鬼母(おにばば)日記

歌あそべ

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鬼母日記 2017年10月

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 10月1日 かあさん、ご飯を炊く

かあさんとの炊飯バトルの後、私たちはなんとかうまくやってた。

かあさんにベチャベチャのご飯を炊かせないよう、炊飯器のご飯が空になったらすかさず新しいご飯を炊く作戦。

ところがこのあいだ、うっかり炊飯器のご飯が空になったまま放っていて、忘れてしまった。
買い物から帰ってくると、ベチャベチャのご飯が炊けていた。

しくじったー
かあさんがご飯を炊いちゃった!

その日の夕方、夫と私が夕食の仕度をしようと台所に行ってみると、かあさんが冷蔵庫をのぞいていた。

私たちを見て言う。

晩ご飯のおかず、何作ろかと思て

えーっ!

顔を見合わせる夫と私。
おかずですって!?

かあさん、長いあいだ、まともなおかずなんか作っていない。

肉があるんや
これ、なんか野菜と一緒にたこかと思てるんや

えーっ!
肉が見えたんやー!

私たちが買ってきたお肉は、かあさんには見えないはずだった。

私たちがお肉だの生の魚だの買って来て冷蔵庫がいっぱいになってても、かあさんは、冷蔵庫には何もないって、まるで見えないかのように言ってたやん!

思えば、かあさんは、私たちがかあさんのために買い物してきたのを認めたくないのと同時に、材料があっても自分で料理できないのを認めたくなくて、冷蔵庫に何もないと言ってたのかもしれない。

それがなんで今日は?!

もっとも、夫や私がそのお肉を買ってきたとは思っていないようだ。
だから、お肉が見えたってことは、自分でお肉を料理できるって思ってるってこと。


私たちが越して来て4ヶ月。
一度もかあさんはおかずを作らず、私たちが毎日作っていた。

それがかあさん、しばらくぶりお米をといでご飯を炊いて、なんだかできるぞって気になったんだろうか。

わー、かあさんを調子づかせてしまったー

できるならやってごらん!
と、言いたい気もする。

でも、かあさんの作った料理なんか食べたくないし、何やらかすかわからない。

私はかあさんが手に持ってた牛肉を取り上げた。

これは、明日焼肉しようと思って買ってきたの!

今日は私が作るから、かあさん座ってて!

ええっ?!
あんたが作ってくれるんかー?!

って不思議そうに言うけど、もう4ヶ月も私たち、あんたの息子とその嫁が夕食作ってるんだよ。
知らなかった?

私はかあさんを遮るようにお肉を冷蔵庫に戻し、レタスとトマトを取り出した。

かあさん、不機嫌そうにテレビの方に行って座った。

ベチャベチャのかあさんのご飯は食べたくないから、今晩の私たち夫婦の夕食はおそばにした。

かあさんには、レトルトのハンバーグを温めて、レタスとトマトを付け合わせた。
味噌汁の代わりに、おそばがちょっとだけ入ったお汁。

もちろん、かあさんのベチャベチャご飯は大盛り。
沢庵、多めにつけてあげる。
ちゃんと食べて、責任取ってくださいよ!

かあさん、しっかり、ベチャベチャご飯を完食した。


  10月3日 かあさん、大泣き

かあさんが泣いてるところなんて見たことがなかった。

腰の骨を折ったり、呼吸困難になって死にかけたり、そんな悲惨な状況の時でさえ。

それが最近、泣くことがある。

このあいだ、電気ケトルが壊れていたので新しいのを買ってきた。
前より少し小さいサイズの、ピンク色のにした。

それを見たかあさん、喜んで、
前のは重たかったから助かるわー
と言う。

そして、
かあちゃんのためにこんなようしてくれて、ありがたいわ~ほんまに
と、涙を拭いながら言う。

ひぇ~
鬼の目にも涙か~
珍しい~

でも数分後、電気ケトルを指して、
これ、新しくなってんで
かわいいやろ!
と、自慢げ。

いったい誰が買って来たと思ってるんだろう。

そして、このあいだの日曜日。
夫は屋根に上がり、瓦を点検して漆喰の剥がれてるところを直したりしていた。

薄暗くなっても降りてこないので、私も2階の窓から1階の屋根の上に出て行った。
大屋根にいる夫が降りる時、ハシゴを支えるため。

もうすぐ終わると言うので、1階の屋根の上のハシゴを立てたところで夫を待っていると、家の中からかあさんの声が…

珍しくかあさん、晩ご飯食べるかーって階段の下まで呼びに来てる。
もう6時なんだ~

夫があともう少しだと言うので、そのまま屋根で待ってたら、かあさん、家の中で叫び続けてるようだ。

かあさん、なんかずっと呼んでるよ!
まだ降りてこれないのー?

もうちょっとやから

お腹空いたんかなぁ

とか言ってたら、そのうち、何言ってるのかわからないけど、かあさんの声が嘆くような感じになってきた。


夫がやっと大屋根から降りて来た。
夫がハシゴを片付けてる間に、私が先に降りて台所に行くと……

かあさん、大泣きしていた。

どうしたん?!

かあちゃん、あんたらがどっか行ってしもたと思って

どこへも行かんやん

「屋根の修理」と紙に書いて見せたけど、

あんたら、なんぼ呼んでも降りて来んし、2階上がってもおらへんし

えーっ!
2階に上がったの!?

