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プロローグ ~フリーター、城を買う~
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「俺、クビですか?」
春は別離の季節でもある。
工場の夜勤を終えて帰ろうとした俺は、人事課の竹本さんに明日から来なくて良いと言われてしまう。
「俺、仕事でミスしてないし、周りともうまくやれてると思いますが?」
「辰巳君に落ち度はないよ。ただ、会社にも都合があってね」
またかと思った。
いまのご時世、どんなにがんばっても俺みたいに学歴や後ろ盾のない奴は安定した生活は送れない。
平凡な見た目の三十四歳独身男ともなれば尚更だ。
「すまない。私の力不足で……」
薄暗い事務室のなか、竹本さんが深々と頭を下げてくる。
そのせいで、細い髪がわずかしか残らない頭頂部が見えてしまう。
六十近い年齢もあるが、竹本のオッサンがハゲた一番の原因はストレスが大きいだろう。
毎日のように自分の子どもくらいの歳の奴らにキレられる人事担当者には、心が休まる時間がないに違いない。
世の中、俺みたいにおとなしく話を聞く奴ばかりではないのだ。
「だけどね、辰巳君に考えてほしい話があるんだよ」
「なんですか?」
俺は話半分に尋ねた。
聞くぶんにはタダだ。
「私が前にいた会社が中途採用者を募集している。工場でバイトを取りまとめる役だ。一年間の仮雇用期間が終われば正社員として本採用してくれる。悪くない話だと思うけど、どうだろう?」
「ホントですか? 俺をスムーズに辞めさせたくて、でっち上げた話じゃないですよね?」
「嘘じゃない、信じてくれ! むしろ、真面目な辰巳君だからこそ話してるんだ」
俺は一瞬躊躇したが、竹本さんを信じることにした。
若い奴らに逆ギレされて、すぐ涙目になるオッサンだが、俺は嫌いじゃない。
考えてみれば、竹本さんが他人を騙すのを見たことも聞いたこともない。
腹立ちのあまり、つい疑うようなことを言ってしまったが、俺は素直に詫びることにした。
「すいません。いままで良くしてくれた竹本さんを疑うようなこと言って……俺、面接を受けます」
「良かった、先方にそう伝えるよ。ただね、急ぎの話だから、明日には面接に行って欲しい。必要なのは、履歴書、免許証などの身分証明書、現住所を示すものから……」
「履歴書や身分証は用意できますが、現住所ってどうしても必要ですか? 俺、ネットカフェに寝泊まりしてるんですよ」
竹本さんは言葉を詰まらせる。
少し考えてから、言いにくそうに説明を始める。
「はっきり言って、それでは面接に通らない。相手は古い体質の大企業だ。住所不定では選考対象から外される。例えば、多少遠くても実家から通勤できないか? いや、ダメか、辰巳君は確か」
「はい。両親とも早くに亡くなっていますし、頼れる親類もいません」
「人事畑の長い私から言わせてもらえれば、君の年齢と経歴では今回みたいなチャンスはそうないだろうからな……」
竹本さんが頭を抱える。
親身になって心配してくれているのが分かり、俺は感動すら覚えた。
「いまから不動産屋に行ってアパートを探します」
「そうか。賃貸契約書があれば、先方も納得するだろう。ところで辰巳君は持ちあわせはあるか? 家を借りるならお金がかかる。少しくらいなら貸してあげるよ」
魅力的な提案に首を縦にふりかける。
でもだめだ、甘えてはいけない。
新しい仕事が決まらなかったら、借金を返す当てがなくなり、竹本さんにも迷惑がかかる。
それだけは避けたい。
「ありがとうございます。でも大丈夫です」
「分かった。辰巳君の健闘を祈るよ」
俺は面接書類を受け取り、リュックにしまう。
二度と着用することがなくなった作業着を返却し、いそいそと職場を後にした。
◇◇◇
「ご希望の条件では、物件は見つかりませんね」
午後四時過ぎ。
三軒目に訪れた不動産屋から、この日三回目となる返答を受ける。
言葉は違うがいずれも同じ内容。
