鬼母(おにばば)日記

歌あそべ

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かあさんの新しい住まい

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 かあさんの新しい住まい

かあさん、
ここはもう嫌だ!
と言い出した。
どこかよそに引っ越したい
って。

だって、以前私たちがマンションに引っ越した時、一緒に来る?って聞いたら、
嫌や、ここがいいから1人で住むってかあさん、言ったよね!

でも、言い出したら聞かないかあさん。
どこかマンションに引っ越して1人暮らししたいと言うのだ。

で、ひろしと私はあちこちよさそうなマンションを探した。
で、お誂え向きのを見つけたのだ。

それは、高齢者向けのこぢんまりしたマンションで、まだ建てられてから何年も経ってなくて、外観もお部屋もきれいだった。

さっそくかあさんを連れて行ってお部屋を見せた。
ね、お部屋もきれいでしょ
バリアフリーだから安全だし
お風呂も新しくてきれいだよ

でも、
なんや、狭いな
部屋が一つしかないんか
と言うかあさん

仕方ないよ
1人用のワンルームだもん
その割には広いんだって

本当だった。
ワンルームとしては広い。
それに、食事も昼と夜はお弁当を頼めばちゃんと届けてくれる。

だって、贅沢言って広い部屋借りても、掃除は大変だし、家賃どうすんのよ
そんなに払えないでしょ
ここならお手頃だし近いから私たちもちょくちょく来てあげられるよ
欲しい物があったら買い物もして来てあげるし
とか何とか言って説得して、やっとかあさんを納得させた。

で、お引越しだ。
もちろん、かあさんはなんにもしない。
ワンルームだし、1人暮らし。
大きな家具はそんなに置けないから、かあさんの部屋から小さい方の箪笥と、コタツと、布団やら衣類やら化粧品やら、かあさんの持ち物を運び出す。

1人用の荷物だから、2人で運べるよね
って思って、軽トラックを借りたけど、たいした荷物だよ。

一度じゃすまなかった。

疲れた~~


 かあさんの新しい暮らし

で、かあさんの新しい1人暮らしが始まった。
新居を訪ねてみると、たいていかあさん、こたつに足を突っ込んで座っている。
(かあさんは、ドアチャイムを鳴らしても聴こえないことが多いので、いつも合鍵で入る。)

気がつくと、
あ、あんたら来たんか
と振り向いて言った。

そしてかあさん、
お茶飲むやろ
と言って立ち上がった。
やかんに水を入れて電磁調理器に置いた。
電磁調理器ちゃんと使えるんや
よかった。

お風呂は?入った?
と聞いたら、
シャワーだけや
お風呂はなんかようわからん
と言う。 

別に難しくないよ
新しくて使いやすくなってるし
と言ったけど、
お風呂は真新しくて最新式のようなので、かあさんは見ただけでひるんだみたい。

お弁当はどうや
おいしいか?
と、ひろしが聞いたら、
おいしくないわ
味噌汁なんかまずくて飲めん
と言う。
で、味噌汁はいらんから持ってこなくていい。
と断って、味噌汁は付けずに持ってこさせてるらしい。

そのうち、お昼のお弁当は勝手に断ってしまった。
自分でご飯炊いておかずも作るから、買い物して来てや
と言う。

そして、
ちょっと!洋服少ししか持って来てくれてないやんか
持って来てくれんか
それと、三面鏡もないで
はよ持って来てや
とか言い出した。

そんな色々必要か?
普段着あったらそれでいいやろ
と言ったら
そうかて、服なかったら出かけられへんがな
洋服箪笥に色々吊り下げてるんや
洋服箪笥ごと持って来てや
と言う。

だって、そんなに家具置いたら、ますます部屋が狭くなるで
と言ったけど、言い出したら聞かないかあさんだ。

また軽トラをレンタルした。
かあさんの洋服箪笥は、家の2階に置いてあった。
ひろしと私、2人でかかえて、狭い階段を降ろした。
ひぇ~~手が痛い
無理~~
なんでこんな目に

なんとか2階から降ろして、軽トラに載せた。
汗まみれ。


 引っ越しから数週間

新居でかあさん、迷惑なご近所さん問題からも解放され、幸せな老後生活を送っていた。

…のならよかったけど

実際は…
すぐに文句を言い出した。
ご飯がまずい。
散歩もできない。
なんかつまらない。

近くに公園もあるやろ
散歩でも買い物でも行けばいいんやで

そうかて、この辺りのことはよくわからん

わからんって…
散歩に連れて行ってやったやろ
公園はすぐそこやったやろ
いつでも散歩すればいいがな
図書館もあったやろ
とひろしは言ったけど

1人じゃ行きにくいねん
なんか怖いし
と言う。

もう1人ではどこもよう行かん
だと?

甘やかしたのが悪かった。

引っ越しも、買い物も、みんなしてやったし、病院通いも毎度付き添ってた。

わかった
じゃ、一緒に散歩行くがな

一緒にエレベーターで1階まで降りた。

うちの部屋、2階やったな?
って…

大丈夫かな?
かあさん。
それも忘れた?

