鬼母(おにばば)日記

歌あそべ

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鬼母日記 2018年3月

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 3月1日 かあさん、トイレがエンドレス

おとついの夜のこと。

夜中にトイレに行きたくなって耳をすます。
杖の音はしないし、1階でかあさんが動いてる気配はない。

で、1階に降りてトイレの方を見ると、かあさんが使用中。

まいる~

でも、すぐ出てきた。
上はパジャマ着てるけど下は下着だけ。

音しないはずだ。
スリッパをはいてないし、杖も持たずに歩いてる。

で、一瞬寝室に入ったけど、すぐ出てきてまたトイレに入っちゃった。

何?もう~

いったん、2階に戻ってもう一度布団にもぐる。

しばらくたってまた耳をすましたけど、しんとしてるから、降りてみる。

ゲゲッ
またかあさん、トイレの中。

しばらく待ってかあさんトイレから出てきたようなので、今度こそ行こうとすると、またもや!

一度出てきたかあさんがまたトイレに!

なんなん!?

安眠できない。
疲れがたまる~


でも、こんなの、まだまだましだった。


かあさんのトイレタイムのおかげで安眠できず、しんどい朝をむかえたその日の夜……

かあさん、トイレにティッシュの箱置いててな、トイレットペーパーないからこれ使いって言ってるで
と、夫が言う。

え~、それはあかんやろ

今日も予備のトイレットペーパーを1個トイレの前に置いたばかりなのに、なんで?

で、トイレットペーパーをまた1個持って行ってトイレ前のかごに置いた。

かあさんがトイレから出てきた。

トイレの床に置いたティッシュの箱を指差し、
かあさん、これ流したらあかんで!
と言ったら、

なんや!
と私をにらむかあさん。

そして今私がトイレ前に置いたばかりのトイレットペーパーを手に取り、
そうやここに置いてたんや、トイレットペーパー
と言う。

それ、私が今持ってきてん
と言うと、
ここに置いてあったんやで!
と怒った声で言う。

で、トイレットペーパーをトイレットペーパーホルダーの心棒に取り付けようとするかあさん。

手間取ってる。

私がするわ、かあさん
私トイレ今から入るから
と、トイレットペーパーをかあさんの手から取り上げようとすると、母さん、怒り出した。

なんやねん!
ちょっとつけたらすむねん

私は今からトイレ入るから私がするわと言っただけやし

えらそうに、なんや!
とかあさんが怒るので、ムカついて、

なんでそんなに怒るの?
と言ったら、

あんたらなんでそんなにかあちゃんをいじめるんや!
いつもいつも
もう死にたいわ!
死んだらええんやろ!

とまたそんなことをわめき出したので、思わず、

なら、死ねば!
と言ったけど、かあさんには聞こえてなかったようだ。

かあさん、自分が私たちの世話をしてるつもりなのか、私たちがえらそうに言ったりかあさんを助けようとすると怒るようだ。

あんたら、何もしてくれへん
何も助けてくれへん
とよく言う。

そう言ってずっと私たちに文句を言っていたいのだろう。

洗面台の前にいた夫に、
何なの、あれ!
ムカつくわ~
と言いながら、
あ、そうだ私トイレに行こうとしてたんだ~
とトイレに行こうとしたら、

またかあさん、トイレにやってきた。

何もなかったように、
トイレ行くわ
あ、あんた行くんか?
先に行きや
と言う。

いいよいいよ、かあさん、先に言って
急がないから
と、かあさんを先に行かせた。
もらすと大変。

かあさん、またトイレやて
どうなってるの?

しばらくして、タオルを手にトイレから出てきたかあさん。

壁塗り替えたばかりやからな、トイレのタオルがすぐ湿るんや
と言う。

夫がトイレの壁を塗り替えたのは何ヶ月も前。
トイレのタオルがすぐ湿るのは、かあさんがしょっちゅうトイレに行って手を拭くからでしょ。
そう言えば最近、私が行く度にトイレのタオルが変わっていた。

かあさん、新しいタオルを持ってきてトイレに。
またトイレで座ったようだ。
しばらく出てこない。

どうしたのかな、かあさん。
夕べも何回もトイレ行ってたけど。
勝手に薬飲んじゃったのかな。

かあさんの薬は利尿剤。

しばらくして出てきたけど、かあさん1分立たないうちにまたトイレに。
こんなにしょっちゅうトイレに行ったら、トイレットペーパーもどんどんなくなるよね。

かあさんはトイレやトイレ前に置いてるトイレットペーパーをすぐ持って行ってどこかに隠してしまう。

隠した場所がわからなくなって仕方なくティッシュペーパーを使ったのかと思ったけど、その後私がどこを探してもトイレットペーパーはなかった。

2階に置いてるトイレットペーパーも残り少ないのに、ピンチ!
こんな調子でかあさんがトイレに頻繁に行ったら、今晩足りなくなるかも。

その後、夫も私も2階に上がったけど、階下に耳をすませていると、その後もかあさんトイレに行ってた。

大丈夫かなぁ
不潔にしてるから、膀胱炎とかかも
病院に連れて行く?
明日内科の先生に電話して聞いてみる?
とか、2人で話した。

かあさん、私たちが知ってるだけで、7回連続でトイレに行った。
出ては入り、出ては入り。

7回目、私がトイレの近くに行ってみると、かあさんトイレの中で嘆いていた。

どないしょう
困ったな~
したいのに、う○こ出えへん

夫に報告。
便秘みたいだよ!

確かに、最近野菜いつも残してたな~
サラダもおひたしも最近食べなくなった。

便意をもようしてトイレに行くけど、出なくて、あきらめてトイレから出てくる。
でもまだ便意はあるから、今トイレから出たばかりなの忘れて、トイレに行く。
でも出なくて、トイレから出るけど、またすぐ行きたくてトイレに行っちゃう。
その繰り返し。
すぐ忘れるから、何回も行ってると本人は思ってない。

あの様子じゃ、かなり体力使ってる。
立ち上がるのも歩くのもしんどいはずなのに。

もうベッドの上でのびちゃうだろうと思った。
明日起きてこないかも。
と思った。


しかし!

