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4.エピローグ(ハナ)
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5歳。
「すきです、ハナちゃんっ!!」
ショータがそう言ってくれたときのこと、今でも覚えてる。
ハナは、みんなに「すき」って言った。
16歳。
ショータは今でも、ハナを「好き」って思ってくれてる。
それはわかる。
でも、ショータと同じ「好き」を、ショータにあげられない。
ショータの「好き」は、ハナのキャベツが好きとは違う「好き」。
それもわかる。
だけど、ショータと同じ「好き」がハナにはわからない。
わからなくて、返せない。
ハナはきっと、普通じゃない。
ハナが見る世界はとても早くて、話す言葉も、動きも、興味の移り変わりも、気持ちの変化も、ハナには追いつけない。
昨日まで好きだったものが、今日には興味がなくなって、明日にはまた違うものが好きになってる。
そんな変化についていけなくて、だけどそれがみんなにとっては普通のこと。
みんなが普通に、当たり前に受け入れられることが、ハナにはできない。
小説は好き。
ハナをおいて行かないから。
わからなければ、止まればいい。
ゆっくりゆっくり、考えればいい。
でも、人は……。
多くの人は、ハナをおいて行ってしまう。
立ち止まったハナに、気づかない人も多い。
どういうこと? って考えてる間に、話は移り変わっていく。
早回しみたいな世界の中で、ショータだけは捉えることができた。
困っているって、わかった。
アレがほしいんだって、わかった。
助けてあげたいって思った。
こんなハナでも、ショータの力になれた。
ショータの好きは、イヤじゃない。
イヤじゃないけど、返せない。
だからごめんね、ショータ。
*****
「あ! 読んでくれてる!」
ツムツムが言った。
ショータが、「今読んでる小説、教えてほしい」って言ったから、カバーを外して表紙を見せた。
「私が勧めたんだ。ハナちゃんがいつも読んでるファンタジーとは違うけど、面白かったから」
「えー? なんてやつ?」
「『YN Game'sへようこそ!』」
「たしかに、タイトル的には珍しいかも」
「ゲーム?」
「そう、ゲーム」
「ヤンデレ?」
「そう! ヤンデレ!」
ツムツムが、にへりってした。
ツムツムは、ヤンデレが好き。
だけど。
「!」
ハナは、ツムツムの服を掴む。
「あ、ネタバレ厳禁」
ツムツムは、そう言って自分の口を抑えた。
「興味あったらあとで話すね。本も貸すよ」
ツムツムと、ミユミユと、コトコトが話しているのを聞く。
「私はパス」
「私も、いいかな」
「残念。面白いのに」
3人の話を聞きながら、ハナは小説のカバーを戻す。
「ハナちゃん」
ショータが言った。
「えっと、小説、教えてくれてありがとう」
楽しそうな声を聞きながら。
「うん」
今はまだ、このままで……。
*** 好きです、ハナちゃんっ! 終 ***
「すきです、ハナちゃんっ!!」
ショータがそう言ってくれたときのこと、今でも覚えてる。
ハナは、みんなに「すき」って言った。
16歳。
ショータは今でも、ハナを「好き」って思ってくれてる。
それはわかる。
でも、ショータと同じ「好き」を、ショータにあげられない。
ショータの「好き」は、ハナのキャベツが好きとは違う「好き」。
それもわかる。
だけど、ショータと同じ「好き」がハナにはわからない。
わからなくて、返せない。
ハナはきっと、普通じゃない。
ハナが見る世界はとても早くて、話す言葉も、動きも、興味の移り変わりも、気持ちの変化も、ハナには追いつけない。
昨日まで好きだったものが、今日には興味がなくなって、明日にはまた違うものが好きになってる。
そんな変化についていけなくて、だけどそれがみんなにとっては普通のこと。
みんなが普通に、当たり前に受け入れられることが、ハナにはできない。
小説は好き。
ハナをおいて行かないから。
わからなければ、止まればいい。
ゆっくりゆっくり、考えればいい。
でも、人は……。
多くの人は、ハナをおいて行ってしまう。
立ち止まったハナに、気づかない人も多い。
どういうこと? って考えてる間に、話は移り変わっていく。
早回しみたいな世界の中で、ショータだけは捉えることができた。
困っているって、わかった。
アレがほしいんだって、わかった。
助けてあげたいって思った。
こんなハナでも、ショータの力になれた。
ショータの好きは、イヤじゃない。
イヤじゃないけど、返せない。
だからごめんね、ショータ。
*****
「あ! 読んでくれてる!」
ツムツムが言った。
ショータが、「今読んでる小説、教えてほしい」って言ったから、カバーを外して表紙を見せた。
「私が勧めたんだ。ハナちゃんがいつも読んでるファンタジーとは違うけど、面白かったから」
「えー? なんてやつ?」
「『YN Game'sへようこそ!』」
「たしかに、タイトル的には珍しいかも」
「ゲーム?」
「そう、ゲーム」
「ヤンデレ?」
「そう! ヤンデレ!」
ツムツムが、にへりってした。
ツムツムは、ヤンデレが好き。
だけど。
「!」
ハナは、ツムツムの服を掴む。
「あ、ネタバレ厳禁」
ツムツムは、そう言って自分の口を抑えた。
「興味あったらあとで話すね。本も貸すよ」
ツムツムと、ミユミユと、コトコトが話しているのを聞く。
「私はパス」
「私も、いいかな」
「残念。面白いのに」
3人の話を聞きながら、ハナは小説のカバーを戻す。
「ハナちゃん」
ショータが言った。
「えっと、小説、教えてくれてありがとう」
楽しそうな声を聞きながら。
「うん」
今はまだ、このままで……。
*** 好きです、ハナちゃんっ! 終 ***
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