「該当物件:なし」というやつだ。
『敷金・礼金、諸費用込みで、初月の支払いは一万円以内』
それが俺の出した条件。
家賃だけなら都心から離れるほど下がるが、当然、通勤に金がかかる。
それではダメだ。
最初の給料日まで食費などの出費を考えると、一万円以内で新居を見つけたい。
だが、考えが甘かった。
見栄を張らず、竹本さんからお金を借りれば良かったと、いまさら後悔する。
後の祭りだ。
「ホントに一件もないんですか?」
「条件が厳しすぎます。どうしてもとおっしゃるなら、最終手段もありますが」
「何でもいいから、お願いします」
俺は何も快適な住まいを求めているわけではない。
トイレは共同でいい。風呂はスーパー銭湯にでも行く。部屋の広さは四畳半どころか、畳一枚分のスペースで構わない。寝ることさえできれば、いや、寝られなくてもいい。面接用の書類に住所を記入できれば、それでいいのだ。
「いわゆるワケあり物件なら、見つかるかもしれませんね」
ベテランぽい感じのお姉さんが、たいして熱心でもなさそうに提案する。
「事故物件だろうが、騒がしい隣人だろうが、俺は気にしません」
「でしたら、裏物件サイトで検索できます。ご自由にどうぞ」
お姉さんが俺にノートパソコンを手渡してくる。
あとは自分で検索しろということらしい。
儲けにならない客だと自分でも思う。文句は言えない。
画面の案内に従い、各種条件を入力する。職業欄にはいまの職場を記入。少なくとも今日までの俺は仕事を持っている。虚偽記載ではない。たぶん。
『名前:辰巳竜騎
年齢:34歳
職業:〇×電気工業勤務
年収(見込):〇〇万円
<物件の希望条件>
賃貸料:一万円以下
敷金・礼金:なし
共益費等:千円以下
最寄り駅:×× ……』
該当:0件
「お客さま、どうですか?」
お姉さんが香水の匂いをぷんぷんさせながら画面をのぞき込む。
やっぱりね、という顔をしながら薄笑いを浮かべる。
「電車で一時間くらい田舎に行くとか、地域を変えないとだめだと思いますよ」
「この駅周辺がいいんです!」
通勤の定期代を用立てできない俺は、そう答える。
「こうなったら、物件情報をひとつずつ見ては如何ですか? 思わぬ物件が隠れているかもしれませんよ」
お姉さんがテキトーな助言をしてくる。
目当ての物件が見つかる可能性は高くはないが、他に手立てもない。
俺はワケあり物件をしらみつぶしに調べることにした。
『住所:〇×町一丁目二番地 コーポ△□ 102号室
賃貸料:一万円(入居時、一か月分前払い)
敷金:一か月
礼金:二か月 ……』
だめだ。敷金・礼金を入れると、家賃前払い分を含めて四万円もかかる。完全に予算オーバーだ。
『住所:〇×町四丁目五番地 ◇△荘 213号室
賃貸料:八千円(入居時、二か月分前払い)
敷金:一か月
礼金:一か月 ……』
ここもだめだ。初月の支払いに三万二千円もかかる。
サイトの中で、ほぼ最安値といっていいが、それでも俺には手が届かない。
値下げ交渉できないかとお姉さんに尋ねてみたが、聞こえないふりをされる。まあ、想定内の反応だけどね。
パソコン画面を食い入るようにのぞき込み、物件情報を見まくる。
だが、どうしても初月の支払いが一万円以下の物件は見当たらない。
いいかげん諦めかけたとき、賃貸以外にも中古物件サイトがあるのが目に留まる。
ダメ元で検索をかけると、思わぬ物件がヒットした。
『住所:〇×町一丁目一番地
月額:一万(十年)
諸経費、手数料:売主負担 ……』
「マジか!?」
不動産屋のお姉さんに、月一万の十年払いでホントに買えるのか確認する。
「大丈夫じゃないですか? こんな物件あったんですね」と、これまたテキトーな答えが返ってくる。
「いますぐ契約を結べますか?」
「できますが、下見したりとか契約条項を読まれたりしないんですか?」
「構いません」
俺は契約書にサインする。
こうして、安アパートを借りるはずの俺は一国一城の主となってしまった。
備考欄には「1LDK」とある。
