転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第七章 火竜討伐

#168 対応の差

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「第三、王子……獣王子が、何故こんな場所に……」
  メディオは呆然と呟いた。ここに居るはずの無い王族を目の前に、いつも呼んでいるであろう蔑称を呟いた。
 同じ貴族として、あ、こいつ死んだな、とフェーリエは思った。
 獣王子とはそのままの通り、獣人族を母に持つユスティアを侮辱する呼称だ。人間族こそが至高であるとある種の傲慢さを持つ貴族共は、それ以外の血を受け継ぐユスティアを敬意を持つに値しない存在と認識している。勿論そんな阿呆ばかりでは無いのだが、メディオはその阿呆に該当する様だ。
(女性差別するあの家だもんなぁ。分かっていたとは言え……普通本人の前で口にする?)
 ユースが身分を明かしたことよりも、その発言の方に意識が行ってしまう。隣に立つユース……いや、ユスティアの様子を伺ってみる。
 自らを指す蔑称に、彼は表情を動かしてはいなかった。じっとメディオを見る目は、不思議と凪いでいた。
 黙りこくったユスティアに少したじろいだメディオだったが、彼は不満ありげにユスティアを睨み付けた。
「……いくら王子といえど、私は陛下から火竜討伐を拝命されております。我が儘はお控え願えますか」
 傲慢な態度を隠そうともせず、メディオは自分の正当性を主張し始めた。
 傍らでその発言を聞いていたフェーリエは、胃に穴が空くのでは無いかとひやひやした。
(王族に向かって我が儘って……我が儘って!!!!こいつは何様のつもりなのよ!!!)
 正直そう叫び出したかったが、身分を明かしたくない以上黙っているしか無い。誰でも良いからこの状況をどうにかして欲しい。
 そんなフェーリエの心の願いが通じたのか、クローがメディオの前に進み出てきた。救世主か!とフェーリエは期待の眼差しでクローを見つめた。しかし、クローがフードを取ったことにより、フェーリエは衝撃から硬直した。
「お兄様だけでは厳しいようですわね。副団長、わたくしの話も聞いて頂けますか?」
 フードを取ったクローはにっこりと笑っていた。フェーリエの目に飛び込んできたのは、こんな火山には似つかわしくない輝かしく豊かな黄金の髪だった。この黄金には見覚えがある。美の化身だ!
「紫の瞳……シャーロット王女……?」
「ええ、私はシャーロット=ノヴァ=ウァリエタースですわ。ところで、お話は聞いて頂けますか?」
 頬に手を当て軽く首を傾げる様すら美しい。フェーリエは第二王女による突然のカミングアウトに頭が混乱してきていた。
 それはメディオも同じだったようで、たじろぎながら頷いた。彼女の美貌の前には頷く他無いだろう。ん?何かずれている気がする。
「私はお父様……つまり国王陛下から今回の事について特例を許されています。国王としては、民のために討伐を表明しましたが誰だって神話の頃からの隣人を無くしたいとは思わないでしょう?」
(いいえ、王女様。貴女の目の前に居る男はそんなこと微塵も考えてなかったと思いますよ?普通に出世の為なら躊躇わず殺そうとしてましたよ?)
 フェーリエの心の内などつゆ知らず、第二王女は話を進める。
「陛下は、もしも殺さずに済むのならば力を尽くして火竜を鎮めよ、とそう私に任命しました。そして、今がその時です。火竜が暴走している原因はもうすぐ浄化できますし、此方にいるルナさんが火竜と対話できます。落ち着いた火竜に状況を話し、事を納めましょう。勿論、騎士団も協力して頂けますよね?」
 突然話題に出されたことにも驚いたが、王女の有無を言わせない圧力にも驚いた。
(王女様って、結構強引な方なんだなぁ)
 フェーリエが頬を引きつらせていると、王女の話を聞いて我に返ったメディオが優雅な所作で王女に跪いた。
「国王陛下の信頼厚き殿下がそうおっしゃるのであれば、我らは何も疑いません。第三騎士団、ご命令に従います」
 変わり身の早さに、フェーリエはメディオに軽蔑の視線を送った。いくら国王からの命令を王女が受けているからと言っても、ユスティアだってれっきとした王子だ。対応の差が酷すぎる。
 対応の面倒くさかった騎士団が統制出来るのは嬉しいが、フェーリエは釈然としないものに唇を噛みしめた。


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