フリーター、城を買う。 〜格安物件をローンで買ったら異世界のお城でした。ちくしょう!〜

きら幸運

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<フリーター探索編> ~ジーナはどこへ消えた?~

第八十六話:フリーター、ドワーフの少年を助ける

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 ローグ山の内部、洞窟深部。
 ジーナのモノらしき小さな足跡が点々と続く枝道。

 俺は洞窟トロルに背後から斬りかかる。

「グェェエエエエーーーーッ!!」

 ももけんに深手を負った洞窟トロルが、悲鳴をあげながら倒れる。

 間髪入れず、俺は怪物の胸をひと突きしてトドメを刺す。

 怪物の身体からだは、地竜デュカキスと同じくらいデカい。
 だが、その肉は比べものにならないくらい柔らかかった。
 必殺の「畜生ガッデム」が不要なくらいにはね。

<むっ、領主ロードリューキ殿。拙者を呼びましたかな?>
<呼んでないよ。てか、俺が「畜生ガッデム」って思い浮かべるたびに反応するんだね。実は「畜生剣ガッデム・ソード」の名前が気に入ったとか?>

<むお! そうではござらん! ござらんが、「畜生ガッデム」と声をかけていただく度に全身に力がみなぎり、気持ちが高揚するのでござる。もはやどうしたものかと……>

 畜生剣ガッデム・ソードこと、土の精霊グノームのドムドムが答える。

 うっかり「畜生剣ガッデム・ソード」と名付けてしまった俺が言うのもなんだが、ドムドムは複雑な心境なのだとあらためて分かった。
 
 ほんと、すんません



「だれ? だれなの? ジーナちゃんなの?」

 穴の奥から声が聞こえる。
 その、幼い少年らしき声は震えていた。

「いや、俺たちはジーナの友だちだよ」

「なにを言うのじゃ、リューキはジーナの夫ではないか。子どもに嘘をついてはイケないのじゃ!」

 俺の発言はエル姫に訂正されてしまう。

 いやまあ、エル姫の言う通りかもしれないけど、なにもこんなタイミングで言わなくてもいいと思う。妙なところでマジメだね……まあ、いいけどさ。

「ジーナちゃんの友だち?」

 喜ぶ声とともに少年が穴から飛び出してくる。 

 少年はヒト族でもオーク族でもゴブリン族でもない、はじめて見る種族だった。

「ふむ、ドワーフ族か」

 エル姫がボソリと言う。

「ドワーフ族って、俺たちワーグナー家と何度もめてるっていう?」
「そうじゃ。まあ、め事は大人の事情であって、子どもは無関係じゃがのう」

 少年の背丈は一メートル少々と小柄ながらも、肩幅は俺よりも広く、腕も太い。
 そんなたくましい身体からだつきに対し顔は幼く、実際の年齢は十歳くらいと思われた。

「ほんとにジーナちゃんの友だちなの?」
「そうだよ、俺はリューキっていうのさ。俺たちはジーナを探してるんだけど、坊やはジーナがどこに行ったか知らないかい?」

「わかんない。っきなトロルに追っかけられたとき、はぐれちゃって……」

 ドワーフの少年がべそをかく。
 涙をぬぐう少年の右肘みぎひじには、血が固まった跡があった。

「なんじゃ、ケガをしておるのか? ん、もしや……」

 エル姫が懐から布切れを取り出す。
 洞窟内で拾ったジーナのハンカチだ。

「あっ! ジーナちゃんのハンカチだ! 血が出たとこをジーナちゃんがしばってくれたんだよ! けど、トロルから逃げてるときに落っことしちゃって……」

 懸命に涙をこらえるドワーフの少年が、ジーナのハンカチをじっと見つめる。
 
 視線の意味を察したらしきエル姫が、少年の傷口をハンカチでしばってあげると、彼はうれしそうな顔を見せた。

「お姉ちゃん、ありがとう! あれれ!? お姉ちゃんはジーナちゃんにすっごく似てるね!」
「ふふ、そうじゃろう。わらわとジーナは従姉妹いとこ同士じゃからのう。わらわのことは、エルと呼んでくれなのじゃ」