ほんまかいな!
かあさん腰が悪くて足も痛いから、2階は上れないと思ってたけどなー

2階におらんし、どっか行ってしもたー思うて

わかった、わかった
ここにおるやん!

なんか、急に子供みたいになっちゃってるな、かあさん。

さすがにかわいそうな気がした。
かあさんをなだめつつ、晩ご飯の仕度を始める。

夫も台所に降りて来た。

かあさん、私らが呼んでもいないから泣いとったでー

そんなにお腹空いたんやろか?

見捨てられたと思ったんちゃう?

その後…
かあさん、夫の顔を見て、
今日2階上がってんけど、ちゃんと戸締まりしたやろか
と言い出だした。

ほんとに上がったかどうか疑問。
でも、すっかり上がったつもり。

2階のタンスの中の着物、盗まれてへんか?

上がれるなら、自分で確認したらいいのに。
かあさん、着物命。

盗まれてへん
ちゃんとある
と私が言うと、

ナフタリン入れなあかんのや
と言う。

ちゃんと入れてるし

そんなに心配なら全部持って降りて見せようか?
と言っても答えない。

あんな安物の着物、誰も欲しがらへんで
たいした値打ちないわ
と、夫が言っても聞こえない。

ともかく、さっき泣いてた件はケロッと忘れたようだ。

着物の管理と晩ご飯だけは、任せたいって、わけかな。


 10月4日 かあさんのヘルパーさん

かあさんは、ヘルパーさんがお料理を作るのを嫌がる。
新しいヘルパーさんが来て、かあさんのためにお昼ご飯を作ろうとする度、お料理は作らんどいてーと言う。

だけど、ヘルパーさんはお料理する。
かあさんの息子である私の夫が、そうするように頼んでいる。

すると、頼むから作らんどいて!
お料理は私が自分でできるから!
作らんどいてー!
と、大騒ぎ。

かあさんは、夫にも訴える。
おかず作るヘルパーさん、やめてもらお思てんねん

そしたらご飯はどうするねん
ご飯食べな生きていかれへんねんで
と夫が言うと、

自分で作れる
とかあさんは言う。

実際には、毎日私たちの作った夕食を食べてるかあさん。
でも、それをわかってるのは夕食を食べる時だけ。
絶対に息子夫婦の世話にはならないと、かあさんは思っている。

それならヘルパーさん、みんな断ろか?
と言うと、

かあちゃんを殺す気か!
と言う。
ヘルパーさんが買い物行ってくれなかったら飢え死にしてしまうやん、と。

ほとんどの買い物は、夫と私がしてると言うのに。

じゃ、ヘルパーさんの来てくれる日、半分にするかと言うと、
今、月水金しか来てないのに、困ると。

ヘルパーさんは月火水木金土、来てる。
かあさん、ヘルパーさんが日曜以外は毎日来てくれてるのに気づいていない。

しまいに、
かあちゃんがこんなに困って相談してるのに!
ほんとに何もしてくれへんな!
じゃまばかりして!

と、いつもセリフだ。

ヘルパーさん、誰が来てもらえるようにしたの?

勝手に来てると思ってるかな?


 10月5日 かあさん、鬼になる

ヘルパーさんが料理をするのを嫌がるかあさん。
抵抗するように、ヘルパーさんの作った料理を食べるのを嫌がる。

ヘルパーさんによっては食べる時もあった。
でも、新しいヘルパーさんが来るようになって、ますます嫌がるようになった。

それはちょっと白髪の目立つ、年配のヘルパーさんだった。

白髪の腰の曲がったおばあさんやで!
かあさん、顔をしかめて言う。

確かにそのヘルパーさんは白髪が多め。
だけど、かあさんほど腰が曲がってるわけでもないし、そんなにおばあさんでもない。
かあさんよりずっと若い。

白髪の腰の曲がったおばあさん。
って、かあさんそのものやん!
ただかあさんは髪を染めてるだけ。

そのヘルパーさんが作ってくれたお料理を見て、かあさんは言った。
白髪のおばあさんが作ったんやで!
気持ち悪い

なんてひどいこと言うねん!

そうかて、こんなもん食べられへんし、捨てよか思てるねん

捨てるですって?!
かあさんのために、色々考えて作ってくれたお料理なのに。

そのヘルパーさんの作ったお料理を初めて見た時、私は感動した。

煮物、炒め物、おひたし、サラダ。
限られた時間で、何皿も。
わざわざ玉子を茹でて、かわいく飾られたサラダ。
食べやすいように小さく切られた野菜。

私は今まで小松菜を小さくカットするなんて考えもしなかった。
そんなきれいに盛られたお料理の数々。

こんなのもし捨てたら、鬼やね
うん、鬼やで
夫と私はそう言い合った。

かあさんが食べようとしないから、お皿を変えて盛り直したり、他の具材を加えて違うお料理に見せて、食べさせようとしたけど、全部は無理だった。

かあさん食べないなら、私食べるよ
捨てないでよ!
と言うと、
えー、食べるんか?気持ちわるっ
って言うから、

なんでよ!
こんなにおいしそうなのに
かあさんのために一生懸命作ってくれたのに
と言うと、

あんたにはわからへん!
とへそを曲げるかあさん。


ヘルパーさんのお料理はほんとにおいしい。
でも、かあさんのためのヘルパーさんだから、私たちが食べてるなんてとても心苦しい。
でも、食べずに捨てるのはもっと心苦しかった。