マンションの玄関を出て、
郵便受けはここやで
201号室、ここや
と教えたら、
差し込み口に手を突っ込もうとするかあさん。

何やっとるんや
そこは郵便屋が入れてくれるところやろ
出す時は、入り口の中からやろ
とひろしが言うと、

わかっとるがな
そのくらいのこと、わかるわ
と、かあさん、怒る。

公園まで歩き、
もう、疲れたと言うかあさん。

公園のそばの喫茶店に入り、3人でコーヒーをすすった。

3人とも
押し黙ったまま


 どんだけ気ままやねん

結局、3か月ももたなかった。
こんなところ嫌や!
元の家の方がいい
と言い出したかあさん。

何言ってる?
あんだけあの家にいるの、嫌や、よそ行きたい
って言って
マンションで1人暮らしする
って言うから、高い敷金とか保証金とか出してこの部屋借りたんやで

そんなら払えばいいんやろ
お金は全部払うがな
とか言うかあさん。

よくそんなこと言うな
今までも自分の年金じゃ足りん言うから、お金貸してやっとったんやで
それも返してもらってないんやで
そんなん払えるわけないやろ
とひろしが言うと

払うがな
月賦で毎月払う
と言うけど、もちろん払える訳がない。
でも、言い出したら聞かないかあさんだ。

元の家は、不動産屋に頼んで売りに出していたけど、1組見に来ただけで、まだ入居者は決まってなかった。

で、かあさんは元の家に戻ることに。
あんだけ嫌がってたのにね~
あんなにこの家出たいって、言ってたのに、また戻りたいって…
何なの?

気まますぎるやろ
わがまますぎるやろ

私たちがどんだけ費用と時間と体力を費やしたと思ってんの?
歩き回ってかあさんのための物件を探し、敷金保証金を払って契約し、月々の家賃引き落としのための銀行口座を作り、軽トラ借りて家具やかあさんの荷物を積んで運び込み、さらにかあさんのわがまま聞いて再び大きい家具を運び込み、何度もかあさんのために足を運び…

それなのに、いとも簡単に
やーめた!
みたいな気まぐれなわがまま突き通す。
私たち、息子夫婦を振り回し続けるかあさん。

もうひろしにも私にも、再びかあさんの荷物を自力で運んで元の家に戻す気力はなかった。

引っ越し屋に頼んだ。
引っ越し料金8万円を払って。


 相変わらずのかあさん

元の家に戻ったかあさん。
しばらくは1人で大人しく、平和に暮らしてくれるかと思えば、そうではなかった。
すぐに電話がかかって来た。

近所の奥さん、顔合わせたら
あら、帰ってきはったの?
って、嫌そうな顔しはる。
斜め向かいの家の子供に鬼ババァと言われた。
とか何とか。

それ、ほんと?
勝手な思い込みで嫌そうな顔に見えたのでは?
鬼ババァって聞こえたのでは?
かあさん、耳遠いし。

数日経つとまた電話がかかって来て行ってみれば、かあさんおでこに絆創膏。
その回りに血が垂れてるし。

どうしたんや、その顔?
とひろしが聞くと、
風呂場で転んだと言う。

もう、気をつけてや!
そう言うしかない。
一緒に風呂に入ってやるわけにもいかない。
手を貸そうとしても、
ほっといて!
と言うに決まってるし。
どうしても、1人で暮らしたいって言うんだから。

その後数ヶ月すると、
泥棒がいる
と電話してきて、ひろしが出たのだけど、何かと思えば水道料金がすごく高いとのこと。
水を盗まれている。
と、言ってるらしい。

車庫に水道があるやろ
近所の家に壁の塗り替えかなんかで来てる業者がいてな
その人たちがここから水を汲んでるって、言っとるんや
と、ひろし。

それ、見たんか?
とひろしが聞くと、
見てないけど、そうとしか考えられんがな
とかあさんは言ってるらしい。

あほやな
どうせ、自分が水使いすぎてるんやろ
とひろしが言うと、かあさんは激しく怒り出したようで、しばらく電話で親子喧嘩が続いた。

その後、ひろしと私が様子を見に行くと…
ピンポンとチャイムを鳴らしても、かあさん、出て来ない。
いつものことだ。
合鍵で入る。

台所の水道から水がポタポタ落ちている。
こういうところや
とひろしは言って、かあさんに声をかける。
おーい!
かあさん、振り向いた。
なんや、来たんか

見てみ、これ!
なんや
うるさそうに言うかあさん。
これ、水出てるで
なんやの
ほっといてんか
とうるさそうに言うかあさん。

ちゃんと蛇口締めんとあかんやろ
このせいで水道代高いんとちゃうか
それはたまたまや
いつもちゃんと締めとるがな
もう、はよ帰り!

怒ってその後、知らん顔してテレビを見続けてるかあさん。

買い物して来てやったのにな
果物だの飲み物だの、冷蔵庫に入れて、
お茶でも飲もうか

お湯を沸かして、勝手にお茶を飲んでから帰った。
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