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第七章 火竜討伐
#169 噴火寸前
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「では、火竜が落ち着くまで……っ!?」
王女が声を詰まらせた。しかしそれについて言及できる者は居なかった。王女同様、突然の事に身を竦ませていたからだ。
「地震!?」
「いいえ、違いますわ。これは……」
王女が言葉を句切る。その言葉の先は、誰もが理解した。
大地が揺れている。いや、大地と言うより山が揺れている。周りの熱気が更に上昇する。どこからかゴポゴポと嫌な音まで聞こえてくる始末。間違いなく、火山が噴火しようとしている。
「何故突然……」
「お兄様、原因を考えるのは後ですわ。まずは避難です!ルナ!全員を移動させる事は出来ますか!?」
美の女神に話しかけられた、と喜んだのは一瞬で、直ぐに魔力残量を確認する。
「大丈夫です!慣れてないとちょっと恐怖を感じるかも知れませんが、歩くよりかは早いかと……」
「ではそれでお願いします。命が惜しければ、これからルナがする事に逆らわないで下さいね」
まず真っ先にフェーリエに噛み付こうとしていたメディオを牽制してくれた王女に感謝しつつ、散らばる騎士達に向けて掌を翳した。
腰が抜けて動けていない騎士達を、淡い緑色の膜が覆う。様子を伺っていた冒険者達や近くに居るユスティア、王女、メディオにも同じものを施す。
「では、行きます!」
膜に覆われた者達が、徐々に地面から浮かび上がる。不思議な状態に、誰しもが驚いた顔で離れた地面を見つめていた。
この調子ではスピードを出せば気絶しそうだ。だが、こうしている間にも火山は噴火の準備を進めている。
苦情は頼もしい王女様がなんとかしてくれるだろう。
フェーリエは地面を蹴り、大人数を引き連れて猛スピードで山から離れていった。
山から随分と離れた平原に全員を降ろしたフェーリエは、遠目から見ても動いている火山を見つめていた。
フェーリエの後ろでは慣れない飛行に倒れている者が半数、もう半分は口に手を当て吐き気を堪えている。
「貴女のお陰で助かりましたわ、ルナ」
「王女様……」
飛行経験のあるユスティアが平気そうな顔をしているのは分かる。だが、王女までもがケロリとしているのはどういうことだろうか。三半規管が強いのだろうか。
「王女様だなんて……余所余所しいですわねぇ。まぁ、仕方が無いことでしょうが」
王女は残念そうに笑った。王女様以外にどう呼べと言うのだろう。
「空を飛ぶなんて、とても新鮮で楽しかったですわ。慣れている所を見ると、お兄様は何度か経験をしている様ですわね。羨ましい限りですわ」
何も無い野原だが、王女が笑っているだけで華やかな宮殿が背景にあるように錯覚してしまう。
王女にどう返答すればいいか悩んでいたフェーリエは、ふと火山を見た。
「あれ?」
「どうなさいました?」
「火山が……」
フェーリエの言葉に、王女とユスティアが火山を見る。火山はもう揺れてはいなかった。かといって、噴火した訳では無い。
「……私、様子を見てきます」
「危ない、と言っても聞かないだろうな」
ユスティアが呆れたように笑った。その言葉に、いつもの様に返せない寂しさが湧く。少し俯いたフェーリエの左腕に、華奢な指が触れる。
「私も付いて行きます。見届ける責任がありますから」
「俺も付いて行こう」
「王女様、ユー……ユスティア殿下」
名前を言い直したフェーリエに、ユスティアは表情を曇らせた。途端に出来上がった身分という壁は、どうしようも無い。
「私も付いて行こう。王族は守らなければならない」
意外なことに、メディオが名乗りを上げた。吐き気は収まっているようだ。次はまだ時間にゆとりがある。丁寧に運搬してあげよう。
