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第七章 火竜討伐
#161 火山
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「それにしても熱いな」
グレッグがげんなりした顔で呟く。先頭を歩いていたフェーリエは、振り返りながら彼に文句をぶつけた。
「グレッグさんが言うからもっと熱くなったじゃないですか。こう言うのは言葉にしたら駄目なんですよ」
「すまんすまん」
フェーリエ達は火山を上っていた。火山だけあって彼方此方から溶岩が流れ、温度は馬鹿にならないぐらい高い。フードの下で冷気を発生させ温度を調節しながら、フェーリエは山を見上げた。
空は黒雲がかかっており、朝だと言うのに辺りは薄暗い。だが地面からは溶岩が溢れ、それが光源となっているため明かりに困る事は無い。
『グ……ゥ……』
(呻き声?……火竜の……?)
熱風に混じってだろうか。苦しげな呻き声が聞こえる。だが、周りにはそれを聞き取ったヒトは居ないようだった。
何も考える暇もなく、ここまで来てしまった。知性の有る筈の火竜が、何故ヒトを襲ったのか。本当に、殺すしか無いのだろうか。
「早く動け!もたもたするな!!」
後ろから罵声が飛んでくる。第三騎士団だ。
フェーリエ達冒険者を先達に任命した騎士達は、後ろで偉そうに踏ん反り返っている。真新しい鎧が溶岩の光を受けて鈍い光を放っている。ものすごく熱そうだ。
(先達って言っても、ただの囮でしょ。魂胆が見え透いてるのよね)
騎士達に急かされたフェーリエ、頬を引きつらせながら歩く。彼らの傲慢っぷりにもう慣れてしまった冒険者達も、文句を一つも言わない。事が終わったら少しぐらい言い返しても良い様な気がする。
そうこう考えている間にも、着実に火竜に近づいている。火竜の魔力に当てられた火山が、溶岩を煮えたぎらせているのがよく分かる。これ以上火竜が暴走すれば、火山の噴火で討伐所では無くなるだろう。下手をすれば、皆溶岩に飲み込まれてしまう。
「大丈夫か」
横から、声を掛けられる。ユースだ。
「……大丈夫です。うだうだ悩んでも、仕方が無いですから」
「……いざとなったら、…………からな」
「ん?なんですか?」
顔を上げて聞き返す。小さな声で、一部聞き取れなかった。彼は、聞かれなかったことに少しホッとしたような残念そうな顔で、なんでもない、そう言った。
「見せつけてくれますね」
ユースの反対側から、するりと抱きつかれる。
「クロー?」
「ルナ、貴女が怪我をすることは滅多に無いでしょうが、私が居ることは忘れないで下さいね」
「う、うん」
クローの言葉に、咄嗟に返事を返す。何故今そういうことを言うのだろうか。怪我をしても、回復魔法が使えるクローが居ればなんとかなると言いたいのだろう。だが、それをフェーリエだけに言っても良いのだろうか。
一人眉を寄せて考えていたフェーリエは、フェーリエを挟んで火花が散っていた事を一人だけ知らなかった。
とうとう辿り着いたそこには、正しく夢物語で語られるような竜が鎮座していた。
本来赤い鱗で覆われている筈の身体は、所々黒く変色していた。漂う火竜の魔力も、どこか正常では無い様に感じる。記憶に無い火竜の様子に、フェーリエは眉を寄せた。
『誰、だ……』
苦しげな声が頭に直接響く。この声もまた、他のヒトには聞こえてい無い様だった。
『ヒトの子か……早く、立ち去れ……我の理性が……消える、前に……』
「っ!?」
頭に響く火竜の声に、フェーリエは足を止めた。フェーリエの様子を不思議に思ったユースが、気遣わしげに此方を見る。
「火竜だ!総員、武器を構えろ!!」
「ぁ、待っ……」
「突撃!!」
「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
フェーリエのか細い制止は届かず、騎士達は火竜に向かって走り出した。
グレッグがげんなりした顔で呟く。先頭を歩いていたフェーリエは、振り返りながら彼に文句をぶつけた。
「グレッグさんが言うからもっと熱くなったじゃないですか。こう言うのは言葉にしたら駄目なんですよ」
「すまんすまん」
フェーリエ達は火山を上っていた。火山だけあって彼方此方から溶岩が流れ、温度は馬鹿にならないぐらい高い。フードの下で冷気を発生させ温度を調節しながら、フェーリエは山を見上げた。
空は黒雲がかかっており、朝だと言うのに辺りは薄暗い。だが地面からは溶岩が溢れ、それが光源となっているため明かりに困る事は無い。
『グ……ゥ……』
(呻き声?……火竜の……?)