俺の新居は分譲マンションの一室か何かなのだろう。
妙に分厚い「重要事項説明書」とやらが気になるが、読んでいる時間はない。
なに、あまりにもヒドイ物件なら、売り払ってしまえばいい。
最低でも明日一日だけ、この物件のオーナーになれればいい。
「お客さんの名前は『辰巳竜騎』っていうんですか。『竜』に『騎る』と書いて『竜騎』。珍しい名前ですね」
「死んだ親父がファンタジー系の売れない小説家だったんで、そんな名前をつけたらしいです。キラキラネームってのは他にもいたけど、俺の名前は悪目立ちしたんで、『ドラゴン・ライダー』とからかわれましたよ」
あまり触れてくれるなといった感じで、拗ねるように言う。
名前をいじられるのは昔からだ。しかも、よりによって苗字は「辰巳」。フルネームを直訳すると「ドラゴン・スネーク・ドラゴン・ライダー」だ。苗字の方は自分では選べないとはいえ、親父はどれだけニョロニョロしたものが好きだったのか? 中二病か?
まあ、死んでしまった親父に文句を言っても仕方がない。
名前をからかわれるのはもう慣れた。
言い訳じみた説明をしたり怒ってみせたりするより、さらりと会話を終わらせる方が楽だ。
幸い、不動産屋のお姉さんは、それ以上話を膨らませようとはしなかった。
「辰巳さん。売り主さんと連絡が取れました。現地を案内してくださるそうです」
契約書の記入欄を埋めていると、お姉さんが物件の売り手と話をまとめていた。
意外と仕事が早い。
「売り主さんは、もうすぐ到着するそうです」
「え、いま?」
「そうです」
物件の売り主は、せっかちさんか?
あるいは、一刻も早く手放したいほどヤバい物件なのだろうか。
売り主の行動の速さに、ちょっとだけ腰が引けた。
ガラリ! 不動産屋の扉が勢いよく開く。
見ると、店の入口に金髪をふり乱した白人のお姉さんが立っていた。
相当慌ててやって来たのか、彼女は肩で息を切らしている。
背丈は俺の胸までくらいしかなく、年齢は二十歳そこそこといった感じ。
海外のモデルさんのようなド派手な顔立ちと紺色の安っぽいスーツはまったくマッチしていない。
若い金髪さんが、血走った青い目で店内を見回す。
狭い店内に客は俺だけ。
金髪さんは深呼吸ひとつしてから、俺に声をかける。
「あなたがドラゴン・ライダーね!」
「……俺は辰巳竜騎です」
「ドラゴン・ライダーではないの?」
「その呼び方は好きではありません。はじめて会った相手にそう呼ばれるのは、もっと嫌いです」
不動産屋のお姉さんは、売り主に何を説明したのだろうか?
相手が外人さんだから、わざわざ『ドラゴン・ライダー』の件まで話したのだろうか。
余計なことをしてくれたものだ。
「あは! それもそうね、ごめんなさーい。私たち、まだ会ったばかりだものねー」
金髪さんが流暢な日本語で素直に詫びてくる。
妙になれなれしい上に、これからも交流が続くような言い方に違和感を覚える。
「現地を案内しながら契約書にサインしますわ!」
「もう夕方ですよ? 契約は急ぎたいですが、物件の案内は明日で構いませんよ?」
「明日ですって!? そういうわけにはいかないわ! ……ほら、あなたの国では『善は急げ』っていうじゃない!」
妙に急かす金髪さんに不安を覚える。
安すぎる物件価格の裏に何かあるのだろうか。
だが俺の方は契約書にサインをしてしまった。
焦りすぎたかといささか後悔する。
これは、早々に新居を手放す状況が現実になるかもしれない。
ぼんやりとそう思った。
「ドラゴ……、いえ、タツミリューキさま。現地は、ほんの五分ほどのところです。一緒に来ていただけませんか?」
金髪さんが困り顔で上目遣いに頼み込んでくる。
うん、よく見ると美形だ。
よく見なくても美人さんだ。
なら、仕方ない。
俺は金髪さんについていくことにした。
もちろん契約のためだ。下心があるわけではない。
◇◇◇
「こちらでーす」
金髪さんの指さすのは真新しい高層マンション。
見たところ、三十階はありそう。
つーか、こんな立派なマンション、月一万円で買えるレベルか?
