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第4話 従者と姫君
嫉妬に狂う許嫁
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龍雅が問う。
「どういうことだろうね?」
目の前には、龍麗。
ここは、龍雅の私室。
いつもならば、綺麗に片付けられている部屋が、今は物が散乱し、壊れ、滅茶苦茶になっている。
一見、穏やかそうに見える龍雅も、その内は怒りに狂い乱れている。
「どうしてキミが、僕以外の人間に対して『好き』だなんて言うのかな?」
ビクリ、と龍麗の身体が震えるのを龍雅は見逃さない。
「おかしいよね? キミの夫になる男は僕で、キミが愛すべき男は僕なのに、どうして他の男に『好き』だなんて言うのかな?」
コワイ、とこのとき初めて、龍麗は龍雅に対して恐怖を抱いた。
龍雅は、こんな人だっただろうか。
いつも少し口うるさくて、過保護で、窮屈なくらいの愛情で縛り付けようとする。
けれど、龍麗の癇癪には寛大で、ため息をつきながら仕方ないと甘やかしてくれる。
龍麗の中の龍雅の人間像は、そんなものだったはずだ。
こんな嫉妬に狂った男の姿を、龍麗は知らない。
「キミに友達ができたって聞いたから、優雅にどんな子なのか調べてもらったんだ」
目を見開く龍麗をあざ笑うかのように、龍雅は言葉を紡ぐ。
「当然だろう? キミは大事な跡取りなんだから。キミに近づく人間はひと通り調べ上げないと。中には龍に取り入ろうとする、よからぬ輩もいるからね」
「キバはそんな人じゃないっ!」
龍麗が叫ぶと同時に、部屋の中で何かが音を立てて割れた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
龍麗のものだけではない、力のぶつかり合い。
カッと、赤くなった龍麗の瞳を、龍雅は見返した。
その赤く染まった龍雅の瞳に、龍麗は言葉を失う。
音は止んだ。
「随分と信頼しているんだね。まだ会って2日だっていうのに」
口調こそ穏やかなものの、その瞳の色が、龍雅がいかに怒っているのかを表している。
少なくとも、龍麗が今まで生きてきた中で覚えている限り、この瞳を向けられたことはなかった。
「調べさせて正解だったよ。まさか男だったなんてね。それも素行の悪い野良犬。そんなに珍しかった? 育ちの悪い野良犬が」
ゆっくりと、龍麗の頬に両手を添え、上向かせた龍雅はその赤い瞳で龍麗の瞳を覗き込む。
龍麗の瞳からは、赤い色は失われていた。
「震えてる。僕がコワイ?」
龍雅はあくまでも優しく問いかけるけれど、龍麗はそれに答えられずただただその喉から息が漏れる。
「でも、龍麗が悪いんだよ? 浮気なんてするから」
「浮気」だと龍麗は言う。
当の龍麗にはそんな自覚などまるでなく、いうなれば友達作りの延長だった。
たとえ「女として好き」と言われても、それに「好き」と応えても、龍麗がきちんとすべてを理解するには早すぎた。
「浮気をする悪い子には、罰を与えないといけないね? そうだよね? 龍麗?」
クスリ、と龍雅が笑った。
「どういうことだろうね?」
目の前には、龍麗。
ここは、龍雅の私室。
いつもならば、綺麗に片付けられている部屋が、今は物が散乱し、壊れ、滅茶苦茶になっている。
一見、穏やかそうに見える龍雅も、その内は怒りに狂い乱れている。
「どうしてキミが、僕以外の人間に対して『好き』だなんて言うのかな?」
ビクリ、と龍麗の身体が震えるのを龍雅は見逃さない。
「おかしいよね? キミの夫になる男は僕で、キミが愛すべき男は僕なのに、どうして他の男に『好き』だなんて言うのかな?」
コワイ、とこのとき初めて、龍麗は龍雅に対して恐怖を抱いた。
龍雅は、こんな人だっただろうか。
いつも少し口うるさくて、過保護で、窮屈なくらいの愛情で縛り付けようとする。
けれど、龍麗の癇癪には寛大で、ため息をつきながら仕方ないと甘やかしてくれる。
龍麗の中の龍雅の人間像は、そんなものだったはずだ。
こんな嫉妬に狂った男の姿を、龍麗は知らない。
「キミに友達ができたって聞いたから、優雅にどんな子なのか調べてもらったんだ」
目を見開く龍麗をあざ笑うかのように、龍雅は言葉を紡ぐ。
「当然だろう? キミは大事な跡取りなんだから。キミに近づく人間はひと通り調べ上げないと。中には龍に取り入ろうとする、よからぬ輩もいるからね」
「キバはそんな人じゃないっ!」
龍麗が叫ぶと同時に、部屋の中で何かが音を立てて割れた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
龍麗のものだけではない、力のぶつかり合い。
カッと、赤くなった龍麗の瞳を、龍雅は見返した。
その赤く染まった龍雅の瞳に、龍麗は言葉を失う。
音は止んだ。
「随分と信頼しているんだね。まだ会って2日だっていうのに」
口調こそ穏やかなものの、その瞳の色が、龍雅がいかに怒っているのかを表している。
少なくとも、龍麗が今まで生きてきた中で覚えている限り、この瞳を向けられたことはなかった。
「調べさせて正解だったよ。まさか男だったなんてね。それも素行の悪い野良犬。そんなに珍しかった? 育ちの悪い野良犬が」
ゆっくりと、龍麗の頬に両手を添え、上向かせた龍雅はその赤い瞳で龍麗の瞳を覗き込む。
龍麗の瞳からは、赤い色は失われていた。
「震えてる。僕がコワイ?」
龍雅はあくまでも優しく問いかけるけれど、龍麗はそれに答えられずただただその喉から息が漏れる。
「でも、龍麗が悪いんだよ? 浮気なんてするから」
「浮気」だと龍麗は言う。
当の龍麗にはそんな自覚などまるでなく、いうなれば友達作りの延長だった。
たとえ「女として好き」と言われても、それに「好き」と応えても、龍麗がきちんとすべてを理解するには早すぎた。
「浮気をする悪い子には、罰を与えないといけないね? そうだよね? 龍麗?」
クスリ、と龍雅が笑った。
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