翌日、かあさんはいつもと全然変わらない様子で起きてきた。
かあさんのお気に入りの若いヘルパーさんが来る日だ。

念入りに化粧してた。
髪もきれいにとかしてた。

ヘルパーさんと嬉しそうに喋ってた。
午前中に3回、パンとバナナを食べた。

元気だ~

不死身だ~

やっぱりゾンビだ~



  3月2日 ハッピー♪

テレビできれいに咲いた梅林の映像を見てかあさん、

ええなぁ
見に行きたいな~
腰悪くしてからどっこも行ってへん
どっこも出かけてへん
と、独り言。

毎年、桜が咲いたら夫が運転して見に連れて行ってた。
腰を悪くする前も、後も。去年も。
全然覚えてないんだな~

私たちがやってあげたことはぜ~んぶ忘れるんだ。
私たちは今、かあさんを助けるためにここにいるというのに。

夫が昼頃台所に行ったら、かあさんが独り言。

なぁんもない、なぁんもないわ
何か食べよ思うけど、なぁんもないわ
死んだらええんやろうけど


絶対夫が聞いてるのわかって言ってる。

なんでいつもそんなこと言うのかな。
夫と私で買い物に行って買ってくるのは大半かあさんの食料。

かあさんはパンとバナナばかり食べてるから、毎日買い物に行って補充してる。

肉も野菜も豆腐もタマゴも、いつも冷蔵庫の中にある。
かあさんのためにヘルパーさんがお昼ご飯を作るけど、かあさんは食べようとしない。

料理は自分でできるからいい
と言って、ヘルパーさんをやめさせようとする。

自分でできるなら料理すればいい。
材料はたくさんある。
できるものならね。

でも、かあさん、
なぁんもない!
と言って何もしない。

それが全部私たち夫婦のせいだと言いたいらしい。
料理できない言い訳かもしれない。

で、毎日毎日朝から何も食べてないって1日中言い続けてるんだ。

私たちが作った夕食食べたことも忘れて、夜になってもそんなこと言ってる。

欲しいものがあれば言ってくれればいいけど、絶対に私たちには頼まない。

私たちがかあさんのために買い物に行くなんて絶対ないと思ってる。

毎日行ってるけど、かあさんは毎日それを忘れる。

かあさんは都合のいいように記憶を変えるから、お風呂に入りたくなくて、毎日シャワーを浴びてるんやって言うし。

1日中何にも食べてないって記憶の、どこがかあさんにとって都合がいいの?
っていつも思ってた。

かあさんはとにかく私たち息子夫婦を悪者にしたいんだ。

何も買ってきてくれないって。
何も食べさせてくれないって。

あ~
また愚痴になっちゃった。
誰もそんなに愚痴ばかり聞きたくはないよね。

かあさんの近くにいたら、嫌な思いをするだけ。
かあさん、夫と私が嫌な気分になるようなことしか言わない。

あ~
嫌なことばかり。

死んだらええんやろうけど。


2階の狭い部屋で、落ち込んだ気分のまま、ポリポリ、ポリンキーを食べていた。

すると……

変形してるポリンキーを見つけた。
形がいびつ。

あ、また1つ!
これって、レアだよね!
当たり!
だよね!

ポリンキー ポリンキー ♪
三角形のひみつはね♪
(歌い出す私)

突然はっぴー!
な気分に。

私、単純かな?
なんだか癒やされた。



 3月3日 なぜ天ぷらを捨てる?

午後6時すぎ、かあさんが巻き寿司を食べようとしている。
お昼にヘルパーさんが買ってきたもの。

今から夕食の準備しようとしてたのに。

半年前ならかあさん、夕食の時間に私たち息子夫婦がいること、少しはわかってた。

午後6時すぎて私たちの姿が見えないと、
晩ごはん、何か食べるか~?
と階段の下から呼ぶこともあった。

でも今かあさんは、私たちがいることも私たちがかあさんに夕食を用意することも忘れてる。

夕食の時間が近づいていても、お腹が空くと勝手に食べちゃう。
たいていはパン。

だけど、今日は冷蔵庫にヘルパーさんがかあさんのお昼ごはんのために買ってきた巻き寿司があった。

それを電子レンジでチンしたもよう。

冷蔵庫にはヘルパーさんが買ってきた天ぷらやお惣菜もあった。

以前なら天ぷらが大好きなかあさん、すぐにも自分でチンして食べてたのに。

お皿に天ぷらとお惣菜のきんぴらと、あとレタスとトマトを切って盛り付け、かあさんに出した。
お味噌汁も。

まぁ、こんなにたくさん、ありがとう
かあさん、猫なで声で言った。
どこからあんな声出るんだろう。

あんたら、食べへんのか?

これ、昼間にヘルパーさんがかあさんのために買ってきてくれたんだよ!
かあさんの耳元で言う。

味噌汁おいしいわ~
とかあさん。

そうだろうね。
インスタントだもん。
インスタントの時だけそう言うんだ。

かあさん、いつもまず味噌汁を飲み干す。
その後、ご飯を食べながらおかずに手を伸ばす。

でもこの日は巻き寿司だったもんで、味噌汁の後はひたすら巻き寿司を食べていた。

おかずはほったらかし。
巻き寿司を食べ終わっても手をつけようとしない。

珍しい。
天ぷら食べないの。

しばらく見守ったけどそのままだし、私はそのまま2階に上がった。
お腹が空いたら食べるかも。

代わりに夫が降りて行くと、かあさん、
これ、誰が作ってくれたか知らんけど、捨てるわ
と、手をつけていない天ぷらもきんぴらもそのままゴミ箱に捨てようとしてたらしい。

で、捨ててしまった。

え~、なんで~?

いつもなら、食べ残しが多い時は、
これ、明日食べるわ
とラップをかけて冷蔵庫にしまう。

全部捨てちゃうなんて。

後からよくよく考えた。

かあさん、巻き寿司食べてるあいだに、私が横に置いたおかずに関して記憶がなくなった。

誰がこれを持ってきた?
誰が作った?

かあさんはそんなふうに自分でおかずを盛り付けたりしない。

それは誰かわからない人が持ってきた、わけのわからない食べ物になった。

気持ち悪い。

で、捨ててしまうことに。

そんなふうに、かあさんの認知症は進んでいくんだな。



 3月4日 かあさんが元気なのは空耳のおかげ

夜中でも空耳ピンポンが鳴ると、出て行くかあさん。

玄関のドアの鍵を何度もカチャカチャさせたり、外に出ようとしたり、出られないと大きな声でわめいたり。

で、最近夫が玄関のドアに貼った紙。

今はまだ夜中です。
夜中にピンポン鳴らすのはあやしい人です。
怖いから出ない方がいいですよ。

これはけっこう有効だった。
時々は明かりも点けずに出ようとするけど、それでもドアを開けようとする行為は減った。

昼間もあいかわらず何度も空耳ピンポンが鳴り、玄関に出て行くかあさん。
誰も来てないのを見て、部屋に帰って行く。

なんや、何度も何度も
もう、えらい目に合わされるわ
と嘆きながら。

憎らしいかあさんだからいい気味と思うこともあるけど、それは多分かあさんの病気のせいなのでかわいそうでもあった。

だけど、最近思う。

1年ほど前にかあさんは入院したけど、それ以前のかあさんは足がパンパンに腫れていた。

ずっと同じところに座っていて動かないからだよ
足を動かさなきゃ
とかあさんに言ったけど、言うことを聞かない。

コタツに足だけ入れてソファーに座っていて、普段は石のように動かなかった。

もし今もそんなふうなら、かあさんはもっと弱っていたかもしれないと思う。

空耳ピンポンのおかげでかあさんは動く。
歩く。

空耳ピンポンはかあさんを助けてるんじゃないのかな?

かあさんを生きながらえさせるための、かあさんの中のゾンビのしわざかな?

などと、ふと思う。



 3月5日 かあさんと夫のバトルにキレる

ある日の朝、ガラガラと雨戸を開けるかあさん。

まだ8時なってへんで
開けたらあかん

と夫(かあさんの息子)が言うと、

そうかて、いつも開けてるのに
と言うかあさん。

うるさいから近所迷惑やで
と言っても、

どこかてみな開けてはるわ
開けんと、何してはるかと思われるわ

と怒るかあさん。

迷惑だろうがなんだろうが、自分のやることを止められると、腹が立って仕方ないかあさん。

何が何でも自分を正当化するし。

こんな早くに誰も開けてへん
大きな音がするんや
わからんか!

