転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
135 / 185
第五章 武闘会?いいえ舞踏会です

#133 学院と友

しおりを挟む
 貴族学院とは、その名の通り、貴族の子供が通う学校だ。初等部、中等部、高等部とあり、大抵の令嬢は中等部で卒業する。それは何故か。理由は簡単、高等部に上がる試験が難関だからだ。
 初等部から中等部まではエスカレートに上がることが出来るが、より高度な事を学ぶ高等部はそもそも入ることが困難となる。しかし、中等部までで十分な教養は身につけられる。だからこそ、跡取りや官僚となる男子以外は、高等部をわざわざ目指そうとしない。
 しかしこの目の前のイザベラ令嬢。自尊心が服を着たような存在で、女ながらに高等部へ上がることを初等部から目指していた。何故それを知っているのかって?初等部一年、最初の自己紹介で声高らかに宣言していたからだ。余りのキャラの濃さに笑いそうになるのを堪えたほどだ。
 そんな彼女は、何でも一番になりたがった。実際、意識の低い男どもを踏みつけて、語学、算術、歴史学、地学、生命学の一番を取得していた。
 虐げられている訳ではないが、それでも女が政治や学業に携わることを疎まれる世の中。女が出しゃばるなと苛められている場面を多々見かけた。手を差し伸べなかったのかって?勿論差し伸べた。しかし、その手は振り払われ『わたくしを哀れまないで!次こそは、貴方に勝ちますわ!!』と叫ばれた。その時フェーリエは気がついた。初等部の六科目のうち、魔法学は自分が一番を取っていたことを。
 それからと言うもの、イザベラはフェーリエを何かと目の敵にしてきた。勿論、魔法学の一番は譲らなかった。それだけがフェーリエの特技なのだから。何より、手を抜いて彼女に一番を譲ったとしても、それを彼女は良しとしないだろう。
(だからって、ずっと目の敵にされてもねぇ)
 笑顔を貼り付けたままイザベラを見る。初等部の後半から会う機会はグッと減ったが、彼女はフェーリエを覚えていたようだ。何故減ったのかって?理由は簡単。フェーリエが飛び級で中等部へ上がったからだ。魔法学だけは飛び抜けて優れていたフェーリエは、中等部の魔法学科に進級した。中等部からは一つの学科に集中するため、そういう飛び方が可能なのである。
 イザベラは他で一番を取っていたが、飛び級はしなかった。飛び級するには、飛び級先の推薦が必要になる。フェーリエの場合、必修科目の終了試験を軽く受け、中等部同等であることが認められたからこそ、推薦が通った。
 イザベラは推薦は来ていたが、修了試験で落ちたのだ。常の試験に全力で、中等部までの範囲は勉強できていなかったらしく、こつこつと学年を重ねたようだ。
「フェーリエ様とお話が出来なくなって残念でしたわ」
「ええ、本当に。私たちが中等部へ上がる頃には高等部へ上がってしまいましたものねぇ。私たちとは生きる次元が違うように感じましたわぁ」
 イザベラの取り巻きがにこにこと人当たりの良い笑顔を浮かべて話す。心がこもっていない。
「フェーリエ様、あの日のわたくしの宣言を覚えておられますか?」
 取り巻きとは対照的に、イザベラは笑みを浮かべていなかった。代わりに、真剣な顔で尋ねる。
 宣言?初日の一番取ります宣言だろうか?それとも……。
「あの宣言は今でも私の胸に残っています。私のライバルは貴女だけですわ」
 イザベラの真剣な雰囲気に、フェーリエは作り笑いを忘れてイザベラの目を見つめてしまう。
「それでは、ご機嫌よう」
 イザベラは丁寧に礼を取って人混みの中に消えていった。
 隣にいたウィクトールは、女の戦いにやや恐怖を抱いているようだ。
「大変だな……女性という者は」
「……案外、そうでもない人も居ますよ」
 同情から発せられたウィクトールの言葉に、フェーリエはぽつりと返す。
 あの頃、もう少し彼女に興味を持っていたら、何かしら関係は変わっただろうか。良きライバルか、あるいは、友になれたかも……。
(……なんてね。らしくないわ)
 フェーリエに友はいらない。唯一無二の友は、前世の二人で十分だ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

気弱令嬢の悪役令嬢化計画

みおな
ファンタジー
 事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?  しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?  いやいやいや。 そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!  せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。  屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました

編端みどり
恋愛
魔力の高い家系で、当然魔力が高いと思われていたエルザは、魔力測定でまさかの魔力無しになってしまう。 即、婚約破棄され、家からも勘当された。 だが、エルザを捨てた奴らは知らなかった。 魔力無しに備わる特殊能力によって、自分達が助けられていた事を。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

異世界魔法、観察してみたら

猫チュー
ファンタジー
異世界に転生した少年レイは、ある日、前世の記憶を取り戻す。 未知でありながら日常の一部となっている魔法に強い興味を抱いた彼は、村の魔法オババに師事し、修行の日々を送る。 やがてレイは、この世界の魔法が、地球で学んだ知識と多くの共通点を持つことに気づいていく。 師の元を離れ、世界を知っていく中で、少年は魔法を観察し、考え、少しずつ理解を深めていく。 これは、少年レイが世界を、魔法を、科学していく物語。

異世界に転生したので錬金術師としてダラダラ過ごします

高坂ナツキ
ファンタジー
 車道に飛び出した猫を助けた吾妻和央は車に轢かれて死んでしまった。  気が付いたときには真っ白な空間の中にいて目の前には発光していて姿形が良くわからない人物が。  その人物は自分を神と名乗り、主人公を異世界に転生させてくれると言う。  よくわからないけれど、せっかく異世界に転生できるのならと、元の世界ではできなかったことをしてダラダラ過ごしたいと願う。  これは錬金術師と付与魔術師の天職を与えられた男が異世界にてだらだら過ごすだけの物語。 ※基本的に戦闘シーンなどはありません。異世界にてポーションを作ったり魔導具を作ったりなどの日常がメインです。 投稿開始の3日間、1/1~1/3は7:00と17:00の2回投稿。1/4以降は毎日7:00に投稿します。 2月以降は偶数日の7:00のみの投稿となりますので、よろしくお願いします。

処理中です...