熱風に混じってだろうか。苦しげな呻き声が聞こえる。だが、周りにはそれを聞き取ったヒトは居ないようだった。
何も考える暇もなく、ここまで来てしまった。知性の有る筈の火竜が、何故ヒトを襲ったのか。本当に、殺すしか無いのだろうか。
「早く動け!もたもたするな!!」
後ろから罵声が飛んでくる。第三騎士団だ。
フェーリエ達冒険者を先達に任命した騎士達は、後ろで偉そうに踏ん反り返っている。真新しい鎧が溶岩の光を受けて鈍い光を放っている。ものすごく熱そうだ。
(先達って言っても、ただの囮でしょ。魂胆が見え透いてるのよね)
騎士達に急かされたフェーリエ、頬を引きつらせながら歩く。彼らの傲慢っぷりにもう慣れてしまった冒険者達も、文句を一つも言わない。事が終わったら少しぐらい言い返しても良い様な気がする。
そうこう考えている間にも、着実に火竜に近づいている。火竜の魔力に当てられた火山が、溶岩を煮えたぎらせているのがよく分かる。これ以上火竜が暴走すれば、火山の噴火で討伐所では無くなるだろう。下手をすれば、皆溶岩に飲み込まれてしまう。
「大丈夫か」
横から、声を掛けられる。ユースだ。
「……大丈夫です。うだうだ悩んでも、仕方が無いですから」
「……いざとなったら、…………からな」
「ん?なんですか?」
顔を上げて聞き返す。小さな声で、一部聞き取れなかった。彼は、聞かれなかったことに少しホッとしたような残念そうな顔で、なんでもない、そう言った。
「見せつけてくれますね」
ユースの反対側から、するりと抱きつかれる。
「クロー?」
「ルナ、貴女が怪我をすることは滅多に無いでしょうが、私が居ることは忘れないで下さいね」
「う、うん」
クローの言葉に、咄嗟に返事を返す。何故今そういうことを言うのだろうか。怪我をしても、回復魔法が使えるクローが居ればなんとかなると言いたいのだろう。だが、それをフェーリエだけに言っても良いのだろうか。
一人眉を寄せて考えていたフェーリエは、フェーリエを挟んで火花が散っていた事を一人だけ知らなかった。
とうとう辿り着いたそこには、正しく夢物語で語られるような竜が鎮座していた。
本来赤い鱗で覆われている筈の身体は、所々黒く変色していた。漂う火竜の魔力も、どこか正常では無い様に感じる。記憶に無い火竜の様子に、フェーリエは眉を寄せた。
『誰、だ……』
苦しげな声が頭に直接響く。この声もまた、他のヒトには聞こえてい無い様だった。
『ヒトの子か……早く、立ち去れ……我の理性が……消える、前に……』
「っ!?」
頭に響く火竜の声に、フェーリエは足を止めた。フェーリエの様子を不思議に思ったユースが、気遣わしげに此方を見る。
「火竜だ!総員、武器を構えろ!!」
「ぁ、待っ……」
「突撃!!」
「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
フェーリエのか細い制止は届かず、騎士達は火竜に向かって走り出した。
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∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
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