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第五章 武闘会?いいえ舞踏会です
#137 かのヒトは
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(剣士さん?仮面してないけど、剣士さんよね?)
予期せぬ人物の登場に、フェーリエは混乱していた。ユースが貴族であることはなんとなく分かっていたが、まさか出くわすとは思わなかったのだ。そして何より、その顔の美しさに息を呑んだ。癖のない銀の髪に、手を伸ばしたくなったほど。
「何をしているんだ」
固まって動けないフェーリエに、ユース(仮)がもう一度問いかける。
声も立ち居振る舞いも、背格好も雰囲気も似ている。これは間違いなくユースではないだろうか。
(はっ……でも待って。私たち、お互いのことは探らないって約束してるんだった。じゃぁ……)
一息吸って、フェーリエは令嬢の皮を被った。
「少し迷ってしまいまして。大広間に戻りたいのですが……」
顔に手を当て、首を少し傾げる。如何にも困ってます、助けて下さいと言う令嬢らしい仕草だ。仕上げとばかりに、チラリと上目遣いで彼を見ると、彼は興味なさげな目を此方に向けた。
(あ、紫がかった青い目……やっぱり剣士さんだ)
仮面から見えていた彼の目と同じ色。紫は珍しいからこそ、間違いないと確信を持てた。しかし、此方は気づいたのにユースは気づいてくれないのか。顔を隠しているのは互いに同じだというのに。
「大広間には……」
彼は興味が無いような目をしたにも関わらず、親切にも道を教えてくれた。ただそれが、右へ左へ真っ直ぐと、と言う言葉が五個以上連なったとき、理解することを放棄してしまった。複雑すぎないか。この城。
「……えっと、教えて頂いてありがとうございます」
それでは……と軽く会釈をして朧気な記憶で廊下を歩こうとすると、
「待て、そっちじゃない」
「っ!?」
少し強めに腕をつかまれる。それは、冒険しているときにもフェーリエを制止する動作だった。
合ったばかりの令嬢にするには少々強引なそれに、フェーリエは苛々している自分に気づく。
(ん?なんで?)
とっさに湧いた自分の感情に、自分自身で疑問が湧く。
その動作は彼にとっては癖なのだろう。自分以外にも簡単に腕を掴むことに、何故苛々するのか。
「どうした?」
再び固まったフェーリエに、ユースが声を掛けてくる。腕を……と小さく呟くと、彼は気まずそうに手を離した。
「近くまで送ろう。ここまでの道は入り組んでいるから慣れていないと戻れないだろうな」
「……はい、ありがとうございます」
顔を上げられない。前を歩くユースの背中を無言で追いかける。何故こんなにもやもやするのだろう。
「リエ!」
聞き慣れた声がフェーリエを呼ぶ。パッと顔を上げるとそこには兄がいた。
「お兄様……」
「全く、城で迷うなんて……相変わらずドジだね」
兄の少し困ったような笑顔にフェーリエは言い返そうとしたが、ここが家ではないことに気づく。
「家族に会えたのならもう大丈夫だな」
「あっ……」
ユースの声にここまで連れてきてくれた礼を言おうと振り返ると、彼はもう身を翻して歩いて言ってしまった。
「お礼が……」
「まさかあの第三王子に助けられてるとはね」
「え?第三王子?」
兄の言葉に、自分の耳を疑った。王子……ユースが?
「で、でも、彼は紫がかった青い目をしていましたよ?」
王家が紫の瞳を持つことは有名だ。確かに彼は紫を持ってはいるが、第二王女ほど見事な色ではなかった。
「それはほら、彼の母君の血の特性がね」
その言葉に、フェーリエは第三王子の情報を思い出す。
ユスティア=ルプス=ウァリエタース。多様性を認めつつも人間族以外を蔑むこの国では珍しい、獣人族の王妃を母に持つ王子である。
予期せぬ人物の登場に、フェーリエは混乱していた。ユースが貴族であることはなんとなく分かっていたが、まさか出くわすとは思わなかったのだ。そして何より、その顔の美しさに息を呑んだ。癖のない銀の髪に、手を伸ばしたくなったほど。
「何をしているんだ」
固まって動けないフェーリエに、ユース(仮)がもう一度問いかける。
声も立ち居振る舞いも、背格好も雰囲気も似ている。これは間違いなくユースではないだろうか。
(はっ……でも待って。私たち、お互いのことは探らないって約束してるんだった。じゃぁ……)
一息吸って、フェーリエは令嬢の皮を被った。
「少し迷ってしまいまして。大広間に戻りたいのですが……」
顔に手を当て、首を少し傾げる。如何にも困ってます、助けて下さいと言う令嬢らしい仕草だ。仕上げとばかりに、チラリと上目遣いで彼を見ると、彼は興味なさげな目を此方に向けた。
(あ、紫がかった青い目……やっぱり剣士さんだ)
仮面から見えていた彼の目と同じ色。紫は珍しいからこそ、間違いないと確信を持てた。しかし、此方は気づいたのにユースは気づいてくれないのか。顔を隠しているのは互いに同じだというのに。
「大広間には……」
彼は興味が無いような目をしたにも関わらず、親切にも道を教えてくれた。ただそれが、右へ左へ真っ直ぐと、と言う言葉が五個以上連なったとき、理解することを放棄してしまった。複雑すぎないか。この城。
「……えっと、教えて頂いてありがとうございます」
それでは……と軽く会釈をして朧気な記憶で廊下を歩こうとすると、
「待て、そっちじゃない」
「っ!?」
少し強めに腕をつかまれる。それは、冒険しているときにもフェーリエを制止する動作だった。
合ったばかりの令嬢にするには少々強引なそれに、フェーリエは苛々している自分に気づく。
(ん?なんで?)
とっさに湧いた自分の感情に、自分自身で疑問が湧く。
その動作は彼にとっては癖なのだろう。自分以外にも簡単に腕を掴むことに、何故苛々するのか。
「どうした?」
再び固まったフェーリエに、ユースが声を掛けてくる。腕を……と小さく呟くと、彼は気まずそうに手を離した。
「近くまで送ろう。ここまでの道は入り組んでいるから慣れていないと戻れないだろうな」
「……はい、ありがとうございます」
顔を上げられない。前を歩くユースの背中を無言で追いかける。何故こんなにもやもやするのだろう。
「リエ!」
聞き慣れた声がフェーリエを呼ぶ。パッと顔を上げるとそこには兄がいた。
「お兄様……」
「全く、城で迷うなんて……相変わらずドジだね」
兄の少し困ったような笑顔にフェーリエは言い返そうとしたが、ここが家ではないことに気づく。
「家族に会えたのならもう大丈夫だな」
「あっ……」
ユースの声にここまで連れてきてくれた礼を言おうと振り返ると、彼はもう身を翻して歩いて言ってしまった。
「お礼が……」
「まさかあの第三王子に助けられてるとはね」
「え?第三王子?」
兄の言葉に、自分の耳を疑った。王子……ユースが?
「で、でも、彼は紫がかった青い目をしていましたよ?」
王家が紫の瞳を持つことは有名だ。確かに彼は紫を持ってはいるが、第二王女ほど見事な色ではなかった。
「それはほら、彼の母君の血の特性がね」
その言葉に、フェーリエは第三王子の情報を思い出す。
ユスティア=ルプス=ウァリエタース。多様性を認めつつも人間族以外を蔑むこの国では珍しい、獣人族の王妃を母に持つ王子である。
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