大丈夫か俺? 騙されてないか?
よくあるドッキリじゃなかろうか?
俺は、ありがちな視聴者参加型のテレビ番組に出ている場合ではない。
「ほんとに、支払いは月一万でいいのか?」
「そうよ。じゃあ、行きましょー」
金髪のお姉さんは、さっさとマンションの中に入っていく。
虹彩認証のオートロック。
一流ホテル並みのエントランスフロアには本物の薔薇の香りが漂う。
ハンサムなコンシェルジュがさわやかな笑顔で迎えてくれる。
エレベーターはファミリータイプのワゴンすら乗りそうなゆったりサイズ。
管理費だけでも月一万円では不足な感じの設備に不安が高まる。
俺はなんとかポーカーフェイスを続けた。
エレベーターは最上階の三十三階で停まる。
人気のない廊下を進み、金髪さんは「333号室」の前で足を止める。
「はーい、これが鍵」
金髪のお姉さんが俺に部屋の鍵を渡してくる。
錆の浮いた大きな青銅の鍵。
カードキーでもシリンダータイプでもなく、古いお城が似合いそうな鍵だ。
ただし、333号室の扉に鍵穴はない。
「鍵を近づけるだけで扉は開くわ」
言われた通りにすると、音もなく扉が開く。
ゴツイ青銅の鍵は単なるイミテーションか?
金髪のお姉さんの趣味が理解できない。
お姉さんに背中を押されるように、333号室の中に入る。
部屋の中に入った瞬間、俺は驚いた。
目の前に古色蒼然たる景色が広がっていたからだ。
長い年月を経たらしい、擦り減って丸みを帯びた石畳の床。
空間をぐるりと囲むのは、高さが十メートルはありそうな大理石の円柱。
白い円柱に掲げられた無数の蝋燭が空間を照らす。
それはまるでギリシャの観光ガイドに出てくるような情景。
柔らかい灯りの下、俺は途方に暮れた。
いや、だって、部屋の広さとか天井の高さとか、色々おかしいだろう!
「さてと、さっさと契約を終わらせてしまいましょー」
コンサートホール並みに広い部屋の中央に、黒く重厚な円卓が鎮座している。
金髪のお姉さんは、その円卓の上に契約書を広げ、中世ヨーロッパを舞台とした映画に出てくるような豪奢な羽ペンでサインしはじめる。
「ジーナ・ワーグナー」が金髪さんの名前らしい。
どことなく、ドイツっぽい響きだと思った。
「おめでとう! これで『お城』はリューキさまのものよ! 手続きがスムーズに進んで私も嬉しいわ!! ローンの最初の支払いは半月後の月末よ、忘れないでねー」
「はあ? 城なんて買った覚えはない。俺はマンションの部屋を買ったんだぞ」
喜色満面だったジーナ・ワーグナーが、俺の言葉にきょとんとする。
「部屋って何のこと?」
「『1LDK』の部屋だよ。契約書にあるだろ? 月一万の十年ローンで買った俺の新居だ」
俺は金髪さんがサインしたばかりの契約書を奪い返す。
「1LDK」と「月一万(十年)」を指しながら同じ説明をする。
ジーナ・ワーグナーは俺の目をちらりと見て、ぼそりとつぶやく。
「あらら……、でも契約は成立しちゃったもんねー」
金髪さんの言葉の意味を理解できない俺は、更なる説明を求めようとする。
そのとき、全身を甲冑で包んだ銀髪の女性がどこからともなくあらわれ、悔しそうに呟いた。
「遅かったか。まさか本当に、城ごと我らを売り払ってしまうとは……」
はて、俺は一体どんな買い物をしてしまったのだろうか。
春は別離の季節でもある。
工場の夜勤を終えて帰ろうとした俺は、人事課の竹本さんに明日から来なくて良いと言われてしまう。
「俺、仕事でミスしてないし、周りともうまくやれてると思いますが?」
「辰巳君に落ち度はないよ。ただ、会社にも都合があってね」
またかと思った。
いまのご時世、どんなにがんばっても俺みたいに学歴や後ろ盾のない奴は安定した生活は送れない。
平凡な見た目の三十四歳独身男ともなれば尚更だ。
「すまない。私の力不足で……」
薄暗い事務室のなか、竹本さんが深々と頭を下げてくる。
そのせいで、細い髪がわずかしか残らない頭頂部が見えてしまう。
六十近い年齢もあるが、竹本のオッサンがハゲた一番の原因はストレスが大きいだろう。
