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第七章 火竜討伐
#162 協力者
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「第一班!足止め!」
メディオの号令に、騎士達が火竜に近寄る。無謀にも火竜の足下で盾を構える彼らでは、足止めにすらならないだろう。
追い抜かれる形になったユースは、一人呆然と立つルナに近づく。彼女が小さく制止の声を掛けていたのは聞こえていた。騎士達と目的が逆である以上、止めても不思議は無いのだが、その様子は少し違和感があった。
「どうした」
小さく呼びかけると、彼女は悲痛な顔で此方を振り仰いだ。
「声が……火竜の……」
「声?」
ルナは声を震わせて言った。眉を寄せて問い返すと、幾らか落ち着いたように話を纏めて語った。
「頭に直接響く声が聞こえたんです。理性を無くす前に帰ってくれって……」
「つまり、今はまだ理性があるのか?」
「はい。でも、苦しそうでした。今すぐに話を聞かないと……」
そこで、彼女は言葉を区切って両手で頭を押さえた。どうした、と問いかけようとして、続いた咆哮が耳を貫く。
「グアァァァァアアアアア!!!!!!」
視線を火竜に向けると、メディオが火竜に吹き飛ばされていた。手に持っていた剣が、彼と一緒に宙を舞う。
「ぅ……何、が……」
右手で頭を押さえたまま顔を上げたルナは、落下するメディオを見て左手を彼に向けて伸ばした。彼は風に包まれ、落下のダメージ無く地面に降ろされた。ルナの魔法だろう。ついでのように剣も彼の近くに運ばれ、誰かを傷つける様な事にはならなかった。
未だに頭を抑えているルナを見て、ああ、と一人納得する。火竜の声が直接頭に響いた、と彼女は言っていた。つまり、先程の叫び以上の声が頭に響いたのだろう。
頭を押さえる彼女の右手に手を重ね、見下ろす。ルナは微かに身を震わせ、恐る恐ると言った風に此方を見上げる。
ルナが何か言葉を発する前に、グレッグがニヤニヤしながら声を掛けてくる。
「おいおい、いちゃついてる暇じゃ無いだろ?」
「そんな事はしていない」
「まぁ、それは置いといて。どうするよ。完全に出遅れちまった」
大剣を担いで横目で騎士達を見るグレッグには、先程の軽い笑顔は浮かんでいなかった。鋭い目つきに、自分よりも経験を踏んだ冒険者である事を思い出す。
「どうして、私達に聞くんですか?」
幾らか調子を取り戻したルナが、グレッグに問い返す。当たり前のように指示を仰いできたグレッグに、ユースも疑問を感じていた。彼らも騎士に交って火竜を戦えば良いのでは無いだろうか。彼らは、ユース達とは目的が違うのだから。
そう思ったが、次に掛けられたグレッグの言葉に、ユースは驚きで目を見張った。
「何でって、嬢ちゃん達は火竜を助けたいんだろう?なら、俺たちはそれに協力しようと思ってな」
「どうして、知ってるんですか?」
「嬢ちゃんの人と成りは少しは知ってるつもりだ。正直、あの状態の火竜をどうにか出来るとは思えないが、嬢ちゃんなら出来そうな気がしてな。気にくわない騎士に従うより、嬢ちゃんに従った方が気分的にも良い」
笑ってそう言ったグレッグは、後ろにいたレイモンド、アルス、エルゴーを指さし、あいつらも同意見らしい、と言った。
その様子を見ていたファルサとクローが此方に近づき、口々にこう言った。
「私も彼女に従います」
「私も、火竜を殺すことは気分的に宜しくありませんし、火竜を助けることは可能だと思っています」
「皆さん……」
思ってもみなかった協力の言葉に、ルナは感極まったように肩を震わせた。しかし、涙を流す事は無く、毅然と顔を上げ、拳を握りしめた。