かあさんが言うこと聞かないのはもうわかってるのに、もうほっときと言ってもなおもかまう夫。


かあさんは激しく怒り、毒のある言葉を吐き、台所の戸を何度も力いっぱい開け閉めして大きな音を出す。


私はかあさんの毒のある言葉や、わざと大きな音を出し続けるかあさんに耐えきれず、キレた。

大声で叫んだ。

頭に血がノボッてたから、なんて叫んだのか記憶がない。

………
あ、あかんわ。

私は、叫んだ後、怒りながらもほんの少し我に返った。
窓が開いてるのが見えた。

こんな大声、近所に丸聞こえ。
朝っぱらから。
かあさんが雨戸を開けるのを迷惑だと言いながら。

気を落ち着けなきゃ。


冷蔵庫を開けてパンを取り出し、かあさんに、
パン食べるんでしよ
お湯わかそうか
と、言ったけど、

かあさん、
ふん、知らんわ
と怒った顔で寝室に引っ込んだ。


あかんわ。
こんなこと、クセになったら。

ここ数ヶ月、何度かやってしまってる。

怒りを爆発させて、大声出しちゃう。

私もたまってるけど、夫もたまってるのだ。

夫はたまってるからかあさんとバトルしてしまう。

かあさんだけじゃなくて私まで頭おかしくなってしまってたら、夫も余計にストレス溜まっちゃうよね。


反省。

もっと、自分の感情をコントロールする方法、身につけないと。

無理かもしれないけど。

いや、多分無理やけど。

はい、絶対無理やけど。



  3月6日 かあさんに締め出された

今日私は友人と、梅の花がきれいに咲く公園に行ってた。
夕方、帰ってくる私を夫が駅に迎えに来てくれて、買い物をして帰った。

昼間は暖かかったけど、夕方からは冷たい風が吹いてた。

それなのに!

夫は家の鍵を持たずに出てきたと言う。

帰ってきたら案の定、かあさん、しっかり玄関の鍵をかけてる。

閉め出されたー!

夫は、ちょっと出かけるくらい平気で鍵をかけずに出かける。

家にはかあさんがいるから留守ではないのかもしれないけど。


かあさんは用心深いからいつも鍵をしっかりかける。

かあさんは空耳ピンポンが鳴ってしょっちゅう玄関に出てくるから、その時に絶対鍵かけちゃう。

さて、どうする。

私の鍵はちょっと前に夫に預けたまま返してもらってない。

以前、仕事に行く私を駅まで送る時、夫は鍵を持ってくるの忘れたという。
それは大変!
この寒い時期に早朝から締め出し食らうかも。

で、私の鍵を貸した。
それをまだ返してもらっていない。

入れな~い!!


本物のピンポン鳴らす。

何度も。

かあさん、空耳ピンポンにはすぐに反応して出て行くけど、本物にはにぶい。
難聴だから。

もちろん、夫は何度もひどい目に合ってる。
入れなくて、隣りの家の人に電話かけてもらったり。

それでもかあさんには気づいてもらえず、家の周りを回って開いてる窓を探して、こそドロのように窓から侵入したり。

そんな場面、誰かに見られたら通報されちゃうよ。

もし、かあさんにピンポンが聞こえなかったら、寒空の下、いつまで待たされるか。

ピンポン、ピンポン、ピンポン……
何度も鳴らした。

お、かあさん、出てきたよ!

最近、なんだか耳がよくなったのか、空耳だけでなく、本物も聞こえるようだ。

ともかく助かった。

思うに、
ちょっと出かけるだけでも鍵をかけるようにした方がいいよ。

そうしたら、鍵を持って行くの忘れないでしょ。

夫は、帰ってきて鍵がかかってると、
あのババァ、鍵かけやがった!
って怒るけどね。



 3月8日 怒りながら起きてきたかあさん

今日、私は仕事が休み。
夫も今日は早めに起きてた。

かあさんが起きて来る前に朝食をすませ、夫は洗面台の前で髭を剃り、私はバスマットを新しいのに替えようとしていた。

ガラガラッと寝室の戸を開ける大きな音がして、出てきたかあさん。

ガン!
と杖を突き立てた。

なんや!
そんなに憎かったら、殺したらええがな!


えっ?!
いきなり、何?

えらい怒ってる。

夫も私も何もしてないし。

かあさん、今まで寝てたのでは?


で、かあさん、それだけ言うとピシャッと戸を閉めて、また寝室に戻ってしまった。

何なん?
今の~
どす利いてたし~

夢でも見たか?

妄想だね、きっと。
誰も何もしてないのに、妄想して怒ってるんだ~

相手は私たち息子夫婦?

多分。

夫が何も言わなくても顔見ただけで怒ってたけど、顔見なくても怒る?

とんでもない被害妄想だ~


3分後、かあさんは普通に部屋から出てきた。

寒いな。
と言いながら。

忘れるスピードすごいな。

殺したらええがな!
って凄い剣幕だったのに。

あ~
恐ろしい~



 3月9日 かあさん、洗濯物を掻き回す

朝、夫が洗濯機を回した。
夫と私の分。

私が歯を磨いてる時、あと5分と洗濯機の表示。

歯を磨き終わって5分後、洗濯できた頃と思って行ってみたら、

かあさんが…

洗濯しようと思たらなんや!
たくさん洗濯物入っとる
誰や!こんなん入れとるのは

と怒りながら出てきた。

洗濯機を開けてみると、すでにかあさんに引っかき回された後だった。

ショック!

ともかく確認。

かあさんが汚れ物入れてないか。
私のパンツ取られてないか。

大丈夫みたい。

でも、さわられた。
気持ち悪い。
ムカつく。

油断もすきもない。

ほんのちょっとのすきに、かあさんは来てほしくない所に来る。
してほしくないことをする。

さっきまで、コタツに足突っ込んで寝てたのに。
大半コタツに足突っ込んで寝てるのに。

洗濯物を取り出した後、

かあさん、私たち2階で暮らしてるから、時々は洗濯させてもらってます。ごめんね!
洗濯機、空きましたよ!

と紙に書いてかあさんに見せた。

なんや、たいそうに
とかあさん。
今ちょっと足が痛うて座ってるんや

前からそんなんわかってるわ。
みたいな口調。

普段はわかってないくせに。

多分もうかあさん、洗濯のことは忘れてる。
かあさんの洗濯物を洗濯機に入れて回した。

かあさんは洗濯機が止まった後やって来て、取り出さずにまたそのまま洗濯機を回した。

しょっちゅうこんな調子。

夜、夫がゴミをゴミ箱から集めてゴミ袋に入れていた。

かあさんは、台所のゴミ箱にゴミがたまるとすぐに怒り出す。

誰がこんなゴミ捨てに来はるんやろう
と怒る。

私たちもここで一緒に暮らしてるからゴミが多いんだよ。

私が捨ててん、ごめんね!
と言うと、かあさん、
まさか~
と笑う。


明日はゴミ出しの日だから、夫がゴミ袋にまとめたゴミを玄関の方に出そうとしていると、かあさんがやって来て、

なんでこんなゴミたくさん持って来るんや!
と怒り出した。

夫が家からゴミを持って来てると思ってるみたい。

私たちに他に家はない。
って、何回言ったらわかる?