吐き気の収まった者数名に後の者達を託し、フェーリエは三人を連れて火山へと飛べ立った。
王女が声を詰まらせた。しかしそれについて言及できる者は居なかった。王女同様、突然の事に身を竦ませていたからだ。
「地震!?」
「いいえ、違いますわ。これは……」
王女が言葉を句切る。その言葉の先は、誰もが理解した。
大地が揺れている。いや、大地と言うより山が揺れている。周りの熱気が更に上昇する。どこからかゴポゴポと嫌な音まで聞こえてくる始末。間違いなく、火山が噴火しようとしている。
「何故突然……」
「お兄様、原因を考えるのは後ですわ。まずは避難です!ルナ!全員を移動させる事は出来ますか!?」
美の女神に話しかけられた、と喜んだのは一瞬で、直ぐに魔力残量を確認する。
「大丈夫です!慣れてないとちょっと恐怖を感じるかも知れませんが、歩くよりかは早いかと……」
「ではそれでお願いします。命が惜しければ、これからルナがする事に逆らわないで下さいね」
まず真っ先にフェーリエに噛み付こうとしていたメディオを牽制してくれた王女に感謝しつつ、散らばる騎士達に向けて掌を翳した。
腰が抜けて動けていない騎士達を、淡い緑色の膜が覆う。様子を伺っていた冒険者達や近くに居るユスティア、王女、メディオにも同じものを施す。
「では、行きます!」
膜に覆われた者達が、徐々に地面から浮かび上がる。不思議な状態に、誰しもが驚いた顔で離れた地面を見つめていた。
この調子ではスピードを出せば気絶しそうだ。だが、こうしている間にも火山は噴火の準備を進めている。
苦情は頼もしい王女様がなんとかしてくれるだろう。
フェーリエは地面を蹴り、大人数を引き連れて猛スピードで山から離れていった。
山から随分と離れた平原に全員を降ろしたフェーリエは、遠目から見ても動いている火山を見つめていた。
フェーリエの後ろでは慣れない飛行に倒れている者が半数、もう半分は口に手を当て吐き気を堪えている。
「貴女のお陰で助かりましたわ、ルナ」
「王女様……」
飛行経験のあるユスティアが平気そうな顔をしているのは分かる。だが、王女までもがケロリとしているのはどういうことだろうか。三半規管が強いのだろうか。
「王女様だなんて……余所余所しいですわねぇ。まぁ、仕方が無いことでしょうが」
王女は残念そうに笑った。王女様以外にどう呼べと言うのだろう。
「空を飛ぶなんて、とても新鮮で楽しかったですわ。慣れている所を見ると、お兄様は何度か経験をしている様ですわね。羨ましい限りですわ」
何も無い野原だが、王女が笑っているだけで華やかな宮殿が背景にあるように錯覚してしまう。
王女にどう返答すればいいか悩んでいたフェーリエは、ふと火山を見た。
「あれ?」
「どうなさいました?」
「火山が……」
フェーリエの言葉に、王女とユスティアが火山を見る。火山はもう揺れてはいなかった。かといって、噴火した訳では無い。
「……私、様子を見てきます」
「危ない、と言っても聞かないだろうな」
ユスティアが呆れたように笑った。その言葉に、いつもの様に返せない寂しさが湧く。少し俯いたフェーリエの左腕に、華奢な指が触れる。
「私も付いて行きます。見届ける責任がありますから」
「俺も付いて行こう」
「王女様、ユー……ユスティア殿下」
名前を言い直したフェーリエに、ユスティアは表情を曇らせた。途端に出来上がった身分という壁は、どうしようも無い。
「私も付いて行こう。王族は守らなければならない」
意外なことに、メディオが名乗りを上げた。吐き気は収まっているようだ。次はまだ時間にゆとりがある。丁寧に運搬してあげよう。
吐き気の収まった者数名に後の者達を託し、フェーリエは三人を連れて火山へと飛べ立った。
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