とうとうかあさん、お料理作るヘルパーさんに、やめてもらいたいって、ヘルパーさん本人に言ったらしい。

もう、来るのやめてもらお思てんねん
お料理は自分でできるし
と直接ヘルパーさんに言ったのだ。

はいはい

と答えながらも、そのヘルパーさんはその後もちゃんとやってきて、嫌な顔せずにお料理してくれる。

かあさんに負けずに。

もしかしたら、こんなかあさんに嫌気がさして、今までも何人となくやめていったのかもしれない。
夫と私が知らないうちに。

ほんとに申し訳ない。

どうしたらいいのだろう。
かあさんは、お掃除もしてもらうの嫌がって、掃除機を隠してしまう。
買い物はほとんど夫と私が行くので、週に1回だけ、別のヘルパーさんが来てくれてる。

ヘルパーさんに来てもらう日を頻繁に減らしたり増やしたりできない。
これからもお世話になり続けないといけないし。

どうしたらいいか決められないまま、今のところそのヘルパーさんは、週に2、3回来てかあさんのためのお昼ごはんを作ってくれてる。

その度、かあさんは、
これ、白髪のおばあさんが作ったんやで
気持ちわる~
と言う。

かあさんは明らかに白髪の人を見下している。
自分は髪を染めて化粧して、立派な人間のつもり。

白髪の目立つ人を年取ったおばあさんと認識し、自分がおばあさんの世話になっていることが許せないのだと思う。

かあさんは自分では若いつもりで、一人では何もまともにはできなくなってるの、全然わかってないから。


ある日、外出から帰って台所のテーブルを見ると、小皿が1枚。
トマトのサラダだけが乗ってる。

白髪のヘルパーさんが来てたはず。
普段ならテーブルの上に数品のおかずがラップをかけられた状態で残っているのに。

台所の流しに、空のお皿が2枚。
冷蔵庫から、豚肉がなくなっていた。

もしかして、かあさん…

ゴミ箱を開けると、そこには玉子焼と、炒めたお野菜と豚肉が!

やりやがったな!

かあさん、やっぱり鬼だった。


 10月7日 魔法の段ボール箱

台所にいつも置いてあった段ボール箱。
ある日、忽然と姿を消した。

その日、私は夕食にカレーを作ろうとしていた。
だけど、冷蔵庫にジャガイモが1コしかなかった。

その段ボール箱は、ジャガイモや玉ねぎ入れになっていた。
もうほとんど野菜はそこに残ってないはずだったけど、もしかしたらジャガイモの1コか2コ、残ってないかな?と思ったのだ。

そうしたらその段ボール箱がまるまるなくて、焦った。
夫も私も動かした覚えはない。

となると、かあさんの仕業としか思えない。
かあさんが捨てたのか。

でも、段ボール箱は大きくてゴミ箱には入らないし、小さくして捨てた形跡もない。
車庫とか2階も、全部探したけどない。

ミステリー。

結局、かあさんの押入れの中から見つかった。

ついでに、アルミホイルも見つかった。
アルミホイルは、お料理に使おうとして見つからなかったもの。

トイレットペーパーやお米を押入れに隠すかあさんだけど、まさかこんなもの隠すと思わなかった。
なぜって、かあさんが押入れに隠すのは、盗まれたくない物だけ。

誰がこんなもの盗む?

アルミホイルなんか100円ちょっとで買えるし、しかも残り少なくなった使いかけ。

段ボール箱は、野菜はほとんど食べ尽し、空の袋や野菜を入れてた網が入ってるだけ。

夫が押入れからそれらを出してくると、かあさんは、
盗られたら困ると思って隠してたんや
と言った。

かあさんにとって、こんなものがそこまで大切なんだー!

アルミホイルはともかく、この段ボール箱は、過去、色々な物が入っていた。

今年の夏はたくさん野菜をもらった。

野菜が減った頃、またもらったりして、長い間、ジャガイモや玉ねぎやかぼちゃや…
またある時はスイカ
別のある日は、かあさん言うところのメロン。
もらったり買って来たりする度、そこに入れて保存していたのだ。

考えてみると、この箱は、かあさんにとっては魔法のようなお宝段ボール箱だったのかも。

だって、かあさんが何もしなくても、次から次へ、わいてくるように野菜やフルーツがここに現れる。

ほんと魔法だね~

しかし、何で今頃?
何で、ここにきて?

今入ってるのは古いゴミ袋や網袋。
もうじゃまなだけの箱だった。

しかも、押入れにしまい込んじゃったらもう誰も、新しい野菜もフルーツも入れられないよ。

魔法だから、それでも何かわいてくると思ってたかな?

探してみると、芽が出た小さなジャガイモが2つ、段ボール箱の底に潜んでいた。

助かった!
晩ご飯のカレーができる!

で、その日はおいしいカレーにありつけた。
かあさんが何もしなくても自動的においしいカレーがかあさんの目の前に。

それも魔法だよね、かあさん。

段ボール箱は、押し入れから救出して台所の元の位置へ。
その中に入れたのは、
みかん、ジャガイモ、サトイモ。
メロン(?)

