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<フリーター奮闘編> ~ワーグナー城 落城寸前~
第一話:フリーター、LDKの意味を知る
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「遅かったか。まさか本当に、城ごと我らを売り払ってしまうとは……」
春は出会いの季節でもある。
どうやら城の主となってしまった俺は、ひとりの女騎士と出会った。
「きみは誰?」
軽く尋ねただけの俺を、長身銀髪の女騎士がキツく睨んでくる。
ほんわかタイプの金髪さんと違い、クールビューティーな感じの銀髪さんは、初対面の俺が気に入らないようだ。
女騎士の突き刺すような鋭い眼光に、俺はビビる。
彼女の腰に下げられた傷だらけの大剣も威圧感ハンパない。
「エリカ! あたらしい領主さまに向かって、その態度は良くないですわ!」
小柄な金髪さんが、長身の銀髪さんを見上げながら文句を言う。
女騎士が甲冑を身に纏っていなければ、姉妹ケンカにしか見えないだろう。
「新しい領主といっても、ワーグナー城が落ちるまでの、たった三日間の領主じゃないですか。敬うどころか対等に話をする気にもなりません!」
「そんなことない! リューキさまならダゴダネルの軍勢を追い払って下さるわ」
「追い払う? 兵士もいないのに? どうやって?」
契約書にジーナ・ワーグナーと署名した金髪さんが俺の方を向く。
ビシッと力強く俺を指さし、高らかに宣言する。
「リューキさまはねー、ドラゴン・ライダーなのよ!」
「ドラゴン・ライダー? なんです、それは?」
俺が子どもの頃のニックネームです。
触れられたくない黒歴史です。
この状況で、そんな説明をしなきゃならんのか?
これは新たなイジメか?
視聴者参加型のドッキリ番組なら、カメラよ、早く出てきてくれ!
俺の困惑をよそに、ジーナ・ワーグナーは話を進める。
「ドラゴン・ライダーはドラゴン・ライダーよ! きっと、ヴァスケルさまと力をあわせて、わたしたちを助けてくださるわ」
「我らを助けるもなにも、守護龍のヴァスケル様の方が助けが必要じゃないか!」
「それもこれも全部リューキさまが解決してくださるわ! ね、リューキさま!」
物騒な問題を丸投げしてくる。
ヒドい話だ。
苦難から脱すべく、俺はひとつの選択肢を口にしようとする。
「ジーナさん、この契約はなかったことに……」
「リューキさまっ! 契約破棄はおススメしませんわ!」
「なんでだよ?」
「契約書に書いてありますわ。リューキさまが領主の地位から離れる方法はふたつ。ローンを払い終えたあとに城を売るか、死んだときだけよ」
マジか? 残念な情報だ。
「リューキ殿は領主の地位から下りたいのか。では、臣下たる私がお手伝いしよう。短い付き合いでしたな」
女騎士エリカが大剣をすらりと抜く。
幅広の銀刃が、ロウソクの灯りを浴びて不気味に光る。
ツツと足を進める女騎士に本気の殺意を感じた俺は、あわてて声をかける。
「エリカさん、冗談だ! 俺、領主の仕事、めっちゃ頑張るよ!」
なにをどう頑張るかはさておき、俺は命を永らえることを優先する。
「ね、エリカ! リューキさまもこう仰っているんだし、臣下として一緒にリューキさまを支えていきましょ!」
「くっ、ジーナ様はそれでいいのか。歴史あるワーグナー家の五十三代目当主として、国が滅びる時は城と運命を共にすべきではないのか?」
「そんなの嫌よ! もっと人生を楽しみたいもの!!」
それが本音か。
あわてて口をおさえるジーナ・ワーグナーを横目に、俺は女騎士エリカに事情を尋ねる。少なくともジーナよりは冷静に話ができそうだ。
「エリカさん、俺にも状況が理解できるように説明してくれないかな? ダゴダネル家の軍勢が攻めてくるとか、三日で落城するとか、城に兵士がいないって話も。てか、そもそもここはどこなんだ?」
「なぜ私に尋ねる?」
「ジーナさんより落ち着いてるからね。いままでもジーナさんが困ったときは、エリカさんが助けていたんじゃないの? 違うかな?」
銀髪の女騎士エリカが言葉を詰まらせる。