私たち、もう9ヶ月一緒に住んでるんだよ、かあさん。



 3月10日 弱る夫

長引いた私の風邪が治ったと思ったら夫が風邪を引いて、なかなか治らない。

胃の調子も悪いと言う。
しんどい、しんどいと言って寝ていることが多い。

ゾンビのババァ(彼の母親)にやられちゃってるのかも。

夫は、母親に親らしいことはやってもらったことがないという。

最近、その話ばかりしてる。
子供の頃から、かあさんにはどこへも連れて行ってもらったことがない。
何も買ってもらったことがない。
突然の雨の日、他の子たちの母親は学校に傘持って迎えに来るのに、一度も迎えに来てくれず、1人雨に濡れて帰っていた。

そんな話を何度も何度も。
他にも、かあさんがどんなに何もしてくれない母親だったか、話は尽きない。

テレビの番組で、若い人がケータイで母親と話してる。
今日の晩ごはん何?って聞いてる。

「晩ごはん?まだ決めてないけど」
「焼肉がいいなあ」
「わかった、お肉買って来るね。早く帰っておいでよ~」

みたいな会話。

夫からしたらびっくりだ。
そんなやさしい母親いるのか?

夫の母親の場合なら…

何言ってんねん!
そんなん知らんがな!
しょうもないことで電話してこんどいてや!
と怒り出すのがおちだ。

今、そんな母親の世話をし、振り回され……それなのに怒ってばかりのかあさん。

何十回病院に連れて行っても、毎日買い物してきてやっても。
面倒くさがりの夫なのに、かあさんのことでややこしい手続きをたくさんしても。

それ以外も、わがままなかあさんに振り回されて大変な思いをした記憶は満載だ。

それなのに!

何もやってくれへん
何も助けてくれへんくせに、邪魔ばかりして!

と、毎日のように言うかあさん、

そんなかあさんのためになんで?!


そりゃあ、スッキリしないどころか、
なんでやねん!!
って思いでいっぱいになるよね。

ストレスだね。

そんなに体調悪いの。

夫も私も、かあさんに痛めつけられて、かあさんより先にまいるかも。

私たちが元気なくなるほどかあさんの元気がいい。


今日は日曜。
もう何もせずに、かあさんと顔合わさずに寝ていたい。

だけど、かあさんきのう、冷蔵庫にまだたくさんあったはずのパンを全部食べちゃった。

やばい!
と思って、寝る前に、冷凍庫の奥に入れてあった夫と私の分の食パン2枚、下におろした。

朝見たらそれもなくなってた。


かあさんのパン、買いに行かないと!!



 3月12日 はじめのデイサービスへ

かあさんを初めてデイサービスに行かせることにした。

そんなん、年寄りの行くところや!
と言って以前から嫌がっていたから、無理に連れて行ったらどんなに怒るだろう。
と思って、今まで避けてきた。

それなのにここに来て連れて行く気になったのは、お風呂のことがあったから。

日頃お風呂に入ろうとしないかあさん。

お客さんが来るからとか、先生が往診に来るからとか言って時々は入らせていたけど、かあさんをお風呂に入れることの大変さに音を上げた私。

かあさんをお風呂に入る気にさせるのも大変。

かあさんをお風呂に入れるのも大変。

だけど、他に方法が?

看護師さんやヘルパーさんに手伝ってもらう?

無理無理。かあさん、絶対に嫌がる。
実際、看護師さんがお風呂に入るの手伝うから入りましょう。
と説得しようとしたけどダメだった。

他に方法が?

もう、デイサービスとか、ショートステイとか、そういうのしかない。

で、いよいよデイサービスに連れて行くことに。

もうかあさん怒り出すの覚悟で、騙して連れて行くしかない!

うまくいくのか。

失敗は許されない。



 3月13日 デイサービスの日のお迎え

夫が7時にかあさんを起こす。

かあさん、渋々起きて来た。
なんや~

きのうも言ったけど、今日は血圧計ったりリハビリをしに病院に行きます。
と紙に書いて見せた。
(デイサービスと言うと絶対に行かないので)

なんで突然言うんや!
もっと早く言っといてもらわな
と怒るに決まってるのだ。

案の定怒った。

何も聞いてへんで!
何で早く言っといてくれへんのや!

すかさず、きのう私が書いた紙を見せる。
ほら、これ、きのう見せたでしょ!

きのうも同じように紙に書いて病院に行くと伝えている。

なんや、それは見てないで!
そんなん見た覚えないわ!

そうでしょね。
絶対忘れるよね。
とにかく、早く準備してね。

かあさんのお出かけはよそ行きに着替えたり化粧したり、とにかくいつも大騒動。

でもかあさん、しばらくたったままぼーっとしてる。
そして、流しに置いてあったまだ洗ってない茶碗を洗おうと……

かあさん、それやっとくから入れ歯入れたら朝食食べて

だけど今度は、大きな急須にお茶っ葉を入れようとしてる。
それはかあさんの朝の日課。
いつもやってることをやらないと気がすまないようだ。
で、次のことやるのに一々立ち止まり、しばらく動かなくなる。

あぁ、まどろっこしい。
こんなだから、いつもお出かけの準備は3時間以上かかる。

かあさんがパンとバナナ食べてるうちに、かあさんが着て行く服の候補を何枚か出しておく。
かあさんの朝食が終わったら、着替え。

かあさん、私が選んで出してあったベージュのオーバーコートを見て言う。

これ、派手ちゃうか?

全然派手じゃないよ
(こんなぼんやりした薄茶色のオーバー、どこが派手なんだろ)
オーバーはともかく、まずセーターを着ないと。

かあさん、洋服ダンスの中を見ようとする。
セーター着る気はないようだ。

かあさん、まだ寒いねん
セーター着ないと

そうか~もうセーター着てもおかしないか?

かあさんの中で今は何月?
不明。

おかしないで
セーター着てよ!

このオーバー、派手ちゃうか?

派手ちゃうて!
かあさん、オーバーの前にセーター!

どっちのセーターがええかなぁ
これ、派手ちゃうか?

派手ちゃうって
じゃ、こっちのセーターにしよか

またまたオーバーに目が行くかあさん。
このオーバー、派手ちゃうか?

派手じゃないって!
セーター着てよ
なんやかんやでセーター着せる。

ズボン、これかこれ、どっちにする?

まぁ!
この茶色の、ぶかぶかやなぁ!
昔はこれでよかったけど、今は痩せてもて
でも、黒い方は夏もんみたいやしおかしないか?

茶色のはいてみてよ
大きすぎたら黒いのはかな仕方ないやん

他のズボンは生地が薄い夏ものか、ウエストのゴムが伸びているか、行方不明。

またかあさん、オーバーを気にする。
このオーバー、派手ちゃうか?
派手とちがうって!
とにかくズボン、はいてみてよー!

茶色のブカブカに見えたズボン、はかせてみたら、お腹のところ、きついくらいだった。

どこが、痩せてもてや!

なんやかんやでズボンはいた。
次、靴下。

このオーバー、派手ちゃうか?

だから~
ちゃうて!もうっ!

ところでかあさん…靴下ないの?
どこやったんだろ?
もういいわ今はいてるので
汚れてないって!
だいじょぶ、だいじょぶ!

なんやかんやで靴下完了。

オーバーね!
派手ちゃうって!
なんでそんなにオーバーが気になる?
なんでそんなに派手が気になる?