かあさん、やっぱり魔法の段ボール箱だったよね。

みかんは2箱あって小さめの箱だけど、それを段ボール箱に入れたから、かなり段ボール箱は重たくなった。
かあさんには待ち上げられない。
で、みかんを盗られたくないかあさんは、苦肉の策を思いついた。

段ボール箱は中身が上から丸見えだから、ゴミ袋をかぶせて隠す作戦。
なるほど、これだとみかんは見えないね。
家の中にあったゴミ袋全部、段ボール箱の上に置いて隠した。


次の日、朝からゴミ袋がない、ゴミ袋がないって探してるかあさん。

段ボール箱のみかんの上でしょ!


 10月9日 かあさんの(?)梅干し

夫は梅干しが好き。
和歌山の梅干しのお店から、お気に入りの大粒の梅干しをお取り寄せする。

さっそく取り寄せた梅干しを食べようとして冷蔵庫から出してくると、かあさんが、

それ、おいしい梅干しなんや
わざわざかあちゃんが取り寄せたんやで
食べてみ
と言う。

ひぇ~
かあさんが取り寄せたですって?
どうやって?

かあさんも梅干しが好き。
食べ物の好みも似てる、この親子。

息子は自分のために何もしてくれない。
自分は息子の世話にはなっていない。
と信じているかあさんだから、息子に梅干しをご馳走になるなんてありえない。

かあさん、しっかり自分の成果にしちゃった。
息子が取り寄せたばかりのこの梅干しを、自分の梅干しだと言い、私たちにごちそうしてくださると。

夫と私、苦笑い。

次回はかあさんに取り寄せていただこうかな。

晩ご飯のおかずが、ちょっと物足りない感じかな?と思い、かあさんの夕食に梅干しを一つ、小皿に入れてプラスした。

かあさん、ご飯もおかずも食べちゃった後、大粒の梅干しを、デザートのように大切そうに食べていた。

お茶も飲まずに。

よっぽど好きだな。

やっぱり似てる。
この親子。


 10月12日 かあさんの探し物

かあさんが財布を探している。
だけど、しばらくしたら探してること、忘れたようだ。

だけど明日はヘルパーさんが買い物に行ってくれる日。
財布がないと困る。

夫が、財布探してたけどありましたか?
と紙に書いてかあさんに見せた。

財布探してたんやったかな?
そうか、どこやったんやろ

と、かあさん、探すけど見つからず。
夫と私と3人で、あちこち探しまくる。

いつもかあさんは台所にある引き出しのどれかに入れるから、すぐ見つかるはず。

だけどどの引き出しにもない。

かばんに入れてるかも。
と言うので、押入れに隠したかばんを取り出す。

ない。

ほんと、どこやったんやろ

そんなんなくなるはずないから、どこかにしまってるに決まってるんや
ほんまどこやってんやろ
呆けたな、ほんま

と言うかあさん。

妙にまともだ。
てっきり盗まれたって騒ぐかと思った。

結局、かあさんの座ってる座布団のすぐ横に置いてあったティッシュの箱の下にあった。
夫が見つけた。

もう、人騒がせな。
財布は決まった場所に隠してほしい。

でも、おかげで押入れの中から、探しても見つからなかった物が見つかった。

食器を洗うスポンジや、小さいサイズのゴミ袋。
こんな物まで押入れに隠してたんだ~

そんな物盗られると思うのかな?

いつも被害妄想なのに、財布を盗られると思わないのが不思議。


 10月13日 かあさんと探し物ゲーム

かあさんの財布探しに付き合ったばかりの私たちだけど、今日も朝から探しもの。

台所に置いた乾物入れの大きな箱に割り箸を入れてあったはず。
それがない。
その箱には、インスタント麺やだしの素やかつお節や袋菓子が入ってる。

今朝は、いつもそこにあった割り箸がない代わりに(?)使いさしのトイレットペーパーが入ってた。

台所の食品入れてるところにトイレットペーパー置くなよー!
絶対トイレから持ってきたやつやん!

ちなみに、前日かあさんの押入れから救出してトイレ前に戻した予備のトイレットペーパー12ロールは、かあさんの手によってしっかり押入れに連れ戻された模様。


ともかく朝食。
食器棚の一番上の棚からコーヒーとカップとペットシュガーを取り出してコーヒーを入れ、冷蔵庫のフリーザーから食パンを取り出してトーストする。

割り箸も見つかったら食器棚の上の方の棚に移した方がよさそう。

かあさんの手の届かない冷蔵庫のフリーザーと、食器棚の上の方の棚、もう色んな物がギュウギュウ。
かあさんに隠されたら困る物が詰め込まれている。

朝食の後、もうギュウギュウ、ごちゃごちゃになった食器棚の上の段にコーヒーやペットシュガーの袋を戻して詰め込む私。

あ~もう出かけなきゃ。

朝からかあさんのさがしものゲームに付き合ってる暇ないというのに。


 10月14日 かあさんに怒り爆発

テーブルの上に、おいしそうな煮物と豆腐とお肉の炒め物。

これ、ヘルパーさんが作ってん
捨てよ思てんねん
とまたまたこんなことを言うかあさん。

もうヘルパーさん断ろ思てんねん
とも。

なんですと!?

夫も私も怒りが爆発した。

それでどうするねん!
ご飯食べないと生きていかれへんで!

自分でご飯作ると言うかあさん。

なら、そうしたら!
ヘルパーさん、全員やめてもらったらいいやん!

すきにすれば!

でも、買い物行ってもらわな困るねん
と、かあさん。

勝手なこと言うな
買い物も自分で行けよ

まったく
人の世話にならないと生きていけないの、なんでわからない?