数秒間逡巡したあと、「私の名前はエリカ・ヤンセン。ワーグナー家に代々仕えるヤンセン家の女騎士」と名乗る。「臣下に敬称は不要。呼び捨てでいい」と続ける。
堅物な口調だが、抜かれていた大剣は腰の鞘に納められた。
エリカは、なぜか急に俺を領主と認めてくれたようだ。
「分かった、エリカさ……エリカ・ヤンセン。状況を説明してくれ」
「承知した、我が領主」
女騎士エリカ・ヤンセンの説明はこうだ。
俺がいるのは異世界。プロイゼン帝国に属するワーグナー家の城。
僻地に城を一つしか有しないワーグナー家は弱小貴族。
ワーグナー家と領土を接するダゴダネルの軍勢三千が攻めてきたのは十日前。
手当の未払いで守備隊が不在だった状況も重なり、峠の関所や城下町はたちまち占領された。
守護龍ヴァスケルを警戒した敵軍は、すぐには城に押し寄せなかったが、「守護龍が死んだ」との噂を耳にしたらしく、降伏勧告してきた。
三日以内にワーグナーから返事がなければ、力づくで城を攻め落とすそうだ。
なんてこったい。
いくらワケあり物件とはいえ限度があるだろう。
まあ、異世界の城というところで、既にどうかと思うが。
「エリカ。それで守護龍は死んだのか?」
「生きてる。けど、深く眠っている」
「戦えないのか?」
「無理。問いかけに応じないし、ピクリとも動かない」
「やっぱり、死んでるんじゃないのか?」
「死んでない。一日一回は呼吸している。ひどく弱っているけど、生きてる」
女騎士エリカ・ヤンセンは守護龍ヴァスケルが生きていると確信しているようだが、戦力にならないとも認識していた。
確かに、どれだけ強力な力があろうが、眠ったままの守護龍は脅威ではない。
「他に城にいるのは?」
「戦力にならない女官や下僕をのぞけば、我々のみ。契約書通りLDKだけ」
「てか、LDKってなんだよ?」
「いまさら聞くか? Lord・Dragon・Knightのことだ。正確には、元領主のジーナ様、守護龍のヴァスケル様、そして女騎士の私」
……なるほど、それは思いもよらなかった。
てか、新居を探すとき、LDKは「リビング・ダイニング・キッチン」の略ですよね? なんて誰も確認しない。LDKが「ロード・ドラゴン・ナイト」だと考えるやつがどこにいる? この世界か? この異世界ではそれが常識なのか? これも俺が契約書をキチンと読まなかったせいか? 畜生! ダゴダネルの奴らを追い払ったら契約書をじっくり読みこんでやる。契約を解除できる方法がないか徹底的に調べてやる。こんな摩訶不思議な世界から抜け出してやる。俺は平穏な生活を送りたいだけなんだ……
「我が領主、どうかされましたか? 私の説明は理解できましたか?」
「……ん、ああ、ごめん。ぼーっとしてたな。納得できるかどうかはともかく、理解はできたよ」
女騎士エリカから視線を外し、ジーナ・ワーグナーを睨みつける。
金髪美人の元領主は、にっこりとほほ笑み返してくる。
残念ながら、俺の目力は迫力がないようだ。
にしても、肩の荷が下りたのか、ジーナはとてもくつろいでいるように見える。
なんかムカつく。
「エリカ・ヤンセン、いちおう尋ねる。俺が不慮の事故かなにかでいなくなったら、領主は誰になる?」
「その場合は元の領主が復権する。つまりはジーナ様です」
「やはりそうか。では、ジーナ。俺がうっかり死なないように守ってくれ」
俺は後ろ向きに倒れようとする。
もちろん倒れるふり。
それでもジーナ・ワーグナーは「いやー、やめてー」と叫びながら、小さな身体で懸命に俺を支えてくれる。
うむ、健気で良い。立派な忠臣だ。
ささやかながら仕返しができて、俺はちょっとだけ気持ちが落ち着いた。
「我が領主、お遊びはそれくらいにして、ダゴダネル家の軍勢にどう対処するか決めねば」
「そうだな。どんな選択肢が考えられるんだ?」
選択肢は三つ。
その一、「降伏」。
俺は捕えられ、ワーグナー城はダゴダネル家のものになる。
元領主ジーナと女騎士エリカはダゴダネル家の家臣となる。
その後の働き次第では、ジーナは城代くらいには返り咲けるかもしれない。
その二、「脱出」。
密かに城を抜け出して遠くに逃げる。
但し、月一万のローンの支払が滞るため、俺は命を失う。
てか、ローンの支払い遅延一回で即座に死んじゃうなんて厳しすぎやしないか?
