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2 近江花音は小学生

2.太陽の色(3)

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 英会話教室に着くと、先生のMs.エヴァンスがママを出迎えた。

「Ms.Omi! ようこそ、来てくれました!」

 Ms.エヴァンスは、ときどき英語の発音が混じるけど、とても日本語が上手。

「カノンも、ようこそ! 元気にしてましたか?」

「はい」

「Oh! 何かいいこと、ありましたね? あとで、私にも教えてね!」

 Ms.エヴァンスはよく敏感に私の心を感じ取ってくれる。

 私の嬉しい気持ちや悲しい気持ち。

 落ち込んだ気持ち。

 Ms.エヴァンスのこういうところ、私は好き。

「もちろんです」

 Ms.エヴァンスに答えて、私は奥の部屋へと向かう。

「保護者の方が説明会の間に、子供たちは体験Lessonしますよ」

 言われるまま、部屋に入るとそこにはすでに4人の先客がいた。

 みんな、私と同じくらいの年齢で、男の子と女の子が2人ずつ。

 その中の男の子の1人には、見覚えがあった。

「キミも受けるんだね」

 彼も私を覚えていた。

「覚えていらっしゃるんですね」

「それはもちろん。キミみたいな可愛い女の子を忘れられるわけないじゃない」

 ニコニコと彼は言うけど、お店にいたときと違ってキラキラしていない。

「そんなところにたっていないで座りなよ」

 さりげなく、自分の隣に座るように促す彼を見て……私は女の子の隣を選んだ。

「何でそっち?」

「こちらの方が近いので」

 彼がいるのは部屋の奥で、私が選んだのは入り口から1番近い場所。

「近江花音です。よろしくお願いします」

「佐々木理子(ささきりこ)です」

「村上志保(むらかみしほ)です、よろしくお願いします」
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