転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第六章 舞踏会?いいえ今度こそ武闘会です

#149 組む相手は知ってる相手?

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 ユースは仮面を被った男と対峙していた。
 個室であるため、仮面しかいないよく分からない空間だ。
 試合終了後、ペアを組む相手と親睦を深める為の時間が設けられた。ユースが組む相手が、この目の前にいる仮面の男である。どうやら本来のランクと名前を隠してエントリーしているらしく、接しづらいのが現状だ。
(さて、どうするべきか)
 顔を隠しているが、ユースは彼を知っていた。一試合目の彼の戦い方や背格好、立ち居振る舞いから推察した。恐らく間違いないだろう。だがそれを言っては、彼が隠している意味が無い。ここは知らない振りをするべきだろう。
「ファルサ、と言ったか」
「はい」
 名前の確認に、男は小さく頷いた。偽名だが、反応が悪いわけではない。よく使っている名前なのだろうか。
「俺はユースだ。君の戦い方は一開戦目で見てある程度把握している。だが、ここから数戦共闘しなければならない以上、少し手合わせをしてみないか?」
「場所があるのですか?」
「少し郊外に出ればいくらでもあるだろう。それとも、外では戦いたくない理由でも?」
 手合わせを躊躇うような声色に、少し圧を掛けてみる。
 仮面では表情を伺えない。ルナはよく仮面相手に感情を読み取っていたものだ。
「いえ、問題ありません」
 彼は頭を振って、協力の意を示した。



(えっとぉ……)
 フェーリエは絶賛困っていた。組む相手が分かった途端、個室に放り込まれた。見知らぬ人と一緒に。
(どうしよう。何話せば良いんだろう。フード被ってて表情分からないし……)
 自分もフードを被っている事は棚に上げ、フェーリエは困惑していた。
 組む相手は、フェーリエより少し小柄な恐らく女のヒトだ。名前はクロー。恐らく偽名。
「私はクロー。貴女は?」
 鈴を転がしたような可愛らしい声が、フードの中から発せられた。余程のことがなければ、きっと女性だ。
「ルナ、です」
「ルナ……良い名前ね。明日はよろしく」
「は、はい!」
 落ち着いた声で、酷く緊張する。王族を相手しているような、気高さと気品をひしひしと感じる。思い違いであって欲しい。
(きっと育ちが良いだけの一般人!!王族な訳ない!そう信じたい……でも、この声凄く聞いたことがあるぅ……)
 ここ最近になって相方が王族だと判明した。その事実はかなり心に来る。一貴族の一令嬢。王族は絶対的な服従を捧げるべき相手で、身近に居て良い人物ではない。
「私は回復魔法を使うの。他にも、支援なら出来るけれど……主な攻撃は貴女に任せるしかないわ」
「回復魔法!?凄いですね!攻撃は私に任せてください!頑張ります!」
 回復魔法の使い手は主に協会に縛られる。こんな形で一緒に戦えるのは光栄な事だ。
「ふふっ……頼もしいわ。お願いね」
「はい!」
 声で判断するのも失礼かも知れないが、絶対に美少女だ。是非ご尊顔を拝見したい。叶わない願いだろうか。
 フェーリエの下心を知らずに、クローは優雅な笑い声をだす。
 どれ程の使い手なのだろうか。この個人戦で生き残っているのだ。きっと素晴らしい使い手だ。
(ん?支援だけでどうやって勝ち残ってるの?)
 疑問に思ってクローを見たが、彼女が答えることはなかった。

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