ジーナやエリカの処遇は選択肢その一と大差なし。
その三、「抗戦」。
持ち場を放棄した守備兵を説得し、ダゴダネル家の軍勢に当たる。
負ければ選択肢その一と結果は変わらないが、勝てば俺の命は助かる。
「どれを選ぶか悩むわね」
「ジーナ、お前はすっかり他人事だな」
「抗戦」以外ありえないと考えていた俺は、ジーナ・ワーグナーが真面目に悩むのを見てため息を漏らす。
「我が領主、その様子では『抗戦』を選ぶのだな?」
「当然だ。俺は簡単に死ぬつもりはない。だから、持ち場を放棄した守備隊を説得したい。どうすれば話ができる?」
「守備隊の隊長を内々で呼びつけている。あとはリューキ殿の交渉の手腕次第だ」
女騎士エリカに「お手並み拝見」と言われた気がした。
畜生!
こうなったら隊長とやらを説得してやる。
あなたのために戦いますと言わせてやる。
三ヶ月でクビにされたけどクレーム処理のコールセンターでも働いていた俺だ。
うまいこと話をして、隊長とやらを味方につけてやるぜ!
「我が領主、オーク・キングのグスタフ隊長が参られた」
女騎士エリカに呼ばれて、俺は振り返る。そして視線を下げる。
そこにいたのは、俺の胸までの背丈しかない、髭もじゃで厳つい顔をした小男。
ただし、尋常でない厚みの胸板を持っている。
そのずんぐりした筋肉ダルマが、オーク・キングのグスタフ隊長だった。
「なんだ、お主は? 女騎士エリカよ、オレが話をする相手とはこの貧弱な身体つきの男か?」
初対面なのに随分な言われようだ。
てか、相手はヒトじゃなくてオーク・キングか。
さすが異世界……まともに交渉できるか不安になってきた。
春は出会いの季節でもある。
どうやら城の主となってしまった俺は、ひとりの女騎士と出会った。
「きみは誰?」
軽く尋ねただけの俺を、長身銀髪の女騎士がキツく睨んでくる。
ほんわかタイプの金髪さんと違い、クールビューティーな感じの銀髪さんは、初対面の俺が気に入らないようだ。
女騎士の突き刺すような鋭い眼光に、俺はビビる。
彼女の腰に下げられた傷だらけの大剣も威圧感ハンパない。
「エリカ! あたらしい領主さまに向かって、その態度は良くないですわ!」
小柄な金髪さんが、長身の銀髪さんを見上げながら文句を言う。
女騎士が甲冑を身に纏っていなければ、姉妹ケンカにしか見えないだろう。
「新しい領主といっても、ワーグナー城が落ちるまでの、たった三日間の領主じゃないですか。敬うどころか対等に話をする気にもなりません!」
「そんなことない! リューキさまならダゴダネルの軍勢を追い払って下さるわ」
「追い払う? 兵士もいないのに? どうやって?」
契約書にジーナ・ワーグナーと署名した金髪さんが俺の方を向く。
ビシッと力強く俺を指さし、高らかに宣言する。
「リューキさまはねー、ドラゴン・ライダーなのよ!」
「ドラゴン・ライダー? なんです、それは?」
俺が子どもの頃のニックネームです。
触れられたくない黒歴史です。
この状況で、そんな説明をしなきゃならんのか?
これは新たなイジメか?
視聴者参加型のドッキリ番組なら、カメラよ、早く出てきてくれ!