「エル姉ちゃんかー! ぼく、マリウスっていうんだよ!」
「ほうほう、マリウスか。カッコいい名前じゃのう」

 エル姫に優しくされたせいか、次第にマリウスの顔から緊張の色が消えていく。
 
 そんなふたりの様子を眺めていると、俺の肩に乗る風の精霊シルフデボネアが小声でささやいてきた。

「リューキはん。小さな足跡はジーナはんやなくて、マリウス坊やとちゃうか?」
「そうみたいだね。参ったなあ、ジーナを探す手掛かりがなくなっちゃったよ」

 俺は、思わずため息を漏らしてしまう。

 直後、クゥッとかわいい音が聞こえてくる。
 誰かのお腹が鳴った音だ。

「エル、腹でも減ったのか?」

「わ、わらわではないぞよ! 淑女レディーは、そんなはしたない真似はせぬのじゃ」

「ごめんなさーい、ぼくのお腹が鳴っちゃったの。ジーナちゃんにお菓子を分けてもらってから、まる一日なにも食べてなくって……」

 俺は収納袋を取り出す。
 腹が減っては戦はできぬ。というか、良い考えが思い浮かばないだろうからね。

「マリウスは好きなものはあるか? 肉でも魚でもなんでも言ってくれ!」

「そうじゃそうじゃ! マリウスよ、遠慮することないぞ! リューキの出す食べ物はどれもこれも美味びみなのじゃ! というわけで、わらわはオイルサーディンの缶詰を希望するのじゃ!」

「わかったよ、ほら! で、マリウスは?」

「ぼく、お菓子を食べたいなー! ジーナちゃんとチョコレートってお菓子を半分こしたんだけど、すっごくおいしかったの!」

「そうか、疲れたときは甘いものが一番だからね」

 俺は板チョコを一枚差し出す。

 マリウスは包み紙を開け、うれしそうにチョコレートを頬張ほおばる。

「おいしーい! エル姉ちゃん、リューキの、ありがとう!」

 罪のない差別に俺は傷つく。

 
……少年よ、ちょっと待ってくれ! 確かに俺はおっさんだ。三十四歳の立派なおっさんだ。いや、立派かどうかはともかく、まごうことなきおっさんだ! けどな、エルだって若くないと思うぞ! 彼女は魔人だ! 俺よりもずっと年上だ。そうは見えなくても、俺の婆ちゃんよりも長生きしてるはずだ。なのにエルは「お姉ちゃん」で、俺は「おじちゃん」か? なぜだ? 見た目か? うん、そうだね。じゃあ、仕方ないか。けどさ、チョコレートあげたんだから、俺も「お兄ちゃん」にしてくれないかな?

『むおっ! 拙者、領主ロードリューキ殿のふところの狭さに驚愕したでござるぞ!』

 ん? ドムドム……じゃなくて、畜生剣ガッデム・ソードじゃないか? どうやって俺の妄想の中に入ってきた? 

『リューキはん。精霊との同調シンクロ率が高うなったら、交流コンタクトできるんやで』
 
 な!? デボネアか! くっ、ひどいじゃないか、俺にプライベートはないのかよ! 畜生ちくしょう

『むおっ? 拙者を呼びましたかな?』

 呼んでないよ! 

『リューキはん、安心せい! もっと創造力を鍛錬たんれんすれば、交流コンタクトだけやなくて遮断ブロックもできるようになるんやで!』

 そうなのか! デボネア、やり方を教えてくれ!

『魔人になるんや! まずはそっからや!』

『むおっ! リューキ殿! 頑張るでござるぞ!』……

 
 意識が戻る。
 久々に妄想した気がするが、不完全燃焼だ。
 いや、完全燃焼する妄想ってのもおかしいか。

 うむ……しばらく妄想タイムはお預けだね。

「リューキのおじちゃん、大丈夫? 急にボンヤリしたから心配しちゃったよ」
「マリウス。心配いらないよ、はちょっと疲れてるだけさ」

 俺は己の現実を認める。

 そうとも。せいぜい百歳少々しか生きないヒト族なら、三十四歳はおじさんだ。
 千年生きる魔人族の百歳、二百歳とは見た目が違っても不思議ではない!

 いや、待てよ?
 俺はこれから魔人になるんだよな?