毎日のように自分の子どもくらいの歳の奴らにキレられる人事担当者には、心が休まる時間がないに違いない。
世の中、俺みたいにおとなしく話を聞く奴ばかりではないのだ。
「だけどね、辰巳君に考えてほしい話があるんだよ」
「なんですか?」
俺は話半分に尋ねた。
聞くぶんにはタダだ。
「私が前にいた会社が中途採用者を募集している。工場でバイトを取りまとめる役だ。一年間の仮雇用期間が終われば正社員として本採用してくれる。悪くない話だと思うけど、どうだろう?」
「ホントですか? 俺をスムーズに辞めさせたくて、でっち上げた話じゃないですよね?」
「嘘じゃない、信じてくれ! むしろ、真面目な辰巳君だからこそ話してるんだ」
俺は一瞬躊躇したが、竹本さんを信じることにした。
若い奴らに逆ギレされて、すぐ涙目になるオッサンだが、俺は嫌いじゃない。
考えてみれば、竹本さんが他人を騙すのを見たことも聞いたこともない。
腹立ちのあまり、つい疑うようなことを言ってしまったが、俺は素直に詫びることにした。
「すいません。いままで良くしてくれた竹本さんを疑うようなこと言って……俺、面接を受けます」
「良かった、先方にそう伝えるよ。ただね、急ぎの話だから、明日には面接に行って欲しい。必要なのは、履歴書、免許証などの身分証明書、現住所を示すものから……」
「履歴書や身分証は用意できますが、現住所ってどうしても必要ですか? 俺、ネットカフェに寝泊まりしてるんですよ」
竹本さんは言葉を詰まらせる。
少し考えてから、言いにくそうに説明を始める。
「はっきり言って、それでは面接に通らない。相手は古い体質の大企業だ。住所不定では選考対象から外される。例えば、多少遠くても実家から通勤できないか? いや、ダメか、辰巳君は確か」
「はい。両親とも早くに亡くなっていますし、頼れる親類もいません」
「人事畑の長い私から言わせてもらえれば、君の年齢と経歴では今回みたいなチャンスはそうないだろうからな……」
竹本さんが頭を抱える。
親身になって心配してくれているのが分かり、俺は感動すら覚えた。
「いまから不動産屋に行ってアパートを探します」
「そうか。賃貸契約書があれば、先方も納得するだろう。ところで辰巳君は持ちあわせはあるか? 家を借りるならお金がかかる。少しくらいなら貸してあげるよ」
魅力的な提案に首を縦にふりかける。
でもだめだ、甘えてはいけない。
新しい仕事が決まらなかったら、借金を返す当てがなくなり、竹本さんにも迷惑がかかる。
それだけは避けたい。
「ありがとうございます。でも大丈夫です」
「分かった。辰巳君の健闘を祈るよ」
俺は面接書類を受け取り、リュックにしまう。
二度と着用することがなくなった作業着を返却し、いそいそと職場を後にした。
◇◇◇
「ご希望の条件では、物件は見つかりませんね」
午後四時過ぎ。
三軒目に訪れた不動産屋から、この日三回目となる返答を受ける。
言葉は違うがいずれも同じ内容。
「該当物件:なし」というやつだ。
『敷金・礼金、諸費用込みで、初月の支払いは一万円以内』
それが俺の出した条件。
家賃だけなら都心から離れるほど下がるが、当然、通勤に金がかかる。
それではダメだ。
最初の給料日まで食費などの出費を考えると、一万円以内で新居を見つけたい。
だが、考えが甘かった。
見栄を張らず、竹本さんからお金を借りれば良かったと、いまさら後悔する。
後の祭りだ。
「ホントに一件もないんですか?」
「条件が厳しすぎます。どうしてもとおっしゃるなら、最終手段もありますが」
「何でもいいから、お願いします」
俺は何も快適な住まいを求めているわけではない。
トイレは共同でいい。風呂はスーパー銭湯にでも行く。部屋の広さは四畳半どころか、畳一枚分のスペースで構わない。寝ることさえできれば、いや、寝られなくてもいい。面接用の書類に住所を記入できれば、それでいいのだ。
「いわゆるワケあり物件なら、見つかるかもしれませんね」
