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ゾンビ誕生?
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なんであんなばあさんの言うこと聞かなあかんねん
何もしてもらってないで
服の1枚も買ってもらったことないんやで
電球が切れたとか、お金を貸してとか、しょっちゅう呼び出され、その度にぼやいているばあさんの息子、中谷誠(なかたにまこと)68才。
明るめのブラウンに染めた髪を毎朝セットして、いつもスポーツウェアを着ている。
誠の妻、真由美。
いつもTシャツとジーパン、地味なカーディガンを羽織っただけの飾り気のない63才。
子供に服の1枚も買ってやったことがないなんて、そんな親いる?
大袈裟なことばかり言ってる。
と真由美は思ってた。
でも、会えば喧嘩ばかりしてるこの親子の仲の悪さを見れば、誠の言うこともあながち嘘じゃないのかも、と最近では思っている。
誠と真由美は、共に仕事を定年退職してマンション暮らしをしていた。
ある日、誠のスマホに何度も誠の母たよ子から着信があった。
たよ子はまもなく90才。
1人で暮らしていた。
誠が着信に気付いてたよ子ばあさんが住んでいる家に駆けつけた時には、たよ子ばあさんは玄関に倒れ込んでいた。
血の気のない顔。
意識はなく、虫の息。
誠はすぐ救急車を呼び、たよ子ばあさんは病院に運ばれた。
真由美は出かけていて、誠がたよ子ばあさんに付き添った。
小柄で細く、いかにもか弱そうなたよ子ばあさん。
なんとか心臓は動いていた。
だけど、
もう何時間も持たないでしょう
肺に水が溜まっていて、心臓も長くは持ちません
と担当医は誠に伝えた。
真由美が誠からの知らせを受けて、たよ子ばあさんが運ばれた病院に行ってみると、たよ子ばあさんは生死の境をさまよっていた。
酸素マスクに血の混じった泡を吹いている。
今にも呼吸が止まりそう。
誠と真由美はしばらく見守ったけど、その弱った心臓は止まりそうで止まらなかった。
とりあえずその日2人は家に戻った。
多分朝まで持たないだろうから、夜にでも病院から連絡があるだろうと思っていたが、何の連絡もないまま朝になった。
2人で病院に行ってみると、たよ子ばあさんは生きていて、時おり無意識に酸素マスクを払い除けようこする。
だめだよ、おかあさん
これしてないと、息できなくなるよ
真由美は、押さえつけるようにずっと酸素マスクをばあさんの口元で支えていた。
しばらくすると意識がはっきりしてきて、ベッドから出ようとしてもがいたりした。
今にも心臓が止まると思ってたけど、この様子では…
なんか持ち直すつもり?
すごい生命力ですね
でも、持ち直したとしても寝たきりになるでしょうし、在宅酸素も必要です
担当医はそう言ったのだけど…
次の日、行ってみると…
たよ子ばあさんはすやすやと眠っていた。
まだ生きとるがな
2人がばあさんの顔を除きこんでいると、看護師がやって来て、
疲れたのでしょう
夕べは大変だったんですよ
と言う。
え!何かありましたか?
誠が聞き返すと、
いつの間にかベッドを抜け出して廊下を歩いてたんです
と言う。
えーっ!歩いてた?死にかけてたばあさんが?!
そうなんですよ
ベッドから出ようとした時に鳴るはずのブザーが鳴らなくて…気がついて慌てて、探し回りましたよ
そんなに歩き回ってたんか?!
寝たきりになるんやなかったんか!
まるでゾンビやな!