 千年生きる魔人で三十四歳ってことは……

「まさか! 魔人の三十四歳は、ヒト族の三歳相当か!?」

 俺は己の未来に驚く。


……なんてこったい! 腰がいてえ!とか、肩がった、なーんて言ってる三十四歳のおっさんが三歳児になるのか? っちゃいおっさんだな。いや、三歳児はおっさんではないな。お兄さんか? いやいや、お兄さんを飛び越してお子さまだな。ん? てことは普通の異世界転生モノみたいだな。おお、ファンタジーの王道っぽくなってきたな。親父が書いたファンタジー小説には異世界転生モノはなかったけど、俺は知ってるんだぜ! なにしろネットカフェが俺の住まいだったからな!

『リューキはん。盛り上がってるとこ悪いけど、魔人になってもリューキはんはチビッ子にならへんで。見た目は若返るかもしれんけど、ほとんどいまのまんまや』

 うおっ、デボネアか!? てことは、俺はまた妄想世界に入ってしまったのか。てか、ぜんぶ筒抜けかよ! 恥ずかしいじゃないか!!

『む、リューキ殿。頑張ってくだされ……』

 ドムド……畜生剣ガッデム・ソード。本気で同情しないでくれ、なんだか泣けてきそうだよ……

 
 ふたたび意識が戻る。
 右手にぬくもりを感じる。
 心配そうな表情をしたマリウス少年が俺の手を握ってくれていた。

「リューキのおじちゃん、大丈夫? 頭痛いの? お腹痛いの? あ、そうか。ジーナちゃんのことが心配なんだね。ぼくもだよ……」
 
 マリウス少年の目に涙がにじむ。

 純粋で、まっすぐな瞳。

 おかしな妄想が頭の中を駆け巡っていた俺は、自分自身が情けなくなってきた。

「……マリウス。俺たちはジーナを探すけど、洞窟のなかは危険がいっぱいだ。まずはマリウスをお家に送り届けてあげるよ。お家までの道は分かるかい?」

「わかるけど……もしかしたら、途中でお父さんやお父さんのお友だちに会っちゃうかも……」

「お父さんに会っちゃう? どういう意味かな? マリウスはお家に帰りたくないのかい? 洞窟で迷子になってたんだと思ってたけど、違うのかい?」

「ぼく……じつは、お父さんとケンカして家出したんだ。ぼくはキレイな剣を作りたいのに、お父さんはそんな武器はダメだって言うんだ……」
 
 マリウス少年は悔しそうな表情を浮かべ、うつむいてしまう。

 そういえばドワーフ族は鍛冶や石工の職人集団だという話だった。
 きっと、ドワーフ族なりの考え方やこだわりがあるのだと、漠然と思った。

「そうか……でもね、お父さんはマリウスのことをすごく心配してると思うよ。マリウスがジーナを心配してくれてるみたいにね」

「うん……そうだよね。わかった! リューキのおじちゃん、ぼく、お家に帰るよ。お家に帰って、お父さんにジーナちゃんを一緒に探してってお願いするよ!」
 
「それは頼もしいな。マリウスのお父さんや友だちに手伝ってもらえれば、ジーナは早く見つけられると思うよ。ひとりでもふたりでも人手は多い方がいいからね」

「ひとり? ふたり? 違うよ! お父さんのお友だちは何百人もいるよ!」

 マリウス少年があっさりと言う。
 
 対して俺は、すぐには返答ができなかった。

「ぼくのお父さんは、ゲルト・カスパーっていうんだ。ドワーフ族で一番大きなカスパー家の族長なんだよ! お父さんが声をかければ、たくさんのお友だちが助けてくれるよ!」

 マリウス君、いや、マリウス・カスパー君よ……
 「お父さんのお友だち」は、本当の意味での「お友だち」ではないと思うな。
 さてさて、ジーナを探す人手は欲しいけど、ホントに頼んで大丈夫かな。

 俺はドワーフ族随一の部族長の御曹司とお知りあいになってしまった。

 それにしても、ジーナはどこへ行ってしまったのだろうかね?
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感想 24

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みんなの感想(24件)

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2019.09.14 通りがかり

待ってます❗️

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2019.06.17 通りがかり

待ってた②

解除
通りがかり
2019.06.02 通りがかり

待ってた❗️

2019.06.16 きら幸運

長々とお待たせしております。
スイマセン。

解除

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