ベテランぽい感じのお姉さんが、たいして熱心でもなさそうに提案する。
「事故物件だろうが、騒がしい隣人だろうが、俺は気にしません」
「でしたら、裏物件サイトで検索できます。ご自由にどうぞ」
お姉さんが俺にノートパソコンを手渡してくる。
あとは自分で検索しろということらしい。
儲けにならない客だと自分でも思う。文句は言えない。
画面の案内に従い、各種条件を入力する。職業欄にはいまの職場を記入。少なくとも今日までの俺は仕事を持っている。虚偽記載ではない。たぶん。
『名前:辰巳竜騎
年齢:34歳
職業:〇×電気工業勤務
年収(見込):〇〇万円
<物件の希望条件>
賃貸料:一万円以下
敷金・礼金:なし
共益費等:千円以下
最寄り駅:×× ……』
該当:0件
「お客さま、どうですか?」
お姉さんが香水の匂いをぷんぷんさせながら画面をのぞき込む。
やっぱりね、という顔をしながら薄笑いを浮かべる。
「電車で一時間くらい田舎に行くとか、地域を変えないとだめだと思いますよ」
「この駅周辺がいいんです!」
通勤の定期代を用立てできない俺は、そう答える。
「こうなったら、物件情報をひとつずつ見ては如何ですか? 思わぬ物件が隠れているかもしれませんよ」
お姉さんがテキトーな助言をしてくる。
目当ての物件が見つかる可能性は高くはないが、他に手立てもない。
俺はワケあり物件をしらみつぶしに調べることにした。
『住所:〇×町一丁目二番地 コーポ△□ 102号室
賃貸料:一万円(入居時、一か月分前払い)
敷金:一か月
礼金:二か月 ……』
だめだ。敷金・礼金を入れると、家賃前払い分を含めて四万円もかかる。完全に予算オーバーだ。
『住所:〇×町四丁目五番地 ◇△荘 213号室
賃貸料:八千円(入居時、二か月分前払い)
敷金:一か月
礼金:一か月 ……』
ここもだめだ。初月の支払いに三万二千円もかかる。
サイトの中で、ほぼ最安値といっていいが、それでも俺には手が届かない。
値下げ交渉できないかとお姉さんに尋ねてみたが、聞こえないふりをされる。まあ、想定内の反応だけどね。
パソコン画面を食い入るようにのぞき込み、物件情報を見まくる。
だが、どうしても初月の支払いが一万円以下の物件は見当たらない。
いいかげん諦めかけたとき、賃貸以外にも中古物件サイトがあるのが目に留まる。
ダメ元で検索をかけると、思わぬ物件がヒットした。
『住所:〇×町一丁目一番地
月額:一万(十年)
諸経費、手数料:売主負担 ……』
「マジか!?」
不動産屋のお姉さんに、月一万の十年払いでホントに買えるのか確認する。
「大丈夫じゃないですか? こんな物件あったんですね」と、これまたテキトーな答えが返ってくる。
「いますぐ契約を結べますか?」
「できますが、下見したりとか契約条項を読まれたりしないんですか?」
「構いません」
俺は契約書にサインする。
こうして、安アパートを借りるはずの俺は一国一城の主となってしまった。
備考欄には「1LDK」とある。
俺の新居は分譲マンションの一室か何かなのだろう。
妙に分厚い「重要事項説明書」とやらが気になるが、読んでいる時間はない。
なに、あまりにもヒドイ物件なら、売り払ってしまえばいい。
最低でも明日一日だけ、この物件のオーナーになれればいい。
「お客さんの名前は『辰巳竜騎』っていうんですか。『竜』に『騎る』と書いて『竜騎』。珍しい名前ですね」
「死んだ親父がファンタジー系の売れない小説家だったんで、そんな名前をつけたらしいです。キラキラネームってのは他にもいたけど、俺の名前は悪目立ちしたんで、『ドラゴン・ライダー』とからかわれましたよ」
あまり触れてくれるなといった感じで、拗ねるように言う。
名前をいじられるのは昔からだ。しかも、よりによって苗字は「辰巳」。フルネームを直訳すると「ドラゴン・スネーク・ドラゴン・ライダー」だ。苗字の方は自分では選べないとはいえ、親父はどれだけニョロニョロしたものが好きだったのか? 中二病か?