夫も私も口々に怒鳴った。

耳の遠いかあさん、多分全然聞こえていない。

でも私たちが怒ってるのは、わかった模様。

いつも夫が怒ると、
なんや、偉そうに!
何もしてくれへんくせに!
と、かん高い声で言い返すかあさんだけど、私も一緒にカンカンに怒ってるさまには、ちょっと引いてしまったよう。

テレビの前に退散した。

まったく!

かあさんのために色々考えて作ってくれたお料理、なんで簡単に捨てられる?
なんて冷たい人なの?

それに、かあさんの年代、食べ物を粗末にはしないと思ったけどな。

お料理作れるですって!?

今のかあさんが作ったなら、とんでもない物ができるに決まってる。

焦げてるか、味がおかしいか。
しかも不潔。

だって、かあさん、トースターのパンでさえ焦がすし、味覚は麻痺してるし、きったない雑巾みたいな布巾で皿拭こうとするし。


かあさん、白髪のヘルパーさんを腰の曲がったばあさんと言い、その人が作ったお料理を気持ちわる!
って言ってたね。

それ、かあさん自身に対して言ってるようなもの。

かあさんが嫌う白髪の腰の曲がったばあさんって、かあさん、あなたそのものでしょ。

そんな自分自身を見つめることも受け入れることもできず、髪を染め、化粧して取り繕い、人を見下す嫌な冷たい人間になっちゃってる。

認知症のせいじゃないの、私たちは知ってる。

だって私たちは、ずっと前からかあさんを知ってるんだから。

お料理作れると言うなら作ればいい。

でも、かあさんのお料理見たら、私言っちゃうよ。
かあさんが言った言葉そのままお返しする。

白髪の腰の曲がったおばあさんが作ったんやで。
気持ちわる!


 10月16日 かあさんのみかんとトイレットペーパー行ったり来たり

かあさんが階段の下で呼んでる。
ちょっとー取りに来てー!

行ってみると、かあさんが袋に入れたみかんを持って階段を上がろうとしていた。

もう足が痛いから階段上がられへんねん
と言うかあさん。

上がらんでいいし。
上がって来られたら困るし。

みかん、たくさんあってんけどあちこちにあげてしもて、こんだけしかないけどな
と言うかあさん。

袋にはみかんが8個入ってた。

かあさん、このみかん、どこから来たと思ってるんかな。

魔法の段ボール箱から勝手にわいてきた?

で、あちこちにあげたって?
いつ、誰に?

それは夫と私が買ってきたみかん。
かあさんが私たちにくださるそうだ。

階段上ろうとまでしてかあさんが持ってきたみかんだから、ありがたくもらっておくことにする。


その後、台所の段ボール箱をのぞいてるかあさん。

みかん、えらい減ったな
どないしたんやろ
とショックを受けている模様。

って、かあさん、さっき私たちにくれたやん、みかん8個。

後でこっそり、かあさんのくれたみかんを段ボール箱に戻した。

かあさんの魔法の段ボール箱に。

次の日、かあさんが私にみかんの入った袋を渡して言う。

これ、食べてや

いらない かあさんが食べたら?
と、言ったけど、

まだたくさんあるから
と言う。

今回は6個入ってた。

少し時間がたてば、またみかんがえらい減ったな!
って騒ぐんじゃないかな。

戻した方がいいかな。
でも、戻したら、またくれるのかな。
みかんが行ったり来たり?
まるでトイレットペーパーのように。

我が家では最近、トイレットペーパーが行ったり来たりしてるのだ。

トイレットペーパーを盗まれると思ってるかあさん、私たちが買って来てトイレの近くに置くと、すぐに自分の寝室に持って行って押入れに隠してしまう。

で、また新しいトイレットペーパーを買って来て置くと、また持って行って隠してしまう。

そんなことを繰り返し、かあさんの押入れはトイレットペーパーだらけになってしまった。

さすがに、トイレットペーパーを何年分も溜め込むわけにもいかず…
最近は、かあさんの押入れからこっそりトイレットペーパーを取り出し、トイレの近くの定位置に戻している。

だけど、1時間たたないうち、トイレットペーパーはまたかあさんの押入れに連れ去られる。

で、また私たちはトイレットペーパーを救出、連れ戻す。

その繰り返し。


みかんは、そのうち食べちゃってなくなるし、別に困らないし。

でも、トイレットペーパー行ったり来たりは…

なんだか果てしなく続きそう。

多分、エンドレス?


 10月19日 かあさんの記憶、一瞬で切り替わる

晩ご飯を食べ終わって、5分たたないうち、
今日はご飯食べてないねん
何も食べてへん
何か、食べなあかんな

と言うかあさん。

何言うてんねん
さっき食べたとこやで

と夫が言うと、

そうや、さっき食べたで
誰が食べてへん言うた

と、瞬時に答えるかあさん。

かあさんの脳はすごい。
すごいスピードで記憶が切りかわる。
呆けてるというのに。

今聞いたばかりのことが、瞬時に以前から知ってることになるらしい。

そんなかあさんの返答ぶりに、いつもイライラ、ムカっとしてる夫。

紙に何やら書いて、かあさんに見せたようだ。


かあさんの反応で、かあさんの怒りの程度がわかる。

ちょっと怒った時。
なんや、えらそうに!
と怒るけど紙はそのまま。
裏返して置いてある。

もうちょっと怒ってる時。
紙を放り投げる。

かなり怒った時。
紙をくしゃくしゃにして捨てる。

すごく怒った時。
紙をやぶって捨てる。

今回。

びりびりに破いた紙がゴミ箱周辺に散乱してる。

そうとう怒りまくったな。

夫が紙に書いたのは…

さっき7時頃皆と一緒にご飯食べたとこやで
忘れたんかー 認知症!