「ありがとうございます!」
張り上げた声は明るく、未来への希望で弾んでいた。
メディオの号令に、騎士達が火竜に近寄る。無謀にも火竜の足下で盾を構える彼らでは、足止めにすらならないだろう。
追い抜かれる形になったユースは、一人呆然と立つルナに近づく。彼女が小さく制止の声を掛けていたのは聞こえていた。騎士達と目的が逆である以上、止めても不思議は無いのだが、その様子は少し違和感があった。
「どうした」
小さく呼びかけると、彼女は悲痛な顔で此方を振り仰いだ。
「声が……火竜の……」
「声?」
ルナは声を震わせて言った。眉を寄せて問い返すと、幾らか落ち着いたように話を纏めて語った。
「頭に直接響く声が聞こえたんです。理性を無くす前に帰ってくれって……」
「つまり、今はまだ理性があるのか?」
「はい。でも、苦しそうでした。今すぐに話を聞かないと……」
そこで、彼女は言葉を区切って両手で頭を押さえた。どうした、と問いかけようとして、続いた咆哮が耳を貫く。
「グアァァァァアアアアア!!!!!!」
視線を火竜に向けると、メディオが火竜に吹き飛ばされていた。手に持っていた剣が、彼と一緒に宙を舞う。
「ぅ……何、が……」
右手で頭を押さえたまま顔を上げたルナは、落下するメディオを見て左手を彼に向けて伸ばした。彼は風に包まれ、落下のダメージ無く地面に降ろされた。ルナの魔法だろう。ついでのように剣も彼の近くに運ばれ、誰かを傷つける様な事にはならなかった。
未だに頭を抑えているルナを見て、ああ、と一人納得する。火竜の声が直接頭に響いた、と彼女は言っていた。つまり、先程の叫び以上の声が頭に響いたのだろう。
頭を押さえる彼女の右手に手を重ね、見下ろす。ルナは微かに身を震わせ、恐る恐ると言った風に此方を見上げる。
ルナが何か言葉を発する前に、グレッグがニヤニヤしながら声を掛けてくる。
「おいおい、いちゃついてる暇じゃ無いだろ?」
「そんな事はしていない」
「まぁ、それは置いといて。どうするよ。完全に出遅れちまった」
大剣を担いで横目で騎士達を見るグレッグには、先程の軽い笑顔は浮かんでいなかった。鋭い目つきに、自分よりも経験を踏んだ冒険者である事を思い出す。
「どうして、私達に聞くんですか?」
幾らか調子を取り戻したルナが、グレッグに問い返す。当たり前のように指示を仰いできたグレッグに、ユースも疑問を感じていた。彼らも騎士に交って火竜を戦えば良いのでは無いだろうか。彼らは、ユース達とは目的が違うのだから。
そう思ったが、次に掛けられたグレッグの言葉に、ユースは驚きで目を見張った。
「何でって、嬢ちゃん達は火竜を助けたいんだろう?なら、俺たちはそれに協力しようと思ってな」
「どうして、知ってるんですか?」
「嬢ちゃんの人と成りは少しは知ってるつもりだ。正直、あの状態の火竜をどうにか出来るとは思えないが、嬢ちゃんなら出来そうな気がしてな。気にくわない騎士に従うより、嬢ちゃんに従った方が気分的にも良い」
笑ってそう言ったグレッグは、後ろにいたレイモンド、アルス、エルゴーを指さし、あいつらも同意見らしい、と言った。
その様子を見ていたファルサとクローが此方に近づき、口々にこう言った。
「私も彼女に従います」
「私も、火竜を殺すことは気分的に宜しくありませんし、火竜を助けることは可能だと思っています」
「皆さん……」
思ってもみなかった協力の言葉に、ルナは感極まったように肩を震わせた。しかし、涙を流す事は無く、毅然と顔を上げ、拳を握りしめた。
「ありがとうございます!」
張り上げた声は明るく、未来への希望で弾んでいた。
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