まあ、死んでしまった親父に文句を言っても仕方がない。
名前をからかわれるのはもう慣れた。
言い訳じみた説明をしたり怒ってみせたりするより、さらりと会話を終わらせる方が楽だ。
幸い、不動産屋のお姉さんは、それ以上話を膨らませようとはしなかった。
「辰巳さん。売り主さんと連絡が取れました。現地を案内してくださるそうです」
契約書の記入欄を埋めていると、お姉さんが物件の売り手と話をまとめていた。
意外と仕事が早い。
「売り主さんは、もうすぐ到着するそうです」
「え、いま?」
「そうです」
物件の売り主は、せっかちさんか?
あるいは、一刻も早く手放したいほどヤバい物件なのだろうか。
売り主の行動の速さに、ちょっとだけ腰が引けた。
ガラリ! 不動産屋の扉が勢いよく開く。
見ると、店の入口に金髪をふり乱した白人のお姉さんが立っていた。
相当慌ててやって来たのか、彼女は肩で息を切らしている。
背丈は俺の胸までくらいしかなく、年齢は二十歳そこそこといった感じ。
海外のモデルさんのようなド派手な顔立ちと紺色の安っぽいスーツはまったくマッチしていない。
若い金髪さんが、血走った青い目で店内を見回す。
狭い店内に客は俺だけ。
金髪さんは深呼吸ひとつしてから、俺に声をかける。
「あなたがドラゴン・ライダーね!」
「……俺は辰巳竜騎です」
「ドラゴン・ライダーではないの?」
「その呼び方は好きではありません。はじめて会った相手にそう呼ばれるのは、もっと嫌いです」
不動産屋のお姉さんは、売り主に何を説明したのだろうか?
相手が外人さんだから、わざわざ『ドラゴン・ライダー』の件まで話したのだろうか。
余計なことをしてくれたものだ。
「あは! それもそうね、ごめんなさーい。私たち、まだ会ったばかりだものねー」
金髪さんが流暢な日本語で素直に詫びてくる。
妙になれなれしい上に、これからも交流が続くような言い方に違和感を覚える。
「現地を案内しながら契約書にサインしますわ!」
「もう夕方ですよ? 契約は急ぎたいですが、物件の案内は明日で構いませんよ?」
「明日ですって!? そういうわけにはいかないわ! ……ほら、あなたの国では『善は急げ』っていうじゃない!」
妙に急かす金髪さんに不安を覚える。
安すぎる物件価格の裏に何かあるのだろうか。
だが俺の方は契約書にサインをしてしまった。
焦りすぎたかといささか後悔する。
これは、早々に新居を手放す状況が現実になるかもしれない。
ぼんやりとそう思った。
「ドラゴ……、いえ、タツミリューキさま。現地は、ほんの五分ほどのところです。一緒に来ていただけませんか?」
金髪さんが困り顔で上目遣いに頼み込んでくる。
うん、よく見ると美形だ。
よく見なくても美人さんだ。
なら、仕方ない。
俺は金髪さんについていくことにした。
もちろん契約のためだ。下心があるわけではない。
◇◇◇
「こちらでーす」
金髪さんの指さすのは真新しい高層マンション。
見たところ、三十階はありそう。
つーか、こんな立派なマンション、月一万円で買えるレベルか?