俺の困惑をよそに、ジーナ・ワーグナーは話を進める。
「ドラゴン・ライダーはドラゴン・ライダーよ! きっと、ヴァスケルさまと力をあわせて、わたしたちを助けてくださるわ」
「我らを助けるもなにも、守護龍のヴァスケル様の方が助けが必要じゃないか!」
「それもこれも全部リューキさまが解決してくださるわ! ね、リューキさま!」
物騒な問題を丸投げしてくる。
ヒドい話だ。
苦難から脱すべく、俺はひとつの選択肢を口にしようとする。
「ジーナさん、この契約はなかったことに……」
「リューキさまっ! 契約破棄はおススメしませんわ!」
「なんでだよ?」
「契約書に書いてありますわ。リューキさまが領主の地位から離れる方法はふたつ。ローンを払い終えたあとに城を売るか、死んだときだけよ」
マジか? 残念な情報だ。
「リューキ殿は領主の地位から下りたいのか。では、臣下たる私がお手伝いしよう。短い付き合いでしたな」
女騎士エリカが大剣をすらりと抜く。
幅広の銀刃が、ロウソクの灯りを浴びて不気味に光る。
ツツと足を進める女騎士に本気の殺意を感じた俺は、あわてて声をかける。
「エリカさん、冗談だ! 俺、領主の仕事、めっちゃ頑張るよ!」
なにをどう頑張るかはさておき、俺は命を永らえることを優先する。
「ね、エリカ! リューキさまもこう仰っているんだし、臣下として一緒にリューキさまを支えていきましょ!」
「くっ、ジーナ様はそれでいいのか。歴史あるワーグナー家の五十三代目当主として、国が滅びる時は城と運命を共にすべきではないのか?」
「そんなの嫌よ! もっと人生を楽しみたいもの!!」
それが本音か。
あわてて口をおさえるジーナ・ワーグナーを横目に、俺は女騎士エリカに事情を尋ねる。少なくともジーナよりは冷静に話ができそうだ。
「エリカさん、俺にも状況が理解できるように説明してくれないかな? ダゴダネル家の軍勢が攻めてくるとか、三日で落城するとか、城に兵士がいないって話も。てか、そもそもここはどこなんだ?」
「なぜ私に尋ねる?」
「ジーナさんより落ち着いてるからね。いままでもジーナさんが困ったときは、エリカさんが助けていたんじゃないの? 違うかな?」
銀髪の女騎士エリカが言葉を詰まらせる。
数秒間逡巡したあと、「私の名前はエリカ・ヤンセン。ワーグナー家に代々仕えるヤンセン家の女騎士」と名乗る。「臣下に敬称は不要。呼び捨てでいい」と続ける。
堅物な口調だが、抜かれていた大剣は腰の鞘に納められた。
エリカは、なぜか急に俺を領主と認めてくれたようだ。
「分かった、エリカさ……エリカ・ヤンセン。状況を説明してくれ」
「承知した、我が領主」
女騎士エリカ・ヤンセンの説明はこうだ。
俺がいるのは異世界。プロイゼン帝国に属するワーグナー家の城。
僻地に城を一つしか有しないワーグナー家は弱小貴族。
ワーグナー家と領土を接するダゴダネルの軍勢三千が攻めてきたのは十日前。
手当の未払いで守備隊が不在だった状況も重なり、峠の関所や城下町はたちまち占領された。
守護龍ヴァスケルを警戒した敵軍は、すぐには城に押し寄せなかったが、「守護龍が死んだ」との噂を耳にしたらしく、降伏勧告してきた。
三日以内にワーグナーから返事がなければ、力づくで城を攻め落とすそうだ。
なんてこったい。
いくらワケあり物件とはいえ限度があるだろう。
まあ、異世界の城というところで、既にどうかと思うが。
「エリカ。それで守護龍は死んだのか?」
「生きてる。けど、深く眠っている」
「戦えないのか?」
「無理。問いかけに応じないし、ピクリとも動かない」
「やっぱり、死んでるんじゃないのか?」
「死んでない。一日一回は呼吸している。ひどく弱っているけど、生きてる」
女騎士エリカ・ヤンセンは守護龍ヴァスケルが生きていると確信しているようだが、戦力にならないとも認識していた。
確かに、どれだけ強力な力があろうが、眠ったままの守護龍は脅威ではない。
「他に城にいるのは?」
「戦力にならない女官や下僕をのぞけば、我々のみ。契約書通りLDKだけ」
「てか、LDKってなんだよ?」
「いまさら聞くか? Lord・Dragon・Knightのことだ。正確には、元領主のジーナ様、守護龍のヴァスケル様、そして女騎士の私」