派手はかあさんの天敵?

こっちのオーバーがええんちゃうか?
と他のオーバーコートを出そうとするかあさん。
ダメだよ~かあさん、昔はよかったかもしれないけど、今はそれ長すぎ!ひきずっちゃうよ!
(今はそうとう腰曲がって縮んでるんだから)

そうか~
でもこのオーバー、派手ちゃうか?

だから!
派手ちゃうって!


夫が言った。
見てるだけで疲れるわー

そらそやろ。
実際やってる方はどんだけ疲れるか。

これでも、かなり省略して書いてる。

「なんやかんや」の部分、けっこう時間かかってる。


誰か助けて~



 3月15日 デイサービスの日のお化粧

お湯を沸かし、オーブントースターにパンをスタンバイさせると、紙バッグから化粧品を取り出して並べるかあさん。

コタツのテーブルの上には化粧品がたくさん並ぶ。

いつも思ってた。
認知症のかあさん、まともに化粧するの無理でしょ。

化粧水やら乳液やら美容液やら化粧下地やら…たくさん並べて、かあさん、順番がわかるの?
どこまでつけたか、わかるの?

でも、不思議としばらくたつと、かあさんの顔はしっかり出来上がっており、眉ずみもくっきり。

だけど、お出かけとなるとやたら念入りになり、時間がかかるかあさん。
ばあさんのお化粧、1時間も2時間も待ってられないよ。

それで、久しぶりのお出かけ、それは初めてのデイサービスの日、かあさんのお化粧を手伝うことにした。

化粧品を並べて、かあさん、化粧水を探し始めた。
たくさん並べてるけど化粧水がない。
見ると、大きな瓶は2本とも乳液だった。

これはなんや?
と、小さめの瓶を手に取るかあさん。

これ、メイク落としやん!
これは今塗ったらあかんわ

化粧水ないね
私の貸してあげようか?

私が自分の化粧水を持ってくると、かあさん、さらに何本か化粧品の瓶を取り出して並べていた。
見ると、化粧水が2本あった。
乳液も2本。

なんで~

かあさん、使いきってから新しいのを出さないと!

しかも、全部一々箱に入れてるから、どっちが新しいかわかりにくい。
化粧水も乳液も同じ大きさで、同じようなパッケージだから、同じようなのが4本ある。
紛らわしすぎる。

とりあえず、かあさんの手に化粧水を。

真剣に顔につけるかあさん。
次、乳液?

かあさんの手に出してあげようとしたら、ドバっと出すぎた。

こんなたくさん、気持ち悪いわ
と言いながら、かあさん、顔に塗りたくった。

次は何?

乳液や!乳液まだ塗ってへん

え?
あんだけ大量の乳液塗ったのに?
顔ベタベタやで

仕方なくもう一度乳液を…

化粧水つけたんやったかいな?

つけた、つけたよ

乳液がまだやな

かあさん、顔が乳液だらけなのに?

スピーディーにしなきゃ、前に進めない。

次はこれだよ
化粧下地

強引に進める。
でなきゃ、最初に戻っちゃう。

乳液つけたかいな?

ほらね。

つけたよ~

パフや、パフはないか?

ある、これやな

パフも2つあって、両方別々のケースに入ってる。

これ、何や?
とかあさん。

メイク落としやん

かあさん、日頃どうやって化粧してたんだろ。

いきなり化粧落とし、塗りかねないな。

化粧水やら乳液やら、美容液やら、何度も行ったり来たり、繰り返してるんだろうな。

最後は、鏡をかざして、もう真剣な顔で眉ずみを入れる。

私が手伝ったかいあって1時間はかからなかったけど、放っておいたらいつ終わるか。

髪とかすのも時間がかかる。
鏡を見てたら、急に毛染めをし始めるし。

この日は私は休みだったけど、普段は仕事があるので、夫が1人で病院とか連れて行くことが多かった。

手伝うのも大変だけど、待つのも大変。
かあさんのお化粧や着替えを、2時間、3時間、辛抱強く待つ夫。

ちょっとでも急かすとかあさんはキレる。
ヘアブラシを投げつける。
今日は行かないとゴネる。
時に泣きわめく。

誰のために行くと思ってるんや
と言ったら、

なんや!
恩着せがましく!
えらそうに!
病院なんか行かんでもいいんやで!
と脅迫めいた言い方をする。

何度も病院行きは中止になり、もう無理ってことで、最近は往診を頼んでいる。

かあさんにお出かけの準備をさせるのは、もう夫1人では無理だ。

毎週デイサービスに行ってほしいと思ってたけど、その度に着替えや化粧、「かあさんのお出かけの準備」に付き合うのは悪夢のようだ。

かあさんをお風呂に入れるのが大変すぎて、デイサービスに連れて行ってお風呂に入れてもらおう。
なんて考えがあまかった。


どっちにしろ、悪夢だー


 3月16日 初めてのデイサービス

デイサービス当日、病院に行くと嘘をついて準備させた。

迎えのクルマがやって来て、連れて行ってくれる。
幸いすぐ近所だったから、私たちも迎えのクルマの後を追って様子を見に行った。

大きなテーブルを取り囲むように10名ほどのお年寄り。
皆さん、元気そうに見えた。

その輪の中に加わったかあさん。
病院に行くってかあさんには話してたから、病院の待合室だと思ってるよね、きっと。

夫と私は椅子を用意してもらって、少し離れたところから見守る。
スタッフの方が、かあさんと、私たちにも紅茶を出してくれた。
かあさん、サービスのいい病院って、思ってるかな?

あの~
病院に行って血圧計ったりリハビリするって言って、連れ出したんです
と、スタッフの方に伝えると、
血圧を計って、この後体操もしますよ
と言って、その後すぐに看護師さん(?)がかあさんの血圧と血中酸素濃度を計ってくれた。

手が冷たいですね
と言ってかあさんの手を握ってくれる。

かあさん、嬉しそうに、
いつもこんなふう。冷たいねん
と喋り出す。

隣に座ってるおばあさん、最年長なんですよ、94才
と紹介されると、94才の元気そうなおばあさん、かあさんに、
おいくつですか?
って、話しかけてくれた。

耳が遠いかあさん、聞こえないから、夫が、
91才です
と言うと、

最年長のおばあさん、
まぁ、お若くみえるわ
と言ってくれた。

それを聞いたかあさん、うれしそう。

よしよし、順調なすべり出し。

じゃ、また後でね
とかあさんに言って、夫と私は帰ることにした。

かあさん、話しかけてもらって機嫌よさそう。
私たちのこと、もう気にとめてもいない。
このまま、帰る時間まで機嫌よく過ごしてくれるかな。

多分、全てがスムーズに行くわけないよね。
と思いながら、家で帰りを待った。

4時半回って、ご帰宅。
送迎車を運転してきてくれた人が、クルマから降りて来て、

あの~
お風呂から出た時、わかったんですけど、不正出血があったみたいなんです……と。

心当たりがあった。

それは2ヶ月ほども前のこと。
かあさんが、おりものがあるとか言い出し、その後、トイレの便器に血がついてたり、かあさんの下着が汚れたりしてることがあったので、不正出血?
と思い、病院に連れて行った。

