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第七章 火竜討伐
#174 最悪な目覚め
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目を開けて初めに見えたのは、知らない天井だった。いや、正確には知らない天蓋だった。
のっそりと身体を起こすと、フェーリエは豪奢なベッドに包まれていた。そう包まれていたのだ。
(何このベッド、ふっかふか。凄い高いんだろうなぁ)
フェーリエは仮にも伯爵令嬢。前世の庶民生活に比べれば、遙かに質の良いものに囲まれて育っている。しかしそのフェーリエですら高いと思ってしまう高級品だ。
だが何故そんなものにフェーリエは包まれているのだろう。そしてこの高級ベッドが相応しいこの空間は誰の部屋なのだろう。
肌触りがとても良い掛け布を困惑と共に掴んでいると、静かな音と共に扉が開いた。次に響いたのはハイヒールが床を叩く音。床は大理石故に良く響いたのだろう。何というか、現実逃避してるな。うん。
「起きました?」
ぼーっとしていた所に聞こえてきた声に、ガバッと身体を起こす。
「っ!?王女様!?」
「起き上がれるだけ元気があるみたいですね。良かった」
シャーロットの優しげな笑顔に見とれ、はっと頭に手を当てる。慣れ親しんだ布の感触にホッと安堵する。いや、顔を何時までも隠しているのは不敬に当たるかも知れないが。
「貴女、二日間眠っていたんですよ?お兄様も心配していらして……」
シャーロットはベッドの側に置いてあった椅子に腰を掛けながらそう言った。
「二日!?」
「はい。契約者さんの言葉を借りると『契約者増やしすぎ』だそうですよ。心当たりがありますか?」
「あ、はい……」
契約魔法は日常的に継続魔力を消費する。今回火竜と契約した事によってごっそりと魔力を消費したのだろう。そして魔力が枯渇状態になり、身体が昏睡状態になった。それがどう見ても高級そうな部屋で寝かされている理由に繋がるのか。
「動けるようでしたら陛下に謁見しなければならないのですが……」
「謁見!?私何かしましたか!?」
思わず叫びはっと我に返る。思い切りしている。滅茶苦茶命令違反している。
「そうですね。して無いと言えばしてませんし、してると言えばしてますね」
「?」
シャーロットの言葉の意図が分からず、随分と間抜けな顔を晒していることだろう。シャーロットはフェーリエを見て、困ったように笑った。あ、この笑い方見たことがある。何所で見たのだろう。
「私たちは王の火竜討伐の命令に対して何もせず、逆に助けたばかりか契約を交わしてしまった。助けただけなら、まだ良かったでしょうね」
シャーロットが紡ぐ言葉に、フェーリエは肝が冷えていくのを感じる。自分は取り返しの付かない事をしてしまったのだ、と。
「火竜は国には属さない生物でした。例えウァリエタース王国内の火山に住んでいようと、その力を戦争に利用してはならないと暗黙のルールがある程……。今回のことは、国に属する一冒険者が火竜を契約者とし、その力を有してしまう非常事態だと判断されました。よって、陛下は貴女に事の真意を聞き、処分を下すこととなりました」
「あ……」
心苦しそうに重々しく言葉を紡いだシャーロットは、ぎゅっと目を閉じて頭を下げてしまった。
「ごめんなさい。貴女にそういった意図がなかったことは分かっています。ですが、これは国同士の問題。流石の私でも庇うことは許されませんでした」
「あ、頭を上げてください。王女様は何も悪くありません。全て私の考えの至らなさが招いてしまったことです。少し考えれば分かったことなのに……そうしなかった私が……」
顔を上げたシャーロットは、我が事のように苦しそうな顔をしていた。何も悪くない彼女にこんな顔をさせてしまった自分に腹が立つ。
「……家族、私の家族に咎は及びますか?」
頭に過ぎった懸念に、フェーリエは声を絞り出した。
「……貴女の家族には咎は及ばないでしょう。もし及ぶようならば、私の名を掛けて守ります」
「……私のような者に、勿体ないお言葉でございます。……けん……いえ、ユスティア殿下は……?」
「お兄様は自室で謹慎中です。元気ですよ」
シャーロットは微笑むが、フェーリエはただただ唇を噛みしめた。
自分のせいで、シャーロットにも、ユスティアにも迷惑を掛けてしまっている。
