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第八章 世界の変化
#181 小さな亀裂
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清浄な空気が柔らかく流れていく。木の葉を優しく揺らす様は、穏やかで平和な様子が窺える。
王国を離れたヒトのいない孤島は、手付かずの豊かな自然が広がっていた。その自然も、未開拓の森と比べると常識的な豊かさだ。
島の中心には先の見えない天然の洞窟がどっしりと構えていた。
「ここが水竜のいる島……」
誰に確認を取るまでも無く、フェーリエは自然とそう呟いた。
アグニスの話が無くとも、ここに水竜が居ると言われれば信じられる。それほどにこの島は清浄な魔力に満たされていた。
「帰りはどうするんだい?」
船頭がシャーロットに話しかける。ここは頼まなければ誰も訪れない孤島だ。勿論ここまでフェーリエ達を送ってくれた船も元の港に帰るのだ。帰りの話はしておかなければならないものだ。
「では二日後に来ていただけますか?天候が悪ければ次の日に」
「ああ、天候の事は気にしなくて良いよ。ここの海は不思議なくらい穏やかだからね。二日後に来るよ」
了承した船頭は再び船に乗り、穏やかな海を進み始めた。
「何かあったときのために一日多く設けましたが、この様子だと大丈夫そうですね」
シャーロットが島の様子を眺めて安心したようにそう言った。
「そうですね。魔力に異常も無いですし」
純粋に思ったことを口にしたが、ユスティアは分からないと言うように眉を顰めた。そして小さく「魔力はどう感じるものなんだ?」と誰も居ない場所に向かって呟いていた。幽霊でも見えているのだろうか。
そう思いユスティアが向いている方を見ていると、思いがけないヒトが浮かんでいた。
「アウラ……?」
火山以降アウラが姿を表す事は無かったが、それがどうしてユスティアの近くを浮かんでいるのだろう。
疑問と共に呟いた言葉を聞いたアウラは、気まずそうにして空間に消えていった。
「えっと……剣士さん?」
「今はそっとしておいてやってくれ」
「はあ……分かりました」
実際には何も分かっていないが、取り敢えず頷く。六歳の時に契約してから毎日一緒に居るのに、アウラがフェーリエから離れたのは初めてだった。理由は全く分からない。
「お二人とも!一先ず島を一周しましょう」
シャーロットの呼びかけに、フェーリエはユスティアと頷き合って歩き出した。
時間が経てばきっと話してくれるだろう。
『お前、元気が無いようだが?』
主人の魔力によって生成される人間界とは少し次元のズレた空間にて、新参者の火竜が年長者に声を掛けた。
『お気遣い無く』
問いかけに対し、いつも大らかな精霊は淡白に返した。珍しいこともあるものだと、少し遠目に二人の様子を眺めた。
『前に我が言ったことを気にしているのか?お前もヒトの様に悩むのだな』
『……』
『沈黙は肯定と見なすがよいのか?』
挑発するような火竜の言動に、精霊は溜息を吐いて答えた。
『気にしていないと言ったら嘘になりますが、今は切り替えています。それに、私だって悩みます。ヒトで無くとも、悩むものでしょう?』
『そうだな、お前達はそういう風に作られていたのだったな』
火竜は意味深げに笑う。何の事か全く分からなかったが、精霊が言葉に詰まっている様子を見るに、間違いは言っていないのかもしれない。
『貴方は、変わらず意地悪ですね』
『お前よりも長く生き、色々なものを見てきたからだ』
火竜については詳しくなかったが、女神の眷属である精霊よりも長生きという火竜に少し興味が湧いた。と言っても、この険悪の雰囲気の中、それを問うことは出来はしないのだが……。
(ここの会話がご主人に聞こえてたら面白そうなんだけどなぁ)
ウルティムはそう思い、笑った。
王国を離れたヒトのいない孤島は、手付かずの豊かな自然が広がっていた。その自然も、未開拓の森と比べると常識的な豊かさだ。
島の中心には先の見えない天然の洞窟がどっしりと構えていた。
「ここが水竜のいる島……」
誰に確認を取るまでも無く、フェーリエは自然とそう呟いた。
アグニスの話が無くとも、ここに水竜が居ると言われれば信じられる。それほどにこの島は清浄な魔力に満たされていた。
「帰りはどうするんだい?」
船頭がシャーロットに話しかける。ここは頼まなければ誰も訪れない孤島だ。勿論ここまでフェーリエ達を送ってくれた船も元の港に帰るのだ。帰りの話はしておかなければならないものだ。
「では二日後に来ていただけますか?天候が悪ければ次の日に」
「ああ、天候の事は気にしなくて良いよ。ここの海は不思議なくらい穏やかだからね。二日後に来るよ」
了承した船頭は再び船に乗り、穏やかな海を進み始めた。
「何かあったときのために一日多く設けましたが、この様子だと大丈夫そうですね」
シャーロットが島の様子を眺めて安心したようにそう言った。
「そうですね。魔力に異常も無いですし」
純粋に思ったことを口にしたが、ユスティアは分からないと言うように眉を顰めた。そして小さく「魔力はどう感じるものなんだ?」と誰も居ない場所に向かって呟いていた。幽霊でも見えているのだろうか。
そう思いユスティアが向いている方を見ていると、思いがけないヒトが浮かんでいた。
「アウラ……?」
火山以降アウラが姿を表す事は無かったが、それがどうしてユスティアの近くを浮かんでいるのだろう。
疑問と共に呟いた言葉を聞いたアウラは、気まずそうにして空間に消えていった。
「えっと……剣士さん?」
「今はそっとしておいてやってくれ」
「はあ……分かりました」
実際には何も分かっていないが、取り敢えず頷く。六歳の時に契約してから毎日一緒に居るのに、アウラがフェーリエから離れたのは初めてだった。理由は全く分からない。
「お二人とも!一先ず島を一周しましょう」
シャーロットの呼びかけに、フェーリエはユスティアと頷き合って歩き出した。
時間が経てばきっと話してくれるだろう。
『お前、元気が無いようだが?』
主人の魔力によって生成される人間界とは少し次元のズレた空間にて、新参者の火竜が年長者に声を掛けた。
『お気遣い無く』
問いかけに対し、いつも大らかな精霊は淡白に返した。珍しいこともあるものだと、少し遠目に二人の様子を眺めた。
『前に我が言ったことを気にしているのか?お前もヒトの様に悩むのだな』
『……』
『沈黙は肯定と見なすがよいのか?』
挑発するような火竜の言動に、精霊は溜息を吐いて答えた。
『気にしていないと言ったら嘘になりますが、今は切り替えています。それに、私だって悩みます。ヒトで無くとも、悩むものでしょう?』
『そうだな、お前達はそういう風に作られていたのだったな』
火竜は意味深げに笑う。何の事か全く分からなかったが、精霊が言葉に詰まっている様子を見るに、間違いは言っていないのかもしれない。
『貴方は、変わらず意地悪ですね』
『お前よりも長く生き、色々なものを見てきたからだ』
火竜については詳しくなかったが、女神の眷属である精霊よりも長生きという火竜に少し興味が湧いた。と言っても、この険悪の雰囲気の中、それを問うことは出来はしないのだが……。
(ここの会話がご主人に聞こえてたら面白そうなんだけどなぁ)
ウルティムはそう思い、笑った。
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