと返す。
あの頃、もう少し彼女に興味を持っていたら、何かしら関係は変わっただろうか。良きライバルか、あるいは、友になれたかも……。
(……なんてね。らしくないわ)
フェーリエに友はいらない。唯一無二の友は、前世の二人で十分だ。
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