誠がそう言って、思わず看護師も真由美も笑った。
そしてたよ子ばあさんは、死に際の患者が入る安らぎ病棟から一般病棟に移され、リハビリもあっと言う間に終えて、追い出されるように退院した。
だけどさすがにもう一人暮らしをさせる訳にはいかず、夫婦はたよ子ばあさんが暮らしてた家に同居することになった。
続く…
何もしてもらってないで
服の1枚も買ってもらったことないんやで
電球が切れたとか、お金を貸してとか、しょっちゅう呼び出され、その度にぼやいているばあさんの息子、中谷誠(なかたにまこと)68才。
明るめのブラウンに染めた髪を毎朝セットして、いつもスポーツウェアを着ている。
誠の妻、真由美。
いつもTシャツとジーパン、地味なカーディガンを羽織っただけの飾り気のない63才。
子供に服の1枚も買ってやったことがないなんて、そんな親いる?
大袈裟なことばかり言ってる。
と真由美は思ってた。
でも、会えば喧嘩ばかりしてるこの親子の仲の悪さを見れば、誠の言うこともあながち嘘じゃないのかも、と最近では思っている。
誠と真由美は、共に仕事を定年退職してマンション暮らしをしていた。
ある日、誠のスマホに何度も誠の母たよ子から着信があった。
たよ子はまもなく90才。
1人で暮らしていた。
誠が着信に気付いてたよ子ばあさんが住んでいる家に駆けつけた時には、たよ子ばあさんは玄関に倒れ込んでいた。
血の気のない顔。
意識はなく、虫の息。
誠はすぐ救急車を呼び、たよ子ばあさんは病院に運ばれた。
真由美は出かけていて、誠がたよ子ばあさんに付き添った。
小柄で細く、いかにもか弱そうなたよ子ばあさん。
なんとか心臓は動いていた。
だけど、
もう何時間も持たないでしょう
肺に水が溜まっていて、心臓も長くは持ちません
と担当医は誠に伝えた。
真由美が誠からの知らせを受けて、たよ子ばあさんが運ばれた病院に行ってみると、たよ子ばあさんは生死の境をさまよっていた。
酸素マスクに血の混じった泡を吹いている。
今にも呼吸が止まりそう。
誠と真由美はしばらく見守ったけど、その弱った心臓は止まりそうで止まらなかった。
とりあえずその日2人は家に戻った。
多分朝まで持たないだろうから、夜にでも病院から連絡があるだろうと思っていたが、何の連絡もないまま朝になった。
2人で病院に行ってみると、たよ子ばあさんは生きていて、時おり無意識に酸素マスクを払い除けようこする。
だめだよ、おかあさん
これしてないと、息できなくなるよ
真由美は、押さえつけるようにずっと酸素マスクをばあさんの口元で支えていた。
しばらくすると意識がはっきりしてきて、ベッドから出ようとしてもがいたりした。
今にも心臓が止まると思ってたけど、この様子では…
なんか持ち直すつもり?
すごい生命力ですね
でも、持ち直したとしても寝たきりになるでしょうし、在宅酸素も必要です
担当医はそう言ったのだけど…
次の日、行ってみると…
たよ子ばあさんはすやすやと眠っていた。
まだ生きとるがな
2人がばあさんの顔を除きこんでいると、看護師がやって来て、
疲れたのでしょう
夕べは大変だったんですよ
と言う。
え!何かありましたか?
誠が聞き返すと、
いつの間にかベッドを抜け出して廊下を歩いてたんです
と言う。
えーっ!歩いてた?死にかけてたばあさんが?!
そうなんですよ
ベッドから出ようとした時に鳴るはずのブザーが鳴らなくて…気がついて慌てて、探し回りましたよ
そんなに歩き回ってたんか?!
寝たきりになるんやなかったんか!
まるでゾンビやな!
誠がそう言って、思わず看護師も真由美も笑った。
そしてたよ子ばあさんは、死に際の患者が入る安らぎ病棟から一般病棟に移され、リハビリもあっと言う間に終えて、追い出されるように退院した。
だけどさすがにもう一人暮らしをさせる訳にはいかず、夫婦はたよ子ばあさんが暮らしてた家に同居することになった。
続く…
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