自分の未熟さがあまりにも憎らしく、フェーリエはシャーロットが部屋を出て行くまで目を合わせることが出来なかった。
のっそりと身体を起こすと、フェーリエは豪奢なベッドに包まれていた。そう包まれていたのだ。
(何このベッド、ふっかふか。凄い高いんだろうなぁ)
フェーリエは仮にも伯爵令嬢。前世の庶民生活に比べれば、遙かに質の良いものに囲まれて育っている。しかしそのフェーリエですら高いと思ってしまう高級品だ。
だが何故そんなものにフェーリエは包まれているのだろう。そしてこの高級ベッドが相応しいこの空間は誰の部屋なのだろう。
肌触りがとても良い掛け布を困惑と共に掴んでいると、静かな音と共に扉が開いた。次に響いたのはハイヒールが床を叩く音。床は大理石故に良く響いたのだろう。何というか、現実逃避してるな。うん。
「起きました?」
ぼーっとしていた所に聞こえてきた声に、ガバッと身体を起こす。
「っ!?王女様!?」
「起き上がれるだけ元気があるみたいですね。良かった」
シャーロットの優しげな笑顔に見とれ、はっと頭に手を当てる。慣れ親しんだ布の感触にホッと安堵する。いや、顔を何時までも隠しているのは不敬に当たるかも知れないが。
「貴女、二日間眠っていたんですよ?お兄様も心配していらして……」
シャーロットはベッドの側に置いてあった椅子に腰を掛けながらそう言った。
「二日!?」
「はい。契約者さんの言葉を借りると『契約者増やしすぎ』だそうですよ。心当たりがありますか?」
「あ、はい……」
契約魔法は日常的に継続魔力を消費する。今回火竜と契約した事によってごっそりと魔力を消費したのだろう。そして魔力が枯渇状態になり、身体が昏睡状態になった。それがどう見ても高級そうな部屋で寝かされている理由に繋がるのか。
「動けるようでしたら陛下に謁見しなければならないのですが……」
「謁見!?私何かしましたか!?」
思わず叫びはっと我に返る。思い切りしている。滅茶苦茶命令違反している。
「そうですね。して無いと言えばしてませんし、してると言えばしてますね」
「?」
シャーロットの言葉の意図が分からず、随分と間抜けな顔を晒していることだろう。シャーロットはフェーリエを見て、困ったように笑った。あ、この笑い方見たことがある。何所で見たのだろう。
「私たちは王の火竜討伐の命令に対して何もせず、逆に助けたばかりか契約を交わしてしまった。助けただけなら、まだ良かったでしょうね」
シャーロットが紡ぐ言葉に、フェーリエは肝が冷えていくのを感じる。自分は取り返しの付かない事をしてしまったのだ、と。
「火竜は国には属さない生物でした。例えウァリエタース王国内の火山に住んでいようと、その力を戦争に利用してはならないと暗黙のルールがある程……。今回のことは、国に属する一冒険者が火竜を契約者とし、その力を有してしまう非常事態だと判断されました。よって、陛下は貴女に事の真意を聞き、処分を下すこととなりました」
「あ……」
心苦しそうに重々しく言葉を紡いだシャーロットは、ぎゅっと目を閉じて頭を下げてしまった。
「ごめんなさい。貴女にそういった意図がなかったことは分かっています。ですが、これは国同士の問題。流石の私でも庇うことは許されませんでした」
「あ、頭を上げてください。王女様は何も悪くありません。全て私の考えの至らなさが招いてしまったことです。少し考えれば分かったことなのに……そうしなかった私が……」
顔を上げたシャーロットは、我が事のように苦しそうな顔をしていた。何も悪くない彼女にこんな顔をさせてしまった自分に腹が立つ。
「……家族、私の家族に咎は及びますか?」
頭に過ぎった懸念に、フェーリエは声を絞り出した。
「……貴女の家族には咎は及ばないでしょう。もし及ぶようならば、私の名を掛けて守ります」
「……私のような者に、勿体ないお言葉でございます。……けん……いえ、ユスティア殿下は……?」
「お兄様は自室で謹慎中です。元気ですよ」
シャーロットは微笑むが、フェーリエはただただ唇を噛みしめた。
自分のせいで、シャーロットにも、ユスティアにも迷惑を掛けてしまっている。
自分の未熟さがあまりにも憎らしく、フェーリエはシャーロットが部屋を出て行くまで目を合わせることが出来なかった。
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