結果は、ただの皮膚炎だった。
お風呂を嫌がり、不潔になるせいだと思う。
で、塗り薬をもらってきた。

朝、晩、腫れているところに塗るように、紙に書いてかあさんに渡した。

かあさんは、なんでもどこかに直しこんでしまう。
2、3日はその度にそのチューブの塗り薬を探し出して、ちゃんとつけるように言ったけど、そのうちどこに隠したかわからなくなり、そのままに……

だけど最近は血のついた便座も下着も目にしてないし、もう治ったものと思っていたのだ。

すみません、以前婦人科に連れて行って診てもらったんですけど、ただの皮膚炎らしくて
お伝えしてなくて、すみません
と言うと、

そうですか
持ってこられたお着替えの中に、リハパン入ってたので、それをはいてもらいました
とのこと。

リハパンは、普段使ってないんですね

はい、自分からは履こうとしないので

みたいなやりとりがあり、
お世話になりました
またよろしくお願いします
と言うと、

では、失礼します
という感じで帰っていかれた。

かあさんは、もう家の中に入っていて、

お礼を言わな
お礼を言ってへん

と言うけど、送迎車は行ってしまった後だった。

お礼を言わな
と言うぐらいだから、かあさんは悪い印象は持たなかったようだ。

でも、絶対にリハパンを自分ではこうとしないかあさんだから、手こずらせたのは目に見えている。

お漏らしもしちゃったかもしれない。

またよろしくお願いします
と言った時に、
「こちらこそ」とか「お待ちしてます」とか言う返事でなかったのもちょっと気になっちゃう。

わがままなかあさんのこと。
ずっと機嫌のいいまま素直に言うこと聞いたとも思えない。
こんなふうに出血なんかあったら、お風呂に入れてもらうのも迷惑だろうし。

かあさんをお風呂に入れるのがあまりにも大変で、デイサービスに行かせて、お風呂に入れてもらおう。
って魂胆だったけど、かあさんにお出かけの準備をさせるのに、お風呂に入れるのと同じくらい疲れてしまったし。

当分、2回目はなしかな。
と思う。



 3月17日 入れ歯を探す無限ループ

朝早くから探しものしてるかあさん。

何探してるんや
と夫(かあさんの息子)が聞くと、入れ歯がないと言う。

夫があちこち探すと、かあさんのベッドの横の棚にあった。

ちょっと来てみ
あったで

と夫がかあさんを呼んで入れ歯を指差すと、

なんや?
とかあさん。

入れ歯探してたやろ!

いや、探してへんで
入れ歯はここや
わかってるがな
とかあさん。

その時には、入れ歯を探してたことも忘れてる。

で、また台所に戻って行って、しばらくするとゴソゴソし始める。


何してるんや
と夫が聞くと、入れ歯探してるんや
と言うかあさん。

夫はここで、
なんや
いつまでも探してたらええがな
ふん!

って感じで放っておく。


ほんとは、

入れ歯を持って来て、さり気なく台所のいつもの場所に置くのが正解かも。


もし、入れ歯はここやろ
と、またベッドの横の棚の入れ歯があった場所にかあさんを連れて行って見せたら……

かあさんは、なんや!
とうるさそうに言うだろう。

入れ歯はここにあるって言ったやろ!
と教えても、

ふん、そんなんわかってるがな
とまた、かあさんは言う。

そしてかあさんは台所に戻ってしまい、そして入れ歯を探し出す。

だから!

来てみ
入れ歯ならここやで

とまたかあさんを入れ歯のある場所に連れて行ったら……

無限ループに陥りかねない。

かあさんは、1秒前のことさえ忘れるから。

かあさんは、1秒前に知ったことさえ、ずっと前から知ってることと思い込むから。

そしてまたその1秒後にすべてを忘れてしまうから



 3月18日 えっらそうに!とかあさん、えらそうに言う

えっらそうに、なんや!

1階から聞こえてくるかあさんのかん高い声。

また、親子喧嘩してる?

1階に降りて、また喧嘩したの?
と夫に聞くと、

冷蔵庫を開けたら餅が入っていたから、こっちに移し替えただけや
と言う。

何か言ったんじゃないの?

何も言ってへんで
冷蔵庫から出してこっちに置いたのかあさんが見とったんや

お餅はレトルトだから冷蔵庫に入れなくていいんだけど、かあさんはすぐ冷蔵庫に入れてしまう。

それに自分の物と思ってるから、勝手に触ると気が悪いのかも。

お餅も冷蔵庫も夫が買ったのだけど。

かあさんはすぐ、
えらそうに!
と言う。

でも、一番えらそうにしてるの、かあさんやん。
と思う。

かあさんは自分が一番えらいと思っているのだろう。

私たちの言うこと、ほんと聞かないもんね。

私がかあさんに薬を飲まそうとしたら、飲んでくれないばかりか、怒り出す。

かあさんて、人の気持ちを考えることないのかな。

私がかあさんに薬を飲まそうとするのはなぜなのか、わからないかな。

認知症だから仕方ないかな。

そんなこと、夫に言ったら、

かあさんは昔からそうや
人の気持ちなんか考えへん
思いやりなんか1つもない
と言う。

小学生の時、雨が降っても1回も迎えに来てくれへんかってんで
6年間で1回もや

と、何度も繰り返して聞かされてるその話をする。

クリスマスイブ。
サンタクロースがプレゼント持ってきてくれるねん、と靴下をぶら下げてる小さい頃の夫。
それを見ていたかあさんなのに、朝楽しみに靴下を見たら、何も入ってなかった。
10円玉の1枚さえ。

この話も何度も何度も聞かされてる。

確かに、子供の気持ちを思いやったら、何かしてあげたくなると思う。
普通は。

かあさんには、ほんと思いやりってものがないんだな。

認知症になって、本性が際立って出てきてると思う。

だから腹が立つのだ。



 3月20日 ご飯を炊こうとしたら…

かあさんがご飯を炊こうとしていた。
でも、どうやって炊くのかわからなくなったようだ。

炊き方わからんようになったわ
と言う。

夫が、
わしが炊いたるがな
座っとき
と言っても、かあさん座ろうとしない。

どうやって炊くか教えてくれたらええがな
と言う。

いいから、あっち行って座っとき
夫が大きい声で言うから、また喧嘩になるわーと思い、

かあさん、私たちもご飯炊くし、一緒に食べたらええやん
とかあさんに言った。

するとかあさん、
わかるかー?
米はそこやで
と米びつを指差す。

わかってるって!
誰がお米買ってきてると思ってるんだろう。

かあさん、うるさいんや
わしが炊こうとしたら、一々口出してうるさいねん
とぼやく夫。

かあさんが洗った炊飯器の中釜が流しに置いてあって、見るとご飯が完全に取れてなくて、べチョッと底についていた。

かあさんが洗うとこれだ。

洗い直そうとしてお湯を出したら、後ろからかあさんが言う。

左はお湯やで

うん、知ってるし。

お米はお湯で研いだらあかん
水で研がな
とかあさん。

あー、うるさい。

お釜が汚れてたから、お湯につけて洗おうとしてるんだよ!

かあさん、自分がご飯の炊き方わからんようになったって言っときながら、なんでそんなに指図する?

何もようせんくせに、自分が一番えらいと思ってるんやな。


かあさんが、トイレに行ってるあいだに夫がお米を研ぐ。
(うちでは炊飯は夫の仕事)

今から買い物に出かけて帰ってきたら晩ごはんだから、すぐにスイッチ入れるつもり。

あ、かあさん、トイレから出てきよった!

