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2 近江花音は小学生

6.花音の色(3)

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 ――ユニットデビュー。

 海さんの言葉に、これからの未来にトキメク。

 わくわくとした気持ちを抑えられない。

 初めて手にした、自分たちの曲。

 自分たちのダンス。

 まだ、世界中で私たちしか知らない歌をつくりあげていく。

 レッスンが終わってすぐ、パパとママに報告した。

「パパ、ママ、聞いて! デビューが決まったの! ユニットを組むの!」

 今日の私は、今までの人生の中で1番お喋りかもしれない。

 たくさん、たくさん、言葉があふれてくる。

 心が躍っているみたい。

「まだ誰かに言っちゃダメよ? 7月までナイショだから」

 誰にも言えないヒミツ。

 それは少しだけ苦しくて、だけどわくわくする。

 誰かに届ける、サプライズのプレゼントみたい。

 もっともっと頑張ろうって思える。

 私たちの唄とダンスで、キラキラした気持ちを届けたい。

 私が出会えた、私自身が頑張りたいこと。

「花音」

 パパが言った。

「花音は今、キラキラできている?」

 「一緒にキラキラできることを探す」パパとの約束。

 見つけたよ、パパ。

「うん!」

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 月曜日はピアノ。

 火曜日はお習字。

 水曜日はバレエ。

 木曜日は声楽。

 金曜日は英会話。

 土曜日はお茶とお花。

 日曜日はバレエ。

 月曜日から日曜日まで、毎日がならいごとであふれていた私の世界。

 灰色くくすんでいた私の世界は、彼女のおかげて変わり始めた。

 たくさんの人が行き交う中で、彼女が私を見つけて声をかけてくれたから。

 パパが背中を押してくれたから。

 ママが応援してくれたから。

 私の世界は彩りを持って、少しずつ世界が変わり始めた。

 近江花音、12歳。

 小学6年生。

 今日からたくさん、キラキラのアイドル目指します!

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