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第七章 火竜討伐
#170 消えた火竜
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火山に近づけば近づくほど、邪気とは違う濃密な魔力に包まれた。
その魔力は火山を覆うように漂っており、決してフェーリエ達を害する類いのものではなかった。
緩やかに火山の上を飛び、旋回をしながら頂上への着地を目指す。急降下は慣れていない人間には恐ろしいらしいので、フェーリエなりに気遣った飛び方だ。
着地したフェーリエ達はまず、居るはずの存在が居ない事に驚いた。火竜の姿が見えなかったのだ。
「どういうことだ!貴様!場所を間違えたのではあるまいな!!」
メディオがフェーリエに詰め寄る。場所を間違えたと言われても、来た道を戻ったつもりのフェーリエにはどうすることも出来ない。そもそも、先程の戦闘痕も残っている。まず間違いは無い筈だ。と、言うことをメディオに説明しても聞く耳を持たないだろう。不敬とは思いつつも、ついついユスティアに目線を送ってしまう。どうか助け船を出して欲しい。
フェーリエの視線に気付いたユスティアだったが、彼も自分が説明しても意味が無いという事実に目を伏せた。
二人で顔を見合わせていると、王女がフェーリエの背中に軽く手を添えた。
「火竜の魔力はここから漂っています。それに、先程までの戦闘痕もここにある。間違いなく、場所はあっています。副団長、ヒトによって態度を変えるのはいけませんよ?」
王女の無言の圧力にたじろいだメディオだったが、態度の話で顔色を変えた。
初対面で既にフェーリエは敬意を表すに値しない認定を受けている。ユスティアに至っては、王子だが『獣王子』と侮蔑の意を表していた。
(ああいうヒトにはいくら言っても無駄だろうなぁ)
諦めを込めてメディオを見ていると、王女の口から思いがけない言葉が飛び出した。
「私にもお兄様と同じように接して下さいね」
「「「えっ!?」」」
嫌なことにメディオと声が被ってしまった。ユスティアとも被ったがそれは別に構わない。
そんなことより、今王女はなんと言ったのだろうか。フェーリエは自分の耳を疑った。
「私はお兄様より年下ですもの。お兄様より敬われるのはおかしいですからね」
王女は満面の笑みでそう言い募った。
(う、美しい……じゃなくて……圧が凄い)
ユスティアをチラリと見ると、顔に手を当て少し唸っていた。この様子では普段から気苦労が絶えなさそうだ。
どう考えても王女の言葉は皮肉でしか無い。しかしそれを皮肉と思わせない整った容姿と圧があった。
いったいメディオはどうするのだろう。王女に不遜な態度で接するのか、それともユスティアへの態度を改めるのだろうか。もっとも、フェーリエへの態度は変わらないだろうが。
『人間よ……去れ……』
「っ!?」
堂々巡りをしている王女達の会話を乾いた笑いで聞いていると、頭の中に声が響いた。戦う前に聞こえていた、火竜の声だ。あの時より幾分元気そうな声だ。
声はそれ以上聞こえてこなかった。姿は見えないが、やはり火竜はここに居るのだ。
何故声が自分だけに聞こえるのかは分からない。もしかしたら、火竜に声を届けられるかも知れない。
(火竜……もし聞こえているのなら、姿を現して。私たちは、あなたと話がしたいだけなの)
無意識に、祈るように手を組んだ。
しばらくの間を置いて、再び頭に声が響いた。
『その男は、話すつもりはないようだが?』
(それは……)
十中八九メディオのことだ。流石に言い訳は出来ない。
『……仕方が無い。お前だけを招こう』
「え?……っ」
火竜の言葉を聞いた途端、フェーリエは身体から力が抜け、訳が分からないまま重い瞼を閉じた。
その魔力は火山を覆うように漂っており、決してフェーリエ達を害する類いのものではなかった。
緩やかに火山の上を飛び、旋回をしながら頂上への着地を目指す。急降下は慣れていない人間には恐ろしいらしいので、フェーリエなりに気遣った飛び方だ。
着地したフェーリエ達はまず、居るはずの存在が居ない事に驚いた。火竜の姿が見えなかったのだ。
「どういうことだ!貴様!場所を間違えたのではあるまいな!!」
メディオがフェーリエに詰め寄る。場所を間違えたと言われても、来た道を戻ったつもりのフェーリエにはどうすることも出来ない。そもそも、先程の戦闘痕も残っている。まず間違いは無い筈だ。と、言うことをメディオに説明しても聞く耳を持たないだろう。不敬とは思いつつも、ついついユスティアに目線を送ってしまう。どうか助け船を出して欲しい。
フェーリエの視線に気付いたユスティアだったが、彼も自分が説明しても意味が無いという事実に目を伏せた。
二人で顔を見合わせていると、王女がフェーリエの背中に軽く手を添えた。
「火竜の魔力はここから漂っています。それに、先程までの戦闘痕もここにある。間違いなく、場所はあっています。副団長、ヒトによって態度を変えるのはいけませんよ?」
王女の無言の圧力にたじろいだメディオだったが、態度の話で顔色を変えた。
初対面で既にフェーリエは敬意を表すに値しない認定を受けている。ユスティアに至っては、王子だが『獣王子』と侮蔑の意を表していた。
(ああいうヒトにはいくら言っても無駄だろうなぁ)
諦めを込めてメディオを見ていると、王女の口から思いがけない言葉が飛び出した。
「私にもお兄様と同じように接して下さいね」
「「「えっ!?」」」
嫌なことにメディオと声が被ってしまった。ユスティアとも被ったがそれは別に構わない。
そんなことより、今王女はなんと言ったのだろうか。フェーリエは自分の耳を疑った。
「私はお兄様より年下ですもの。お兄様より敬われるのはおかしいですからね」
王女は満面の笑みでそう言い募った。
(う、美しい……じゃなくて……圧が凄い)
ユスティアをチラリと見ると、顔に手を当て少し唸っていた。この様子では普段から気苦労が絶えなさそうだ。
どう考えても王女の言葉は皮肉でしか無い。しかしそれを皮肉と思わせない整った容姿と圧があった。
いったいメディオはどうするのだろう。王女に不遜な態度で接するのか、それともユスティアへの態度を改めるのだろうか。もっとも、フェーリエへの態度は変わらないだろうが。
『人間よ……去れ……』
「っ!?」
堂々巡りをしている王女達の会話を乾いた笑いで聞いていると、頭の中に声が響いた。戦う前に聞こえていた、火竜の声だ。あの時より幾分元気そうな声だ。
声はそれ以上聞こえてこなかった。姿は見えないが、やはり火竜はここに居るのだ。
何故声が自分だけに聞こえるのかは分からない。もしかしたら、火竜に声を届けられるかも知れない。
(火竜……もし聞こえているのなら、姿を現して。私たちは、あなたと話がしたいだけなの)
無意識に、祈るように手を組んだ。
しばらくの間を置いて、再び頭に声が響いた。
『その男は、話すつもりはないようだが?』
(それは……)
十中八九メディオのことだ。流石に言い訳は出来ない。
『……仕方が無い。お前だけを招こう』
「え?……っ」
火竜の言葉を聞いた途端、フェーリエは身体から力が抜け、訳が分からないまま重い瞼を閉じた。
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