転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第六章 舞踏会?いいえ今度こそ武闘会です

#154 チーム戦其の五

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「次はお知り合いのようですが、大丈夫ですか?」
 控え室に戻ると、クローが尋ねてきた。知り合いと戦えるのかと聞きたいのだろう。
 次の相手はグレッグとレイモンドだ。トーナメントの結果、運良くパーティー同士のペアとなった珍しい一組だ。確かに彼らとは様々な縁で一緒になることが多かった。だが、それとこれとは話が別だろう。
「全然大丈夫ですよ。むしろ実力を知っている分、そこそこ本気を出せます。それよりも、クローは血とか見るの苦手ですか?」
「苦手だったらここにしませんよ。まぁ、好きでもないですが」
「ですよね。そうだ、……って出来ますか?」
 クローの耳があると思わしき場所に口を近づけて小さい声で尋ねる。聞かれた事に一瞬首を傾げた彼女は、可能ですよ、と答えた。そして、
「ですが、やり過ぎないでくださいね?」
 と釘を刺された。



「修復も無事に終わりました!これより、チーム戦三試合目を執り行いと思います!!」
 司会者の声に、歓声が飛び交う。宣言通り、エルゴーのめり込んだ壁は修復され、最早何所に穴があったのかが分からないほどに綺麗になっている。これも、魔法がなせる技なのだ。
「三試合目の選手の入場です!ルナ選手、クロー選手!」
 わぁぁ!と沸き立つ歓声を浴びながら、フェーリエ達は入場した。先程までの戦いで、かなり株が上がったようだ。
「グレッグ選手、レイモンド選手!」
 反対側からは、顔見知りが入場した。声援はより大きくなり、飛んでくる声の中には「お前らに賭けてんだから後輩に負けんじゃねぇぞ!!」というなんとも勝手な発言があった。それだけ信頼されているのだろう。彼らはそれなりに有名なのだ。
「嬢ちゃん!手加減頼むぜ?」
「なら、グレッグさん達も手加減お願いしますね」
「それは聞けない話だなぁ。ちょっとでも手を抜いたら直ぐにやられちまう」
「では、私もそこそこ本気で生かせて貰いますね」
 開始の合図が響く。
 大剣を構えたグレッグは、一瞬で此方に走り寄ってきた。
「炎を纏え……爆炎剣!」
 グレッグの小さく呟いた言葉で、大剣が炎を帯びる。あれは、切った場所から爆発する剣士のよく使う補助魔法だ。属性付与が出来るが、魔法に耐えられないなまくらでは溶けて消えてしまう程に高温になる事がある。勿論、ヒトに向けて良いものではない。
「あら、私を殺すつもりですか?」
「これぐらいしないと障壁すら破れないだろ?」
 にやりと笑ったグレッグの剣に、水を落とす。ジュワッと音を立てて水は全て蒸発した。どうやら少なすぎて打ち負けてしまったようだ。
(かなり使い込まれた魔法か……魔力的には勝てると思ったんだけどな)
 振り上げられた大剣が、フェーリエの障壁に触れる前に弾かれる。別に防げたが、一人で戦いすぎるのも良くない。協調性があることを見せつけないと、討伐隊には入れないのだから。最も、弾いたのがクローだと気付くヒトは少ないだろうが。
「風よ吹き荒れろ『風嵐サイクロン』」
 慣れない詠唱を口にする。だが、イメージ通りグレッグを巻き込んだ風は見事な竜巻を起こした。
 魔力を感知したフェーリエは、続けて魔法を発動した。
「風と混ざり、業火よ天を焦がせ『紅炎プロミネンス』」
 深い赤が目の前で弾ける。飛び散る火花は、障壁に弾かれて灰になって消えていく。
 観客席では、ザワザワと戸惑う声が上がる。
 見事に膨れあがった巨大な炎柱は、次第に萎んでいく。後に残ったのは、焼け焦げて最早誰であったのか分からない程に黒炭だった。
「……こ、これは……ルナ選手、反則で……」
「司会者さん。少し待って下さい」
 焦ったように会場に飛び出してきた司会者を制止し、フェーリエはフードの下で微笑む。
 成る程そう来たか、と。
 
 
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