見つかったらヤバいよ!
うるさいよ!

お米はといだらすぐに炊いたらあかん
しばらく水につけとかなあかんってね、うるさいんだ。

早く!
かあさんに見つかるよー

あ~
出てきちゃった。

お米の入った中釜を見せないようにして、知らん顔。

かあさんが居間のコタツに座って、向こう向いたすきに炊飯スイッチを入れる。


よしよし、これで大丈夫。

かあさん、もうご飯炊くこと、忘れてるから。



 3月21日 かあさんの息子の長いはなし

かあさんの息子(私の夫)が、かあさんがトイレに入ってる時にうっかり間違ってトイレの電気を消した。

かあさん、カンカンに怒った。
気がついてすぐに点けたのに。

何もしてくれへんくせに、余計なことばかりする
何も手伝ってくれへんくせに!
いつも、困ることばかりなのに!
と言うから、

この人は、いつも手伝ってるでしょ!
買い物に行ったりゴミ出ししたり
他に何がしてほしいの?
困ることって何なの?

と、かあさんの耳元で聞こえるように言ったけどかあさんは、ふん!とよそを向いて聞こうとしなかった。

いつもそうだ。
お料理してる時、電磁調理器や電子レンジや湯沸かしを同時に使ってしまいブレーカーが落ちてしまうことがあるけど、明かりが消えるとかあさん、鬼のように怒る。

ヒューズが飛んだんや、かあさん
わざと消したんじゃないよ!
と言うけど、聞く耳持たない。

ほっとき
被害妄想やねんから
いじわるされてるとしか思わないんや
と夫は言う。

その夜、
寝床に入ってから、夫が言う。

いつもああ言うやろ
何もしてくれへん
何も助けてくれへん

腹が立つんや
こんだけやってるのに

そらそうやろ。
私だって腹が立って癇癪起こしてしまう。

夫は、もっと堪えてるはず。

あれはね、かあさんの願望やで
私は言った。

誰の世話にもならなくても、1人でなんでもできるって
ずっと、1人で偉そうにして生きていたいんだよ

だから世話をすると怒る。
何をしても怒る。

息子夫婦は何もしてくれないってことになってる。
都合のいいかあさんの記憶。

私たち息子夫婦は、何もしてくれないどころか、すきな時にやってきて冷蔵庫を漁り、かあさんの物を触ったり勝手に使ったり、えらそうにしたり。
わざとトイレの電気を消したり、嫌がらせをするわけだ。

それなのに、そんなバカ息子夫婦にご飯を食べさせてやり、面倒見てる、よくできた人間。

それがかあさんの頭の中のかあさん自身。

かあさんがそんなふうに考えるのは、かあさんは自分中心で自分のことしか考えないから。

夫や私がやってきた様々なかあさんのための頑張りは、「無」とされてしまった。

かあさんを、何十回お医者さんに連れて行っても、毎日毎日かあさんのために買い物をしても、毎日毎日かあさんの夕食作っても。

かあさんが呼吸困難になって死にかけた時に駆けつけて、かあさんを助けても。

すべてはかあさんの中では「無」
何もなかったこと。

な、もんで……
精神的にまいってる夫は、ほんとに最近弱ってしまい、しんどい、しんどいと言ってばかり。

すっかり、かあさんにやられてしまってる。

もうかあさんのために何もしない。
放っておく。
と言いながらも、かあさんに食事をさせて、お風呂に入れて、診察を受けさせないと仕方がない。


えっらそうに!
ってかあさん、いつも言うよね
えらそうなのはかあさんやん
と私が言うと、

ほんまや、ほんまやで!
と激しく同意の夫。

じゃまばかりして!
ってかあさん言うけど、じゃまばかりしてるの、かあさんやん!

ほんま、そうや!
私たちの人生のじゃまをするかあさん。
今も昔も。

かあさん、何もしてくれへん、何も助けてくれへんって言うけど、何もしてくれなかったのはかあさんや
ほんとかあさんは何もしてくれへんかった
夫は言う。

親らしく面倒見てくれた母親なら、いくらでも世話をする。
おぶってでも病院に連れて行く。
だけど、かあさんはちがう。

子供の頃から、かあさんに世話になった記憶がない。
何も買ってもらったことがない。
着る服だって、買ってくれたのはおばあさん。

小学生の頃、4キロも歩いて小学校に通ったけど、雨が降っても、一度たりとも、途中までも迎えに来てくれたことはなかった。
(またその話…)

盲腸で入院した時、おばあさんは何度か来てくれたけど、かあさんは一度も病院に来てくれなかった。
誕生日だって、一度も祝ってくれたことがない。

父親が死んでから、村の行事や付き合いや、色々なことを父親の代わりにやらないといけなくなった。
何もわからないのに、かあさんは何1つも教えてくれず、助けてくれなかった。

………………

………………

…………………… 

etc.…etc.

どんなにかあさんが親らしいことを何もしてくれなかったか。

どんなにかあさんが困った時も助けてくれなかったか。


夫の話は延々と続いた。


そうして、眠れない夜は更けていった。



 3月22日 朝っばらから怒るかあさん

今日も朝っぱらからかあさん、絶好調で怒ってた。

8時回ってから起きることが多かったかあさんなのに、最近しばしば6時すぎに起き出してくる。

私が仕事に行く準備をする時間に。

夫が台所でお湯を沸かそうとしていたら、かあさんが起きてきたので、
まだ6時すぎやで
と夫が言ったら、

かあさん、
なんや!
えらそうな言い方して!
と怒って、

ガラガラ、バン!
と寝室の戸を閉めてわざと大きな音を出した。
1回では気がすまず、もう一度開けてまた、ガラガラ、バン!と……

2回にいた私。
かあさんの大きな声と大きな音を聞いて、心臓がバクバクした。

朝、かあさんの顔を見ないまま、かあさんの声を聞かないまま仕事に出かけられるのは、小さな幸せ。

今日は、その幸せも砕け散った。

夕べはロクに寝ていない。

何をしていたのかわからないけど、かあさんがずっと大きな音を立てていた。

台所のイスを引きずって動かす音。
部屋や押し入れの引き戸を勢いよく開け閉めする音。
杖をドン、ドン、と突き立てる音。

2階の畳に布団を敷いて寝ていると、すごく響く。

ちょっとウトウトしても、1階でかあさんが立てる大きな音が響き、びっくりして起きてしまう。

それが夕べは何度も繰り返されていた。

夜中に起きててあんなに動いたら、朝はもう少しゆっくり寝ていてくれるかと思ったのに。

かあさんからしたら1人で暮らしてるつもりだから、何の気兼ねもなく好きな時にやりたいことして、雨戸開け閉めするのも、物を移動させるのも、動き回るのも、自由に好きなだけ大きな音をさせてのびのび暮らしてるのに、突然夫や私が顔を出して何やら言う。
咎められてるのかと思う。