 10月22日 かあさん、おもにトイレで暮らしてる

トイレが近い私。
朝方、けっこう起き出してトイレに行く。

ところが、かなりの確率でかあさんがトイレにいる。

かあさんは戸を開けっ放しでトイレに入るので、すぐわかる。

で、私はいったん2階の寝室に戻る。

かあさんのトイレは長い。
何やら独り言、ぶつぶつ言いながら。
時には嘆きながら。

うーん、我慢がつらい。

ところがかあさん、トイレ出てからも、しばらくトイレ前の廊下を行ったり来たりする。

杖の音が響く。

かあさんと夜中に鉢合わせしたくないから、かあさんが寝室に引っ込むまで我慢。

階下でかあさんのうがいの音。

かあさんのトイレタイムには必ずうがいがついている。

ガラガラっ、ガ~ ぺっぺっ!

オッサン顔負けの豪快さ!

もう我慢できないわー
かあさんが台所の流しでうがいしてる間にトイレに駆け込む。

かあさんがトイレの明かりに気づいたら消されちゃうかも。

猛スピードで済ます。

やれやれ。


しばらくたって、またトイレに行きたくなる。

耳を澄ます。

階下から気配が。

杖の音。

あー、かあさん、またトイレに行くつもりだ!

なんでこんなタイミングになる?


夫は私よりトイレが近い。

一晩に何回も行く。

で、やっぱりかあさんとかち合うことが多いと言う。

かあさん、いったい一晩に何回トイレに行くんだろう。


年寄り3人居るもんで、難儀だ。

トイレ、フル回転?


しかし、ほんとにかあさんのトイレタイムは長い。

あまりに長いから、夫が半分開けっ放しのトイレのドアからのぞいてみると、じーっと立ち尽くしていたという。

何してるんや
と聞くと、

水がちゃんと止まるか見てるんや
と言う。

トイレの度に、流した後タンクに注がれる水が止まるまで見ているようだ。

まったく。

水が止まらずあふれるとでも思ったかな。
そんなこと、私の長い人生で一度もなかったけどな。

それなのにただぼーっと、見守ってるの、時間の無駄。

ま、一度死にかけたかあさんにとって、残りの人生おまけのようなもの。
すきに使うといいわ。

それにしても、かあさん、トイレ滞在時間が、チョー長いよ!

トイレに住んでるんじゃないかと思ったよ。


 10月23日 みかんの隠し方

ひゃあ、どないしょう!
もうっ!
なんでや~!

さっきから、大きな声でわめいてるかあさん。
近所に丸聞こえだよ。

続いて…
ガラっ、ガラガラっ
ドスン
バタン!

大きな物音。
かあさん、耳が遠いから自分がどんなに大きな音を出してるか知らないでしょ。

2階まで、音と振動が響き渡ってる。

かあさん、何か探してる様子。

まさか、自分で隠したみかんではないでしょね!

大切なみかんを盗まれると思っているかあさん。

みかん箱の中のみかんの上にネットを被せて隠してるつもり。

でも、それだけでは心配なのか、一部のみかんを別の場所に隠した。


朝6時前、寒いというのに下着姿のかあさん。
足元だけモコモコのくつした。

なぜか赤い頬っかむりをしてて、かあさんがまるでコソ泥みたい。

台所に行ってみると、そんないでたちでかあさん、米びつストッカーの前でしゃがんでた。

いったい何してる?
と思ったら、みかんを数個隠してたわけ。

米びつの横の物入れに。

熱心やな~

さらに。

それでも心配なのか、みかんを分散させる作戦に。

盗まれても被害を最小限に食い止める作戦?

冷蔵庫に1コ、食器棚に1コ。

ともかく、色々考え巡らせてるようだ。

業務スーパーで買った、お買い得品のすごーく安いみかんなのに。

さがしもの、見つかったかな?


 10月25日 かあさんに蹴り入れる

かあさんが何かぶつぶつ言ってる。

会社にばかり言って、全然ゴミほりに行ってくれへん

かあさん、私たち息子夫婦に不満がいっぱいなんだ。

ゴミ出しには、ちゃんと行ってる。
生ゴミは毎回夫が。
資源ゴミは私の担当。


夫が炊飯器に残ったご飯を移し替えようとして、コンセントから線を抜いた。

それを見たかあさん、

またかあちゃんがご飯炊かなあかん
あんたは一度もご飯炊いてくれへんな

今夫がご飯を炊こうとしている。
ご飯はずっと夫が炊いている。

ほんま、あんたらは何もしてくれへん
かあちゃんが何もかもせなあかん

って、それが何もまともにできなくなって息子夫婦の世話になって生きてる者の言いぐさ?!

ムカつくー!

かあさんは、いつも私たちがかあさんの晩ご飯を作ってることさえ忘れてる。

自分が毎回ご飯を炊いて私たちに食べさせてるつもり。

ほんまムカつくー!

思わずかあさんの背中に蹴り!