大丈夫か俺? 騙されてないか?
よくあるドッキリじゃなかろうか?
俺は、ありがちな視聴者参加型のテレビ番組に出ている場合ではない。
「ほんとに、支払いは月一万でいいのか?」
「そうよ。じゃあ、行きましょー」
金髪のお姉さんは、さっさとマンションの中に入っていく。
虹彩認証のオートロック。
一流ホテル並みのエントランスフロアには本物の薔薇の香りが漂う。
ハンサムなコンシェルジュがさわやかな笑顔で迎えてくれる。
エレベーターはファミリータイプのワゴンすら乗りそうなゆったりサイズ。
管理費だけでも月一万円では不足な感じの設備に不安が高まる。
俺はなんとかポーカーフェイスを続けた。
エレベーターは最上階の三十三階で停まる。
人気のない廊下を進み、金髪さんは「333号室」の前で足を止める。
「はーい、これが鍵」
金髪のお姉さんが俺に部屋の鍵を渡してくる。
錆の浮いた大きな青銅の鍵。
カードキーでもシリンダータイプでもなく、古いお城が似合いそうな鍵だ。
ただし、333号室の扉に鍵穴はない。
「鍵を近づけるだけで扉は開くわ」
言われた通りにすると、音もなく扉が開く。
ゴツイ青銅の鍵は単なるイミテーションか?
金髪のお姉さんの趣味が理解できない。
お姉さんに背中を押されるように、333号室の中に入る。
部屋の中に入った瞬間、俺は驚いた。
目の前に古色蒼然たる景色が広がっていたからだ。
長い年月を経たらしい、擦り減って丸みを帯びた石畳の床。
空間をぐるりと囲むのは、高さが十メートルはありそうな大理石の円柱。
白い円柱に掲げられた無数の蝋燭が空間を照らす。
それはまるでギリシャの観光ガイドに出てくるような情景。
柔らかい灯りの下、俺は途方に暮れた。
いや、だって、部屋の広さとか天井の高さとか、色々おかしいだろう!
「さてと、さっさと契約を終わらせてしまいましょー」
コンサートホール並みに広い部屋の中央に、黒く重厚な円卓が鎮座している。
金髪のお姉さんは、その円卓の上に契約書を広げ、中世ヨーロッパを舞台とした映画に出てくるような豪奢な羽ペンでサインしはじめる。
「ジーナ・ワーグナー」が金髪さんの名前らしい。
どことなく、ドイツっぽい響きだと思った。
「おめでとう! これで『お城』はリューキさまのものよ! 手続きがスムーズに進んで私も嬉しいわ!! ローンの最初の支払いは半月後の月末よ、忘れないでねー」
「はあ? 城なんて買った覚えはない。俺はマンションの部屋を買ったんだぞ」
喜色満面だったジーナ・ワーグナーが、俺の言葉にきょとんとする。
「部屋って何のこと?」
「『1LDK』の部屋だよ。契約書にあるだろ? 月一万の十年ローンで買った俺の新居だ」
俺は金髪さんがサインしたばかりの契約書を奪い返す。
「1LDK」と「月一万(十年)」を指しながら同じ説明をする。
ジーナ・ワーグナーは俺の目をちらりと見て、ぼそりとつぶやく。
「あらら……、でも契約は成立しちゃったもんねー」
金髪さんの言葉の意味を理解できない俺は、更なる説明を求めようとする。
そのとき、全身を甲冑で包んだ銀髪の女性がどこからともなくあらわれ、悔しそうに呟いた。
「遅かったか。まさか本当に、城ごと我らを売り払ってしまうとは……」
はて、俺は一体どんな買い物をしてしまったのだろうか。
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