もう、私たち息子夫婦がそこにいるってだけで、腹が立つのだろう。

鬱陶しくて、邪魔で、仕方ないのだろう。

でも、かあさんは1人では暮らせない。

できるだけ、かあさんが嫌がらないよう、じゃまにならないようにしようとしてきたけど……

そろそろ限界かな。

と思う。



 3月23日 かあさんのヘルパーさんいじめ

いつもおいしいお料理を作ってくれる、お料理の上手なヘルパーさん。

でも、お料理は自分でできるから断って!
と息子(私の夫)にうったえるかあさん。
お料理なんてもう何もできないのに。

直接ヘルパーさんにも言う。
お料理は自分で作るからお料理せんどいてー

掃除機を隠したりもする。

もう辞めてもらお思てんねん
もう来んどいてー
直接そんなことを言う。

それでもヘルパーさんは来てくれたし、お料理してくれた。

するとかあさん、冷蔵庫の中のもの、これを使え、これは使うなとか指示しだした。

ヘルパーさんには、冷蔵庫の中のものは何でも自由に使ってくださいと夫が伝えてあるのに。

このあいだ、ヘルパーさんのお料理の品数がいつもより少ないなと思っていたら、その後夫が聞いた話では……

かあさん、冷蔵庫には人から預かったものが入ってるから使うな!と言い出したらしい。

野菜を使おうとすると、
それは人から預かったものやから使ったらあかんのや
と取り上げてしまう。

しかもそれはその日だけではないようだ。

それはヘルパーさん、困っちゃうだろうな。

だからと言って、そんなことがないようにいつも夫や私がその場で見張ることもできない。

かあさんのそばにずっといられないからヘルパーさんのお世話になっている。

いつものお薬も、ヘルパーさんが飲ませようとすると飲もうとせずに不機嫌そうにしたり怒り出したり。

毎回これだから、もうこれはイジメにちがいない。
かあさんは、ヘルパーさんをいびり出そうとしている。

で、夫が冷蔵庫にこんな貼り紙をした。

ヘルパーさんは僕が頼んで来てもらってるのやから。
みんなを助けに来てもらってるのですよ。
おばあちゃんは何も口出ししたらダメですよ。
ヘルパーさんにありがとうと言ってね。

かあさん、怒って貼り紙をはがした。

今度は夫ははがしにくいよう紙の周囲をテープでしっかり貼った。

すると次の朝、その貼り紙にメモを張り付けるためのマグネットがたくさんついていた。
貼り紙の文字を隠してるつもりらしい。

確かに、こんなこと張り出してもかあさんが言うこと聞くわけがない。
態度は変わらないと思う。

ずっとかあさんのこんなイジメにも耐えて、かあさんのためにがんばってくれたヘルパーさん。

でも、最近ほとんど来なくなった。
他のヘルパーさんが入れ替わり立ち替わり来てくれている。

かあさん、ヘルパーさんをいびり出した。



 3月25日 わが子より大切な宝物

ふいにかあさんが、
あんた、2階におるんやったんかいな?
と私に言う。

ずっとこの家に1人だけで住んでるつもりのかあさん。

私たちもこの家に住んでること、ここに来てやっとわかったのかな?

はぁ、2階におるよ

と答えたら、
2階に着物置いてるんや
と言う。

うん、着物あるね
と言ったら、

ナフタリン入れなあかんのや
と言う。

ナフタリンなんて言葉、覚えてて、すぐに口から出るんだな。

2階に上がれないかあさん。
ナフタリン入れて着物を管理してほしいから、都合のいいよう私が2階に住んでるってふうに記憶を調整したんだな。


防虫剤なら数ヶ月前に入れた。

ちゃんと入れてるし
かあさん、心配せんでいいよ

と言ったものの、そろそろ気温も上がってくるし、防虫剤入れておいた方がいいかなと思い、2階にあるかあさんのたんすを開けてみた。

たんすの着物の一番上に防虫剤を置き、重ねた着物をめくってみると……
着物がたくさんあるなぁとは思ってたけど、ほんと、たくさんある。

たんすの一番下の段は下着や小物だったけど、それ以外は全部着物。
引き出しの1段1段に6、7枚ずつ入ってるようだ。

しかも、着物の入ってるたんすは一棹ではなく、小さめだけどもう一棹ある。
そっちにも着物がぎっしり。

すごーい!
50枚以上ありそう。

夫に、かあさんの着物、すごいね!
50枚くらいはありそうやん
と言ったら、夫は、

そうやろ
全部自分の着物やで
俺にはセーターの1枚も買ってくれたことないのに
と言う。

ほんとだ!
かあさん、すごい人だー!

自分の息子には何も買ってあげずに自分のために着物50枚?

着物だけじゃない。
洋服ダンスにも、かあさんのスーツやコート、おしゃれ着がぎっしり。

以前は、かあさんって旅行にもあまり行ってないようで気の毒に思えたし、私たちだけ遊びに行くのが心苦しくて、度々かあさんをバスツアーやドライブに誘った。

海外旅行にも何度か連れて行った。

でも、ある日この着物を見つけて、私の考えは変わった。

かあさんだって、もうちょっと若い時は自分で旅行に行こうと思えば行けたはず。
ただ、それよりも着物や洋服を買うことを選んだだけ。
価値観の違いだ。


かあさん、娘をいい学校に行かせるために苦労して働いたって言ってた。

でも、それよりも自分の着物のためにたくさんお金を使ってたようだ。


息子はほったらかし。

恐るべし、かあさん。



 3月30日 かあさんはほんとに嫌なやつ

久しぶりにお料理の上手なヘルパーさんが来てくれた。
かあさんが辞めさせたがってるヘルパーさん。
多分、来たくないだろうけど、他に来てくれる人がいなかったのかも。

だけど、その日ヘルパーさんが帰った後、ヘルパーさんが作ったお料理は1つもなかった。

いつも数種のお料理を作ってくれていたので、どうしたのかと思って報告書を見たら……


またもや!

ヘルパーさんが冷蔵庫の中の物を取り出そうとしたら、かあさんが、
それは人からのあずかり物だから使うなと言って、何も使わせなかったようだ。

人からのあずかり物なんて何もない。
ヘルパーさんには、冷蔵庫の中の物は何でも使ってくださいと言ってあるのに。

かあさん、ヘルパーさんに食材を使わせないよう、ずっと冷蔵庫のそばにいて見張っていたようだ。

なんて意地悪な人なんだろう。
よくそんなこと、考えるな。

言っとくけど、かあさんが一方的に嫌ってるだけで、ヘルパーさんには何もおちどはない。

そのヘルパーさんが白髪まじりだった。
ただそれだけ。

かあさんは見た目で人を判断する。

私が初めて会った時から、かあさんの髪は、いつも真っ黒だった。
白髪があったら人から笑われると言う。

化粧しないと出かけられない。
人から笑われる。

よそ行きの服を着てないと出かけられない。
人から笑われる。

誰も笑わない。

そんなことで人を笑うのは、かあさんだけ。

かあさんは、自分がいつも髪を染め、パーマをあて、化粧をして、いい服を着て、そうでない人を見下していた。

今、自分が見下す白髪の人の世話になってるのが我慢できないんだろう。

私はかあさんから見ると、笑われ、見下される人間、そのもの。

髪はいつもバサバサで白髪が目立ってきても、しばらくそのまま。

化粧もたいていはがれている。

出かける時も、パッとしない普段着。

かあさんは天敵かも。


だから!?

今、私は、かあさんの白髪が増えても、もう染めてあげないんだ。

かあさん、自分で見えてる前だけ、自分で染めてご満悦だけど、後ろは真っ白だよ。


笑っちゃうよね。
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