…を入れる妄想。


今から夕食を作る。
私たち夫婦は、もう何でもいい。
あっさり、ご飯と漬物だけで。
と思っても、かあさんの晩ご飯はそうはいかない。

毎回、かあさんの食事には気をつかっている。

なんであんなババァのために?
と思いながらも。


夫がご飯を炊こうとすると、決まってかあさんはかまいに来る。
炊いてくれへんと文句を言ってたのに、夫が炊くと不満だ。

ちゃんとしばらく水につけとかなあかんで!

炊きあがったら、
ちゃんとご飯混ぜなあかんで!

混ぜてると、決まってやって来て、炊き上がってすぐに混ぜたらあかんのやで!
と言う。

うるさい!
わかってるわ、そんなん。
ベチャベチャのご飯しか炊けないあんたに言われたくない。


私がおかずを作ろうとする時も、絶対にかまいに来る。

冷蔵庫に何もないやろ
何かできるか?

できる。
ちゃんと私たちがお肉や野菜を買ってきてある。

ほんま何もないな~
ヘルパーさんに何か買ってきてもらわなあかんな

かあさん、ヘルパーさんに私たちの夕食の食材なんて頼んだことないでしょ!

いつも、自分のためのお茶や巻き寿司や化粧品ばかり。

もちろんそれでいいけどね。

足りない物あったら言ってや
ヘルパーさんに頼むし

足りない物はないし。
ちゃんと私たち、買ってきてるし。

冷蔵庫の中の物、何でも使いや!

はいはい
って、冷蔵庫の中にあるのはほとんど私たちが買った物やし。
かあさんには見えないみたいだけど。

何か手伝おか?

って、何もまともにできないくせに!


かあさん、私がレタスを皿に盛ろうとして少しだけテーブルの上にこぼれた水を、ティッシュを出してきて拭き取ろうとしてる。

もう、こんなにこぼして
世話やけるわね~
みたいな感じで。

もちろん、そんなの料理できたらきれいに私が拭くでしょ。

余計なことだけするよね。
癇に障る。

肉じゃが作って、ご飯が炊き上がるまで鍋に入れたまま放置していた。

ちょっと目を離したすきに…

かあさん、さわったな!
肉じゃがかき混ぜて、しゃくしを流しに放置。

あーあ、めちゃめちゃかき混ぜよった!
一部のじゃがいも、粉々。

ちょっと目をはなしたら、絶対にさわりよる。

ほんまムカつく!

なんかめちゃくちゃ腹が立って、

かあさんに蹴り!

を入れるかわりに、鍋の蓋を台所の床に投げつけた。
鍋の蓋のツマミ、崩壊。

ほんと、余計なことしかしないババァだ。

私が作った肉じゃがかき混ぜて、それでもう自分が作ったつもりになってるんだ、きっと。

で、かあさんに夕食出したら、その時だけ、
世話かけるな、悪いな
と気持ち悪い猫なで声。

ほんと気持ち悪い。

かあさんが食べ終わって、食器を下げようとすると、決まって言う。
かあちゃんが洗うわ、と。

洗ったためしないやろ!
自分が昼ご飯を食べた後の食器も洗わずに流しに置いたまま。

いつも夫が洗う。

なぁんも、なあーーんにもできんくせに偉そうにするよね。

食べ終わった1分後には、私たちの作った夕食食べたこと忘れてる。

まるであらさがしするように、夫が食器を洗い終わった後、流しの縁に残った水分を雑巾で拭いて、

何でもみなかあちゃんがせなあかん
ほんま手がかかる

とか何とかぶつぶつ言ってる。

自分がご飯を炊いて私たちに夕食食わせて、後片付けまで自分がしたつもり。

夫が、じゃまやからあっち行けって追い払う手つきをすると、怒って、

えっらそうに!
何もせえへんくせに文句ばかり言うんや
じゃまばかりして!

そんなんやったら、もう来んでよいわ!

いつものセリフ。

残念ながら、毎日私たちここにいる。
ここに住んでるんだからね。

かあさんのために仕方なくね。

自分では何もできないのわからないんだ。

自分で何でもできるから、ヘルパーさんも断るだと!?

ヘルパーさんや私たちの作ったご飯食べて生きながらえてるくせに。

最悪の呆け方。

最悪のババァだ。

思いっきり、後ろからかあさんの背中に蹴りを一発!!

…入れるポーズ。

普通の人よりちょっと我慢強い私たち。

普通の人なら、蹴り飛ばしてるわ。

と思う。



 10月28日 かあさんと探し物ゲーム、またか~

みかんを隠すのに熱心なかあさん。

みかん箱の中のみかんの上にネットを置いて隠していたけど、よくよく見ると、すごく念がいっている。

青いネットの下に発泡スチロールの白いネット、その下に白いレジ袋が数枚重ねられ、その下にやっとみかんがあって、不透明の袋に入れられている。

まるで貴重品のよう。

それ以外にも、あちこちにみかんを分散させて置く作戦に出たかあさんだけど、最近その作戦がトイレットペーパーにも及んだ。

すでにかあさんの寝室の押入れはトイレットペーパーだらけ。

それに飽き足らず、最近は台所のあちこちにトイレットペーパーが1ロールずつ。

米びつストッカーの横の物入れに1ロール、台所の隅に置いたワゴンの中段に1ロール。
袋菓子やインスタント麺を入れてる箱にも。

みかんはいいけど、キッチンにトイレットペーパーはやめてほしい。

さらに、分散作戦は、他にも。

朝、いつもの場所に、割り箸がない。

またか~

夫は自分専用の箸を持ってなくて、割り箸が好きなので、ないと困るのだ。

で、以前かあさんが割り箸を隠した場所を全部確認。

流し台の引き出し、米びつストッカーの物入れ。
食器棚の引き出し。

そして、食器棚の中の皿の上に数本の割り箸を発見。

残りはどこ?