……なるほど、それは思いもよらなかった。
てか、新居を探すとき、LDKは「リビング・ダイニング・キッチン」の略ですよね? なんて誰も確認しない。LDKが「ロード・ドラゴン・ナイト」だと考えるやつがどこにいる? この世界か? この異世界ではそれが常識なのか? これも俺が契約書をキチンと読まなかったせいか? 畜生! ダゴダネルの奴らを追い払ったら契約書をじっくり読みこんでやる。契約を解除できる方法がないか徹底的に調べてやる。こんな摩訶不思議な世界から抜け出してやる。俺は平穏な生活を送りたいだけなんだ……
「我が領主、どうかされましたか? 私の説明は理解できましたか?」
「……ん、ああ、ごめん。ぼーっとしてたな。納得できるかどうかはともかく、理解はできたよ」
女騎士エリカから視線を外し、ジーナ・ワーグナーを睨みつける。
金髪美人の元領主は、にっこりとほほ笑み返してくる。
残念ながら、俺の目力は迫力がないようだ。
にしても、肩の荷が下りたのか、ジーナはとてもくつろいでいるように見える。
なんかムカつく。
「エリカ・ヤンセン、いちおう尋ねる。俺が不慮の事故かなにかでいなくなったら、領主は誰になる?」
「その場合は元の領主が復権する。つまりはジーナ様です」
「やはりそうか。では、ジーナ。俺がうっかり死なないように守ってくれ」
俺は後ろ向きに倒れようとする。
もちろん倒れるふり。
それでもジーナ・ワーグナーは「いやー、やめてー」と叫びながら、小さな身体で懸命に俺を支えてくれる。
うむ、健気で良い。立派な忠臣だ。
ささやかながら仕返しができて、俺はちょっとだけ気持ちが落ち着いた。
「我が領主、お遊びはそれくらいにして、ダゴダネル家の軍勢にどう対処するか決めねば」
「そうだな。どんな選択肢が考えられるんだ?」
選択肢は三つ。
その一、「降伏」。
俺は捕えられ、ワーグナー城はダゴダネル家のものになる。
元領主ジーナと女騎士エリカはダゴダネル家の家臣となる。
その後の働き次第では、ジーナは城代くらいには返り咲けるかもしれない。
その二、「脱出」。
密かに城を抜け出して遠くに逃げる。
但し、月一万のローンの支払が滞るため、俺は命を失う。
てか、ローンの支払い遅延一回で即座に死んじゃうなんて厳しすぎやしないか?
ジーナやエリカの処遇は選択肢その一と大差なし。
その三、「抗戦」。
持ち場を放棄した守備兵を説得し、ダゴダネル家の軍勢に当たる。
負ければ選択肢その一と結果は変わらないが、勝てば俺の命は助かる。
「どれを選ぶか悩むわね」
「ジーナ、お前はすっかり他人事だな」
「抗戦」以外ありえないと考えていた俺は、ジーナ・ワーグナーが真面目に悩むのを見てため息を漏らす。
「我が領主、その様子では『抗戦』を選ぶのだな?」
「当然だ。俺は簡単に死ぬつもりはない。だから、持ち場を放棄した守備隊を説得したい。どうすれば話ができる?」
「守備隊の隊長を内々で呼びつけている。あとはリューキ殿の交渉の手腕次第だ」
女騎士エリカに「お手並み拝見」と言われた気がした。
畜生!
こうなったら隊長とやらを説得してやる。
あなたのために戦いますと言わせてやる。
三ヶ月でクビにされたけどクレーム処理のコールセンターでも働いていた俺だ。
うまいこと話をして、隊長とやらを味方につけてやるぜ!
「我が領主、オーク・キングのグスタフ隊長が参られた」
女騎士エリカに呼ばれて、俺は振り返る。そして視線を下げる。
そこにいたのは、俺の胸までの背丈しかない、髭もじゃで厳つい顔をした小男。
ただし、尋常でない厚みの胸板を持っている。
そのずんぐりした筋肉ダルマが、オーク・キングのグスタフ隊長だった。
「なんだ、お主は? 女騎士エリカよ、オレが話をする相手とはこの貧弱な身体つきの男か?」
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さすが異世界……まともに交渉できるか不安になってきた。
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