台所にないところ見ると、かあさんの寝室の押入れかも。

もう、ほんとに…

朝から隠しものゲームにつき合ってられないよ~~


 10月30日 かあさんの声、高すぎる

夕方、1階からかん高いかあさんの声、鳴りやまず。
あー、かん高すぎる!

何わめき続けてる?

たまらず2階から降りてみると、かあさんと夫が喧嘩してる。

なんでも、夫がご飯を炊こうとして、そろそろスイッチを入れようとしてたところにかあさんがやって来て炊飯器を開け、といだお米が入った中釜を取り出していたらしい。

何するねん!
どうするつもりや!

と夫が言うと、

ご飯炊かなあかんねん
遅なってしもた

と言って、といだお米をかき混ぜようとしてたらしい。

もう混ぜた
かまわんで、向こう行っといて

と夫が言うと、怒ってわめき出したという。

かき混ぜようとした時点で、かあさんは自分でご飯を炊いてるつもり。

あんたは何もわからんくせになんでかまうんや!

と、自分でご飯をといだつもりのかあさんからしたら、夫がいちいちかまってじゃましてるわけ。

最近ずっと夫がご飯を炊き、かあさんは毎日それを食べている。

でもかあさんからしたら、毎回ご飯を炊いてるのは自分で、私たち息子夫婦にごちそうしてやってるつもり。

男のくせに!
何もわからんくせして!

って、かあさん、
あんたはご飯も炊いてくれへんな

とか文句言ってたんちゃうの?

とにかく、高い声できゃんきゃん騒いでるところに私が降りて台所に行くと、かあさんが炊飯器を取り戻そうと必死になっていた。

夫が、さわるなって言ってるやろ!
と怒鳴ると、

スイッチ入れなあかんやろ!
早くご飯炊かなあかんのや!

と、かあさん。

わかってるから、かあさん。
あとちゃんとやるから、かあさん座ってたら
と私が言うと、

ここやで、スイッチ
ここ、押さなあかんで

と、わざわざ教えてくれる。

なんもしてへんくせにえらそうにして!
男のくせに
なんもわからんくせにじゃまして!
もう!

とかあさん、なおもかん高い声で言いながら、いつもの場所に座ったけど、しばらくはティッシュで顔を覆って嘆いているようだった。

よっぽど腹が立ったんだろうな。

でもすぐに忘れるだろう。


ご飯が炊ける頃、ちゃんと見てないと、かあさんがご飯をかき混ぜてしまう。

鼻かんだままの汚い手で。

ご飯が炊けた頃見に行かないと。

しばらくしてから台所に行くと、台所のテーブルに色んな物が出ていた。

ヘルパーさんがかあさんのために買ってきた1人分のちらし寿司、天ぷら、ポテトサラダ。

かあちゃん、なんか食欲ないんや
あんたらこれ食べてくれるか
と言うかあさん。

でも、これヘルパーさんがかあさんのために買ってきてくれたんだよ
かあさん、晩ご飯にするわって言ってたやん

でも食べる気せーへん
なんかお腹張って
あんたら食べ

そらそやろ。
かあさん、さっきパン食べてたとこやもんな。

後でいただくわ
と言って冷蔵庫にしまう。

ご飯はまだ炊き上がらない。

5分後、台所に戻ると、さっきのちらし寿司や天ぷらにプラスされてお肉がテーブルの上に。

こんなんあるで
晩ご飯食べたらどうや
かあちゃんはなんか食欲ないからいらんわ

かあさん、いつもお肉なんか見えないのに、今日は見えたんや。
どうしたんやろ。

なんか調子づいてる。
ご飯炊いたつもりやもんな。

わ、お肉3種類も出てる。
豚肉、牛肉、鶏肉。

晩ご飯食べや
かあちゃんは、なんか食欲ないねん

そうやろな、パンの他にバナナも食べてたもんね。

もう!お肉全部出すなよ。
傷むやんか。

お肉3種、冷蔵庫に戻す。

まだご飯炊き上がらない。

3回目に降りたら、テーブルにさっきの内容にプラスして冷凍袋餃子が。

かあさん、お腹空いたん?
ご飯食べる?

うん、食べよか
とかあさん。

で、ちらし寿司や天ぷらやポテトサラダはきっちりかあさんの晩ご飯に。

レタスとトマトのサラダもつける。

ほらね、やっぱり食べるでしょ!
私たちが食べてしまわなくてよかったよね。

私たちは、かあさんの手から取り戻して無事炊けたご飯を食べる。
自分たちが買ってきた餃子を焼いて。

かあさん餃子好きだったよね…
少し食べる?
かあさん、私たちよりよく食べるもんね。

食べて10分したら、今日はなんか食欲ない
何も食べてないねんけど

とか言い出すよ、きっと。


ともかく、今後もかあさんにご飯を炊かせないよう要注意!

かあさんのベチャベチャご飯はごめんだもの。
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